───冒険の書154/VS皇帝竜(後編)───
【ケース419:中井出博光(再々)/ヒロミチュード・ザ・グレイトバトル(再々)】
ドッゴォオオオオオンッ!!!!
中井出 『フゥウォオオオオオオッ!!!』
カイザードラゴン『グォオゥシャァアアアアアアッ!!!!』
巨大竜と真正面からぶつかり合う。
手にする武器は双剣であり、既に六閃化も発動済み……!
斬るまではいかなくても、衝撃を内側に徹すことで少しずつでもダメージを蓄積させる!
こんな時、拳以外の武器にも徹しの奥義が使えればとつくづく思うが───
中井出『だぁありゃぁああああっ!!!!』
ギンガガガガガギィインッ!!!
カイザードラゴン『グバァシャァアアアアアッ!!!』
ザンゾブシャシャシャシャァッ!!!
中井出『くっ……ぉおぁあああああっ!!!』
それでも戦うって決めた。
震えはもう完全にない───だったらどんな状況でだって足掻いてゆく!
そうだ……斬れなくても、同じ箇所を何度も斬りつけていればいつかは砕ける!
バッゴォッ!!!
カイザードラゴン『グゥォオオオオゥウ!!!!』
俺の攻撃を鱗で受け止め、
同時に俺の腕を爪で裂いたカイザードラゴンを雷とともに思い切り蹴り飛ばし、
普通のサイズのままだったならかなり遠いであろう山へと吹き飛ばす。
そうしてから鱗の色を凝視して、こちらの属性を変化させる。
カイザードラゴン『グ、ルルル……!!』
中井出 『もう解ってると思うけどな───
バリアチェンジはお前だけの特権じゃねぇんだぜ!!』
地面を蹴る。
広いと思っていた世界を巨大な体で。
やがて倒れた体を起き上がらせて極光を溜めていたカイザードラゴンへ───!!
中井出『“重閃爆剣ァアーーーーッ”!!!』
爆発的に真正面への跳躍をし、剣を一本に変換して突撃する!
そう、相手の属性は鏡のように透き通る鱗───つまり氷!!
ボッガドンガガガガガォオオオンッ!!!!!
カイザードラゴン『グォオオゥアアアアアアッ!!!!』
中井出 『───!?んなっ……!!』
巨大な火炎の塊と化した俺はカイザードラゴンへと激突する!
だがカイザードラゴンは俺が構えた剣を己の牙で噛むと押さえ、
殺しきれない勢いを、大地を破壊しながらすべることで殺してゆく!!
やがて勢いが完全に止まると同時に噛んだ剣ごと俺を振り回し、上空へと放り投げる!!
中井出『───ッ!デカくなっても力はそっちが上かよ───!!』
───いや、言ってる場合じゃない。
俺を見上げるその目は今だ怒りに揺れるまま。
体は未だに物理攻撃無効化状態だろう。
だから属性攻撃で攻めるしかないんだが、それも今の調子で弾かれてゆく。
中井出『だったら!紅蓮に炎!蒼碧に地!連ねてひとつの力と成す!
ブッ潰れろ!“メテオレイン”!!』
魔法は使えないが、俺にはキャリバーがある。
これでなんとかギガァッチュボガガガァォオンッ!!!
中井出『───!うおぉあぁあーーーーーーっ!!!』
剣から放った巨大な炎岩はカイザードラゴンへ向けて幾つも舞い降りた。
だがカイザードラゴンはそんなものには目もくれず、
ただ俺を凝視したままでレーザーを放ってきた───!
それはきっと当たる筈だったメテオレイン全てを破壊し───
中井出『“解除”()!ジークリンデ!!
《ガォオオオンッ!!》くぅぉおおおおおおおおっ!!!!!』
すぐさま双剣化させ、風を巻き起こして避けた俺の横を巨大な極光が貫いてゆく。
大気さえ爆裂させるほどのソレはまるで、
いつか晦が召喚したバハムートが放ったメガフレアのようだった。
中井出『っ……』
アレを食らったらアウトだ。
行動をよく見て、注意して───一気に攻める!
もともと細かいことを考えるのは苦手だ、
結局俺には行き当たりばったりの全力投球しかない。
それがヤケクソでもいい……最後に立ってればそれでいい!
カイザードラゴン『グォオゥルルルルル……!!《ビキビキビキ……!!》』
再び変色してゆく鱗。
バリアチェンジの状態では動けないことはしっているが、
それはこの怒り状態のカイザードラゴンにも通用する理屈かどうかは解らない。
けど───そんな解らないことに怯えていられるほど慎重でいられる性格でもない!
中井出『オォオオリャァアアアアーーーーーーーッ!!!!』
ガォンッ!と突風を弾かせ、一気にカイザードラゴン目掛けて飛翔する!
途端、その口がグパァと開き、俺目掛けて───まるで波動砲のような雷撃を放ってきた!
中井出『っ!く、がぁあああああっ!!!!』
予想通り、怒り状態のこいつはバリアチェンジ時に規制に囚われない。
その事実に気づけただけでもめっけもんだがヂガガガガォオンッ!!!
中井出『あっ───ぐあぁああああああーーーーーっ!!!!』
放たれた電磁砲を躱し切れず、左腕が無惨に焼き焦げる。
その激痛と、左のジークリンデを落としたために風が操れなくなったため───
俺は無様に大地に落下し、轟音を立てて倒れた。
中井出『がっ……う、うがあぁあ……!!』
痛い。
泣き叫びたくなるくらいに……ただ痛い。
いっそ肩から先を引きちぎりたくなるくらいに……!!
中井出『……っ……はっ……!』
息が荒れる。
回復しようにもアイテムなんかはもう使い果たした。
ったく……!ほんと無駄にHPが高いと、使うアイテムの数も尋常じゃない……!
あれだけあったアイテムがもうカラだなんて……なんの冗談だよ……!
中井出『はっ……はっ……はぁ……っ!!』
左腕には痛み以外にもう感覚がない。
動かそうにも動きやしないし、構えようにも痛みで意識が飛びそうだ。
中井出『来いよ……竜……!見せてやるよ……!人間の意地ってやつを……!』
痛みに汗を流し、顔を引き攣らせながらも剣を構える。
あるのはジークムントだけ。
ジークリンデは離れた場所に落ちている。
霊章転移させようにも、この腕じゃあ無理だ。
カイザードラゴン『グヴァァアゥシャァアアアアアアッ!!!!』
加えて、カイザードラゴンの鱗はさらに変化してゆく。
もはや許さんという激昂加減……まともに遣り合って生きて帰れる保証は無い。
でも限界がまだまだ先だってのに、
強敵に出会った程度で挫折するくらいの覚悟なら俺は要らない。
だから……この戦いだけは絶対に逃げねぇ!!
中井出『うおぉおおおおおおおっ!!!!!』
左腕をだらしなく下げたまま、右腕でジークムントを構え、疾駆する。
左腕がやられたからって右手の機能はそこまで下がるわけじゃない。
コォゥアギバァアシャシャシャォオオオンッ!!!
中井出『っ───!くあぁあああっ!!!』
疾駆した途端に溜め無しのレーザー!
それを跳躍とフロートで全力で躱し、
しかしレーザーが当たるか当たらないかのギリギリの位置を飛んで一気に詰める!!
カイザードラゴン『グ───!?』
中井出 『その色は水だな───!?“七星ェエエッ───雷鳴剣”!!』
ヂガァッシャゾババババァアアン!!!
カイザードラゴン『グギャァアアォオオオオンッ!!!』
レーザーを吐き終えた顔面、丁度ナギーがジャスタウェイを炸裂させた左目へと、
雷の一撃を渾身を以って振り下ろす!!
ヒットと同時に周囲に落雷を落としたそのキャリバーは
さらにさらにとカイザードラゴンを撃ち、しかし───
カイザードラゴン『グバァシャァアアアアアアッ!!!』
ゾボォッシャアアッ!!
中井出『げはっ……ガ、アァアアアアアッ!!!』
斬撃ではなく雷しか徹さなかった攻撃に対し、
反撃をしてきたカイザードラゴンの爪が俺の腹を鈍い音とともに裂いた。
ザザァッ!!───バシャバシャアッ……!!
中井出『かっ……グ、は、ああっ……!!』
吹き飛ばされ、しかしなんとか体勢だけは保って地面を滑った───が。
その地面には俺の血がこぼれ、緑と茶色を赤に染めてゆく。
中井出『っ……くそ……!』
強ぇえ……!!
中井出『……、……はっ……はぁっ……!!』
腕と腹を庇うようにして立ち上がる。
そう、強い……強いけど、だからって俺が諦める理由にはならない。
諦める理由っていうのはもっと先に進んでから仕方なく出すものでいい……。
それ以外には立ち向かってみせる……!
覚悟ってのは、そういうもののことをギガァッチュゥウウウンッ!!!
中井出『───!くあっ───《ズキィッ!!》───ぐぅっ!?』
フラつく俺へと駄目押しのレーザー。
当然避けようしたが、痛みに体がついてきてくれない。
HPが少ない今、いくらVITを上げようが巨大化してようが、これをくらったら───!
中井出『っ……く、ぅぅううううぉおおおおおっ!!!!!』
それこそ絶対絶命って瞬間に思い浮かんだのは晦の姿。
こんな時あいつならどうした、なんてことを考えて───
俺は体を回転させると、既にボロボロの左腕を囮にするように振るい、
左肩より先をレーザーの外に逃がした!!
ドガァアアガガガバッガァアォオオオンッ!!!
中井出『ッ……ぎあぁあああああっ!!!!』
だがそれはあまりにも無謀な避け方だ。
既にボロボロだった腕は極光に飲まれて千切れ、既に俺の肩にはくっついてはいなかった。
中井出『あ、がっ……ぐ!あ、あぁあっ……!!う、がぁあああっ!!!』
痛みに頭が狂いそうだ。
それでもここで負けるよりはマシって思ってやったことだ───悔やむならあとにしろ!
今は……痛くても、集中できない状況でも、無理矢理にでも集中するべきなんだ!!
中井出『はぁーーっ……!は、はぁっ……!!はぁああっ……ぐ、っ……はぁあ……!』
息が荒れる。荒れる。荒れる。
体は痛みのあまり縮こまるように力が入らず、
気を抜けば絶叫を上げて死んでしまいそうなくらいの苦しみが今の俺にはあった。
ゲームの中でこんなことして、馬鹿じゃねぇのか?
なんて当然ことを、俺の頭が語りかける。
ああ、まったくだ。
でも……死んでも生き返ることの出来る中で誓った覚悟も貫けないで、
どうして現実世界でも胸が張っていられるだろう。
生きて戦える可能性があるからこの手段をとった……小難しいことなんて知らない。
これが俺の覚悟なんだから。
今だけは、この命だけは簡単に諦めないって誓ったんだから。
中井出『オ──《ギシィッ!》──オォオオオオーーーーーーーッ!!!』
歯を全力で食い縛り、痛みを忘れて疾駆する!
どうせ長くは保ちはしない……そんなの解ってる!
今のレーザーを避けることが出来たからって、ここから起死回生が出来るわけでもない!
そんなことは解ってる!
なにより最初から無茶な戦いだったんだ───まだまだ戦えるレベルじゃあなかった!
それでも戦ってるうちに、男としてやってみたいって思っちまったんだから───
中井出(仕方ねぇじゃねぇか───!!)
ゴォオッ───ドガガギャリィイリリィイインッ!!!
中井出 『オォオオオオオオオッ!!!!』
カイザードラゴン『グバァシャァアアアアアアッ!!!!!』
俺の疾駆とほぼ同時に飛翔してきたカイザードラゴンと再び衝突する!!
真正面からぶつかる剣と牙は眩い火花を散らし、その場を刹那に照らした───!
中井出『おぉっ───らぁあああっ!!!!』
ドゴォオオンッ!!!
カイザードラゴン『グォオウッ!!?』
けどこっちはもう片手のみだ───
馬鹿正直に鍔迫り合いみたいなことをしてやれる余力なんて残っちゃいない。
だから鱗の色を確認したのち空いている足でその腹を“徹し”を込めて蹴り上げてやり、
咄嗟にジークムントの属性を変換、刃を上に大地に突き立てると、
浮いたカイザードラゴンを追うように揺れる尻尾を掴み───
中井出『っ……ふぅうううううぉおおおおっ!!!!』
片腕のみで振り回し、天を仰ぐ紅蓮の剣目掛けて一気に振り下ろした!!
ゴォバッガァアアアアアアンッ!!!!
カイザードラゴン『ッ……クギャァアアォオオオオオンッ!!!!』
響く絶叫めいた咆哮!
刃は突き刺さらず、カイザードラゴンの重さに地面に埋まったが───
篭っていた属性が体を貫いたのだろう。
カイザードラゴンは僅かの間のみ苦しそうに体をバタつかせ───
カイザードラゴン『───!!』
中井出 『う───お……おぉおおおおっ!!!』
その目が確かに見た、拳を握りしめて今まさに振り下ろさんとする俺の姿に驚愕する!!
ドガガバッガァアアアアアアアン!!!!
カイザードラゴン『ギ───ッ……!!』
徹しを込めたマイトグローブが爆裂を起こし、
殴り潰す思いでSTRマックスにて顔面に振り下ろした拳が、その場にクレーターを造る。
その威力は巨大化の助けもあって相当なものだ。
殴られた顔面以外が宙に浮き上がったカイザードラゴンの体が、それを物語っていた。
ズドォッシィイインッ……!!
やがて体は地面にヒビを走らせ倒れる。
だが終わりじゃない。
俺は塵なるまで何度でもやる覚悟で拳に力を込め、
ドガンドガンと顔面を殴ってゆく───!!
中井出『はっ……ぐ、がぁああああっ!!!』
殴る度に体が軋む。
クレーターもより巨大に広がり、物理攻撃は無効化されても、
徹しで通る攻撃の全ては確かにカイザードラゴンにダメージを与えていた。
だっていうのに───!!
ジュラララララァッ───!!
中井出『なっ───!?』
尻尾だ。
尻尾が俺の首に、まるで蛇が絡まるように一気に纏わりつき、
この巨大な体を小石でも投げるかのようにゴファォオンッ!!!
中井出『───!投げ───っ!?』
そう、投げた。
ただ尻尾で投げられただけ───だっていうのに景色が流れる速度がハンパじゃない!!
中井出『く、おぉあああああっ!!!』
ザガァッ!ズガガガガガガアアアアアッ!!!!!
中井出『〜〜〜〜っ……!!!』
離れすぎるわけにはいかない。
だからジークムントを地面に突き立てると身を回転させて、
地面を滑りながらようやく体勢を立て直す。
だがそうした時にはもう遅かった。
カイザードラゴンはとっくに立ち上がり、空を飛び、俺目掛けて飛んできてたのだ!!
中井出『うわ《ドッガァアンッ!!!》げはぁあああああっ!!!』
仕掛けてきたのは最高速度でのぶちかまし。
避けることが出来なかった俺は再び吹き飛び、山に激突して血を吐いた。
中井出『ア……、───』
喉から声が出ない。
衝撃で肺でもやられたのか、息すら───
中井出『……、……っ……』
立とうとした足が崩れる。
見れば、足は完全に折れ曲がり、
立てるわけがないと俺に訴えかけるかのように痛みを投げつけてきた。
中井出『……、げはっ!』
血混じりの咳とともに声が漏れる。
声は……大丈夫、ただ血がどこかに詰まってただけみたいだ。
内臓のことなんか詳しくないから解らないけど、声は出せる。
そう───今出来るのは声を出すことだけ。
何故なら、体はもう……動いてはくれなかったから。
中井出『く、そがぁあ……!!』
動かない。
どれだけ力を込めても、ググ……と震えるだけで、
体が少し持ち上がったかと思えばまたすぐに力なく倒れる。
もはや根性とか力とか、そんなもので補えるレベルのやられ方じゃないってことだ。
頼みの右手も……もう動かなかった。
これまで……なのか……?
カイザードラゴン『ルゥウウォオオオオオオッ!!!!』
諦めそうに……挫けてしまいそうな俺目掛け、
もう一度カイザードラゴンがグライダースパイクの体勢に入る。
上空に飛び、離れていき、だが旋回したのちに低空で───俺目掛けての飛翔……!!
俺の体は山にもたれかかるようになったまま動けない。
今くらえば……今度こそ終わり。
中井出(………)
食らえば終わりだ。
いくらなんでももう一度くらったら───
いや……VITを上げればあと一発くらい耐えられるかもしれない。
そうだ……今のあいつの属性に強い属性で防御を固めれば───
中井出『っ……そうだ……』
諦めないって決めたんだ……諦めるな。
人間は挫折ばっかの生き物なんかじゃない……こうしていつまでだって足掻けるんだ……!
カイザードラゴン『グォオオオオシャァアアアアッ!!!』
中井出 『───!』
カイザードラゴンの飛行速度が増した!
これで決めるつもりなんだ───加減もなにも無い。
中井出『っ───』
ダメだ……やっぱりこのままじゃ意味が無い!
このまま何度も攻撃を食らってたら粘ってても意味が無い!
何処か……何処か動く箇所は……!
そう思いながら頭を動かし、何処か無事な場所が無いかを感覚と一緒に探す。
が───……そんなものはもう何処にも───…………え?
中井出『───そうか!!』
あった!まだ動く箇所!!
そう閃いた時、
視線の先から大地を滑るようにして飛翔する氷属性の鱗を持つカイザードラゴンが!
カイザードラゴン『クガァアアアアッ!!!』
中井出 『氷───運が無いなお前!!
消ぇええし飛べやぁああァアアアアッ!!!』
速度、タイミングともに全てが適当だ。
だが俺は唯一動く“頭”を全力で振るうと、
VITマックス状態で爆弾パチキを炸裂させた!!
ゴォゴバァンガァアアアガガガォオオンッ!!!
へしゃげる大気と爆裂する虚空。
俺の頭とカイザードラゴンの頭が激突する時、そこには確かに強烈な爆発が巻き起こった。
だが俺にはダメージなんて無い。
属性の強弱のお蔭で大分軽減出来たのだ。
俺はVITマックス状態だ……衝撃らしい衝撃は通らなかった。
しかしカイザードラゴンは確かなダメージをくらったように、
俺がよりかかっていた山を飛び越えるように吹き飛び、その先に勢いよく落下した。
俺の攻撃なんかでああなったんじゃない。
あいつは自分の勢いにこそやられ、ああして大ダメージを受けたのだ。
そして───
中井出『───よし!!』
相手に攻撃することで発動する“回復”の技術スキルが俺の体を回復する!
少しは動けるようになった俺は無理矢理体を起こすと山を駆け上り、そこから跳躍!
中井出『稲妻ァァアーーーーッ!!!反転蹴りィイイイーーーーーーッ!!!』
休む間も無く、倒れたカイザードラゴンに稲妻反転蹴りを落とす!!
ヂガァッシュドバシャァアアアアアン!!!
カイザードラゴン『クギャァアォオオオオウッ!!!』
その一撃でもキズは回復する。
この調子だ───アイテムなんざもう無いんだ、戦って回復させるしかねぇ!!
そう思った俺はカイザードラゴンの尻尾を掴むと片腕のみで振り回し、
ドッガァアアアンッ!!!ドガァン!!ドガァアンッ!!!!
カイザードラゴン『グォオオオゥウウッ!!』
再び大地に叩きつける!───叩きつける!叩きつける!!!
中井出『物理攻撃が効かないって……!?だったらそんなものにこだわらなきゃいい!!』
三度叩きつけ、少し目を回したカイザードラゴンの尾の先の方を足で踏みつける。
もちろん具足は俺の攻撃の意思を読み取り、
雷撃を放ち続け、その部分にだけダメージを徹してゆく。
そうしてから腕に渾身を込め、斬りつけるでもなく殴りつけるでもない───
中井出『クッ……!オ、グ……!!ガァアアアアアッ!!!』
ブギッ……ミヂ、ブギギヂヂバシャシャシャァアアアアアアッ!!!!
カイザードラゴン『ギ───グギャアアアアォオオオオオッ!!!』
物理攻撃とは掛け離れた方法で、こいつに傷を負わせた!!
そう……それはなにより単純でなにより効果的……!
斬るわけでも殴るわけでもなく、“尻尾を引きちぎってやった───!!”
攻撃系特種技術スキルは“敵にダメージを与えること”で発動する。
つまり痛みさえそこに通っていればダメージとなる───つまり。
中井出『うおぉおおおおおっ!!!!』
千切れ、血が溢れているその尻尾の部分を掴み、再び振り回す!
手が血塗れになろうが知ったことじゃない。
傷が深い場所を強く握っていることに意味がある。
それは確かにカイザードラゴンへのダメージとなり、
そしてその条件を満たすことで技術スキル“回復”が発動し、
いつか彰利にストームブリンガーを実践してやった時のようにHPが回復してゆく!
そうすると当然、ケシズミとなった左腕も再生し───
中井出『だぁあありゃぁああああーーーーーーっ!!!!』
生えた左手も合わせ、両腕で尻尾を掴んだ俺は、
カイザードラゴンを思い切り大地に向けて振り下ろした!!
ドンガガガガガガァアアアアンッ!!!
するとまるで大地震で地面が崩れるように、叩きつけた場所が崩壊する。
ギピィンッ!!
中井出『───!』
そんな叩きつけでも敵もまだまだ全然ピンピンしてやがるのだ。
再びバリアチェンジをおこなったカイザードラゴンは首だけを起こし、
溜め無しにレーザーを発射!
そろそろ動作が解ってきた俺はそれを躱しつつ双剣を出現させ、
レーザーが消えたと同時に長剣に変換!その“鱗が無い口”へと一気に突き出した!!
ザゴォッフィボガガガガォオオンッ!!!
カイザードラゴン『ルグォオアァアアアンンンッ!!!』
肉を裂く感触が初めて剣を通じて俺の腕に届く。
不安だったがやっぱりだ───硬質化したのは鱗だけであって、
口の中とか肉の中まで硬質化したわけじゃない!
バリアチェンジのパターンも段々解ってきた───いける!!
このまま口を貫いて脳を破壊ギシィッ!!
中井出『───!?』
剣が……先に進まない!?
カイザードラゴン『グゥウウウオォオオオオゥウウウ……!!!!』
歯……か……!?歯だけでこっちの渾身を受け止めきって───!?
冗談だろ!?マグニファイ使ってないとはいえ、STRマックスだぞ!?
顎の力だけで、押せば通りそうな歯の間さえ───通っていかないなんて!!
くそ……!口の中を火とボマーで爆発させたってのに全然怯んでねぇ!!
それどころかさっきより力強くこっちの攻撃押さえてやがる!
───そうして、チリッ……と小さな恐怖心が頭の中によぎったその間隙!
ザブシャアッ!!
中井出『くああっ!!?』
カイザードラゴンの鋭い爪が、俺の腕の肉を削いでいった。
この野郎……!せっかく回復したっていうのに───だったら!!
中井出『くっ───あぁあああらぁああああああっ!!!』
歯に挟まれたままで抜けない剣を、一本背負いをするように肩にかけ、
テコを利用してカイザードラゴンを地面に叩きつける!!!
バシャアッ!!
中井出『───!』
だがそれは見切られていた。
カイザードラゴンは途中で剣を離すと、離れると同時にレーザーを放ってきたのだ!
中井出『う、あ───!』
ギガシャドンガガガガガォオオオンッ!!!!
中井出『───、……!!』
波動に飲み込まれ、体が焼かれる。
咄嗟にジークフリードを盾にして、
属性を変換、風を全力で展開してシールドにしたが───
そんなものはほんの少し威力を抑える効果にしかならなかった。
シュゴォバァンッッガァアアアアッ!!!!
中井出『ッ……!あ、ぎ、がぁああああああっ!!!』
俺の体は高速で吹き飛び、結果としては助かったが再び山に激突。
せっかく回復した体も再びズタボロになり、力なく倒れ伏すしかなかった。
中井出『……、か……っ……ぐ……!』
そして───そんな俺の眼前へと飛翔し、
これでもかってくらいにブスブスと焦げ、
無様な姿をさらす俺を見て、さらに爪を走らせ牙を立て、
さらにさらにと俺を血塗れにしてゆくカイザードラゴン。
爪が走るたび灼熱し、牙が立つたびその激痛に絶叫する。
やがてそんな俺の苦しみに満足したのか───そいつは……
───バカナコトヲォオ……シタァ……
ギシュゥウウ……!!《カイザードラゴンの怒りが治まってゆく……!》
……そう、怒りを治めたのだ。
つまり物理攻撃無効化が無くなったということ。
ボロボロの俺を見て満足そうに咆哮、
動けない俺を、切れた尾で叩き、まるで嘲笑っているかのようだ。
中井出(……、けど……)
けど、体が動かない。
きっと一番のチャンスだ。
なのに、もう体が───
───チカラガァ……ホシイィ……カ───?───
傷口が灼熱する。
荒かった息もやがて途絶えるように小さくなり───
───チカラガホシイノナラァア……───
消える───
───クレテヤルワァッ───!!
───筈、だった息が一気に躍動する!!
ゾワァッ!ガンババババババァアッ!!!
カイザードラゴン『───!?』
ズタボロだった体に活力などない。
だというのに両肘まで伸びた霊章は一気に広がり肩までを覆うと、腕に闇の炎を灯す。
狂いし者『ゴ、ォオオ……グォオオオオオッ!!!!』
俺が俺としてじゃなく、狂いし者として目覚める。
爆発しながら燃え広がる闇の炎が肩から腕全体を覆うと、
その腕はさっき俺がそうしたように、俺を叩いていた千切れた尾を掴んだ!
カイザードラゴン『クギャァアォオオオオオッ!!!』
だが回復目的じゃない。
尾の断面に手の平を添え、そしてビギィヂヂヂザガッキィインッ!!!!
カイザードラゴン『ギィイァアアアアアアアゥウウッ!!!』
断面目掛けて、ジークムントを召喚させやがったのだ。
当然出現した剣はカイザードラゴンの肉を裂き、
硬い鱗で覆われたソレを内側から破壊。
容赦なく引き裂き、“その行為”で回復した。
狂いし者『オォオオオオオオオオオッ!!!!』
鱗が裂け、露出した肉にもはやあの強固なる防御はない。
狂いし者はそこに刃を突き立て、
ヂギギザガガギバッシャァアアァアッ!!!
カイザードラゴン『ルグゥウォオオオオオッ!!!』
火とボマーを発動させ、爆裂させながらさらに肉を斬り裂いた!!
丁度尾の付け根まで走ったその斬り傷は焼きただれ、
もはや回復など出来るものじゃなくなっている。
狂いし者『さあ……見せてもらおうか……!貴様のもがきとやらを……!』
狂いし者はまるで楽しむように謳う。
……今まで全然斬りつけられなかったのがウソのように傷ついてゆくカイザードラゴン。
そして、それを喜としてやってのける狂いし者。
恐らくこのままほうっておいてもカイザードラゴンは出血多量で力尽きるだろう。
だが、強者との戦いに飢えているこの狂いし者がそんなものを待つわけがない。
狂いし者『ハッハァッ───!!』
疾駆する狂いし者。
そして───それとは逆に、
こちらの武器が己を斬れるものだと判断するや警戒を始めるカイザードラゴン。
そんなカイザードラゴンに、狂いし者は
狂いし者『縮こまってんじゃあ───ねぇえぇええええっ!!!』
素早さもなにも関係ない。
ただ一番力を乗せられる大振りの一撃を、カイザードラゴン目掛けて振るっていた!!
ゴガァッキバガァッシャァアアアアンッ!!!!
カイザードラゴン『ギギャァアアォオオオオンッ!!!!』
その一撃は、俺がフォースフィールドを展開した時に傷つけた鱗を狙ったものだった。
見事に鱗を破壊し、バキベキと別の鱗を破壊してゆく斬り方はまるで、
剣ではなく巨大斧でも振り回すかのような重い重い一撃……!!
その在り方に刹那にでも物怖じしたのだろうか。
カイザードラゴンはバリアチェンジを始めたがザバァッシャアッ!!!
カイザードラゴン『ギッ───!?』
何度も点滅するように……そう。
まるで点滅式のルーレットでもするように変色しまくるその鱗を、
その変色速度に合わせて自分も属性をチェンジして双剣を連ねてゆく!!
カイザードラゴン『ギアァアアアアアム!!!』
流石にたまらないと感じたんだろう。
ついに後方に下がるカイザードラゴン。
だが───
狂いし者『戦士()に後退の二文字はねえ!!!!』
叫び、双剣を長剣に変える直前にマグニファイを発動、
鬼人化した瞬間に長剣と化したジークフリードで、
ザッガァアアギギギギギィイインッ!!!
ズバガガガガガガォオオオオンッ!!!!
カイザードラゴン『……!!ギアァアォオオオンッ!!』
カイザードラゴンの左肩部分から左後ろ足までの斜め一直線を、力強く斬り裂く狂いし者。
そして、その剣筋の軌跡を追って奔る闇の炎が斬痕を焼いてゆく。
カイザードラゴンに自己回復能力があるかどうかなんて知らない。
けど、これならそんな心配をするまでもなく、
よほどの回復能力じゃなければ癒させやしない。
───だが。
追い詰められた生き物の本能は決して、やられたままでは終わらないものだ。
ガブシャアッ!!
狂いし者『ヌ───!』
右へ斬り払った際に柄から離れた闇に燃えさかる左腕を、
カイザードラゴンは飲み込むように噛み付いた。
もちろんこの体、武器から発せられる炎は全てが起爆装置。
触れれば爆発するソレを口に含んだことで、
カイザードラゴンの口内では幾度も爆発が起こった。
だがそれでも怯むことなく、ソイツは俺の左腕を食いちぎった───!!
狂いし者『───!』
いや───食いちぎったかに見えた。
確かにこの体がその腕と繋がっている部分はもう無い。
けど、炎───燃えさかる闇が、千切れてなお腕の霊章と肩の霊章を繋いでいる……!!
狂いし者『グゥウウウラァアアォオオオッ!!!』
絶叫とともに左肩を引く。
すると肩の闇に引っ張られるように炎が動き、───!!
ブギャアッ!!ブッシャァアアアアアッ!!!!
カイザードラゴン『ギヤァアアアォオオオンッ!!!!』
咀嚼してくれようと顎が開いた瞬間だった。
開いた分だけ光が差し込んだその先で躍動した炎の腕がカイザードラゴンの舌を掴み、
引かれるがままにそれを引きちぎったのだ。
───……鮮血の雨が降る。
絶叫の咆哮とともに降る赤の雨を浴びながら腕を闇の炎で密着させ、
叫び続けるカイザードラゴンを全力で斬りつけることで回復、腕を接着した。
……滅茶苦茶な戦い方だ。
どれだけの無茶でどこまで戦いを楽しめるか。
それしか考えていないような戦い方……。
だが、その力が突然消える。
傲慢な態度の竜を散々と斬りつけることが出来て満足したのか、
はたまた弱った相手では興味が失せたのか。
意識を俺に返すと、狂いし者は霊章の奥へと引っ込んだ。
中井出『───!』
途端、ガクンッと体勢が崩れ、霊章の大きさが元に戻り、闇の炎も消え去った。
代わりに訪れたのは鋭い激痛だ。
あれだけ暴れた痛みや疲労の全てがツケ俺に回ってきたかのような感覚だ。
中井出『……、こ、このっ……!!』
自分は散々楽しんで、痛みは俺に任せっぱなしかよ……!
確かに今回ばっかりは助かったけど……納得いかないのは事実だ……。
カイザードラゴン『グ……、ギ……ギ、……!!』
中井出 『…………、』
息を荒く吐きながらカイザードラゴンを見る。
尾と口、切り裂かれた体から血を流し続ける竜を。
ここにきて初めてカイザードラゴンに調べるを使ったが、
そのHPも血が流れる度に物凄い速度で落ちていっている。
……それを見てなるほどって思った。
ようするに狂いし者は、もうこれで戦いが終わったって悟ってたんだ。
……トドメを刺さない情けからじゃない、
血を撒き散らしながら、苦しんで死んでゆく様を見るために。
中井出『……、はっ……はぁ……』
奥歯を噛み締める。
そして改めて、ボロボロの皇帝竜を見る。
調べるなんかやらなくても、もう死んでしまうことくらいは誰が見たって理解できる。
でも……
中井出『……きっと……アホなんだろうな、……う、ゴホッ……!!俺……っ……!』
血を吐きながら言う。
このまま苦しませるのはあんまりだ、なんて……ほんとアホだ。
散々殺されかけて、腕も破壊されるわなにわでもろくな目に合わされなかったのに。
弱って死んでいくなんて無様な死じゃなくて、
皇帝として……誇りを持ったまま戦死させてやりたいだなんて。
中井出『……これで終わりにしよう。ジークフリード……力を貸してくれ』
フィンッ……とジークフリードを回転させる。
そうしてからバックステップをして、全身に力を込めて───バガァンッ!!
中井出『ッ───オォオオオオオオオオッ!!!!』
バックステップの着地と同時に地面を蹴り飛ばし、雷の炸裂とともに一気に真正面に飛ぶ!
そして、ゆっくりと終わりを告げようとしているマグニファイの効果時間が、
その時を告げる前に───
中井出『“黄竜剣”!!』
ギシャゴバァアアォオオオオンッ!!!!
カイザードラゴン『ギアァシャァアア……ッ!!!』
傷をなぞるように、今出せる全力を込めて───竜の皇帝を、斬滅した。
弾ける黄竜の闘気と、塵となる竜の姿。
俺はそれを眺めながら、勢いを殺しきれずに地面を転がり───
そうしてからようやく戦闘終了を告げるかのように、
俺の体は元の大きさへと戻っていった。
中井出「は……」
……まあ……なんだろう。
いろいろあったけど……とりあえず。
中井出「見たか……こんにゃろ。人間でも……ごほっ!げっほごほっ!
ゔ……に、人間でも……竜に勝てるんだぞ……」
そうやって誰にともなく呟いて、仰向けに倒れた状態で空に拳を突き上げた。
何処までも蒼いソレは……祝福してくれるわけでもなく、
ただ……風とともに雲をゆっくりと運んでいた。
そんなものを見たら、
さっきまでドタバタと暴れていた時間が妙に忙しかったのを思い出して、
今のこのゆっくりとした時間とのあまりのギャップに……笑った。
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