───時空放浪モミ列伝『第八章◆クズどもの挽歌』───
【ケース476:弦月彰利/スコティ=スモールスの逆襲】
ゴゾォオオ……!!
彰利 「WRYEEEEEE…………」
やあ僕彰利。
今日は朧月家の居間からお伝えするよ?
彰利 「……なんつぅか、さすが悠介の家って感じやね」
藍田 「日本家屋だなぁ。武家屋敷ってんだっけ?ちと違うか」
丘野 「こんな場所に住んでみたいでござるなぁ」
中井出「《もぐもぐもぐもぐ》いや美味いなコレヤバイよコレ《もぐもぐもぐもぐ》」
悠介 「人ン家に来て少しは遠慮するって気持ちはないのかお前は!!」
中井出「そんな常識は知らん。俺ゃ団子があったから食った。それだけだ」
彰利 「オ、美味そうじゃんアタイにもちょーだい?」
中井出「あ、抹茶団子は俺のだぞ」
彰利 「他人チの団子を我が物扱いされてもね……。
《モグモグ》オッ……こりゃうめぇ〜〜〜」
藍田 「なにぃ、俺にもよこせ」
丘野 「我も我も」
悠介 「………」
居間に置いてあった団子をモッチャモッチャと食らってゆきます。
そげな僕らを見て悠介が遠い目をしてたけど、まあいつものことですな。
うん、美味いよコレ、ヤバイよコレェエ。
奥方 「う、んん……」
総員 『ぬぅっ!?』
しかし平和な時間は長くは続かなかった!
つーか悠介の様子を観察しに来たってのに、なんで俺達居間で団子食ってンデショ!!
ともあれ僕らは目を覚まし、
ハッと起き上がった奥方を前に動揺を隠せないままに息を飲んだ!
奥方 「なっ……なにをしてるの!?ふほっ、不法侵入よこれは!!」
彰利 「エ、やッ……!エ、エート……デスネェィ……!!」
中井出「《モッチャモッチャモッチャモッチャ……》……美味いな……」
藍田 「《モッチャモッチャ……》うん……美味いな……」
丘野 「《モッチャモッチャモッチャ……》美味い……」
彰利 「アレェ!?動揺してんの俺だけ!?
つーかキミたちなに無視して団子食ってんの!?」
奥方 「ちょっ……あんたたち!?それは来客用の団子で───」
中井出「おいおい人妻てめぇ、茶がねぇぞ茶が」
藍田 「接待ってもんを知らねぇのかコノヤロー」
丘野 「《モッチャモッチャ……》お土産用に団子を用意してほしいでござるな」
奥方 「誰もあんたらが客だなんて言ってないでしょ!!」
彰利 「………」
悠介 「………」
なんというか俺と悠介は、さらなる原中の深さを知った気がした。
そうだよなー、俺と悠介がいろいろやってる間、
こいつらって同じ仕事場でずっと働いてたんだもんなー……。
そりゃ離れてた俺達よりもよっぽど染まってるだろうさ……。
でもまずなによりも、同じ時間だけ離れてたであろう中井出があんな調子なのが驚きだ。
主婦に対して“人妻てめぇ”って呼びつけたヤツ、初めて見た。
でもちょっと解ったことがある。
悠介のママさんはどうやら姐御肌っぽい人らしい。
さっきからちょっと口調がキツいところを感じていたんだけど、
キミへの疑惑が確信へと変わった。
奥方 「あんたらどういうつもり……!?
これが犯罪だって解っててやってるんだったら大した度胸だわ……!!」
中井出「茶がねぇぞ」
奥方 「うるっさいわね黙ってなさい!!」
中井出「ヒィイごめんなさい!!」
所詮中井出だった。
でも懲りずに団子を頬張る姿にはさすがの言葉を送っておきましょう。
緊迫感まるで無し。
奥方 「答えなさい!返答によっては実力行使で叩き出すわよ……!!」
彰利 「やってみろ、クローン風情が」
奥方 「クローン!?」
悠介 「訳の解らんことはいいから……」
丘野 「いやしかし美味いでござるな……」
藍田 「提督、抹茶俺にもくれよ。食ってみたい」
中井出「………」
藍田 「───、提督?」
彰利 「オウ?」
ふと、藍田くんの口調に戸惑いを感じたので振り向いてみる。
するとピタリと動かなくなったボクラの提督と、それを見る藍田くんと丘野くんの姿が。
彰利 「どぎゃんしたの?」
中井出「…………茶……」
奥方 「うるさいって言ってんでしょ!?」
中井出「…………《カタカタカタカタ……》」
悠介 「……?中井出?」
中井出「茶……《ガタタタタタタ……!!》」
藍田 「ウオッ!?提督の顔がみるみる紫色に!?」
悠介 「うわっ!こいつ団子喉に詰まらせてやがる!!」
丘野 「提督殿!?提督殿ーーーッ!!」
彰利 「こりゃやべぇ!えーとえーとオオ!丁度台所に熱湯が!!」
悠介 「彰利!早くしろ!」
彰利 「解っとらぁな!!つーかキミが創造すりゃいいじゃんなんだよもう!!」
悠介 「無駄に創造は使わないって決めたんだよ!そしてそれは提督の言葉でもある!
だから窒息死してもきっと本望さ」
彰利 「うわヒッデェエ!!《ゴポポポッ……》ほい出来たぜ!!オラ飲め中井出!!」
中井出「《ガバガバガバゲボシャア!!》〜〜〜〜ッ!!(声にならない声)」
藍田 「うあっちぃいっ!!?提督てめぇ!茶を吐き出すとは何事!!」
丘野 「どういうお茶でござる!?熱湯にもほどがあるでござるよ!!」
悠介 「少しは冷ますとか出来なかったのかよ!!」
彰利 「そげなことしてたら僕らの提督が死んでしまうではないか!!」
超熱湯のお茶をガバガバと口に流し込んだが、
声にならない声とともに吐き出す僕らの提督。
しかも予想通り火傷したらしく、息苦しさも相まってのた打ち回ってる。
実に無様だった。
彰利 「ほいじゃあとにかく吐き出させりゃいいわけだね?オォラァッ!!」
中井出「《ドボォッ!!》〜〜〜っ!!」
中井出のボディにナックル進呈!!
しかし体を折るばかりで吐き出そうとはしない!!
彰利 「……?ヤロッ!吐けこの野郎!!オラァ!オラァアア!!」
中井出「《ドボォッ!》ッ!《ドボッ!ドスボス!!》ッ!ッ!!」
悠介 「馬鹿やめろっ!吐き出す前に死ぬだろそれ!!」
丘野 「しからば拙者が!しぇぇえええーーーーーーっ!!!」
中井出「《ザゴシャアッ!!》───……《どしゃあああ……》」
彰利 「ヒィイッ!!中井出が一撃で沈んだぁああーーーーっ!!」
悠介 「中井出!?中井出ぇええーーーーーーっ!!!」
丘野 「小阪流秘術巨岩木ノ葉落とし───序章……!!」
藍田 「喉詰まってる相手に地獄突きはマズイだろ丘野ォオオーーーーッ!!!」
彰利 「チィ仕方無ェ!!《ドシュンッ!!》
こうなりゃ黒を口に侵入させて取り出してくれる!
ホォオオレお口開けてェエエエ……!!《ドゥジュルモジュル……!!》』
中井出「───!?───!!───!!」
オーダーを解放し、黒化させた腕を中井出の口にゾリュリュと流し込む───つもりが、
なんと中井出の野郎、口を閉じたまま開こうとせん!!
彰利 『しょ、正気かマンモスマ〜〜〜ン!!
団子を取らねば死んでしまうのだぞ〜〜〜っ!!』
藍田 「や、普通に黒流し込まれるのが嫌なだけじゃねぇの?俺だって嫌だぞそれ。
黒にはなってるけど、腕を口の中に突っ込まれるのと同じだろ?」
彰利 『じゃあ鼻から《ゾリュゾリュ》』
藍田 「俺の話聞いてた!?」
彰利 『え?口じゃなかったらいいって意味じゃなかったの?《ヴジュルモジュル》』
藍田 「あ、あー……いやなんかもういいやどうせ中井出だし」
丘野 「まあ中井出だしなぁ……」
悠介 「長引かせてもためにならんし、もういっそやっちまえ」
彰利 「………」
みんなクズだった。
鼻から黒流し込んどいてなんだけど、すげぇ罪悪感に包まれてますよ俺……。
でもやることはやりますよ?
つーわけで鼻から喉に侵入し、
食道に詰まっている団子をゴジュリゴジュリと磨り潰し、胃袋へと流し込んで一件落着!!
……ついでになにやら体調が悪いようなので、中からジワジワと回復させてゆきましょう。
彰利 『癒やせ!“黒癒霧()”!!』
内臓内で鎌を解放!
解放とともに霧になる癒しの鎌を中井出の穴という穴を通して彼を回復させてゆく!!
するとファアアアゴォオオオオオッ!!!
悠介 「ヒギャアアアーーーーーーッ!!!」
藍田 「ヒ、ヒィ!!提督の穴という穴から黒い光がぁあーーーーっ!!」
丘野 「もしや忍術!?それは忍術でござるか提督!!」
中井出「癒しという名の神秘さ……」
総員 『提督……』
この場に平和が訪れた。
悠介 「あんな復活しといて少しも動揺しないのってどうなんだろうな」
彰利 『ノリノリで提督……とか言ってくせになに言ってんの』
中井出「たとえ自分が異常事態にあってもやるべきことはやるのが我ら猛者!」
藍田 「やり始めたなら最後まで!毒を食ったら皿まで食らえ!」
丘野 「故に人は我らをこう呼ぶ!!」
総員 『原沢南中学校迷惑部!!《ジャーーーン》』
悠介 「………」
彰利 『………』
中井出「ノリ悪いよキミたち……」
藍田 「俺達とはノれないってか……」
丘野 「とんだルルーシュ者が居たもんでござるな……」
彰利 『ルルーシュ者!?……ああ、反逆者ね……。いやそーじゃなくてね?
アタイも少しは常識者になったっつーか……ほら、ね?
奥方さんもポカンとしてるし』
中井出「え?この人妻がどうしたって?」
悠介 「人妻って呼び方やめろ!!」
中井出「名前も知らんのにどーしろっていうんだ貴様!!
知ってるならさっさと教えろ晦一等兵!!」
彰利 『そーだそだージャイアンの言うとおりだ!!』
悠介 「どこらへんが常識者になったんだテメェエエエエエ!!!」
どこらへんって……どこだろ。
まあとりあえずはオーダー解除して、と。
悠介 「コホン……あ、あー……とにかく、人妻って呼び方はどうかと思うから」
中井出「ぬう……人の呼び方など好きずきだと思うんだが」
悠介 「じゃあ俺は今日から貴様をエロマニアと」
中井出「卑怯だぞモミアゲてめぇ!!」
悠介 「まだ最後まで言ってないだろうがエロてめぇ!!」
彰利 「ホホホ、これこれ、こげなところで喧嘩なぞするもんじゃないよ……。
ほれ見てみなさい……奥方が驚いているじゃろう……?」
総員 『うるせぇぞ羅武てめぇ!!』
彰利 「オォケェ上等だかかってこいオラァ!!」
藍田 「あ、ちなみにホモって呼ばれるのと羅武って呼ばれるの、どっちがいい?」
彰利 「どっちもいやですよそんなん!!
大体貴様らには屈辱的呼び名が無いから平然としてられるんだ!
こんなボクラの気持ち、誰が知る!!」
藍田 「とりあえずモミアゲで怒るのは晦くらいだと思うが」
丘野 「同感でござるな」
彰利 「だとよ」
悠介 「天地空間全土でモミアゲモミアゲ言われてりゃ嫌気も差すわ!!」
べつにモミ言われるくらいいいでしょーに。
こっちなんてホモで羅武ですよ?
しかも羅武って呼ばれる時は大抵“てめぇ”が付属されてるし。
……でも中井出のエロマニアよりは絶対マシだと思うね、うん。
どう考えたって不名誉だし。
……ホモも考えモンだけど、マニアってわけじゃないから救いがあるほうさ。
うん、そうに違いねー、そういうことにしとこー。
ありがとう提督……俺、貴様のお蔭で人(人格)として奈落に落ちなくてよさそうだ……。
中井出「あれ?じゃあ天界でも冥界でも貴様のモミアゲは有名なのか?」
彰利 「オウヨ!俺が広めといた!!」
───その日わたしは親友のモミアゲにボコボコにされた。
───……。
……。
しくしくしくしくしくしく…………
赤の他人の家の居間に鬱陶しい泣き声が響き渡る。
いえあのまあその、自覚はあるほどに鬱陶しくてもオイラの泣き声なんだけどね?
彰利 「ちくしょ〜……」
悠介 「ちくしょうじゃないだろまったく……
お前は親友の在り方をなんだと思ってるんだよ」
中井出「おーい、“やまふじ”に出前取るけどなにがいい?」
悠介 「あ、俺和風出汁辛味ラーメン」
彰利 「アタイさっぱりレタス五目チャーハンとレバニラ炒め大盛り」
藍田 「俺ラーメンセット味濃い目の両方大盛り」
丘野 「かに玉ラーメンマーボ付き大盛り」
中井出「おいよー」
悠介 「はぁ……話戻すぞ?ってオィイイイイイ!!!
なに普通に我が物顔で出前取ろうとしてんだコラァアア!!」
中井出「なんだよ注文変えか?男らしくないぞ晦一等兵。
注文で迷うヤツは脳が衰えてる証拠だって言うぞ?
そんなんで創造者名乗ってていいのか?」
悠介 「……なんで俺が逆に説教されてんだ?」
彰利 「そりゃお前、注文変えはよくねぇよ。男らしくねぇ」
悠介 「そういう意味じゃなくてだな……!」
なんのこっちゃね。
しかし、なんだネ。
今はそれよりもなんとかせねばならん問題は確かにあるね。
奥方 「………」
総員 『………』
居間のテーブルを挟んで向かい側の奥方とか、いろいろと。
ウアー、思いっきり睨んどるよー。
奥方 「……それで」
中井出「あっぷっぷ!《グシャア!!》」
奥方 「ぷぐふっ!?ぶっ……あはははははは!!」
中井出「……なっ?」
なんと……奥方さんはにらめっこをしたかったのか。
あれほどしかめっつらだった顔が、今ではステキな笑顔さ。
すげぇぜさすが僕らの提督……!奥方の燻るハートを理解済みだったとは……!
奥方 「あははは……ああもう気が抜けた……。で、なんなのアンタたち。
玄関壊したことは忘れてあげてもいいから目的言いなさい。
……特にそっちの、晦って呼ばれてたアンタ」
中井出「え?俺?」
奥方 「違うでしょ!!……なに?アンタ晦なの?」
中井出「いや。俺は南葉高校が誇る期待の超新星、ケンドー部の田中だ!!」
彰利 「ただの馬鹿です、気にしないでください」
中井出「そう、我らのことは気にしないでください。晦はこっちです」
藍田 「え?俺?」
悠介 「キリが無いからやめてくれ……!頼むから……!」
彰利 「オウコラテメェ、
頼むなら誠意ってモン見せろやコラオゥ?《バゴシャア!》ホシモス!
オォオオオ……!お、押忍……!大変な誠意をありがとう……!」
悠介 「はぁ……。あ、えー……お、俺が晦、悠介、です……」
彰利 (ブフゥッ!ですだってよ……何処のボッチャン?このモミアゲ)
藍田 (オイオイよせよ、きっとマミーと会えて感激してるんだよ)
丘野 (娘が気絶してるからって好き勝手やる気だぜきっと)
中井出(……三人とも、いい加減にしろ。当初の目的を忘れたか?)
彰利 (ヌッ!?)
藍田 (て、提督!?)
丘野 (貴様……一人だけ真面目ぶる気か!?)
中井出(考えても見ろ……晦はこの瞬間をきっと心の中で待っていた。
逝屠ってヤローに殺されちまった親と今出会えて嬉しくねぇわけねぇだろうが)
彰利 (グ、グゥウ……)
藍田 (いや、でも提督だってさっき)
中井出(……俺のことはいーから。ほら、二人きりにさせてやれ)
丘野 (……チェッ、なんだよ一人だけ急にいい子ぶりやがって……)
埒もなし。
確かに積もる話もあるだろう。
いや、多分正体は明かさないだろうけどね。
でも俺達にはその姿は見せたくないハズだ。
悔しいけど中井出の言う通りだね、今は二人きりにさせてやろう。
そうやって小さく溜め息を吐きながら、
それでも小さく笑みを浮かべたままに俺達はその場をあとにした。
奥方さんの戸惑う顔と、悠介の何処か感謝したような笑みを横目に。
───……。
……。
で。
中井出「ククク、晦め……!愚かにもこの博光に感謝しておったわ……!
我らの当初の目的が幼児晦の観察だということも忘れて……!!」
彰利 「うーあー……」
やっぱりクズだった。
藍田 「んお?なに“ちょっとでも見直した俺が馬鹿だった”って顔してんだ?」
丘野 「さっさと朧月クン観察にいこーぜ?」
彰利 「いやあの……キミたちさっきまでイイ子ぶりやがってとか……」
丘野 「その場のノリだ!他意は無い!!」
藍田 「当然じゃないか。俺ゃ“当初の目的を忘れたか?”って時点で理解したぜ?」
丘野 「俺も」
彰利 「ウ、ウウーーーーッ!!」
結局みんなクズだった。
そして早くも気分切り替えて和哉クンを観察しに行こうとしてる僕もクズさ。
僕はそれを今は誇りに思っておきます。
だって面白いもの。
彰利 「つーかみさおさんとナギ子置いてきちまったけどいいんかね」
中井出「たはは……ナギーにはあとでいろいろ言われそうだな……」
藍田 「ウワー、娘を溺愛する親みてーな顔」
丘野 「ヌワヌワ、こりゃあ紀裡ちゃんに告げ口する日が楽しみだぜ〜〜っ!!」
彰利 「ブホッシュ、急に連れてって“アナタの妹YO!”とか言ってみるとか?」
中井出「おお、そりゃ面白そうだな」
藍田 「提督……紀裡ちゃんグレるからヤメとけ……」
丘野 「誰の娘ってことにする気だよ」
中井出「え?俺と麻衣香」
藍田 「髪の色髪の色っ、日本人の娘で緑髪はねーだろっ」
中井出「地界人には未だ隠された謎があったのだ。
それがたまたまナギーに齎されたっ………………!!」
丘野 「提督……紀裡ちゃんグレるからヤメとけ……」
中井出「あ、あれ?ダメかな」
ダメでしょそりゃ。
なんて話をしつつもゾルゾルと移動を続ける僕ら。
子悠介が何処に居るのかなんぞ解らんが、かたっぱしから調べてりゃ見つかりもしませう。
中井出「実はナギーは捨て子だったんだ」
藍田 「誰の?」
中井出「俺と麻衣香の」
藍田 「へビーだなオイ!!」
中井出「で、ある日孤児院に拾われ育ったナギーは、
今まで孤児院の子だと思っていた自分が捨て子だと知る!
するとどうだろう!ショックのあまり眩しいくらいの黒髪が緑髪に!!」
藍田 「ないないないそれぜってぇええない!!黒髪が緑に変わるかアホォ!!」
中井出「アホとな!?」
丘野 「髪が緑に変わるくらいのショックってどれほどのもんだよ!!」
中井出「だってさ……白髪にだけなるのってずるいと思わない?」
彰利 「や……べつに思わんけど」
でも言われてもりゃショック受けてなる髪の色って白だよね。
なんでデショ。
そういう風に考え始めたら、なんつーか俺の心にも疑問がフツフツと……!
これが───これが中井出マジック!!
……ドナルドマジックの足元にも及ばなさそうな名前だ。
中井出「しっかし、実際問題どうしたもんかなってのはあるよな。
えーと……?ナギーとシードは俺が引き取るにしても、
紀裡と一緒の家に住ませていいものか……」
彰利 「チャイルドエデンに預けちゃいかが?」
中井出「クズがぁあーーーーーーっ!!!」
彰利 「ヒィイごめんなさい!───つーかなんで俺怒られてんの!?」
中井出「愚かなりクラウザー……!
チャイルドエデンは捨てられた子が集っちまった楽園だろうが……!!
そこにナギーとシードを預ける……!?馬鹿も休み休みお言い!!
宅のカワイイナギーとシードはねぇ!
す、すっ……捨て子になんかしないんだからねっ!?《ポッ》」
彰利 「なんで最後だけツンデレ怒りなんだよ!頬染めんな気持ち悪ぃ!!
……大体ね、捨て子の園ってのは言い方悪いぜよ?
今キミそこに紀裡ッコ預けとるでしょうに」
中井出「あの……捨て子の園なんて言ってないんですが……。だがな、考えてもみよ。
そこに預けられたナギーとシードがもし子供達との会話中、
ここは捨てられた子しか来ないんだよ?キミも捨てられたんだー。
とか言われてみろ!その瞬間の二人の心境!表情を思うだけで俺は!俺はァア!」
ワーイ、親ばかだ、親ばかがおるよー。
彰利 「とりあえず落ち着きめされい馬鹿」
中井出「わぁ、すっげぇストレート。でも落ち着くよ僕」
彰利 「ナギ子と種小僧は素直に紀裡ッコに話したほうがよいやね。
とある事情で家族が増えることになったー、と。
そうすりゃおめぇ、捨て子を見捨てて置けなかったパパとして、
紀裡ッコから送られる尊敬の眼差しも独り占めだぜブッシャシャシャ」
中井出「僕、そういう子供の気持ちを利用した戦略っていけないことだと思うな」
藍田 「お前最低な」
丘野 「カスが」
彰利 「ひでっ!状況が状況なら平気でやるくせになんだよぅみんなして!!」
中井出「娘の前では男らしいパパで居たいじゃないか……」
藍田 「うわすっげぇ親馬鹿顔!タルみきってタコみてぇだ!
鏡!鏡ねぇか!?今のこのタコの顔本人に見せてやりてぇ!」
中井出「え?いやいいよそんなの。つーか今さりげなくタコとか言わなかった?ねぇ」
言ってたけど今更気にすることでもなかったようで、
中井出は特に気にすることもなく子悠介探しを再開した。
……僕時々思うんだけど、猛者どもって何処かのネジ外れてんじゃないでしょうかね。
いや俺もだけどさ。
彰利 「和哉っちー」
シャァ───トン。
考え事をしながらも小僧探しは続きます。
襖を開けては締め開けては締めを繰り返し、しかし案外見つかりません。
中井出「お?ここ見ろここ。つたない文字でなんか書いてあるプレートがかけてあるぞ?」
彰利 「オ?どらどら?……おお確かに。なんだろねこれ。えー……和?
和は解るんじゃけど次が……和哉でいいんかね。ええい構わん開けちまえ!」
シャアッ───すぱぁんっ!!
うだうだ悩むのなんてアタイらしくねィェーーーッ!!とばかりに襖を全開!!
すると───
おなご「───!?」
…………ちっこいおなごがおがったとしぇ。
あ、もしかしてアレか?悠介の姉っていう……
彰利 「俺はハーン!よろしく頼むぜ!!」
おなご「は、はーん……?」
彰利 「そうだ!よろしく頼むぜ!!」
藍田 「そして俺の名がハーン!よろしく頼むぜ!」
丘野 「で、俺がハーン!よろしく頼むぜ!!」
中井出「なにを隠そうこの俺こそがハーン!よろしく頼むぜ!!」
彰利 「なんだとてめぇ!俺がハーンだよ!」
藍田 「うるせぇてめぇは羅武だろうが羅武てめぇ!!ハーンは俺だっつの!」
丘野 「おいおいなに言ってんだ?俺こそがハーンだぜ?」
中井出「はっはっは、醜い争いはやめなさい。俺こそがハーンなのだから」
丘野 「なに言ってんだ俺こそがハーンだっての!俺はハーン!よろしく頼むぜ!」
彰利 「よろしくハーン!」
藍田 「てめぇの熱意には負けたぜハーン!」
中井出「よろしくな!ハーン!」
丘野 「あれぇ!?」
藍田 「というわけでいいかぁ小娘ぇ!
このお方がこれより真のハーンとなられるお方だ!」
彰利 「貴様が健やかに暮らせるのもハーンのお蔭!
ひいては同じ猛者たる我ら原中のお蔭なのだぁあああっ!!!」
おなご「…………《びくびく……!》」
総員 『………』
はずした……。
そりゃ急に入ってきて叫ばれまくりゃあ怯えるよね……。
彰利 「おいおいどうするよハーンこの野郎、状況悪化しちまったよ?」
藍田 「まいったぜハーンこの野郎……これからどうするよ」
中井出「ハーンこの野郎、貴様の意見を聞こう!」
丘野 「オーケー!とりあえずハーンこの野郎言うのやめない?」
総員 『それはダメ』
丘野 「ひでぇ!!」
彰利 「じゃあとりあえずこの小娘に
僕らは危険人物じゃないことを知らしめるって方向でOK?」
総員 『異議なし』
悲しみもなんのその。
やると決めたら立ち止まらない。
それが僕らの原ソウル。
そうして僕らはあらゆる手段を使って、この小娘を宥めることを誓ったのだった。
───……。
……。
そしてとっぷりと夜。
和魅 「きゃははははっ」
彰利 「おっほっほ……これこれ痛いよ……。
ナゴミちゃんはこんなに大きいのに、おじいちゃんッ子で恥ずかしいねぇ……」
僕はそれこそ今までの経験を生かし尽くし、ものの見事に和魅さんを虜にしておりました。
けどこれが困ったもので、
アタイが生やした白ヒゲをぐいぐい引っ張ってくるんですよ和魅さんたら。
ちなみに言うと藍田くんにも丘野くんにも中々懐いてくれました。
けど───
中井出「風が出てきたな……」
どうしてか中井出にはてんで懐きませんでした。
どうしてかねぇほんと……人外のお子めらには物凄く慕われとるのに。
中井出「僕……当初の目的を遂行してくるね……」
彰利 「え?あ、オイラも《がしぃっ!》オウ?」
和魅 「ダメ」
彰利 「あ、あれちょ……ナゴミさん?」
藍田 「フッ……提督のお供ならこの藍田に《グイッ!》あれ?」
和魅 「だめ」
藍田 「あ、あれちょ……ナゴミさん?」
丘野 「フフフ、ならば拙者が《ガガシィッ!!》グエッ!?」
彰利 「何処に行く気だテメェエエエ!!」
藍田 「俺達を置いて逃げようなんざ10秒早ェエエエエ!!」
丘野 「10秒!?たった10秒遅く産まれただけで逃げられんでござるのか!?
ていうか何ィイイ!?ここで拙者を捕まえる理由なんなのォオオ!?」
彰利 「行け中井出……!俺達の分までデビルカズヤを観察してくるんだ……!」
藍田 「こいつは俺に任せろ……!首をヘシ折ってでも生かせねぇ!!」
丘野 「ヒィ!“いかせねぇ”の部分に絶命的ななにかを感じたでござるよ!?
つーか首!首折ってる時点で死んでるってェエエ!!
自己犠牲的な言葉なのになにその対者抹殺宣言みたいな言葉!!」
中井出「彰利一等兵……!藍田二等兵……!」
中井出が振り返る……!
だが……ああ、だが中井出よ!今は立ち止まっている時じゃあ……ねぇぜ!!
彰利 「行けっ……行けぇえーーっ!!見てくるがいいさ本能を剥き出しにして!!」
藍田 「おさな子の生活を覗いて鼻血を撒き散らしてくるがいいさこのドエロス!!」
中井出「オィイイイイ!!!どうしてそこでエロスとかそんな言葉が出てくんのォオオ!?
関係ないよね!?相手子供でしかも男だよ!?
大体俺もうエロマニアじゃねぇって言ってるでしょ!?
そもそも以前の俺でもそんな一部の腐女子が喜ぶ展開なんてごめんだよ!!」
彰利 「お前なら出来るさ……俺は信じてるぜ?」
藍田 「貴様のエロスは性別をも越えるさ……」
中井出「違ェエエエって言ってんだろォオ!?お前らなにィイ!?
いい男のツラしといて頭ン中そんなんばっかか!!
頭の中で桜満開か!花見日和なのかコラァアア!!
もういいよそこまで言うんだったらとくと観察してきてやらぁ!!
貴様らはそこで慕われてるがいいさ心ゆくまで!!」
彰利 「だからさっさと行けって言ってんだよ提督てめぇ!!」
藍田 「あーそれとアレだ!観察日記忘れんじゃねぇぞ提督てめぇ!!」
中井出「知るかァそんなの!!
日記用ノートなんてそもそも持ってきてねぇだろうがァアア!!」
丘野 「おおそれなら睦月が持っていけと言ったのでここに」
中井出「え゙ぇええええええ!!?ちょっと何処まで用意周到なのキミの妻ァアア!!
それもう用意周到とかいう次元じゃないよ!予言の領域だよ!神々の神秘だよ!!
いいよもう!用意周到じゃなくて目立たないままのキミで居てよ!!
そんな日記マジでつけてたら俺ただの変態じゃあねぇかあああっ!!
え?“今更なに言ってんだ?”てめェエエエ!!今更もクソもあるかぁああ!!」
藍田 「変態でいいから行け提督てめぇ!!
俺達が何故ここでナゴミーニョを押さえてるのか解らねぇのか!!」
丘野 「早く行くでござる!!ここは拙者たちに任せて!!」
彰利 「俺達は……貴様にこそ行ってほしいんだ!!」
中井出「き、貴様ら……!!」
じぃん……!と感激に震える中井出のハート!
おお素晴らしきかな無意味な山場!!
中井出「ていうかあのー、それってただ俺に観察日記押し付けてるだけじゃ……」
彰利 「それもそうだけど今自由なのキミしかいないし」
藍田 「ああ。だから俺達が楽しそうに遊んでる隙に日記つけてきてくれ」
丘野 「頼むでござるよ」
中井出「言ってることは間違ってないのに今物凄く殺意が沸いてるのはどうしてかな……」
彰利 「憎しみが溢れてるのは兄さんが満たされて」
中井出「ねぇって言ってるでしょォオオ!!?
満たされてるのは憎しみだけだよ!心はてんで満たされてねぇよ!!」
彰利 「知ってるか?バードウォッチングって心が和むらしいぜ?」
中井出「ん、お……な、なんだよ突然」
彰利 「お前もさ、和哉ウォッチングでもしてりゃあ心が和んだりするんじゃねぇの?」
中井出「夜に少年ウォチングしてどう和めっつーんだよこのクズが!!」
ぬおお、それもそうだった。
中井出「でも目的忘れるのはいけないことだね。僕、行ってくるよ」
彰利 「お?お、おー」
藍田 「あー、それからアレだ。観察日記忘れんなよー」
中井出「だから夜に少年観察日記なんてつけてたらヤバイでしょォオオ!?
見つかったらアウトだよ!!即通報だよソレェエエエ!!」
丘野 「大丈夫だよ、サツ連中ならアレからこっち来ないし。だから観察し放題だぜ?」
中井出「確かに言ってることは正しいんだけどなんかヤなんだけど、その言い方」
それでも律儀に日記帳とシャーペンを受け取る彼はある意味勇者だと思いました。
彰利 「行け……きっと貴様なら出来る……」
中井出「いや……なにもするつもりないし……」
藍田 「頑張れよ……俺達には出来なかった夢を……俺達に見せてくれ……」
中井出「や、だから俺は」
丘野 「ガッカリ……させねぇでくれよ……?」
中井出「だから何ィイイ!?
外傷無しなのに今にも死にそうな顔して僕に何期待してんのォオ!?」
彰利 「俺達にはこのおなごの心を開くことしか出来なかった……!
だ、だが貴様ならばきっと……!!」
藍田 「エロマニア王国のオーサマとして認められていた貴様ならば……!!」
中井出「この上なく嫌な認められ方だなオイ!だが今の俺には怖いものなどあんまりない!
というわけで行ってくるね。あ、店屋物の丼洗っといたから外出しといて」
彰利 「あ、おーけー」
藍田 「やっぱ美味ぇよな、やまふじの料理」
丘野 「久々に食えて満足でござるよ」
そんなわけで僕らは軽口をたたきながら、それぞれが思う様に行動をし始めたのでした。
そして僕らはこの家に泊まる気満々なのですが、
はてさて……パパりんとママりんはどんな反応を見せるのか。
僕はそれが、今から楽しみでなりません。
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