───冒険の書168/時は少しを遡り……───
【ケース444:中井出博光/ウサギ獣人への経緯】
ガコンコンコンコゴニャアアアアオオ!!
…………トカカカカカ……!!
ジョニー『出来たニャ!!』
中井出 「おお!」
猫に武器を預け、なんだかんだで宿屋に居座り一日を過ごした俺は、
いつ村人に見つかるかとハラハラしながらも猫の呼びかけに喜んだ。
いや……ほんとなんとかしないとならないよ、魔王である自分を。
この姿じゃおちおち宿でゆっくりもしてられないわけだし。
ともあれコシャンと武器を受け取る、
既に双剣状態と長剣状態とで合成を完了させたそれをシゲシゲと調べた。
もはや恒例だな、これは。
◆稀紅蒼剣ジークフリード+1500 ───きこうそうけんじーくふりーど
もはや説明の必要もない紅蓮蒼碧の長大剣。
合成させる前に合成武器を鍛えるだけ鍛えてから合成させたために+が増加し、
より一層の切れ味を見せ付けている。
素粒子の剣“透粒剣テオスラッシャー”の力により剣の周りに細かい刃が舞っており、
触れただけでも切れるほどの鋭利さを誇っている。
さらにその粒子は属性に呼応する力を持っており、属性を引き出す力に長けている。
持ち主には害を与えないという粒子なので、安心して振り回せるだろう。
◆追加技術スキル
ミストルテイン:★★★★★☆/宿り木の槍 突き攻撃時に超震動波を放つ
フロームンド :★★★★★☆/宿り木の剣 敵の属性耐性を一定値無視する
ホズ :★★★★★☆/宿り木の矢 徒手空拳時にボウガンや大砲に変異
砲術王 :★★★★★☆/竜撃砲が発射可能 属性を込めた15秒に一発大砲
氷牙 :★★★★★☆/氷属性などの攻撃の際 鋭い氷が炸裂 追加攻撃
雪月花 :★★★★★☆/氷牙の強化スキル 氷属性攻撃が大幅強化
疾風/烈風 :★★★★★☆/疾風奥義と烈風奥義が追加される
透粒粉塵 :★★★★★☆/剣に素粒子レベルの刃を纏う 密集や拡散も可能
ペナルティ盲目:★★★★★☆/疾風烈風を四連以上発動させると十秒間盲目になる
盲目テオハート:★★★★★☆/盲目時に全能力上昇 ただしやっぱり見えない
*補足:宿り木能力には槍、剣、矢の能力があり、武器に様々な能力が付加される。
槍の特種能力はARMS殺し……もとい、超震動。突き攻撃のみに付加。
剣の特種能力は属性耐性一定値無視。耐性があれど値が低ければ弱点にする。
矢の特種能力は無限装填属性ボウガンと大砲。大砲は連発には向かない。
*砲術王は反動が強い放射系のものの威力を向上させる能力もある。
通常は属性大砲を撃てる程度だと思われがちだが、
レーザーや大砲や矢術などといった“放つもの”系統のものは強化されている。
*氷牙、雪月花は氷属性強化の強化スキル。
氷雪竜素材で氷属性攻撃の全てが強化されており、とても強力。
しかし使用出来なきゃ意味がない。
*疾風烈風は特種な呼吸法により、
通常の人が一撃を放つうちに四閃を可能にする奥義。
通常、発動させてから一呼吸置いてからの使用しか出来ない。
が、ひと呼吸のうちに四連以上を重ねることも可能といえば可能。
しかしその場合、人間の能力限界を超えたペナルティとして盲目が発動する。
*透粒粉塵はテオスラッシャーの付加能力。
素粒子レベルの粒子が剣の周りを浮いており、
よほど密集している状態でなければ肉眼では確認出来ない。
密集構築して素粒子の刃にすることも拡散させることも可能。
属性を取り込みやすい性質を持ち、
その際には刃がそれぞれの属性に見合った色へと変わり、彩りを見せる。
地なら茶色、水なら水色、火なら赤、風なら蒼、雷なら紫、氷なら白、
光なら山吹色、闇なら黒紫、元素なら灰色、然なら緑など。
なお、時は白藤色、死は銀朱色、無は瑠璃色となる。
舞い散らした属性には持ち主が衝撃を与えることでなにかしらの反応を見せる。
地なら瞬間地震、水なら鋭い雨、火なら爆発、風なら鎌鼬など。
固定されているわけではないため、いろいろやってみるといいだろう。
用途は持ち主の意志を読み取って行われることが大半である。
*盲目テオハートは盲目時でなければ発動しないスキル。
盲目になると全能力が向上する……が、やっぱりなにも見えない。
閃光玉などで目潰しされるととても暴れる
どこぞのテオさんの素材から作られた武器なので、
その習性が残っていたためかと思われる。
ペナルティ盲目を上手く活用すると使えないこともない。
◆追加秘奥義
超速剣疾風斬:疾風奥義 一息のうちに閃速四連斬を可能にする 素手状態でも使用可能
超連歩烈風脚:烈風奥義 一息のうちに閃速四連走を可能にする 攻撃や移動に使える
───……。
ゾワリ……
中井出「きょっ……興味深ぁい!!」
なんと素晴らしきかな武器!
おおいろいろ能力付加されてるよ興味深い!
まあ宿り木系は知ってたから良しとして。
中井出「この透粒粉塵ってのは……《ザワッ》フオッ!?」
ゾギンと剣を構えた途端、剣から粉状の刃が揺れた。
おお……これが粉塵?
説明によれば属性に呼応する特性を持ってるらしいが……ふむ。
じゃあとりあえず火属性を込めて───
中井出「焚ッ!!」
ヴォオッファァアアン…………!!
気合一閃、一瞬のみ力強くジークフリードを握ると、大剣から粉塵が拡散してゆく。
それはチリチリと揺れながら俺の周囲を火花で彩り、ギヂンッ!
ドンガガガガガォオオオンッ!!!
中井出「フオオオオオッ!!?」
双剣化させたジークムントとジークリンデの刃を弾かせると、
それが火種にでもなったかのように小さな火花が爆発した。
あっという間に視界を埋め尽くす爆発と轟音が俺を驚かせた。
中井出「こ、これはぁああああっ!!この技はぁあーーーーっ!!!」
火の粉を散らして爆破なんて、素晴らしいったらないじゃないか!
しかも使える属性はなにも火だけじゃないとくる!
おお……これはいいものだぁーーーーっ!!!
中井出 「猫はん……なんちゅうもんを……なんちゅうもんを作ってくれるんや……!」
ジョニー『お任せニャ!……って言っても、
ボクは武器の力を引き出しただけにすぎないニャ。
だからこの武器の力をどこまで扱いきれるかは旦那さんの腕次第ニャ』
ヒョイッ、と宿屋の隅にある机の後ろから顔を出すジョニー。
ていうか……しまった、宿屋ボロボロじゃん。
中井出 「………」
ジョニー『どうしたニャ?』
シード 『父上?』
ナギー 『……ヒロミツ?』
ジョニーやシード、
そんでもって爆発音で起きたナギーが頭を痛めるように押さえてる俺を見る。
どうしたもんかとは考えたもんだが───
このまま災厄魔王になるのも面白そうといえば面白そうなんだが、
それじゃあ討伐する側の方が面白い気がしてなぁ……。
だったらどうするべきか。
こっち側が楽しくいける魔王的なものはなにかないものか。
はたまた、魔王だと気づかれないようにするには───………………おお閃いた!
ようは変装してしまえばいいのだ!!
それも、ことあるごとに変装すれば誰もそいつが魔王博光だとは思うまい!
……でも問題点として、変装道具とかそういうのがない。
中井出「どうしたもんか閃いた!」
さらに悩んだ途端に閃いた。
そう、それはまさに簡単なこと……!
そうだよそう、俺にはブリュンヒルデがあるじゃないか。
ブリュンヒルデの変換能力を使えば、どんな着ぐるみだろうが変装だろうが思いのまま!
ならばそう……俺はかつての伝説への回帰を果たそう。
中井出「ブリュンヒルデよ……!
この博光の思考を受け取り、我が思うままの姿へと我を導きたまえ……!」
ゴゴッ……メリメリメリ……!!
言葉を放つと、ブリュンヒルデが早速変貌を開始する。
装備は現在のままに、頭のみを硬く包むそれはまさに───
車星人『車星人見参……!!』
そう、まさに車星人……!
首から頭頂にかけてを完全に覆う車型装備をした俺はフフフ……と不適に笑い、
しかし手だけはサワヤカに軽く挙げつつ俺を見上げる三人(?)を見た。
ナギー『なっ……なんなのじゃそれはーーーっ!!』
ナギーはたまげた!
シード『く、車星人!?それはいったい……!?』
シードは怯えている!!
ジョニー『車ってなにニャ?』
ジョニーは疑問を抱いている!
三人が三人ともそれぞれの反応を見せてくれるので中々面白い。
だが車星人はちと激しい運動には向きそうにないので却下。
ならば次だ。
ゴワゴワゴワ……!!
ウサギ獣人『ウサギ獣人出現……!!』
意志を鎧……というか服に通して、装備を超軽量化する。
というのも上半身裸で、あとの装備なんて頭にラットンフェイク、
腕にラットンスーツアームだけで、あとはズボン程度なのだから軽量化も軽量化。
なのに防御力はそのままというのがブリュンヒルデの素晴らしいところといえるだろう。
……当然、夏とはいえ上半身裸は結構……いや、とても肌寒いぞ?なにせ雪国だ。
日差しが舞い降りたとはいえ雪はまだまだ積もっているこの地域……
こんな場所で上半身裸で何時間も立ってりゃ風邪くらい平気で引いてしまいそうだ。
ん?なに?馬鹿は風邪引かないって?
そりゃ確かに昔からよく言う言葉がそれなんだろうけどな。
確かに俺は馬鹿だし、そもそも自分を天才だと思ってるやつなんて、
天才って呼ぶよりは揉め事面倒ごとその他色々を巻き起こす“天災”だって相場もある。
いやすまん、そんなもんは存在しない。今俺が作ったからだ。
しかし面倒ごとってのは馬鹿が起こすより天才が起こすほうが厄介だから、
天才を自称するヤツにつける二つ名なんてものは天災で十分なのだ。
ああいや脱線したな、話を戻そう。
ともあれ俺が馬鹿なのは事実として認めよう。
成績が優秀だったわけでもなければ、
順位なんてものは常に真ん中あたりで目立たないようなもんだったからなぁ。
努力してもそんなもんだったんだ、そもそも俺に勉強は向かなかった。
へ?なんで努力したかって?
そりゃお前、迷惑部として、クラス委員長として教師を騙くらかすためである。
さて、そんな努力までした馬鹿な俺だが、風邪を引く自信はたっぷりある。
そもそも人間なんだから風邪くらいは引くだろうし、
馬鹿は風邪引かないと言われたのちに確かに風邪を引かなかった俺は、
このままではいかんと努力までして風邪を引いた真性の馬鹿だからだ。
馬鹿は風邪引かないという固定された常識を見事破壊してやったさ。
……まあもっとも、その後風邪が肺炎となって生死の境を彷徨ったのはこの際度外するが。
中井出「まあともかく」
ブリュンヒルデを村人の服に戻すとひと息。
魔王であることを悟られないための方法は考え付いた。
あとはこれからどうするかだな。
解放した属性は然と氷。
設定通りに見事にこうして俺は氷属性が使えなくなったり、
元々使えなかった然属性が使えなくなったりしたわけだが───
まあ結局のところ、やることなんか決まっているのだ。
どうするかとかそんなことは二の次だ。
何故なら俺達、というか俺は“冒険”をしているのだ。
で、今やっているコレは守護竜討伐っていう一種のイベントだ。
既に冒険をしてるなら、なにをするか、なんてことを悩む必要なんて無いのだ。
障害があるならブチノメせばいいだけの話だからな。
それを含めての冒険だ。
魔王結構じゃないか、
状況が状況なら“泣いた赤鬼”の歴史を覆す行動さえ取る意志があるぞ、俺は。
鬼の身でありながら人と仲良くしたい?よしその常識への挑戦は認めよう。
だが仲良くするだけではつまらんだろう。
いっそスパイのように、人間の仲間になったと見せかけて内側から破壊をだな……
いやここはむしろ人を守ろうとする赤鬼ごと人類を滅ぼすとか……
中井出「………鬼だ」
それこそまさに鬼だなオイ。
と、こんなことを考えている場合ではなく。
中井出「ウヌ、少々思考に囚われてしまっていた。よしでは行こうシード、ナギー。
次に目指すべき場所は───」
ドグッシャアア!!!
声 『ギャアーーーーーッ!!!』
……行き先を適当に決めた矢先に外で騒音。
何事だ?と、かなりボロボロになった部屋の窓から外を見てみれば───
アフロ男「あーあー潰れちまったよォオ!!
どーすんのコレ!お前の所為だよコレェエ!!」
なにやら横倒しになったリヤカーの横で、
アフロでマッチョで何故か上半身裸な男が叫んでいた。
その横には…………なんだか高貴っぽい女。
アフロ「こんなにリヤカーメチャメチャにしちゃってさァア!!
もう今年終わりだコレ!全部お前の所為だかんなコレェエエ!!」
女 「な、なにを言うのです……町の中でこのようなものを引いて、
物凄い速度で走るからこうなるのでしょう……」
アフロ「そんなもんはお前がリヤカーを上回るスピードで避ければ済むことだよ!
どうしてくれんのコレ!これじゃあ商売あがったりだよコレ!!」
なにやら叫んでいるが……どう見てもリヤカーは横倒しになっただけで、
壊れた箇所など見当たらないんだが。
そもそも寒くないのかあいつは。
シード『騒がしいですね……黙らせますか?』
中井出「ナイス提案だがちょっと待て。あの女って……」
どっかで見たような───って思い出した!
あれエトノワールからはるばるうまティー飲みに来た姫さんじゃん!!
まだ居たんだなぁ……と、それよりもどうしてくれようか。
姫 「わ、私にどうしろというのです……」
アフロ「ヘッヘヘ……俺ァこう見えて運送屋をしてるのさ!
だからなにか運ばせろ!銀の大車輪の名の下に!!」
姫 「運んでもらいたものなどありません」
アフロ「じゃあお前自身でいいから運ばせろテメェエエ!!
そうじゃなきゃ気が済まねぇんだよォオオ!!
ホレ!一目瞭然でリヤカーが無事なのは確認済みなんだよ!
さっさと乗れ!ホレ!《ガタッ》……さあ!全てを僕に任せて!」
……なんだ?
今あいつ、リヤカーに触った途端にサワヤカにならなかったか?
アフロ「素晴らしきかな運送業!僕は運送をするために生まれてきたに違いない!
だからさあ!僕になにかを運ばせてください!」
姫 「え、あ、あの……?え……?」
姫さん混乱中。
いやぁ……車に乗ると人格が変わるヤツって居るらしいけど、
まさかリヤカーを持つと人格が変わるとは……。
っと、こうしちゃおれん。
中井出「ナギー、シード、いくぞ」
シード『はい!……何処にですか?』
中井出「返事がいいのはいいんだけどなぁ……まずは確認してからの方がいいぞ?」
シード『父上のすることに間違いなどありません!
あったとしても間違いだなんて認めません!
僕にとっての父上はそういう方です!』
中井出「うわー」
どういう信頼のされ方なんだろうかこれは。
しかしまあ面白いのでそのままでGOだ。
俺はガタッと崩れた窓際に足をかけ、バッと飛び出した。
ヒョー……ゾサァッ!!
アフロ「!?なにやつ!?」
中井出「なにやつじゃねぇよ!アフロなのに武士っぽいと奇妙だぞコノヤロー!!」
アフロ「ご安心を。僕は忍者の里の者と魔法都市の者のハーフです。
ですから砕けた口調も丁寧な口調も完備です」
中井出「なにその無駄に曲った設定!忍者と魔法使いを親に持つのにアフロってなに!?」
いやむしろそのヘンテコ加減がステキだ。
まあそれは置いといて。
中井出「アフロよ!貴様に運送を頼みたい!」
アフロ「あ、失礼。
僕にはボナパルド=太陽という名前があるのでそう呼んでいただけると」
中井出「太陽!?すげぇ名前!」
アフロ「みんなには親しみを込めてボナパルド太陽と呼ばれています。
だからどうぞ気軽にボナパルドさんと呼んでください」
中井出「いや………どっからどう見てもモサモサマッチョって名前が似合ってるだろ……」
アフロ「ダメです、どうしてもというならアフロで構いません」
モサモサマッチョはダメでアフロはいいのか……。
中井出「で、アフロはそんな格好で寒くないのか?」
アフロ「滅茶苦茶寒いです……」
中井出「………」
やせ我慢だったらしい。
一瞬にしてサワヤカさが逃げ出した。
アフロ「それで、運送してもらいたいものとはなんですか?
初回なので無料でお届けしますよ?」
中井出「北だ、とにかく北。あ〜〜〜っと…………この北の砂漠近くの……そうだな、
このウェランシェールの村に“俺達”を届けてくれ」
アフロ「達とは、この女性も含まれていますか?」
姫 「え?いえ私は」
中井出「当然だ!!」
姫 「ええぇえええええっ!!?───ハッ!?そ、その顔は───まさか!」
中井出「今更気づいたか馬鹿めが……!
貴様にはエトノワール攻略のための人質になってもらうぜグオッフォフォ……!」
姫 「まっ……魔王博光!き、聞いたでしょう運送屋さん!この人は私を人質に───」
アフロ「僕は客を差別などしません!何故ならそれが運送屋というものだからです!!」
姫 「えぇえええーーーーーっ!!?」
中井出「そんなわけだからさあ乗ろう今乗ろう!!
貴様は大事な人質だから丁重には扱わん!!」
姫 「ええっ!?普通は丁重に扱うものなのでは───!?」
中井出「出会った相手が悪かったな……生憎この博光は普通じゃあねぇのよ」
ニヤリと笑んでそう言うと、後を追うようにナギーとシードが飛び降りてきた。
ナギー『ヒロミツ、話はついたのかの?』
中井出「おおついたぞナギー。紹介しよう、今から人質になる……名前なんだっけ?」
姫 「───!?ド、ドリアード様!?
な、なぜあなたのような方が魔王と《ゾブシャア!!》マアアァアアアアア!!」
中井出「質問しているのは私だァアアアア!!質問を質問で返すなァアア!!」
姫 「だだだだからといって……!姫である私に目潰しなど……!!」
中井出「姫だからなんだコノヤロー!!言っておくがこの博光!
相手が総理大臣だろうが女子供だろうが容赦しねぇ!!
相手が女だから殴らない!?殴っちゃいけない!?知ったことかそんなこと!!
誰だろうと相手を殴ると決めたらもう行動は終わってるんだよ!」
ナギー『そうなのじゃ!
ヒロミツはこうと決めたら相手が精霊でも主神でも容赦しないのじゃ!!』
シード『しゅ、主神……?主神とは……あのオーディンか?』
ナギー『そうなのじゃ!おぬしは知らんかもしれんが、
ヒロミツはオーディンと戦って勝ってみせたのじゃ!』
中井出「うむ!しかもしっかりとグングニルを盗んだ上でである!!」
シード『〜〜〜…………』
絶句。
開いた口が塞がらないとはこういうことを言うのか、
シードは口を開けたままカタカタと震えて俺を見上げていた。
シード『マ……マクスウェルの修行場で一応聞きはしましたが……
まさか事実だったなんて……!す、すごい!さすが父上だ!!』
姫 「そ、そんな……!主神殺しを……!?」
シードが目をキラキラ輝かせて尊敬の眼差しで俺を見上げ、
姫さんが目を絶望に染め上げ、畏怖の眼差しで俺を見上げていた。
ものの見事に正反対な反応である。
中井出「というわけでナギー、シード、ウェランシェールへ向かうぞ。
今度は地の戒めを解放するために」
シード『は、はい!何処までもついていきます!』
ナギー『ゴーなのじゃー!!』
姫 「ひ、ひぃっ!わわ私はっ……!!《ガシィ!》ひゃあ!?」
アフロ「おっと逃がしませんよ!
荷物を届けないとあっちゃ、銀の大車輪の名に傷がつきます!!
注文にはあなたも入っているのだから、逃がすわけにはいきませんねぇえ!!」
姫 「い、いやぁあああ!!助けてお父様ぁああっ!!」
逃げ出そうとした姫さんをアフロがガッシと捕らえ、無理矢理リヤカーに乗せる。
既に俺とナギーとシードもスタンバイOK状態であり、
なかなかに大きいリヤカーに乗った俺達をやがて、アフロが引き始めるのであった。
───……。
……。
で……それからどうなったかというと。
ゾガガガガガガガガガガガ!!!!
中井出「うおおおおおおお!!?は、速ェエエエエエーーーーーーッ!!!」
ナギー『ど、どういう速度なのじゃあああーーーーーっ!!』
シード『四人も乗せた状態でこんな速度を……!しかもこんなモノで……!!』
姫 「ひ、ひぃいい……!!」
アフロ「フフフ……忍の里で鍛えた足と、魔法で強化した速度、
さらには魔法で空気抵抗をゼロにしてしまえばこのくらいの速度など余裕です!」
テコーン、と歯を輝かせて言うアフロを前に、とりあえず前見ろ前と言っておく。
さて……そんなわけで物凄く早いアフロに誘われ、
俺達は一路ウェランシェールへと向かっていた。
流れる景色の速度に少々呆気にとられもしたし、
疲れを知らないこのアフロにも結構驚いた。
そして気づけば既に距離の半分以上を詰めており───やがて。
ザシャア!!
アフロ「ヘイお待ち!!」
……とうとう、と言うべきだろうか……ウェランシェールへ辿り着いていた。
アフロ「ご利用ありがとうございました。あ、もし良かったらまたご利用ください。
これを吹けばいつでもかけつけますよ」
コシャンッ♪《忍の波笛をもらった!》
中井出「……しのびのはてき?」
アフロ「忍にしか聞こえない音波を出す笛です。
これを聞きつければすぐさま駆けつけますよ」
中井出「そ、そうか」
アフロ「ではまた。銀の大車輪の下に《テコーン♪》」
胸に右手を添え、サワヤカに歯を輝かせたアフロは、
踵を返すとガラゴロガラゴロとリヤカーを引いてさっさと行ってしまった。
シード『…………無駄にサワヤカな男でしたね……』
中井出「まったくだ……暑苦しくはないんだけどなぁ……」
ナギー『そんなことよりヒロミツ、ここにはなにがあるのじゃ?』
俺とシードがボーゼンと、ゴシャーと物凄い速さで去ってゆくアフロを見送る中、
ナギーが我が服をクイクイと引っ張って言う。
ここ?この村自体になにがあるかって言えば……特になにも無い気がするが。
でもこれは好機か?
せっかくだからこういう場所で、変装したら入れるかどうかを調べてみるのも悪くない。
中井出「よしシード!ナギー!これより俺は自らの戒めを解くためにあることを試す!
よって何ひとつの手出しは無用!いいな!?」
ナギー『サーイェッサー!!』
シード『サ、サーイェッサー!!』
中井出「うむいい返事だ!ではヒヨッ子どもよ!
この博光の生き様をとくと見ているがいい!!《ズズズ……!!》」
再びブリュンヒルデに意志を通し、装備を変貌させてゆく。
そして、成り果てる姿は当然……!!
ウサギ獣人『ウサギ獣人出現……!!』
である。
さあ行こう……!村人達がこのウサギ獣人の来訪を待っている……!
……───とまあこんな感じで。
俺は村の中で偶然晦一等兵を発見し、
何がどう曲ったのか猛者どもに襲われることとなり、
粉塵爆破や疾風剣や烈風脚などの新技を散々と試したのちに───
ウサギ獣人『………《ゴォオオオ……!!》』
───屍の上に君臨していた。
といってもその屍もすぐさま塵と化したわけだが。
ウサギ獣人『しかし古文書ウサねぇ……?胡散臭さ炸裂な気もするウサ』
強奪……もとい、手に入れた月の欠片の古文書をシゲシゲと見つめる。
なんでも晦一等兵が全てを集めた時、彼の力が復活するとかしないとか。
それは望むところだが、タダでくれてやるわけにはいかねぇウサ。
ウサギ獣人のまま世界を征服するのも、意味もなくなんだか面白そうではある。
……ちなみに。
姫さんはナギーとシードに捕らえてもらってあるため、
どう足掻こうが逃げられやしないだろう。
などと思っていた時だった!!
ウサギ獣人『《バシュウ!》ウサッ!?』
突如、我が手から古文書が消えたのだ!!
ウサギ獣人『こ、これは一体───ハッ!?ウサ!』
なにかが羽ばたく音を耳にし、バッと空を見上げる───と、
なんと空中をはばたくディルゼイルが!しかもその足にはたった今消えた古文書が……!!
ウサギ獣人『な、なにをするウサ!?返すウサ!!』
ディル 『お断りだな。王がこれを欲している。それを叶えてやるのが臣下の勤めだ』
ウサギ獣人『ウサッ!?』
こ、これは驚いた……!
解る……ウサギ獣人にも理解出来るぞディルゼイルの言葉がドシュゥウウウウン……!!
ウサギ獣人『───……ハッ!?』
しまった!なんだか感動しているうちにディルゼイルが米粒ほどに小さく!!
つーか速ッ!!飛ぶの速ッ!!
くそう今すぐ追いかけて───って無理だ!
ナギーに、もう置いていかないと約束してあるのだ!
ぬおお、これでは追うことなど……。
ウサギ獣人『………まあいいウサ』
奪われてしまったものはしょうがないだろう。
今はきっと力を取り戻すだろう晦一等兵とのバトルを心待ちにでもしていてみよう。
……滅ッ茶苦茶強いんだろうなぁ……。
だが大丈夫!当たって砕けてみせよう!
……散々振り回したあとでなら、
たとえ勝てなくても心はずっと充実しているに違いないさ。
そんなわけで今は、旅の続きをするとしようかなぁ。
……あ、とりあえず村人たちはウサギ獣人を怖がったりはしないようだ。
今はそれが解っただけでも十分ってことにしとこう……一応。
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