───怒った彼らと怒られた彼女ら/弱体、好きですか?───
【ケース46:晦悠介(八宝再)/マサイ族の系譜】
さて───そんなこんなで精霊になって地界に戻ってきた俺の最初の仕事は───
悠介 『………』
氷付けになった提督と丘野の解凍だった。
悠介 『フェンリル……お前なぁ』
フェンリル『ああいや……あまりにガタガタと震えて鬱陶しかった故だ、許せ王』
すっかりオブジェとなってしまった提督と丘野。
彼らの内部に氷が一気に溶けるくらいの熱を創造。
すると一気にふたりの氷付けが溶け消え───
中井出&丘野『うぁっぢゃああああああーーーーーーーっ!!!!!』
……叫んだ。
どうやら熱の温度が高すぎたらしい。
中井出「ほあちゃちゃちゃちゃちゃうあちゃちゃちゃちゃ!!!!!!」
丘野 「ほあちゃおあちゃうわちゃちゃちゃあああーーーーーーーっ!!!!!」
ふたりは内部にこもる熱をどうすることも出来ず、
畳の上をゴンゴロゴンゴロと転がり回った。
……はっ、いやそうじゃないだろ。
悠介 『とりあえずまずは熱の創造を止めて───
あとは少々の冷たさを創造してイメージ終了』
それらが済んでみれば、
提督と丘野はホシュ〜〜……と湯気を放ちつつピクピクと痙攣していた。
悠介 『あー……すまん。まだ精霊になりたてで力が安定してなくてな……』
こうなるとやっぱり修行が必要だ。
このままじゃあゲーム製作に集中出来そうに無い。
悠介 『ノート、オリジン、ゲーム製作任せておいていいか?』
ノート 『修行か』
悠介 『や……そうだけどさ。あっさり見切られると悲しくなるぞ』
オリジン『お前は修行馬鹿だと聞いている。気にするな』
悠介 『馬鹿って……』
神様……俺は本当に彼らに好かれているんでしょうか……。
ノート 『修行をするなら弦月彰利を誘うといい。あいつも修行が必要な時だ』
悠介 『あれ───そうなのか?』
ノート 『誘ってみれば解る』
オリジン『こちらは私達に任せておくといい。
注意点があれば修行が終わった時に点検してくれればそれでいい』
悠介 『悪い、オリジン。それじゃあ任せた』
俺の言葉に精霊全てが頷いてみせた。
まあイドはやっぱりこれで思う存分デストラップを……って顔だけど。
……戻って来たら厳重に点検しよう。
そんなわけであとを精霊たちに任せると、すぐに弦月屋敷へと転移を実行した。
召喚獣を庭に放とうと思ったが、内包するものが多いほうが修行になるだろうと判断した。
朝食がまだだったらしいベヒーモス族が不満を漏らしたが、
フリスキーモンプチを見せたら瞬時に黙ったのは実話である。
【ケース47:弦月彰利/僕と彼女らの関係】
カチャ、カチャリ……
彰利 「えー、はい!それでは!
襲われることなく朝を迎えられたことを閻魔大王様に感謝しつつ……
いーたーだーきーます!!」
女衆 『いただきます』
手をズパァンと叩き合わせてから一斉に食事を始めた。
ちなみに僕は寝てません。
朝になるまで己を守るので精一杯でした。
寝たら絶対襲われてたと思うし。
そんなこんなで僕は夜通し己を守ってたわけです。
て言っても、暇すぎるから朝食の下ごしらえとかもしてたわけですが。
だから今日の朝食はとってもリッチです。
だってさ、朝になるまで長すぎたんだもの。
調理中なら襲えないだろうと踏んだ僕の判断は確かなもので、
実際ウロウロとおなごたちが近寄ってきたりもしたものの、
『これ!神聖な調理場にウロウロと侵入するんじゃあねぇ!』と追い返しましたし。
もちろんそのあとも懲りることなくウロウロと来ましたがね?
彰利 「はぁ……昨日たっぷり寝といて良かった……」
偶然に感謝。
運命に下克上。
今もまだ神界に居るであろう神様と、トマトの王様に感謝した。
下ごしらえした料理の大半がトマトを使ったものですからね。
裏の畑で出来たトマトじゃけえ……
これをもぎ取っては洗い、調理し、もぎ取っては洗い、調理し……
それを繰り返したお陰で乗り切れたと言っても過言じゃあねぇぜ?
ありがとうトマトの王様。
昨日悠介のところでこの名前を聞いてなかったら、僕はきっと襲われてました。
つーかなんで俺なんぞを好きになるかねぇ?
そこが一番解んねぇや。
こげな、かつては変態オカマホモコンと呼ばれてた俺なんぞを……
やっぱアレか?
『すげぇ趣味してんな……』ってことなのか?
とまあそげなことを思いつつ、味噌汁をズズっとすすった。
むう、いい味出てます。
麻衣香「へぇ〜……やっぱり弦月くんって料理上手なのね」
夏子 「この漬物、どんな風に作ってるの?」
彰利 「む?ああ、それはですな。
俺と悠介とで作った完全無欠米の糠穀で漬けとるんです。
無農薬は当然のこと、さらに豊かな台地と空気、水で作られた米の糠です。
野菜も新鮮素材ですし、漬けてから出すまでの時間も俺に任せりゃ朝飯前」
まあこれが朝飯なんだけどさ。
しかしやっぱ料理っていいねィェ〜。
自分が作ったもので誰かが喜んでくれるのって最高ですよ。
夜華 「───彰衛門。今日の予定はどうなっている?」
彰利 「む?いきなりどこぞの社長みたいな質問ですな。
どうもこうも、博光の野望オンラインに走るんでないのかい?」
夜華 「馬鹿な。鍛錬はどうする。
貴様は今まで、欠かすことなく鍛錬を積んできただろう」
彰利 「貴様って……まあいいでないの一日くらい。続きが気になってしゃあないんだわ」
夜華 「だめだ、そんなものをしている暇があったらだな、わたしと鍛錬を───」
春菜 「ちょっと待った。……どうしてそこで『わたしと』になるのかな」
夜華 「刀剣での修行はわたしが一番付き合いやすいからだ。
弓使いには関係の無い話だ。黙っててもらおうか」
春菜 「むっ……だったらアッくんが弓の練習すればいいわけだ。
アッくん、今日はわたしと弓の練習しよ。
悠介くんのレンジチェンジ、羨ましがってたでしょ。
わたしが一から教えてあげるからさ」
夜華 「なにを馬鹿な。今さら弓術を覚えてなにになる。
彰衛門は今まで通り、体術と剣術を高めていけばいい」
彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」
粉雪 「彰利、怒るところそこじゃないから」
そうですね。
でも実際このテの喧嘩は聞き飽きました。
なんだってこうみんな揃うと喧嘩ばっかになるかね。
ええまあ、皆さんかつての宣言通り『俺を愛してくれてますよ』?
でもさ、それってつまり、周りの相手に容赦は無しってことみたいでさ。
それがねぇ、いざなにかが怒ると手を取り合って強力するわけですよ。
ゼットとの闘いがいい例だと思う。
彰利 「ともかく、喧嘩はおよし。
でないとおいちゃん、やさしいだけじゃいられなくなるよ?」
夏子 「どうするの?」
彰利 「家出します」
嫁総員『ダメッ!!』
即答でした。
彰利 「あ、あのねぇ僕のキミたち?だったら喧嘩なんぞするなっつーの」
春菜 「?喧嘩なんかしてないけど」
夜華 「ああそうだぞ?なにを言っている」
彰利 「へ?じゃけんどキミたち、さっきバチバチと睨みあって───」
粉雪 「彰利にだけそう見えただけでしょ?普通に話してただけだったよ」
彰利 「なんと!?」
なんとまあ……マジすか?
したら……したら俺の心が荒んでいたとでも……いうのだろうか。
彰利 「だったらなおさら。
もっとフレンドリーにいきましょう。僕のために争わないで!!」
夜華 「だったらわたしと刀剣の鍛錬をしろ」
春菜 「わたしと弓の練習をすること」
粉雪 「今日は天気もいいし、久しぶりにデートしよっか」
真穂 「ヒロラインに行ってわたしと冒険しようよ」
仁美 「コウノトリさんに子供の配達を頼みにいこ?」
総員 『何処に!?』
仁美 「え?……そういえば何処だろ」
神様……僕はこの、かつての恩師の将来が本気で心配になりました。
将来っつーても、まあ教師だったわけですが。
などと思っていた時でした。
声 『レンタベイビーーーーッ!!!』
ドガァッシャアアアアアアアアッ!!!!!
彰利 「オワッ!?」
仁美 「わひゃああっ!!?わ、わたしの漬物ーーーっ!!!」
突如窓と障子が吹き飛び、
衝撃で食物などが吹き飛んだ───筈だったが、それがすぐに元に戻る。
何事?つーかこの異様なまでに強い精霊の気配ってばなに?
悠介 『我降臨セリ』
彰利 「って悠介?なんだ、───って悠介!?」
悠介 『同じことを二回言われる意味が解らんが』
彰利 「いや、だってお前……
今までこんなアグレッシヴな登場の仕方したことあったか?」
悠介 『あーやかましい。
朝っぱらから近寄りがたい空間作ってる親友にそんなこと言われたくない』
彰利 「グムッ……!!き、聞いておったのかね……!?」
悠介 『朝食終わるまで待ってようと思ったのにこれだ。
悪い彰利、メシは適当に済ませてすぐに準備してくれ』
彰利 「ほえ?準備?なんの?」
悠介 『決まってる。修行だ』
言うや否や、僕の意見も聞かずに悠介くんは僕の腕を引っ張りました。
ところがドッコイ、それを良しとしない僕のハニーたちがもう片方の腕を掴みます。
OH……朝っぱらから大岡越前。
夜華 「悠介殿、お待ちください。彰衛門は既にわたしと約束が───」
悠介 『却下だ』
夜華 「なっ───ま、待ってください!!今───、なんと───?」
悠介 『却下する。先約がどうとかはこの際どうだっていい。
重要かどうかも、そんなものは一切無視する。噛み砕いて言ってやろうか。
こいつは、これから、俺と、修行をする』
春菜 「ゆ、悠介くん?あのー……いつからそんな強引なコになっちゃったのかなー?」
悠介 『俺の中に違和感が発生してからだ。それを取り除くために修行が必要なんだ。
先輩、頼むからあまり長引かせないでくれ。
あまり問答させるならいろいろと保障できない』
春菜 「うわー……なんだか有り余った力をどうしていいか困ってる力の初心者みたい」
えーと、それってつまり暴走したら怖いってこと?
彰利 「み、みんな!僕のことはいい!だからその手を離すんだ!!」
夜華 「───断る。悠介殿、悠介殿は礼儀を重んじる御仁だ。
だからこそわたしは楓さまに次いであなたに尊敬の念を抱いていた。
だが───今の貴方はどこか危うい。そんな人に彰衛門は渡せない」
悠介 『……あのな、篠瀬。俺は違和感を取り除くための修行がしたいって言ってるんだ。
その修行に彰利を付き合わせたい。それだけだ』
夜華 「それは悠介殿の勝手な意見だ。そんなもの、わたしは承服できません」
彰利 「俺が許可するッッ!!」
夜華 「却下する」
彰利 「ひでぇ!!」
俺の存在って完全にモノ扱いですか!?
つーかなんで悠介ったらこんなにトゲトゲしてんの!?
それになんつーか……あれ?
今まではどんな状態でも感じられた、微弱ながらの死神の気配が一切無し……?
なんつーかもう、精霊の気配しかしないんですけど?
悠介 『はぁ……解ってないようだから言ってやる。お前らいい加減にしろ。
寄ってたかって彰利をモノみたいにあーだこーだ……。
お前らの意見こそお前らの勝手な意見だろ。それこそ承服できるもんじゃない。
空界以外では知人として過ごすって約束もあっという間に忘れて、
それで不満があれば彰利に当たるのか?お門違いもいいとこだ』
夜華 「なっ───!!」
春菜 「……悠介くん?言っていいことと悪いことが───」
悠介 『先に言っただろ。【解ってないようだから言ってやる】って。
ハッキリ言って今の篠瀬と先輩、見苦しいぞ。日余が可哀想だ』
粉雪 「つ、晦くん、わたしはべつに───」
春菜 「ほ、ほらっ!粉雪だってこう言ってるよ!?どこが見苦しいって───」
悠介 『約束守れないところが』
春菜 「〜〜〜っ……!!」
あらら……図星突かれて真っ赤になってます、春菜ったら。
でもまぁ、夜華さんと春菜以外はなんだかやれやれって顔ですよ?
そして俺ももう気づいてます。
春菜と夜華さんは元から少し勝気な部分がありました。
自分の思い通りにいかないと不機嫌になることもしばしば。
そしてそれは、ここに来て『大前提』っていう約束を無視することにまで発展しました。
『俺を愛す』ってのは地界でやっていい行動じゃないんだ。
結婚する前に決めたように、空界でだけでしかそうあっちゃならない。
だってのにふたりともあっさりと約束を破った───。
夜華さんの言うとおり、礼儀を重んじる悠介だからこそそんな態度が許せなかったんだ。
ともなればあのアグレッシヴな行動も、今現在トゲトゲしてる悠介にも納得がいく。
夜華 「悠介殿、しかしそれとこれとは……」
悠介 『しーのーせ。お前の誇りは口だけのものじゃないだろ?』
夜華 「ぐっ……それはっ……」
春菜 「悠介くん?確かにわたしたちは約束をして結婚したよ?
でも好きな人が傍に居るのに、
誰かが介入するだけで一緒に居られなくなるなんて、そんなの───」
悠介 『先輩。それを理解した上で約束したんじゃなかったのか?』
春菜 「それは……でも───」
夜華 「しかし……」
彰利 「だぁーーっ!!ゴチャゴチャうるせぇーーーっ!!!」
夜華 「なっ……!?」
春菜 「ア、アッくん……!?」
もうてっぺんきた!
さっきから聞いてりゃうだうだうだうだ……!!
彰利 「キミたちいい加減にされませい!!
勝手に約束して勝手に破った挙句、今度は親友の侮辱かね!?
言っとくがね!悠介への侮辱は俺への侮辱以上に罪が重いぞ!?
っあー!まったくとことん苛立たせてくれる!!
キミらね!そうやって嘘ばっか重ねて、俺に何をくれるっつーの!?
裏切り!?絶望!?失望!?いったいどれかね!!」
夜華 「あ、彰衛門……ち、違うぞ?わたしは貴様を裏切ったりなど───」
彰利 「っ……お前は裏切ってるよ……。それも二度も……。
一度は粉雪との約束を破った時……。
そして二度目は……自分のことを棚に上げて、
悠介に向けて礼儀云々を謳った時だ!!」
夜華 「っ……」
春菜 「でもっ!だってやっぱりこんなのおかしいよ!
好きな人と一緒に居るのに、愛情表現が許されないなんて!!」
彰利 「それでもダメなの!!納得した上での結婚だったでしょ!?」
春菜 「だったら空界に行こうよ!!なんでずっと地界に居るの!?
空界でだったらどれだけくっついてても」
彰利 「ポセイドンウェーーーイ!!!!」
モゴッッシャアアアアアアアン!!!!
春菜 「はぴぅっ!?」
しゅごー!ごろごろずしゃー!!
喋り途中の彼女に不意打ちラリアット進呈。
彰利 「ええいおばかさん!!自分の欲望だけで物事を決めるんじゃあありません!!
春菜としたことがどうしたことです!!あなたはそげな人ではなかったでしょう!
思い出すんです!皆にやさしく、時に厳しく凛々しかったキミを!!」
春菜 「だって!!ただ一緒に寝たかっただけなのに、会いに行ったら台所は聖域だとか、
神聖な台所に顔を出すなとか言って遠ざけるんだもん!!
やましいこととかなんにもなかったんだよ!?
ただ一緒に眠りたかっただけなんだよ!?わたしだけが悪いの!?」
彰利 「ゲッ……!!」
馬鹿な……。
あれは得物を狙う猛獣の目じゃあなかったというのか……?
だって悲しそうな顔してたんですよ?
古来より、悲しそうな目ってのは世紀末覇者とかがするって相場が決まってるでしょ?
だったらそれ=格闘家の目ってことになって……え?違ったの?
春菜 「うぐっ……ひっく……わ、わたし……っ……
アッくんに怒られるほど……悪いことしたつもりなんてなかったもん……。
約束破るつもりなんてなくて……っ……ただ一緒に居たかっただけなのに……」
彰利 「ギャア泣いた!な、なにが悲しいの?なんで泣いてるの?
奥歯にもやしでも詰まったの?」
夜華 「…………悠介殿」
悠介 『うん?なんだ?』
夜華 「……一度、お手合わせ願いたい。わたしもどうかしていました。
これでは武士の名が泣きます。
母に『こうでありたい』と謳った頃の自分が泣きます。
わたしは───妻であり女である前に武士だと。
そう謳った頃の自分が泣いてしまいます。
……わたしは自分が許せない。だから願います」
悠介 『……いいのか?さっきも言った通り、
俺は違和感を取り除きたくて修行がしたかった。
違和感を取り除けてない今だと、確実に手加減ってものが出来ないが……』
夜華 「構いません。……いえ、むしろ望むところです」
悠介 『───……ふぅ。解った、やろうか』
彰利 「あ、あれ?ちょっ……悠介サン?」
悠介 『日余、桐生、桐生センセ、彰利と一緒に空界行ってくれ。
そっちなら存分にくっつくことが出来るだろ』
粉雪 「え?でも……」
悠介 『もちろん彰利が嫌がることはしないこと。
それが出来れば最初から俺からの文句なんて無いよ』
粉雪 「……ずるいなぁ。なんだか凄く負けた気分。
わたしなんて『彰利が望むなら』って半ば諦めてたのに。……親友っていいね」
悠介 『ばか、望んだことを一緒に貫ける勇気があれば、お前だってそうなれる。
一緒に暮らした時間は伊達なんかじゃないだろ?』
粉雪 「……ん。そうだね」
……あの。なんか当事者完全無視のままどんどんと話が進んでいってるんですけど……?
彰利 「アノー、僕の意見は……」
悠介 『ああ。空界で存分に問答してこい。
遠慮すんな、たまには夫としての凄みと度胸、見せてやれ』
彰利 「む───よし任せろ!!」
親友の叱咤激励を一心に受け、胸をドカァと叩いた。
そう……悠介まで巻き込んぢまったが、元々はこれは我が家族の問題だったんだ。
そして悠介が言った言葉の全ては、本来俺からみんなに言わなきゃいけなかったこと。
それを悠介に言わせちまったんだ。
これで丸く治めなけりゃ嘘ってもんだ。
彰利 「うーしゃあ!僕のハニーたち!空界へゴーだよ!!」
春菜 「っ〜〜……っく……わたし……わたしも……行っていいの……?」
彰利 「もちろんさぁ!!」
真穂 「わたしも?」
彰利 「もちろんさぁ!!」
仁美 「わたしも?」
彰利 「もちろんさぁ!!」
粉雪 「じゃあ彰利に言いたいことがある人が行くっていうことでいいかな」
彰利 「どんと来いじゃあ!!」
覚悟決めろ俺!!
もう迷わないって決めたろ!?こんなことで挫けてどうする!!
などと思っていた時、轟音とともに夜華さんが星になった。
悠介 『だっ───わわっ……!!ししし篠瀬ぇええええっ!!!?』
『違和感』とやらの正体がどうとかより、
僕はただ星になった夜華さんの無事を切に願った。
───……。
……。
悠介 『すまんっ!本当〜〜にすまんっ!!』
夜華 「あ、いえっ!謝るのはわたしのほうですっ!
彰衛門の言うとおりだ……自分のことを棚にあげ、悠介殿に礼儀がどうのと……。
数々の無礼、失礼いたしましたっ!!」
えーと、さて。
やっぱり時間がズレていたらしい空界から戻ってみれば、
さほど時間が経ったようには思えない地界の様子。
我ら家族はすっかり元の鞘に戻っておりましたが、こちらはなにやら謝りあっていました。
麻衣香「あれ?もういいの?」
彰利 「ウィ?ああ、ええ。
いろいろ話し合った結果、もう犯罪上等ってことになりました。
考えてみりゃあ婚姻届け申請してねぇから結婚も重婚もしてねぇんだよね、俺ら」
粉雪 「まあ、妥協策かな、って」
春菜 「……ごめんね粉雪、わがままばっかりで……」
粉雪 「いいよ。好きって感情はどうしようもないもん。
あ、ただし喧嘩はご法度ね。さっきは調和保つことに協力したけど、
春菜と夜華のさっきのってやっぱり喧嘩みたいに聞こえたから」
春菜 「うぐっ……ご、ごめん……」
粉雪 「謝るのは無しにしよ?わたしたち、家族でしょ?」
春菜 「粉雪……」
……ここに新たな家族の絆が生まれました。
謝るのは無しにする……ええ言葉や。
悠介 『すまん篠瀬っ!悪かった!』
夜華 「すみません悠介殿!!どうして詫びたらいいのかっ……!!」
なんつーか彼と彼女にも教えてあげたくなるくらいだった。
【ケース48:晦悠介/僕らの夢と希望よウェルカム(訳:オーマイゴッド)】
───さて、そんなこんなで───
夜華 「……なんというか。自分の知らないところで物事が解決していると、
家族としての間柄から度外されたような気分になる……」
彰利 「ま、まあまあ夜華っ!そんな日もあるって!!
それにもう遠慮することなんざねぇんじゃぜ!!地界でもどこでも、
好きなだけ抱きつこうがなにしようが勝手条約が出ました故!!」
悠介 『もちろん斬り放題条約も追加されている』
夜華 「そうなのかっ!?」
彰利 「なんでそっちに反応すんの!!」
のちの彰利はこう語る。
まるで『人を好きになる』という感情に疑問を持った一瞬だったンわァ、と。
彰利 「けど、いいですね?あまり俺が嫌がることはせんといてね?
僕、肉体関係で無理矢理とか嫌いですよ?」
春菜 「男の人の場合、普通逆なんじゃないかなぁ……」
と、既に立ち直っている先輩。
彰利 「だって俺普通じゃねぇし!!」
と、自信満々満面の笑みで答える彰利。
総員 『うんうん確かに』
そして、そんな言葉に思いっきり頷く猛者ども(女子)。
彰利 「………」
さらに、誰にも否定されなかったことが何気にショックだったらしい俺の親友。
悠介 『よかったな、普通じゃないって思われてたみたいじゃないか』
彰利 「ヘ、ヘヘ……サンキュー親友……」
言葉の割に悲しそうだった。
夜華 「それで───悠介殿。その修行というのはいつから始めるものなのですか?」
悠介 『今からだ。───っと、悪いけど
【一緒にやりたい】っていうのは却下させてもらう。
集中してやりたいから、俺と彰利のふたりだけでやらせてほしい』
春菜 「ダメなの?」
悠介 『ダメ』
言いつつ、小さく息を吐きながら彰利を招く。
するとわざわざ助走無しの空中ニ回転で飛びつつ、俺の隣へと降り立った。
……相変わらずなにがやりたいのかは謎である。
悠介 『じゃあ、みさお。先輩たちの転移、頼むな』
みさお「はい、父さま」
春菜 「や、ちょっと待って悠介く───」
ビジュウンッ───!!
あとのことをみさおに任せた俺は、そのあとの問答を予想して早々に転移を実行した。
しっかし……気を落ち着かせないといけないな。
少しカッカしすぎた。
【ケース49:弦月彰利/マッスルボマーってどういう意味だろうか】
───キュインッ、バジュンッ!!
悠介 『……ん、到着』
彰利 「は……はうあ!?何処ここ!!」
悠介 『何処って……どう見たって晦神社だろ』
彰利 「む?……あらホント」
よくよく見てみれば確かに晦神社の境内。
けどねぇ、悠介ったら最近好んでここに寄ろうとしなかったから、
ちと意外と言えば意外でした。
彰利 「で、なんでまた俺を修行に誘ったのかね?
ンなんモ、切羽詰まった状況なら自分だけで修行すればよかギン」
悠介 『んー……なんだろな。ノートがどうせならお前を誘えって言うからさ。
正直なところ、イマイチ俺も解ってないんだ』
彰利 「なんと!?」
修行に誘え、ってスッピーが!?
お、おのれスッピー!あれほど『秘密の話だ』と言ってたのに!
ここで修行の一環で死王の理力見せたら、
せっかくのドッキリビックリネタが台無しじゃないか!!
……や、そりゃまあ何処で修行しようが気配で推測されちまうんだろうけどさ。
彰利 「まあいいコテ。で、悠介?
キミのその姿と気配の説明、まずしてもらっていいかね?」
悠介 『うん?……あ、ああこれな。解った、修行する前にお茶でも飲みつつ話すか』
彰利 「お茶ってところが流石だねぇ」
悠介 『……なんで【俺=お茶】で納得されてるんだろうな、俺は』
悠介だし。
───……。
そげなわけで一休み。
朝食の場で食えるだけ腹に詰め込んだオイラの腹に、熱いお茶がありがたい。
彰利 「っは〜〜〜……染み渡るぅ〜〜〜っ……やっぱメシのあとはこれでしょう」
悠介 『そうだな、同意見だ』
俺と悠介は社務所の縁側に腰掛けてお茶を啜ってました。
いやはやなんとも……静かな世界と懐かしい景色が心に暖かい。
彰利 「で、もちろん運動のあとはビン牛乳。稲穂信さんも推奨です」
悠介 『なんだそりゃ……』
隣で苦笑する親友の姿も、ここで見るのは懐かしい。
悠介がこの神社を出てはや十数年───いろいろと最初とは違ったものごとが増えた。
生まれた時から人から離れてた月の家系。
育ちながら、家族にこそ深い絶望を与えられた俺達。
守りたいものが見つかるたびに、どんどんと人から離れていった。
……それでも後悔はなかった。
俺自身に物語があるとするなら、それは悠介と出会えた時にこそ始まった。
だったら俺の物語は親友とともにあるべきであり、
そして───その親友は、俺なんかの幸せを願ってくれた。
俺のためになんか泣いてくれる人なんて居ないこの世界で、
こいつだけが傷つきながらも俺とともにあってくれた。
……俺はそれが嬉しかった。
いつまでもこいつと馬鹿やってられたら最高だ、なんて……
それだけで幸せを感じられたくらいだった。
彰利 「あ〜……空が青い」
悠介 『ここも、みんなが寝てれば静かなもんだな』
彰利 「へ?ぷっ……あっははははははは!!」
悠介 『?な、なんだよいきなり』
彰利 「いやいやいや、ほんとごもっとも!
考えてみりゃあ悠介が母屋に住んでた頃なんて、
やかましくなかったことなんてなかったもんなぁこの神社」
悠介 『……なんか俺が騒がしくしてたみたいな言い方だな』
彰利 「物事には要因っつーか、揉め事になる原因ってのがあるもんデショ。
この場合、単に悠介がその原因だったってことで」
悠介 『原因って……あのなぁ』
モハァと溜め息を吐く姿は昔っから変わらない。
それでも現状はきっと変わっていってるんだと思う。
悠介が自然の笑みを浮かべる回数も大分増えて、
その代わりに俺と悠介だけのこういう時間ってものは無くなった。
俺は時々それを寂しく思うけど───でもまぁ、人の関係ってのはそんなものだろう。
悠介 『……やっぱりたまにはいいな、こんな時間も』
彰利 「フヒ?」
まるで思っていたことを見透かされたような言葉だった。
隣を見てみれば、どこか面白そうな顔で笑ってる親友が居て───
彰利 「あ……ははっ、ああ。そういやここに住んでる時も、
時々俺の家に泊まりに来たりしてたっけ」
悠介 『ああ。時々さ、解らなくなったんだ。俺が守りたいのはなんなんだろう、って。
若葉たちは……うん。あいつらが自殺しかけた時、守ってやろうって思った。
家族ってものをまだよく解って無い頃の時分だ。
泣きたくなるようなことがいっぱいあった』
彰利 「………」
相続権のことで、親戚連中に蹴られてたことか。
悠介 『けど……なんでだろうなぁ。
家族だった筈の若葉たちより、お前のほうが危なっかしく見えちまって。
同い年の子供なのに同い年って感じがしなくて、
そんなお前を俺は本当に危なっかしいって思えてた』
彰利 「なんスカそりゃ……」
悠介 『ようするにさ。一緒に居て互いが互いを守れたら最高だろうなって思えたんだよ。
重いことなんて知らない。こいつと馬鹿やって生きれたら最高だろうなって』
彰利 「む……」
なんだか恥ずかしいのぅ。
けど嫌じゃないのが微妙なココロ。
悠介 『……なぁ。お前は今───幸せか?』
彰利 「もちろん!!」
恐らく訊かれるだろうと踏んでいた言葉。
俺はそれに胸を張ってそう答えた。
そしたら……
悠介 『……うん。そっか、よかった』
彰利 「へ───」
隣の親友は、まるで自分の幸せが叶ったかのように嬉しそうに笑った。
嫌味なんかじゃない。
ただ本当に、心から、俺の幸せだけを喜んで笑ってくれたのだ。
彰利 「………」
なんていう勘違い。
俺からしてみれば、今の悠介こそ危うい。
でも……ああ、ダメだねぇ俺。
親友の心からの笑顔がとんでもなく嬉しいです。
誰に喜ばれなくても、親友に喜んでもらえるってのはなんつーか嬉しい。
特に、感情がまだ発達しきってない悠介だからこそ。
彰利 (昔はここで、『キャア!ダーリンたらアタイが愛しいのネ!?』とか言って、
抱きつきにいったところで
ショートレンジアッパー食らって飛んでたところだろうなぁ)
そう思えば俺も変わったんだと思う。
それでも『守りたいものを守る』なんていう無茶な願いを胸に秘めた親友には負ける。
それはきっと、『誰もが笑っていられる未来』を願うくらいに難しいものだ。
だって、守りたいもの同士が争ってしまったなら、きっと何も出来なくなる。
彰利 「……さて。昔語りはこのくらいにしようか。
悠介、そんで───その気配の正体ってなんなの?」
悠介 『っと、そうだった。えーとな、彰利。俺、精霊になっちまった』
彰利 「へー。って、なに言ってはりますの。精霊の要素なら前から持ってたじゃない」
悠介 『じゃなくて。他の要素全てが精霊の力に廻されたってことだ。
だから俺は神にも死神にも竜にも竜人にもなれなくなった。
代わりに精霊としての力が飛躍的に上がった』
彰利 「ほえっ……ほえぇええええええええっ!!!?」
馬鹿なッッ!!───よし驚愕終了。
彰利 「キミ……いったいなにやったん?」
悠介 『最大のポカをやらかしたんだよ。
まあいつかは能力の融合をしようとは思ってたんだけどさ。
空界にちと用事が出来てさ、レファルドに飛んだんだ。
そしたら【魔科学】っていうのが開発されててな』
彰利 「それってテイルズオブファンアジアみたいな?」
悠介 『ああ。お陰でマナは減るわ能力全て奪い取られるわ。ヒドイ目にあった』
彰利 「能力───奪い取られたぁっ!?」
悠介 『あー……心配するなって。もう奪い返したし、一応少しずつ安定はしてきてる。
ただ神魔竜の力や月操力、月の家系の能力や奇跡の魔法の力。
その全てを精霊の力に変換したもんだから、どうにも違和感が先に立つんだ』
彰利 「あ〜ぁ……」
つまり、そのための修行ってわけね。
彰利 「卍解とかはどうなったん?」
悠介 『ああ、無くなった。死神の力自体が消えちまったからな。
今は普通に【創造の精霊】として行使する形になってる』
彰利 「む……」
そういや悠介の卍解ってラインゲートだったっけ。
精霊の秘奥義みたいなもんらしいからね、ラインゲートって。
それならなんとか理解完了。
彰利 「よっしゃ!キミがこうも簡単に手のうちを教えてくれるんなら仕方ねぇ。
俺も手のうちを見せてやろうじゃあねぇの!!」
悠介 『手のうち?なんだよそれ』
彰利 「まぁよ、まぁああよ。見ててみぃ。───我唱えん」
言葉とともに集中開始。
衣服は瞬時に黒衣に変わり、俺の周りに闇の気配が渦巻いてゆく。
彰利 『我らを宿す黒き大地の上に。
さしずめ、鈍色の剣の如く。太陽の目から遠く。死の岸辺に誘う……』
ちなみに詠唱に意味はありません。
雰囲気ってものを察してやってください。
彰利 『滅びよ我とともに在れ───“魔人冥黒結界”』
闇 『愚民どもへの見せしめにでもするか!!』
影 『邪魔者は全て滅ぼす!!』
悠介 『………』
彰利 『あ、闇と影の言葉は無視していいから。
こいつら毎度毎度、出てくるたびに人を罵倒したいだけだから』
ニセモノラインゲート……とはいえ、
万象ではなく冥界から力を吸い出すって意味では、
もっともソレに近い能力ではあると思います。
悠介 『彰利、それ……』
彰利 『ウィ、これがオイラの超全力、ロードオブデスラインゲート。
死王の理力ってやつです。悠介みたいに万象に自分を繋げるんじゃなく、
冥界に自分を繋げて戦う戦闘方法ですわ。
死神王にとって、冥界ほど戦いやすい場所ってないから』
俺の今後の修行内容は、
冥界を『世界』として行使せんでも力を引き出せるようになることです。
悠介もべつに黄昏の創造しなくてもイレヴナルラインゲートとか開けるわけだし。
だから俺もそうなりたいわけですよ。
悠介 『凄いな……俺の全力なんか軽く越してるじゃないか』
彰利 『力だけは一級品だからね。なにせ、レヴァルグリードと奇跡の魔法を吸収してる。
お陰でゼットの卍解もみさおの卍解もコピーできたわけだし』
悠介 『……それでか。お前がこの冥黒世界を開いてからというもの、
竜の気配をひしひしと感じてた訳が解った』
彰利 『すげぇ?ねぇすげぇ?』
悠介 『あぁ、素直に驚いた』
彰利 『YES!!』
やった!悠介くんを驚かせたぞ!!
……だからなにがあるってわけでもないけどね。
悠介 『で……その両肩から飛び出てる影と闇はなんなんだ?』
彰利 『あぁ、ほら。思い出しておくれ?レヴァルグリードってどんな竜だった?』
悠介 『ん……九頭竜、だろ?ってまさか……』
彰利 『そ。今はまだ二頭しか行使出来ないけど、
完全に自分のモノに出来ればこの闇とか影とかが九つになるわけよ。
んで、この影とか闇にはそれぞれ能力を与えることが出来ます。
その分、圧縮したブラックオーダーが薄れるんじゃないか?って心配も無し。
この闇とか影は、俺から鎌の能力をコピーしてるだけだから』
悠介 『……無茶苦茶だな、それ』
彰利 『ただねぇ……こいつらほんと気まぐれだから、
きちんと躾ないと言うこと聞かねぇ聞かねぇ』
闇 『わ、わぁ〜れはしこたま戦慄』
影 『握り寝か!?』
握り寝ってなんだ?
彰利 『とまあそんなわけで。俺の頭も合わせて九頭竜になった暁には、
我らCP9の卍解をそれぞれ取り付けたいと思っております。
まあ悠介の卍解は流石に無理として……
ゼノ、聖、ルナっち、夜華、春菜、ゼット、みさお、俺……しまった!
粉雪ってば成長型の瞳鎌だから卍解が無ェ!!』
悠介 『………』
彰利 『……まあいっか。粉雪の能力ってある意味実力さえ伴ってれば無敵だし。
でも残りの影にはロードオブハーディスをコピーさせましょう。
あれって一応南無の卍解だし』
悠介 『楽しそうでいいなぁ、お前』
彰利 『オウヨ!今めっちゃ楽しいよ!?再び俺の時代到来!
俺───今とっても輝いてる!!』
ギシャアアアアアッ!!!───喜びを表すためにフェイスフラッシュを実行!!
悠介は懐かしくも疲れたような微妙な顔で苦笑と溜め息をもらした!!
彰利 『つーわけで修行しよう修行!オイラもっと強くなりたい!!』
悠介 『解ったからさっさとフェイスフラッシュやめろ!!鬱陶しいわ!!』
彰利 『おお、これはソーリー』
でもなんだかんだで相手してくれる親友に感謝を。
そげなわけでさぁ!正々堂々───修行開始!!
───……。
……。
彰利 『お目覚めなさい我が裡に眠る鎌たち!“影鎌繰り殺ぐ暗黒の秩序()”!!』
さて、早速このステキで凶々しい冥界空間で我が卍解を発動。
既に知り合い仲の卍解をコピーしたあっしにとって、一番能力が伸びるのがやはりコレ。
もう長い付き合いです。
とりあえず骨子として体の中で発動させたから死神度最大マックスです。
あとは……
彰利 『ゼットとみさおの卍解の完全吸収か。
こればっかりは修練して体に馴染ませて【自分の力】にしないとどうにもならん』
とはいえ……
彰利 『まだレヴァルグリードの力でさえ完全に自分のものに出来てない俺だしなぁ。
はぁ……道は険しいだっぜィ』
などと言ってる場合じゃないね。
悠介はもう修行に入ってる。
久しぶりに朋燐を創造して戦ってます。
いや、懐かしいねあの脇差二刀と野太刀一刀。
力が精霊の力に統一されちまったからには、
やっぱり一から修行するしかないんでしょうな。
加減が効かないってさっき言ってたし。
彰利 『では俺も。まずはレヴァちゃんの力を思いっきり解放してみましょう』
これ、能力攻略の基本です。
まず限界を調べて、そっから少しずつモノにしてゆく。
つまり……難しいことは地道にする。これ、人間の知恵。
彰利 『では!レヴァちゃんの力を死神の力に変換開始ィイイイイッ!!!!』
シュゴォオオオオオオッ!!!!!ブチブチブチブチ!!!!
彰利 『ギャアアア!!!』
先生!物凄い力です!
なんつーかいきなり血管切れました!!
でも黒だからすぐ補修できます!!
彰利 『ふ……ふふふ……!コピーに条件が必要な鎌など……!
限定条件クリアしてコピーさえしちまえば自由行使が可能……!!
な、ならば俺は魔竜の属性を得るよりも死神一点で生きる……!!』
じゃないと死王の理力を使いこなせない気がするんですよね。
だから俺はレヴァルグリードを吸収し尽くしてみせます!!
ああもちろん、黒も闇も影も死神としての能力と自負していますのでこれでOK。
彰利 『チェ、チェストォーーーーーッ!!!!』
ボッチュゥウウウウウンッ!!!!
彰利 『ギャア腕が爆発したぁああああーーーーーーーっ!!!!』
ドゴッチュゥウウウンッ!!!!
彰利 『ギャア足が吹き飛んだぁあああーーーーーーーっ!!!!』
ええい再生再生!!まずは全力を出してみんことには話にならんのだよ!!
つーかレヴァルグリードってとんでもない黒竜だったんですね!!オイラビックリ!!
てっきり竜王の強さ×9くらいだと思ってたのに、こりゃ半端じゃねぇです!!
皇竜王の名は伊達じゃあ……ねぇぜ!!
【ケース50:晦悠介/パントマイマー】
ボゴッチュゥウウウン!!!
声 『ギャアアアア!!!!』
遠くで絶叫ばかりが聞こえる。
試しにイーグルアイで見てみれば、何もないのに体の部分部分が吹き飛んだりしてる親友。
……新手の遊びか?それともパントマイムか?
どちらにしろこっちはこっちで一歩ずつ強くなっていくだけだ。
悠介 「疾ッ!!」
ドンッ!!
朋燐 『ぐはっ……!?』
人の殻を被った状態での戦闘。
それにようやく慣れてきた俺は、朋燐の一撃を躱すとともに鳩尾に背刀打ちを叩き込んだ。
朋燐 『っ……ちぃ……!強くなったものだな……!』
悠介 「そりゃあんがと。けど多分それは違うよ。ただ心構えを変えたんだ。
強くならなきゃいけない。
……もう、自分を弱いだなんて思ってる暇は無くなったんだ」
朋燐 『……なるほど。心構えの覚悟は出来ているというわけか……』
悠介 「ああ。俺の目標はようやく磐石になったよ。
俺はただ、あの馬鹿が笑っていられる未来が築ければそれでいい」
朋燐 『……ふん……。まったく、とんだ親友馬鹿だ。誰に似たのかな……』
それだけ言い残すと、朋燐の姿は霧散した。
途端、次の相手であるリザードマンが創造される。
悠介 「………」
リザードマン『………』
これで合計何度目の手合わせになるのか。
相変わらず隙の無い構えを見せるリザードマンは、ある意味で俺の好敵手でもあった。
けど───
リザードマン『ケァアッ!!!』
悠介 「───フッ!!!」
ギィンッ!ゾフィンッ!!
リザードマン『ギッ……!?───』
それももう越えてゆく。
振るわれた剣を一刀で弾き、もう一刀でその存在を斬り捨てた。
リザードマンは足掻くことも出来たろうに、
小さく笑うと剣を鞘に収めて笑い、やがて消えた。
悠介 「……相変わらず」
騎士道というか、誇りを持ったモンスターも居たもんだ。
普通、ゲームとかのリザードマンってあんなに礼儀正しくないだろうに。
などと言ってる間に次。ミル・ミノタウロスが創造される。
悠介 「……ん、よし」
まずは家系の身体能力が無くなった違和感を消さなきゃいけない。
そのためには体を慣らし、さらに上を目指す必要がある。
が───
ミノタウロス『グォオオオオオオゥウウッ!!!』
ルオッ───バッガァアアアアッ!!!!
悠介 「いぃっ!?うぉわぁあああああああっ!!!!!」
さすがにリザードマンのあとすぐにミル・ミノタウロスは無謀だったかもしれない。
くそ……俺の基本身体能力というか、
鍛えた分って大半が家系の身体能力が吸収していたらしい……。
もう動きが鈍いったらない。
上手く躱すつもりがあっさりと追いつかれ、
刀でガードはしたものの弾丸のように吹き飛んでいた。
悠介 「くっそ───!“閃光宿す()───”はっ!!」
違う!光の武具創造しちゃ修行にならないだろ!
ていうか俺今悟った!いくらなんでも光の武具に頼りすぎだ!!
男が───男が五体で戦わずしてどうするか!!
悠介 「よ、よし!どんとこーーーい!!」
体勢を立て直しつつ、二刀を構えて絶叫した。
途端、物凄い速さで俺の隣へと疾駆してきたミノタウロスが戦斧を振るい……あ、やばい。
バガッシャァアアアアアアンッ!!!!!
悠介 「ぐあぁああああああっ!!!!」
二刀をもろともに破壊され、俺は再び空を飛んだ。
今度は体勢を立て直すもない。
彰利の冥黒空間の地面を跳ね吹き飛び、そのまま仰向けに倒れた。
悠介 「げっほ……!!か、あぁ……まいったぁ……」
身体能力無しだとこうもボコボコか。
どこまでも既存の力に頼りっぱなしだった自分に腹が立つ。
でも───負けられない。
悠介 「───っし!!突撃開始ィッ!!」
寝かせていた体を起こすとともに大地を弾いて疾駆。
想像するよりも遅いその足はイメージしている戦闘には程遠い。
けどいずれ追いついてみせる。いや、追い着かなきゃいけない───!!
悠介 「ッ───オォオオオオオオオッ!!!!」
ミノタウロス『ルガァアアアアアアアアアッ!!!!』
衝突とともに開始される大乱闘。
合わせる剣斧は音を奏でる楽器の如く、暗き闇の虚空に高い音色を流してゆく。
……まあ、その大半で俺が吹き飛んでいるのは紛れもない事実だが。
なんにせよ、まだまだ───!!
【ケース51:中井出博光/その頃の彼ら。ヒロミツユーカード】
丘野 「ヒロ〜ミツ〜♪」
中村 「それはぁっ!」
丘野 「提督、提督、提〜督〜♪ヒロ〜ミツ〜♪」
田辺 「それはぁっ!」
丘野 「おでかけにおでかけにおでか〜けに〜♪
ヒロ〜ミツ〜♪ヒロ〜ミツ〜♪」
総員 『とにもかくにもいろいろあれこれヒーローミーツーだーーーーっ!!!』
中井出「朝っぱらからヘンな歌を歌うな!大体それを言うならイデミツだろうが!!」
丘野 「博光の野望オンラインの主題歌でござる!」
中井出「今すぐやめろこの野郎!!」
朝……晦に解凍してもらってから朝食を食い終わった頃のこと。
月詠街が誇りたくない我ら原中の猛者どもは、今日も元気に暴走していた。
中村 「O〜〜〜〜H!ガッソ〜リ〜ンッ無ッくゥなる〜♪」
清水 「もっうぉ〜〜〜ぅ!おっかっねっ無ァいぅよぉ〜〜〜ぅ♪」
総員 『あっとっはっヒッロッミッツっさっえっ見っつっかっりゃ〜〜〜ぉう♪』
中井出「何処の石油王だよ俺!!」
丘野 「ヒッロッミッツ♪ヒッロッミッツ♪」
田辺 「便利でお得〜♪」
総員 『チャ〜ジ・ガス・ウィズ・ヒロミツユーカァディョ〜〜〜ゥ♪』
中井出「……なんなんだよこの歌……」
いくんなんでも暴走しすぎだろ……。
いきなり『歌いたくなったでござる!』とか丘野二等兵が言い出すもんだからこれだ……。
というかなんで俺の名前使いたがるんだこいつらは。
中村 「K!E!RO!RO!」
丘野 「ケロロ軍曹ォウ!!」
田辺 「K!O!KO!RO!」
清水 「ココロの問題!!」
佐野 「K!E!RO!RO!」
蒲田 「ケロロ軍曹〜!!」
灯村 「ゲロゲロリ」
岡田 「K!O!KO!RO!」
島田 「ココロの問題っ!!」
総員 『ヒャーーーッ!!フヒャヒャァッヒャーーーッ!!!
軍曹さぁーーーーーーん!!!』
丘野 「ココロの問題であります!」
総員 『ハッハーーッ!!』
長井 「どおしてそんな〜顔すんのぉ〜♪」
藍田 「そぉいう言い方が嫌いだから〜♪」
瀬戸 「ほんと前〜からムカツイてた〜♪」
増田 「ムキになぁって、ば〜かじゃないのぅ♪」
総員 『鹿目 筒良()〜♪泣きッ面ァ〜♪』
丘野 「ほっぺ先輩ァアアアアアアーーーーーーイ!!!!」(合いの手)
総員 『仲直〜ゥりをし〜たいけ───』
中井出「ちょっと待て!!今のほっぺ先輩ってなんだ!!」
急にケロロ軍曹の歌を歌いだしたのは別にいい。
というかむしろ俺の名前を使わないならそれにこしたことはない。
けど何故ほっぺ?いや、理由は解ってはいるんだが。
丘野 「なんだ、って……Mr.FULLSWINGの赤丸ほっぺ先輩じゃないでござるか」
藍田 「その名も鹿目筒良()」
丘野 「名付けた親はゴッドでござるよ!」
中井出「で……歌の中の『しかめっつら、泣きっつら』の部分にあてがったと」
丘野 「もちろん意味はないでござる!!」
断言された。
哀れ、鹿目先輩。
丘野 「しかし……主題歌というのも中々難しいでござるな」
清水 「提督に関する歌だろ?提督っつーと……」
田辺 「……エロビデオ?」
蒲田 「それからー、あー……」
藍田 「え〜〜〜〜と……」
総員 『………』
中井出「黙るなぁっ!!頼むから黙らないでくれぇえええっ!!!」
なんかもう泣きそうだった。
ノート 『汝ら騒がしいぞ。騒ぐなら外でやれ』
シルフ 『まったくだ。集中が必要な作業だというのに、こう騒がれてはたまらない』
中井出 「いや……べつに俺は騒いでたつもりは……」
オリジン 『何を言っている。お前の声が一番五月蝿かったぞ』
中井出 「………」
丘野 「おおっ!提督殿が落ち込んでいるでござる!!
今の言葉に一体どれほどの魔力が!?
───もしや忍術!?今のは敵勢力の忍術でござるか提督殿!!」
シェイド 『騒ぐなと言っている。
どうしても騒ぐならゼクンドゥスに時間凍結してもらうが』
丘野 「け、結構でござる!!」
セルシウス『それでしたらわたしが普通に凍結を───』
中井出 「ひ、ヒヨッ子ども!総員ただちに庭に出ろ!!全速前進!!」
総員 『サッ───Sir()!!YesSir()!!!!』
そうして我らは駆け出した。
ああもちろん蒼空院邸の庭へ。
さすがの我ら原中の猛者でも、相手が精霊ではまるで歯が立たん。
というか指先ひとつで絶命すること大決定。
だから我らは走った!それはもう我先にと走った!!
ドタバタと走った!形振り構わず走った!そして途中からその状況が面白くなって騒いだ!
丘野 「家内安全!」
清水 「健康促進!」
藍田 「商売繁盛!」
中井出「悪霊退散悪霊退散!!」
田辺 「アケマシテオメデトウ!!」
ゼット「うるさいぞ貴様ら!!」
総員 『キャアアアアアアーーーーーーーッ!!!!』
その日。
我ら原中の猛者どもはたったひとりの怒れる竜王にボコボコにされた。
ええまあ、もちろん加減はされたから生きてはいるわけだが。
───……。
……。
中井出「グフッ……!さ、さて……!回復役が居ないということは
骨身に染みるほどキツいということが解ったところで……。
只今より第二百九十八回・原中名物『秘魔津悔死()』を始める……」
総員 『サ……サー……イェッサー……』
さすがに他の猛者どもも瀕死だった。
何故って、加減されたとはいえ相手はあの黒竜王だ。
文字通り指先ひとつでダウンさせられたとはいえ、ダメージは深刻である。
というか総員が庭に倒れたまま動けないでいた。
そんな中で───ザクッ!!
田辺 「ギャーーーーーーッ!!!!」
清水 「たっ……田辺っ!?どうしたっ……!!」
田辺 「悪戯盛りのハサミムシちゃんが!俺の!俺の黄金に無情な刃をぉおーーーっ!!」
丘野 「ああっ!そういえば確かに、
田辺殿のズボンの中に何者かが侵入するのを見たでござるよ!!」
田辺 「その時点で止めろよ!!───ってギャアアアアア!!!」
清水 「田辺ぇええーーーーーーっ!!!!」
……それでもやかましいのは、さすが原中としか言いようがなかった。
はぁ……空が青いなぁ……。
このまま二度寝としゃれ込むかなぁ。
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