───冒険の書233/VS霧闇竜(下)───
【ケース562:穂岸遥一郎/バトルウィザードロマネスク】
ガォンガォンガォンガォン!ガガガガガォオオオンッ!!!
ダークドラゴン『ヌッ!グッ!グオァアッ!!』
遥一郎 「refinel。我が詠いし唱えの音色は栄華を奏でしマナの筝曲。
奏でよ妖精詠えよ精霊唱えよ万象放てよ導師!
我が叫びを聞き届け、全てを詠いし力となれ!サンダーブレード!」
ブラスティアコメットを魔法陣から放ちまくり、それで抑えているうちに大魔法を発動。
虚空に雷の巨剣を精製し、ダークドラゴン目掛けて放つ!
ドゴォンッ!ヂガガガガォオンッ!!
ダークドラゴン『ぐ、うぅうっ……!愚かしい!雷魔法一発程度で我が───』
遥一郎 「───まだだ!《ピキィンッ!》」
ダークドラゴン『なんだと───!?』
やるからにはそんな半端なことは無しだ───!
俺はさらにもう一本、虚空に雷の巨剣を精製し、先に突き刺した剣とは反対側から落とす!
ヂガァアンガガガガォオオンッ!!!
ダークドラゴン『懲りずに雷か!貴様はよほど───』
遥一郎 「続けていくぞ!《ギキィンッ!》サンダーブレード!」
ダークドラゴン『《ザゴォンッ!》グウッ!?ッチィイ!!
魔法の使いすぎで頭がおかしくなったか!
生憎だが我には霧散しやすい雷魔法など通用せぬ!』
そんなことは解ってる。
雷は固形物を破壊するのには長けているが、
霧散しやすいものにはそう高い威力は望めない。
望めるとするなら、落雷の爆風で霧を霧散させるかどうか……
それも散らばらせるだけで、ダメージになんかなりはしない。
それが解っててなおサンダーブレードを放ち続け、六の雷の巨剣の檻に閉じ込める!
最後に詠唱するのはこれだ───あとはどうとでもなれ、俺は知らない!
遥一郎 「───天光満つる所に我は在り……
黄泉の門、開くところに汝在り……出でよ───神の雷」
ダークドラゴン『なに……?それは……!』
遥一郎 「これで最後だ!インディグネイション!!」
ダークドラゴンの四肢ごとを魔力の雷で地面に串刺しにしている剣の上に、
巨大な魔法陣が出現する。
そこからは巨大な雷の球体がいくつも現われ、
回転しながらダークドラゴンへと降りてゆく。
さらにその球体の回転に誘われるように雷の巨剣が反時計回りで回転を始め、
円を描くように幾度も幾度も回転の数だけダークドラゴンを切り刻んでゆく。
だが球体が上昇し、魔法陣の中心に接触した時!
ヂガァンガガガギヴァアッシャァアッ!!!
ダークドラゴン『グアァアアオアァアアアアッ!!!!』
そこから巨大な雷の塊が轟音を掻き鳴らして舞い降り、ダークドラゴンの体を撃つ!!
ダークドラゴンの体を貫いた雷は地面を流れ、
草原さえ焼くほどの熱量を以って霧散してゆく───筈だったが、
既に詠唱を進めていた俺の魔力がそれを許さなかった。
魔力を操り地面を走る雷で草原を焼き、茂る草花が焼ける魔法陣へと化させる。
それをさらなる雷の導とするために───!
遥一郎「雷帝の雷よ……鋭き刃となりて敵を穿ち、その身を滅ぼす力となれ!」
言葉とともに、魔法陣全ての紋様から濃度の高い雷が空へと舞い上がる!!
当然それはダークドラゴンの身を焦がし、貫くようにしてなお、濃度を緩めない!
ダークドラゴンは危険を察知したのか魔法陣から離れようとしたが、
無詠唱で放ったグラビティがそれを阻止した。が───
遥一郎「《ズギィッ!》ぐ、あっ……!」
大魔法の無詠唱は無茶があった。
頭に割れるような痛みが走り、数瞬意識が飛んだ。
すぐに頭を振るが、その動作こそが隙だった。
遥一郎「《ゾンッ……!》え……?あ、がぁああああああっ!!!!」
ほんの数瞬。
秒に至るかどうかの間隙だった筈なのに、ダークドラゴンはそれに気づいていた。
痛みに見下ろせば、
俺の腹にはダークドラゴンから伸びている黒い棒のようなものが突き刺さっていた。
そしてそれは、俺の背中から飛び出ている。
あの一瞬で闇を鋭い槍に換え、俺の腹を貫いたのだ。
遥一郎「がっ!ぐっ!ぐあぁあああっ!!!」
しかもその闇は自分がくらえばくらうだけ、雷を俺にも流してくる。
どうなってんだこいつの体……!竜が霧になれるってだけでも異常なのに、雷まで……!
ダークドラゴン『イマ、スグ……!コノイカズチヲトメロ……!!
サモナクバ、キサマモ……!!』
俺も、死ぬって……!?
はは……冗談じゃない……!
死ぬのもごめんだし、せっかく発動させた秘奥義を止めるのもごめんだ……!
遥一郎 「秘奥義解放!賢者の英知!」
ダークドラゴン『───!キサマ!』
遥一郎 「《ブギチチチビシャアッ!!》ぎっ……あぁあああああっ!!!!」
ジョブアビリティの秘奥義を開放した途端だった。
それを抵抗と判断したダークドラゴンは、
俺を突き刺した槍からさらに棘を突き出させ、俺を内部から貫きズタズタにしてゆく。
遥一郎「あ、が……!こ、の……!スパークウェーブ!ライトニングペイン!
ディヴァインジャッジメント!ヴィルジャウィッドジャベリン!!」
それでも構わない。
頭が痛みに支配されながらも、魔法だけは只管に撃ちまくった。
この棘が俺まで雷を徹すなら、
こっちからも雷を落としてやればそれはダメージになる筈───!
ダークドラゴン『ガァァアッ!!!キサマァアアアアッ!!!!』
ゾボボシャシャシャシャシャシャァアッ!!!
遥一郎「───、……」
けど、そこまで。
俺の内側は棘によってズタズタにされ、
使い続けていた回復魔法も追いつかないほどのダメージを俺に及ぼした。
口は動かしているのに、喉が潰されたのか声も出ない。
力を込めたいのに、突き出した手は重力に引かれてゆく一方で───
やがて、完全にだらんと垂れ下がった頃。
未だ雷に撃たれているダークドラゴンは、その中ででも愉快そうに笑って……俺を捨てた。
指についたゴミを払うように、血塗れの俺の体を。
───……そう、言ってみればそれが勝算だった。
遥一郎「───!」
潰れた喉など知ったことじゃない。
今するべきことは、命が無くなる前に声ではなくナビから能力を解放することだ!
そして、解放すべき能力は───他でも無い、
遥一郎(発動しろ……“漢神の祝福”!!)
モンシャンシャンシャンシャフィィイインッ!!!!
ピピンッ♪《漢神の祝福!HPTPが完全回復し、攻撃力が5%UP修正!!》
遥一郎「───よし!!」
ボロボロだった体に活力が戻る。
それを確認するや立ち上がり、さらにさらにと大魔法を連ねてゆく。
賢者の英知は発動から一分が経過するまでは効果が切れない。
だからせめて切れるまではと高速で放ち続ける!
ダークドラゴン『バカナァア!!キズガイッシュンデフサガルダトォオ!?
オノレ!ナラバモウイチドダ!コンドハユウヨナドアタエン!!
キサマヲコロシ、ソノウエデマホウジンカラノガレル!!』
余裕も無くなったのか、さっきから受け取りづらい言葉で喋るダークドラゴン。
その体は幾度も幾度も雷に撃たれ、ところどころが崩れかけていた。
自分の意思による霧散ではなく、
破壊による霧散だ───ダメージがあると確信して間違い無い!
だがそんな確信を穿つかのように伸ばされた槍が、再び俺をゾギィンッ!!
ダークドラゴン『ヌグッ!?ナ、ナンダ!?』
……狙ったが、俺を貫く筈だったソレは魔法陣の一番端の虚空で停止した。
まるで、なにか硬い壁にでも阻まれたかのように。
それをしたのはシードの不死魔術系不可視能力だ。
少しでいいから動きを止めてくれと頼んで以降、
今までず〜〜〜っとなにもしちゃくれなかったシードの。
遥一郎「っ……はぁあ……!もう少し……速くできなかったのかよ……!」
シード『贅沢を言うな。貴様が敵を一定位置に圧しとどめることに梃子摺るから
こんなに時間がかかったんだ。ほら、やるならさっさとやれ。以って10秒だ』
遥一郎「これだけ苦労して10秒なのか!?くそっ───!」
死霊の塊をさらに密集させて抑えているらしいのだが、さすがは不可視の力。
いくら目を凝らしたところで見える筈もない。
いや、そもそも見る必要なんてないのだ。
俺は俺に出来ることをすればいいのだから。
その出来ることっていうのが、今発動させ続けている雷の行き着く末!!
魔法陣から空へと登る雷は、なにも馬鹿みたいに飛び続けているわけじゃない。
虚空に広げた魔法陣によって固められ、
六本あった雷の剣はそこでさらに巨大な一本の巨大剣となるのだ。
遥一郎「か、ぐ……んぐっ───!《マキィンッ♪》」
それを確認しながら、賢者の英知を発動させたために0になったTPを回復するため、
オレンジグミをエーテルで流し込んで回復させる。
───じゃあ、いこう。
成功させるためだけに散々苦労させられたけど、これで終わりだ!
遥一郎「力の違いを見せてやる!《ゴコォッキィインッ!!》」
少しずつ象られていった巨剣にありったけの魔力を通し、一気に精製する!
それとともに反転した景色の色を清々しい気持ちで眺めたのち、
遥一郎「インディグネイト・ジャッジメントォオオオオッ!!!」
雷の巨剣をこれもまた一気に、魔法陣の中心───つまり、
雷と不可視の檻に囚われているダークドラゴン目掛けて落とす!!
ヒュゴォッ───ザゴヂガァンッ!!
ズガァアアガガガガガォオオンッ!!!!
ダークドラゴン『グギャァアアアォオオオオッ!!!!
グガッ……ガァアアアアアアッ!!!!』
雷の魔法陣に剣が突き刺さった瞬間!
目を覆いたくなるほどの凄まじい雷の蠢きが、
串刺しにしたダークドラゴンを巻き込んで魔法陣の中で暴れ出す!
シード『くっ!うぅうっ……!物凄い雷鳴だ……!』
遥一郎「自分でやっておいてなんだけどっ!目が潰れるぞこれっ!!」
そんなマナの渦の中に飲まれているダークドラゴンが、少しだが哀れに思えた。
けど魔力の集中は怠らない。
あらん限りの魔力を尽くし、これでもかというほどに雷撃を強化する。
ダークドラゴン『ゴァ……ガアアアッ……!!!バカナ……!
ニンゲンゴトキガ、コレホドノシュツリョウノマリョクヲ……!
バカナァアア……!ヤミガヤケル……!ワガカラダガ……!』
天地に煌く魔法陣の狭間で、唸る雷撃に飲まれるダークドラゴンは───
少しずつ、だが確実にその体積を減らしていた。
外側の闇から少しずつ塵と化すように、ジワジワと。
……実に愚かしい。
体を半分になど割らなければ、俺なんかに負けることなどなかったろうに。
ダークドラゴン『───ナドト、悲鳴を上げてやれば満足か?』
遥一郎 「───!?」
シード 『油断するな馬鹿っ!!』
《体質変化!ダークドラゴンの体が雷に包まれてゆく!!》
遥一郎「体質変化!?……そんな、
ただ魔法のレーザーが放てるようになるだけじゃ───」
シード『相手は守護竜だぞ!
常に相手が自分の予想を越える存在であることくらい想定しておけ!』
ダークドラゴンが雷に包まれてゆく。
けどそれはダークドラゴン自体が発している雷であり───
既に俺が放った雷ではなくなっている。
ダークドラゴン『我が体質変化は守護竜の中でも異質中の異質。
受けている属性のマナを闇の霧で喰らい、我が体とする。
この意味が解るか?貴様がいくら魔術を放とうが、
我を殺すことになど至れぬ』
遥一郎 「っ……」
厄介な相手だ……魔法しか通用しないのに、
魔法を当てると体質変化で属性が変わるって……!?
そんなのどうしたら───
遥一郎「……くそ、だめだっ……!どうしたらいいのかがまるで───」
シード『……?なにを言っている、これはチャンスだろう』
遥一郎「チャンス……?チャンスって、どこが───あ」
待て。
体質変化……だよな、うん。
で、属性が闇から雷に変わった……それってつまり、
遥一郎「あ……ああ!なんだ!そういうことなんじゃないか!」
だったらむしろ今までより戦いやすい!
状況に飲まれすぎていた───そうだよ、難しく考える必要なんてなかったんだ!
遥一郎「我が導きによりて具現せよ!“ロックマウンテン”!!」
発動させるのは地属性魔法!
虚空から強い地属性を含んだ岩石を落としまくり、ダークドラゴンに攻撃する!
───だがダークドラゴンはすぐにそれを吸収し、今度は地属性に───!
遥一郎「次だ!《ゴキィン!》神の息吹をここに!“ゴッドブレス”!!」
キュヴォアゴファァアッシャアアアッ!!!!
ダークドラゴン『ヌグッ!?おのれっ!』
天空より強烈な風を巻き起こして攻撃!
それもすぐに吸収されたが、
遥一郎「次ッ!《ゴキィンッ!》受けよ!無慈悲なる白銀の抱擁!“アブソリュート”!」
それもすぐに氷属性を食らわせて、属性を氷に変えてやる!
そう……こいつは変化するたびに弱点属性を曝け出すことになるんだ。
下手に己の管轄外の属性だから、主属性である闇よりもよっぽど耐性が低い。
だから属性の強弱関連系統さえ頭に叩き込んでおけば、TPが続く限り戦っていられる!
遥一郎「舞い降りろ破滅の爆炎!“エクスプロード”!
恵の雫よ津波となりて敵を沈めろ!“タイダルウェイヴ”!!
雷雲よ我が刃となりて敵を貫け!“サンダーブレード”!!」
魔術のことなら頭に叩き込んである。
撃った先から次の詠唱を唱え、
次から次へと休む暇なく、反撃の猶予も与えずに放ちまくる!
それはさしずめ様々なマナの宴のようであり、いっそ花火だとでも言えば、
それはそうだと頷けるほど綺麗でもあった。
───そして、次のことも予想はついている。
だから俺は少しずつ立ち位置を変え、静かにシードに目配せをした。
その意味がなんとか通じたのか、シードはすぐにナビをいじくり───
それから程無くしてマナの爆発を裂くように放たれたレーザーを、
俺はすかさず避けていた。
それは今まで俺が放ってきた属性全てを吸収したような不思議な色のレーザーであり……
それを見た時になるほどと思った。
守護竜ともあろうものが、こんな弱点だらけの体質変化を好き好んでするわけがない。
ようするにこれも誘いだったのだ。
……こうして全属性を吸収し、全属性に耐性をつけるための───!
ダークドラゴン『フハハハハハハ!!例を言うぞ魔術師よ!
貴様のお蔭でほぼ全ての属性が揃った!
そして……もう理解しているだろう。
我は吸収した属性を魔法として放つことが出来る。
闇の霧の中で無限に精製してな。もはや貴様に勝ち目などない。
どのような魔法で来ようが、その魔法ごと掻き消してくれる!』
遥一郎 「───」
シード 『ふっ……く、くっ……』
ダークドラゴン『……?なにがおかしい』
シード 『ふふっ……いや、べつに』
絶望的瞬間を前に笑うシードを見て、ダークドラゴンは顔をしかめる。
疑問が浮かんでいるんだろう、何故笑える?気でもフれたか、と。
けど違う。
俺達には勝算があって、それはもう……きっと放たれていた。
【Side───さっきの魔王さま】
ズベシャッ!ごしゃっ!ごしゃぐしゃ……
中井出「ゲハァッ!ゴハッ!グアッゴゲッアベシャリッ……ゲリッ……!」
ダークドラゴンにプチッと噛まれ、
ズタズタになった俺が逃げおおせることが出来たのはついさっきのこと。
戦っているうちにいつの間にか遠くになってしまった遺跡の穴方面……
そこで巨大な雷が立ち上ったり落ちたりしたのを確認してからだった。
ナギー『ど、どうしたのじゃヒロミツ!
急に現れたと思えばこのようなズタズタな姿で……!』
時間経過で元の大きさに戻れたことを喜ぶ前に、HP回復しないと本気で死ぬ。
だから俺は、ダークドラゴンが余裕の表情や居住まいで俺を見下ろす中、
バックパックからグミなどを取り出そうと……ぐあっ!底を尽いてやがる!
そうだった……牙から逃れようとジタバタもがいてたらまた噛まれて、
それを回復するためとかなんとかを何回か繰り返してるうちに……!
やべっ……死ぬぞほんと……!───なんて思った時だった。
かくなる上はと漢神の祝福を発動させようとしたまさにその時だったのだ。
モンシャンシャンシャンシャフィィイインッ!!!
ピピンッ♪《漢神の祝福!HPTPが完全回復し、攻撃力が5%UP修正!!》
中井出「キャーーーッ!!?」
ナギー『きあーーーっ!!?ななななんなのじゃーーーっ!!』
我らを襲う突然の回復の奇跡!
光の粒子がモンシャンシャンと我らを包む様は、まるで……まるで……───なんだろ。
ともかく急なことだったんで攻撃されたのかと思ったよ!
なんだよもうこれもうこれ!回復したけど心がビックリだよコレェ!
動揺してる時の人間の饒舌っぷりを今まさに体感してる気分だよコレェエエ!!
い、いや、今は全ての回復の恵に感謝を!
チラリと目をやり、コシコシとナギーの喉をさすってみれば、
ナギーもなんだかくすぐったそうにしながらこくこくと頷いていた。
つまり、嗄れた喉も治っていると……そういうことらしい。
ありがとう女神……じゃなかった漢神!!
あんた漢だぜ!漢の神様だ!使ったのはホギーだろうけど!
ダークドラゴン『なに……?傷が瞬時に』
中井出 「死ねぇええええっ!!!!」
ダークドラゴン『ぬおおおっ!!?つくづく成長せん男だな貴様は!!』
中井出 「《ガギィンッ!!》ギャアーーーッ!!」
疾駆しての攻撃はしかし、あっさりと弾かれてしまう。
くそっ、密度を増されたらこっちに出来ることなんてなにもなくなるじゃねぇか!
博打はそろそろまた自爆が来そうだし……!
せこせこと同じ箇所を狙った攻撃は、途中で気づかれて闇で補修されちまったし……!
うおおほんと相性悪い!戦いづらいったらないよこいつ!
こっちを藍田たちに任せておけばよかったとか思う僕は外道ですか!?
外道で構いません!任せておけばよかった!
中井出 「ちっ……ちくしょーーーっ!!」
ダークドラゴン『《ガギィンゴギィンッ!》はっはっはっはっは!!どうしたどうした!!
なんだその攻撃は!くすぐったすぎて笑いが止まらぬわ!』
今じゃステータス移動しても斬りつけられやしない密度にまで達したダークドラゴン。
それが悔しくて、STR移動や火闇爆破を用いて勢いよく攻撃するが、
どれもこれも通用しやしない。
ダークドラゴン『もう諦めたらどうだ?哀れすぎて見ていられん。
今なら我は機嫌がいい、特別に許してやってもいいがな』
中井出 「なにぃ!?」
マア素敵!僕……僕許されるの!?
だったら───と一歩を踏み出した時、
我が村人の服をクイッと引っ張る姿があった…………っ!
中井出「ぬうナギー?貴様なにを───」
ナギーである。
俺の服(正式にはブリュンヒルデ)を引っ張り、
俺の目を見上げている彼女がそこに居た……!
ナギー『ヒ、ヒロミツ……?よもや、降参なぞ……許しなぞ請わぬであろうな……?』
中井出「え?容赦なく請うつもりだけど……」
ナギー『なっ……なにを申しておるかぁっ!彼奴は敵じゃぞ!逃げるのはいい!
背を向けて無様に逃げても己は保っていられるのじゃ!
けれども自ら許しを請うたらヒロミツッ……それはどうしようもない敗北じゃ!』
中井出「なにを言うかナギーバカモン!!
周りがどう言おうが己が負けたと思わなければ負けではないわ!
……こんな話がある。とある戦国時代、敵に襲われた者が投降し、
完全に敗北を認めて敵の部下と成り下がった。
そいつは敵の下で永きに渡って信頼と名声を上げ、
敵に完全に信じられるほどの武将となった。
だがそいつは待っていたのだっ……!いつか主が油断する時を、じっと……!
やがて時は来たりて、そいつは主を殺した!そいつは国の仇を取れたのだ!
……時は流れ、いつしかそいつが皇帝となった時。
彼はその時の自分を振り返っても、敵に許しを請ったことを誇りに思った。
何故ならそうしなければ死んでいたし、死んでしまったら仇はとれないからだ。
理解しろ……心が折れねば敗北ではない!“作戦”なのだぁああっ!!」
ナギー『お……おおお……!そ、そうか……そうかぁあ……!!
その武人は己のプライドを捨ててでも
仇を取りたいという信念を持っていたのであるな!?』
中井出「その通りなのだナギー!貴様なら……貴様なら解ってくれると思っていた!」
ナギー『ヒロミツーーーッ!《がばーっ!》』
中井出「ナギーーーッ!!《がばしーーーっ!!》」
感動に打ち震え、飛びついてきたナギーを自ら駆け寄るように抱き締める!
おお暖かい……お子の生命の鼓動の、なんと暖かい……!
そう……そうだよな、僕らはみんな生きている!生きているから素晴らしいんだ!
死んでしまっては出来ることが、面白いことが限られてしまう!
なんつーか幽霊になると、怨念だの憎悪だの未練だのに理性奪われそうな気がするし!
だからチュゴゴガァォオォオオオオンッ!!!!
中井出&ナギー『ミギャアアアアア…………!!!』
そしてやっぱり飛んでくるレーザー!!感動の場面に水を差された!むしろ刺された!!
でも避けることが出来たのは、
同じ轍は踏まんと意識だけはダークドラゴンに向けてたからです。
中井出 「よしナギー!ヤツを打ち滅ぼすぞ!
なんつーかもう話全部聞かれてたから許す気ないみたいだし!
でもあのー、出来れば許してください。いつかコロがしてあげるから」
ダークドラゴン『誰が許すかっ!!』
中井出 「じゃあ死ね」
ダークドラゴン『きっ……切り替えが早いにもほどがある!!貴様』
中井出 「死ねぇえええーーーーーっ!!!」
ダークドラゴン『ぬぉおぁあっ!?だからまだ我が唱えていると───
い、いい加減にしろぉおおーーーーっ!!!!』
カッ!とダークドラゴンが目を見開、顔面に一撃くれてやろうと跳躍した俺を見据える!!
そしてレーザーでも放つ気なのか、巨大な口を開こうと───
中井出 「よっ……と」
ダークドラゴン『《バサァッ!》ぐわぁっ!?き、貴様、なにを……!』
───した彼の見開いた目に、この手に掴んだ砂砂利をバサァと投げつけた。
それはもう、一貫坂慈楼坊……またの名を鎌鼬慈楼坊のように。
中井出「いつどうやって戦うかを決めるのは貴方ではなく私。
後悔なさい。今から十数える間だけ、貴方に後悔する時間をさしあげましょう」
ナギー『……それでヒロミツはどうするのじゃ?』
中井出「はいあのー、僕も後悔したいんですけど……してていいですか?」
ナギー『してる暇があったら攻撃するべきではないかの……』
中井出「目潰しされた敵ってのは暴れやすいんだ。
ごらんナギー、あれが視界を無くしたものの末路だよ」
サム、とナギーの視線をダークドラゴンへと促してやる。
するとウウムと納得顔のナギー。
何故ってダークドラゴンはゴギャーと叫びつつ、
俺を近寄らせないように攻撃を繰り返しまくっているのだ。
まるで目潰しされたからって尾撃ばかりをするディアブロスだ。リオレウスでも可。
だが……フフフ、学びなさい守護竜よ。
俺はべつに貴様に近づかんでも攻撃など可能で───あら?
中井出「だ、だれだよもうこんな時に……《ブツッ》俺だ!瀬戸内だ!」
声 『あ……ち、父上ですね!?』
中井出「うむ!我こそが原沢南中学校迷惑部提督!中井出博光であるーーーーっ!!」
ホズを構えてレッツ竜撃砲!って時に耳に届いた違和感を解放すると、
聞こえてきた声はなんとシード。
ハテ……なにかあったのだろうか。
声 『今からそちらに魔法レーザーが飛んでいきます!
こちらの魔術師が立ち位置を調節しましたから───ですから、その───』
中井出「……フフ、解っておるわシードよ。よくぞ知らせてくれた。
この博光は貴様を誇りに思うぞ……!」
声 『ち、父上……!』
中井出「ではな。俺はこれから作戦実行に移る。
シードよ、出来る限りでいい、ホギーをバックアップしてやってくれ」
声 『はい!はいっ、父上!』
ブツッ……───うむ!
ホギーめ、なかなか面白いことを考えおるわ!
なんで魔法レーザーが来るって予測出来てるのかはこっちで確認のしようがねーけど!
だが作戦があるからには、
それが面白いと確信できることならばやらないわけにはいくまいよ!
何故ってそれが原ソウル。常識だけでは語れない。
ナギー『……通信してきただけで誇りに思うのか?』
中井出「ぬお?あ、あのー……ナギー?なんか怒ってない?」
ナギー『怒ってなどおらぬのじゃ!』
中井出「じゃあ行こう」
ナギー『あうっ!ま、待つのじゃー!お、怒っておらぬぞ!?
怒ってなぞおらぬが、うう……やーーーっ!!』
中井出「《がばしぃっ!!》グワァーーーッ!!」
ナギーのターン!ナギーは何故か我が背中にしがみついてきた!!
何事!?───いいや構わん!恐らくもう時間がねー!
ならば出来ることをダイナミックに!───え?コツコツと?ダメだダイナミックに!!
中井出「ゆくぞナギー新兵!しっかりと掴まってろ!」
ナギー『どうしたのかとは訊かぬのかの!?』
中井出「どうしたナギーよし行こう!!」
ナギー『返事くらいさせるのじゃーーーっ!!』
うん、それ無理!
何故って、遠くの方でレインボーチックな輝きを見ました!
理由や理屈はいちいち考えぬ!あれがシードが言ってた魔法レーザーだ!
ならば俺は外道の限りを尽くすのみ!
中井出「ちょっと位置が悪いな……ならば!」
AGIマックス高速移動!!
そしてオギャーと未だに暴れているダークドラゴンの後ろ側に回り、
中井出「殺ったぞその命!死ねぇええーーーーっ!!!」
と叫んでみる!
するとビクリと体を跳ね上がらせ、後方に身を下がらせるダークドラゴン!
仕方の無いことだ、本能というものだ。
そしてそここそが、既に発射されている魔法レーザーの通行位置!!
俺は素早くダークドラゴンの横のレーザー通過点に移動すると、
STRをマックスにしてジークフリードを構える!
中井出「いくぜナギー!!やつらに我らの本気を見せてやるんだ!!
大丈夫!我らなら出来る!出来なかったとしてもべつに構わん!
でも出来たら最高だね!ナギー……力を貸してくれるか?」
ナギー『……あ、う……そ、その、じゃな。わしのことも誇りに思うのなら、その……』
中井出「何を言うか!貴様はこの世における誇りそのものである!
自然の頂点に立つということの素晴らしさを貴様が理解せんでどうするか!」
ナギー『そうではなくての!う、うー!解らぬ男よの!
わ、わしはヒロミツに誇りに思ってほしいのじゃー!!』
中井出「断る!!」《どーーーん!!》
ナギー『なんじゃとーーーっ!?な、何故なのじゃ!?
ヒロミツはわしのことが嫌いなのか!?』
中井出「いや、言ってみただけ。うんいいよ。
つーか誇り思ってる以前に大事な仲間だと思っているが」
ナギー『なんでもかんでも言ってみるのはやめるのじゃーーーっ!!
じゃ、じゃが、その……ま、まことか?』
中井出「ええいいちいち確認を取るなと言っていただろうナギー新兵!
このヒロミツは貴様やシードを大事な無二の存在だと思っておるわ!
だから今は手伝ってって───来た来た来たァアアアアアア!!!!」
言ってる間に、盲目状態のダークドラゴン越しに見える極光はもう間近に迫っていた!
つーか輝かしい!ダークドラゴンなのにこんな輝かしいレーザーを放つとは!
向こうのダークドラゴンの身に一体なにが!?
中井出「いくぞナギー新兵!」
ナギー『う、うむ!わしとヒロミツが一緒になれば越えられぬ困難などないのじゃー!!』
中井出「バカモン!軍人言葉の時はサーイェッサー!!」
ナギー『斯様な時くらい構わぬであろ!大体なんなのじゃ!わしだけならともかく、
シードとひと括りにして大事な存在などと!わしだけで十分なのじゃ!』
中井出「それこそバカモン!彼は僕の息子です!
そんな子を無視して十分な筈があろうか!いや無い!……反語」
ナギー『う、うー……!ヒロミツはわしだけのヒロミツなのじゃー!
他の者がヒロミツに甘えるのはなんだか無償に腹が立つのじゃー!』
中井出「貴方何処の甘えん坊ですか!?」
僕、子供は紀裡だけだったからよく知らないけど!
子供が多い親ってこんな心境なんでしょうか!
つーかほんともう無理!話してる暇無いって!!
中井出「───いくぜジークフリード!“器詠の理力”()!!」
埒も無し!
俺は意識をジークフリードに繋げ、
奥底にある技術スキル“アスラーナ”を全力で引き出した。
そんなことをしなくても魔法は跳ね返せるが、
こうした方がジークフリードにも気合が通るというもの。
最善を尽くしましょう!この一撃が、僕らの未来に繋がると信じて!
……つーか雷鳴響きまくりなのに、お空は大快晴ってのもヘンな感じ。
ヴォガガガガガォオオオンッ!!!!
ダークドラゴン『グガァッ!?ギガァアアアッ!!!』
なんて考え事をしてる暇もない。
とうとう辿り着いた魔法レーザーが、
ようやく視力が回復したらしいダークドラゴンに直撃する!
もちろん当たるように位置調節したんだから、当たらなかったら勘弁ってもんだが。
でもよっぽどマナを圧縮させたのか、レーザーの飛翔速度はそう速いものじゃあなかった。
が、威力は本物だ……そんなもの、
目の前で叫び続けるダークドラゴンを見れば一目瞭然というものぞ。
ダークドラゴン『オ、ロカ、シイ……!!マンマトハカラレタトユウコトカ……!!
ヨモヤ、オノレガハイタモノデ、コンナコトニ……!!───ダガ!!』
ボファアンッ!!!
中井出「ぬう!?」
ダークドラゴンが霧化して、無理矢理にレーザーを避ける!!
闇の霧『ガッ……ハァッ……!コノテイドデハ、ワレハマダシナヌ!!』
四方に散ったダークドラゴンはレーザーの後ろに回り込み、
俺を嘲笑うためにわざわざ実体化して高らかに叫んだ。
ダークドラゴン『終わりだ!!塵と化すがいい!!』
ギガァアアッチュゥウウウンッ!!!!
そしてさらに魔法レーザーを放ち、速度が緩んだレーザーを加速させる───!!
中井出「ナギー!回復を全力で頼む!」
ナギー『わしにだけやさしくすると誓うのじゃ!』
中井出「国に帰れ」
ナギー『冗談なのじゃ!ななななにを隠そうわしは冗談の達人なのじゃー!』
その割りに物凄い動揺っぷりでしたが!?って言ってる暇なんてねぇ!!
中井出「マグニファイ!《モシャァッキィンッ!!》アァーーンドッ!STRマックス!!
おぉおおおりゃあああああーーーーーーーっ!!!!」
さらなる覚悟を胸に、失敗したらこの身を確実に滅ぼすであろう光に向けて剣を振るう!
たったひと振り。
なのにその一撃が光に届くまでの時間が、どうしてか長く感じた。
恐らく───それがどれほど危険なものなのかを、脳が無意識に理解している故だろう。
人の集中力は真なる危機にこそ。
死の間際の走馬灯が長く感じることの如く、俺はその域に達しているのだろう。
だからといって体が動かせるわけでもなく、意識だけが体を置いて超速度で動いていた。
……本当に死ぬ時っていうのは、きっとこんな状況に立っているに違いない。
もちろん静かに死んでいくのならいい。
けど、自然ではない何か別のものに命を奪われようとした時、
いつかこんな世界をもう一度見ることになるんだろうか───
そう考えた時、ジークフリードの柄と刃身の中心にある珠に光が灯った。
なんだろう、なんて思ったけど……見たくても、やっぱり意識が先に走りすぎていて、
それに体が追いつくことなんてなかった。
でももし追いつけたらどうなるんだろうな……グキィッ!!
中井出「いてぇっ!!ななななに───あれ?」
首が急に動いた!……なのにまだ走馬灯空間の中。
……あ、あれ?なにこれ!僕死んじゃったの!?
周りの景色はゆっくりなのに、俺剣とか構え直しちゃってるよ!?
デッテェーケテェーーーン♪
ピピンッ♪《人器全解放!!潜在能力“人体極致”を会得した!!》
中井出「……エ?」
じ、人体極致……ぬ、ぬう、聞いたことがある……!
……つーかナビメールが届いてる。
あのーイセリアさん?今がどういう状況か解ってる?
読む俺も俺だけどさ。
◆人体極致───じんたいきょくち
地界人の身、地界人の回路にのみ起こる神秘。
喜怒哀楽、恐怖と絶望、強さと弱さ、生と死の理解、勝利と敗北の意味、
戦と逃走へ意志、そして覚悟。
全てが揃った時に解放される人の感情の末。
漫画でしか在り得ないなどと言われることから真実まで、
あらゆる“人”の潜在能力を引き出す奥義。
水の上を走るだとか虚空を蹴って二段ジャンプするだとか、
死の直前の集中力だとかを極限まで引き出し、己の力とする。
一度の戦いに一度しか使えない上、人体能力を相当数引き出すものであり、
脳や体への負担は大きいために超時間の行使は禁物。
*神冥書房刊:『人体能力100%解放絵巻』より
……。
中井出「え、えーとあのー……人体能力って普段20%しか使われてねーんだよね?」
それを100%引き出すって……あ、あの、僕滅茶苦茶怖いんですけど。
ピピンッ♪《なお“集中領域”は30秒で壊れます》
中井出「先に言ええぇえええーーーーーっ!!!!」
ギシャァアォゴヴァアアーーーーッ!!!
叫んだ途端に元に戻る速度!
だが慌てて振った剣は、間に合わないと思いきや酷くあっさりと間に合い───!!
ズァアアガガガガガガァッ!!!
中井出「ぐっ……!ぬ、ぐぉおおおあああああっ!!!!!」
跳ね返そうと受け止める光が、この腕にズシリと圧し掛かった。
構え直した所為で、ろくに力を込められなかったからだ。
力任せの一撃なら、きっともう返せていただろうに……!!
ブヂッ……!メギギギッ……!!
中井出「いがっ……ぁっ……!!が、はぁああっ……!!!」
極光が、受け止めている剣の先に居る俺の皮膚を焼く。
それはそうだ、レーザーは個体じゃない。
アスラーナの魔法反射能力の保護がなければ、こうして受け止めることさえ出来ない。
剣の幅しか抑えられず、普通ならばとっくに塵と化していただろう。
ナギー『ヒ、ヒロミツ……!頑張るのじゃ……!ヒロミツ……!!』
焼ける体が痛い。
でも……ナギーがそれを癒してくれるお蔭で、力だけは込めてゆける。
鋭い痛みに無意識に力が抜けてしまうこともなく、全力で。
だけど出力のケタが違う。
未だにレーザーを吐き続ける守護竜の力と、人間の俺とではあまりにも───!
さらに風圧に体が持っていかれそうになり、踏ん張れないのだ。
このままじゃ───否!!
中井出「人は竜には勝てない……!人はバケモノには勝てない……!
そんな常識を、先人達は知恵と、そして武具で乗り越えてきた!
ドラゴンスレイヤーで竜を!吸血鬼を聖具で!
そして俺には───ジークフリードが居る!旅の道連れに命を預けないで!
そいつを心から信頼しないで!いったい何に勝てるかぁーーーっ!!」
ヂガアアアンガガガガォオオオン!!!
中井出「がっ!ぐっ!ぐぅううあぁああああっ!!!!」
体が焼ける!焼ける!焼ける!!
力を込めれば込めるほど、傷口を圧するみたいに痛みが現れてくる!
でも引き下がれない!引き下がるつもりも毛頭無し!!
こんな状況に立たされた男が、後ろ向いて逃げ出すなど……面白そう……!
じゃなくて!ええいともかく許されぬ!!
男だろうが女だろうが関係ねぇ!やるって決めた時には博光!
すでに行動は───終わってるんだよぉおおおおっ!!!
風圧の所為で踏ん張れない!?だったらそれを殺す力が俺にはあるだろうが!!
中井出「ハイパーアーマー発動!!《ゴキィンッ!!》」
どれだけ力を込めても押しやれない!?
だったら……今手に入れたばかりの力を、この瞬間だけのために使え!!
手に入れた能力全てを駆使してでも、覚悟を決めた先に辿り着け!
責任だとか使命だとか夢なんて関係ない!
そんな荷物を置いてけぼりにしてでも、何者にも縛られない雲であれ!
中井出「“人器()”───解放!!」
ドクンッ……!!
体全体の血脈が躍動する。
血が巡り、視界が赤く染まり、体に覚えの無い力が漲る。
覚えがないのは当然だ、俺達はそれを、20%までしか引き出したことがないのだから。
ジャ……リィッ……!
ダークドラゴン『……!?なにっ!?』
前へとゆく。
極光を受け止めながら、一歩、一歩と。
その度に衝撃を受け止めるべき関節が軋み、骨が軋み───
血の巡りすぎで頭が痛み、体が熱くなりオーバーヒートを起こしたような状態に陥る。
望む望まないに関わらず、確かに長時間の行使など不可能だ。
でも……それでも!
今やるべきことだけは、絶対に───成し遂げる!!
中井出「ブッ……飛べェエエ……!!!」
力を込めると、人器の力なのか器詠の理力とともに武具と一つになったような───そう、
たとえば……噛み合わなかった歯車ががっちりと噛み合わさったかのような感触が、
自分の中で確かに感じられた気がした。
そうなるともう止まらなかった。
武具たちが“ようやく繋がった”と喜ぶように、
俺もまたその感触を人生最大の喜びであるかのように受け取ると───
涙さえ流しかねない感情の渦の中で、
ただ只管に───目の前の敵を滅ぼすことだけを望んだ。
喜ぶのもいい。でも、それはこいつを倒してから思いっきりしよう、と。
ひとつひとつはとても小さな絵の具が……たとえみすぼらしくてもいい。
俺っていうキャンバスを見つけ、彩を重ねることを喜ぶように……俺達は一つになれた。
ダークドラゴン『歩けるというのか!我が渾身の波動だぞ!?
それが───それが人間ごときに押されているというのか!!
有り得ぬ!有り得───』
中井出 「カァアアラミティィイーーーーーーッ!!!!」
ゴガァアアガガガガギガァッチュゥウウウンッ!!!!
ダークドラゴン『こんなことが!こんなっ……こんなぁあああああっ!!!!』
俺だけじゃない。
武具と一緒になって振り切った一閃は、アスラーナの力を以って力強く弾かれた。
飛んで来た方向を戻るように。
その先で極闇のレーザーを放っていたダークドラゴンをも巻き込んで。
ダークドラゴン『ガァアアォアァアアアアッ…………!!!』
ダークドラゴンは巻き込まれても避けようとしなかった。
逃げれば、己が人である俺に負けたことを自ら認めたことになるのだと思ったからだろう。
……愚かしいのはどっちだ。
それだけ強けりゃ、生きてればいくらでも俺をコロがせる機会なんてあっただろうに。
それが理解できないだけ、お前は俺達弱い人間なんかより弱かったんだよ……。
中井出「ああ、もう……疲れたぁあ……」
ナギー『《どぐしゃあ!》ぷぎゃあっ!!』
中井出「あ」
力を使い果たした勇者さまのようにザムゥ〜と背中から大地に倒れた……んだけど、
ナギーがしがみついてたの忘れてた。
中井出「お、おお〜〜〜っ、だ、大丈夫かナギ〜〜〜ッ」
ナギー『そ、そう言ってくれるのならまずどいてほしいのじゃ……』
それもそうだった。
だけど動こうとした俺の体は───人体能力解放のためかボロボロで。
動かそうとしても、動いてはくれなかった。
【Side───End】
ガンガガガガガガガガォオオオンッ!!!!
遥一郎「ブラストブラストブラストブラスト!!!」
シード『イーヴィルレイ!イーヴィルレイ!イーヴィルレイ!』
魔法を放ちながら、遠くでレーザーの輝きが巨大な黒を破壊するのを見た。
───来る!あとはこいつをこのまま足止めしておけば───!!
ダークドラゴン『───グッ!?な、んだ……!?我が半身が───』
そう意識した途端、
様々な色に輝くダークドラゴンが体を折るようにして行動を停止させる!
半身が消えた故か───!?どうだっていい!
遥一郎「シード!今だぁあっ!!」
シード『黙れ!僕に───命令するなぁあああっ!!!』
シードが印を切り、地面に右の手の平を叩き込むように落とす!
すると先ほどダークドラゴンを閉じ込めた不可視の力が作用し、
もう一度ダークドラゴンを───
ダークドラゴン『……!?小賢しい!一度使った魔法が我に通用すると思うな!!』
───いや!完全に作動する前に気づかれた!
巨大な飛翼を大きくはためかせて、不可視の力が届く前に空中に逃げられてしまった……!
……───え?な、んだ……?そのさらに上の青空から、何かが落ちてきて───
ダークドラゴン『ははははは!!残念だったな!
気づいていたぞ!?貴様らはあの極光で我を殺したかったのだろう!?
それを知っていた上で貴様らを散々と遊ばせておいてやったのだ!
……だがそれもここまでだ!よくも我が半身を───』
声 『“串焼き()ォオオーーーーーッ”!!!!』
ギュルァドォオッゴォオオオオオンッ!!!!
ダークドラゴン『グアァアアオガァアアアアッ!!!?』
落ちてきた何かは、容赦一切無しで俺達を見下ろすダークドラゴンを地面に串刺しにした。
それも、なんの変哲もない蹴りでだ。
それなのに、散々魔法を撃っても切り込んでもビクともしなかったダークドラゴンは、
大ダメージを受けて血を吐きながら地面に転がった。
藍田 『ハァッ!ざっとこんなもんっ!!』
降ってきたなにかは藍田亮だった。
灼熱とも言えるくらいの色と熱量をしているであろう紅蓮の具足を身に着け、
黒衣を纏ったそいつが妙なポーズを取っていた。
遥一郎「ばばばばかっ!暢気にポーズなんて取ってないで逃げろぉおっ!!」
藍田 『え?俺?───あ』
チラリと見た先にはエレメンタルレーザー!!
途端にギャアアと叫びながら、倒れたダークドラゴンから逃げる藍田!!
ダークドラゴン『ガッ……ば、かな……!我が……!我がぁああっ!!』
それを追うようにダークドラゴンも闇と化して逃げようとするが───
既に不可視の力の領域に入ってしまったやつが、そこから逃げられるわけもなく───
藍田 『あ、あれ?なんだこれ……あれちょっ……見えない何かが───イヤアアア!!』
一緒にその領域に入ってしまった彼も、当然逃げられるわけがなかった。
やがて───
ヂガァアアォガガガガガガォオオオンッ!!!!
ドガガガガガガガガゴッバァアアンッ!!!!
……悲鳴すら残すことも出来ず、
倍返しされたレーザーに飲まれたダークドラゴン……と藍田は、塵となって消え去った。
ボゴォッ!
藍田 『やあ』
って生きてた!?
なんか地面から沸いて出た!サイバイマンみたいに!
藍田 『ククク、正面はダメでも空と大地。発想の転換が俺の命を救ったのさ』
遥一郎「あ、あの一瞬で穴掘って逃げたのか……」
なんてやつだ。
藍田 『や、でも間に合ってよかった。これで心置きなく剥ぎ取りを───…………』
岡田 「どしたー?もう倒しちまってたかー?」
丘野 「藍田殿、早いでござるよ」
清水 「んあ……どうかしたのか?」
藤堂 「便秘か?」
田辺 「……ありゃ?ダークドラゴンの遺体は?剥ぎ取りしようと思ったのに……」
藍田 『あ、いや……その。消えちゃった』
総員 『………』
木っ端微塵だったもの。
ともあれ戦いは終わったんだ……いい加減休みたい。
なるほどだ。
守護竜討伐っていうのは短い時間の戦いなのに滅茶苦茶に疲れる。
中井出がやりたがらない理由がよ〜〜〜っく解った気分だ……。
ピピンッ♪《ダークドラゴンを討伐した!遺体が消滅してしまったので、
それぞれのバックパックに討伐報酬として入手!》
総員 『オ〜〜〜ッ!』
一応こうして、素材も手に入ったことだし……中井出の様子を見たら、休もうか……。
ああ……疲れた……。
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