───冒険の書249/VS刻震竜5───
【ケース601:中井出師父(再)/それぞれの意地】
それが危機じゃなかったといえば嘘になる。
信じられないことってのは得てして予測がつかないからこそ信じられないわけで、
この時俺の身を襲った自体も、油断がどうとかの問題以前に予測すら出来なかった。
ザゴォンッ!!
バギッ……ブギィイチチチバギベギゴブシャアッ……!!!
サウザンドドラゴン『グガァアオシャァアアアッ!!!!』
なにをしたのか、なんて……口にしたくもないが───
大丈夫!なにを隠そう俺は説明の達人だぁあああっ!!
中井出「心臓に向かってた筈がなんと鱗とかいろいろ自分で突き破って、
サウザンドドラゴンが俺を引きずり出したぁあーーーーーっ!!」
説明終了。
驚くなってのが無茶ってもんだ。
あと少しってところで胸殻や皮を突き破り、
体の内側を進んでいた俺を
鷲掴みし、そのまま青空の下へと引きずり出したのだ。
しかもしっかりと捕まえた俺を見下ろし、グルルルルと低く唸っている。
自分を貫けるってことは、物理攻撃が通用するってこと……か?
恐らくはまた体質変化を使ったんだろう。
でも右前足は治ってない。
どうやら発動させた体質変化を解除しただけの話らしい。
だが助かった。そう何度も傷を癒されちゃあ、こっちに勝ち目がない。
……とはいえ、やばい。逃げられない。
鷲掴みというよりは“指の檻”に閉じ込められた俺は、
馬鹿げたデカさに改めて驚くしかない。
これで少しでも力を込められれば、
衰弱状態から完全回復していない俺は簡単に潰れるのだろう。
……あ、やっぱりヤバイ。
指からジワジワと圧力が───
中井出「ナマヅメハーガス!!」
ベキャア!!
サウザンドドラゴン『ゴァオギャァアアッ!!?』
人間、死ぬ気になれば案外いろいろ出来るもんだと感心した。
火事場のクソ力……KKDとでも言いましょうか。
死地に追いやられた人間の本能が、僕に生きろと言っているのか。
かつてある力を発揮した俺は震える腕から双剣を出現させて、
爪と肉の間を今持てる全力を以って切り裂いた。
瞬間、予想外の痛みに広げられた手から逃げるようにっつーかもう無様に逃げ出し、
ゴシャーンと地面に落下した。
中井出「ごぁあああ……!ひ、響くっ……!筋肉に響く……!!」
着地寸前でフロートを発動させて落下速度を殺したには殺したが、それまでだった。
地面に着いてからは筋肉が悲鳴をあげ、敵の前だというのにごろりと転がってしまった。
だが、無様でいい。
意地でも生きて、まずは時間稼ぎを───!
中井出「はっ……あ、ぐ……!」
衰弱している体が恨めしい。
時間とともに治るんだろうが、時間っていうのは実にイヤミったらしい存在である。
辛い思いをしている時には時間を長引かせるくせに、
楽しい時にはあっという間に時を飛ばす。
なんとか立ち上がって、見上げた先に居る相手が時の守護竜ということもあり、
忌々しくも睨んでしまう自分が居る。
中井出「お、おのれ〜〜〜っ!か、体さえ無事ならば貴様などに〜〜〜っ!」
貴様などに………………ボコボコにされるんでしょうね。
耐久力も防御力も攻撃力も、全てが他の守護竜とはケタ外れだ。
体が無事でも、どれほどボコられるか想像するだけで地獄的でございます。
中井出「ぬっ、ぐ、おおお……!!!」
あ、あれ?いや……ちょ、あれぇ!?
か、体が動かない!───もしやさっきの根性の一閃で体に限界が!?
否である!レッツ根性論!
何度でも起き上がれる英雄じゃないけど、きっと根性出せばなんとかなるんだぜ!
どこぞの戦乙女プロファイルでも、殺されてもガッツで生きていられるし!
ゴ……ゴゴゴゴゴォオオッ……!!
後ろ足が持ち上げられる。
二本足で立っているサウザンドドラゴンは酷くゆっくりと右後ろ足を上げ、
俺を潰しにかかる───って冗談ではないわ!
う、動け動けやばいやばいってちょっと待て待ってイヤァ待ってぇえええっ!!!
ドズゥウウウウウンッ!!!
近辺の大地が割れるほどの衝撃が地面を走る───!
衝撃が地面から溢れ、割れた先から物凄い風圧が吹き荒び、
轟音を高鳴らせて瓦礫が舞う様は活火山の誕生が如く。
中井出「あばっ───あぶ、あばぁあうわぁあーーーーーっ!!!」
危なかったと言いたいんだが、口が落ち着いてくれやしない。
ギリギリのところをゼプシオンに蹴り飛ばされた俺は、
現在ドグォシャシャシャシャシャシャァアアア!!!!
中井出「ちぇるしぃいいいいーーーーーーーっ!!!!」
離れた山まで吹き飛び、顔面から草原を滑った。
麻衣香「うひゃあっ!?ひ、ヒロちゃん!?」
夏子 「ヒアーーーーッ!!!」
中井出「《バゴォム!!》ジョウイ!」
しかもそこは麻衣香たちが居た山だったらしく、顔面で地面を滑走し、
己のもとへとやってきた俺に心底驚いたらしい木村夏子二等に雷獣シュートで蹴られた。
そんな僕を見て、景色の先でサウザンドドラゴンと対面するゼプシオンが一言。
ゼプシオン「事情は解らぬが動けないのだろう。そこで見て《ビギィッ!》うがぁっ!?」
……言ってる最中にヘッジホッグスキルのダメージに顔をしかめていた。
グオッフォフォフォ愚か者め……!この博光をただで蹴飛ばせるとでも思うてか……!
ていうか手加減くらいしてほしかったナ……せっかく回復したHPがまた一桁に……。
中井出「ま……麻衣香……HP回復……お願い……」
麻衣香「味方である人に助けられてボロボロって、どうなんだろうね」
夏子 「いいんじゃない?提督さんだし」
どういう納得のされ方なんだろう。
でも回復は実行してくれたからOKさ───っと、丁度衰弱も回復してくれたな。
はぁ……これでようやく一息つける。
中井出「フーイ……。や、じっくり見ると凄いな」
麻衣香「砲撃?うん、ちょっと普通じゃないね」
眺める景色はずっと砲弾とバリスタの弾で埋め尽くされている。
エーテルアロワノンとサウザンドドラゴンを挟んだ場所、
そこより横に逸れた位置にあるこの山は、中継地点としては申し分ない。
なにを中継するのかは気にしない方向でいることにするとして、
俺の回復を終えた麻衣香は魔法詠唱をして攻撃魔法を連ねてゆく。
物理攻撃無効化がなされてからはそうしていたらしく、
俺と話しながらでもあまり集中を欠かさなかった。
……これが天空での修行の成果ってやつなんだろうか……素晴らしい。
マクスウェルは教えるのが上手いんだろうな。習う気ねーけど。
超実戦流を極めるのが今の俺の野望の一つだから、それでいいのさ。
中井出「ぬぅうううううん……!!《チュミミミミミミミミィイイイン……!!》」
夏子 「……?さっきからなにやってるの?提督さん」
中井出「むん?おお、マナ集束法だ。マナを掻き集めて然の力の糧にするんだ。
そうすることで然の加護を強化して、筋肉痛を癒してる」
夏子 「筋肉痛って……あの死神や神や月の家系全てをショック死に至らしめた?」
中井出「や……軽く言ってくれるけど、本気で痛いよ?
なんならドラゴンインストールだけでも味わってみる?
武装解除して貴様に装着させて、
ドラゴンインストール発動させれば夢にまで見た筋肉痛を体感できるぞ?
俺しか装備出来ないっていうのは、
意思通して武具たちを説得すればどうにでもなるし」
麻衣香「そうなの?」
中井出「一武装が俺だけしか装備出来ぬなどということが有り得ようか。いや無い。反語」
英雄に選ばれし伝説の剣じゃあるまいし、そんなことは起こらん。
俺達は皆、それぞれが少ない力を合わせて強くなった凡人凡器の集合なのだ。
装備した途端に重くなるのは、
ひとえに武具たちがこんな俺でも持ち手として戦友として認めてくれているから……
だと思う。
そう考えるとほら……嬉しいじゃない?感動じゃない?スパーキングじゃない?
真相がどうだかはあえて度外視します。
他人の手に渡った途端にグラビティマックスになるジークたちが愛しい今日この頃です。
や、厳密に言えばグレートソード時代からの友であるからして、感謝感激豪雨霰崩。
などと訳の解らん造語を思い浮かべている余裕は実を言えばなかったり。
バーサーカー『グゥォオオオオオオオゥウッ!!!』
尾撃、噛み付き、ぶちかまし、爪撃、ビーム、レーザー、なんでもありの刻震竜を前に、
既に幾度か死んでいるらしいバーサーカーももはや限界。
アンヘルの武装も煙をあげながら無残に地面に転がる始末で───
夏子 「え、えっと……さっきので十一回目だから……も、戻って!バーサーカー!」
宝具“ゴッドハンド”の力で十二回コロがされなければ復活出来るバーサーカー。
だがしかしもうそこまでコロがされていたらしく、
木村夏子二等は切羽詰った表情でバーサーカーを戻した。
夏子 「うう……信じられない……。
強化したバーサーカーがこんなに早く十一回も殺されるなんて……」
麻衣香 「魔法もあまり通用しないし……どうしよ……」
中井出 「うむ!では貴様らに気後れせぬための処方箋を授けよう!気をつけぇい!」
麻衣香&夏子『《ビシィッ!》サーイェッサー!!』
中井出 「まずこれを装着せよ!
というかもう好きなもの手にとって刻震竜の口の中か、
ズタボロの右前足を狙うべし!」
言って、再びブレイブポットからバレットウェポンズを解放!
解放限界(二十丁)までをごしゃごしゃと地面に置きまくり、さあ、と促した。
藍田に渡したヤツはもう弾切れで消えたようだし。
俺の方はもう大分筋肉痛も治まり、これならいけると気合いを入れ直す。
え?逃げないのかって?───激烈逃げたいけど……ほら、素材、欲しいじゃない?
上質な素材を手に入れるには、それだけのリスクはつきものというか憑き物といいますか。
そのためならば不肖この博光!覚悟を以ってなんとかして素材を手に入れたいというもの!
……え?世界平和?どうでもいいですそんなもの。
時間を飛び越えて伝説の剣を手に入れて魔王と戦って世界を救う。
恋あり笑いあり涙あり。
波乱万丈、息をつかせぬ無数の冒険と、それに立ち向かう何人かの英雄たち。
そういったものを目当てとして降り立ったんならまだしも、
俺としては魔王がどうしようが誰がどう立ち向かおうが知りません。
僕は僕の冒険をして、魔王と呼ばれようがどうしようが自分の目的は折りません。
使命に縛られるために降りたのではない。
楽しむため…………っ!ただそれだけのために……俺はこの世界に降り立った…………っ!
中井出「そのための第一歩ーーーっ!
巨大生物ヴァトルから逃げてはハンターの名折れ!……ハンターじゃねーけど!」
夏子 「提督、足震えてる」
中井出「いいよもうそれは!!怖いもん!死にたくなければ震えもするよ!!」
麻衣香「わー……物凄く正直な魔王さん」
中井出「妻である貴様は魔女?魔女王?」
麻衣香「全部嫌な名前だから却下させてください、サー」
中井出「間をとってマサイ族!!」
麻衣香「どんな魔空間とったの!?どんな間をとれば魔王の妻からマサイ族になるの!?」
中井出「うむマサイ!漢字で書くと〜〜〜……こう!!」
地面にズザーと文字を書いてゆく。
魔に妻で……ハイ魔妻!マサイと読みます!
夏子 「よろしくマサイの人」
麻衣香「夏子ぉおーーーっ!!?
ちょ……やめてよ人の肩に手を置いてのガイアスマイル!なにその立てた親指!」
中井出「じゃあ僕行くね?戦いが僕を待ってるんだ」
夏子 「素材、の間違いではありませんか?サー」
中井出「ンもちろんさぁっ!!」
夏子 「うわっ!見事なドナルディックスマイル!」
この道、我が旅、武具とレベルと好奇心に捧げる!
だって素材ほしいじゃないですか。
冒険を楽しみ強化を楽しみ“この世全ての楽”を味わいつくす。
この世全ての悪ではなく、この世全ての楽、楽しさです。
その名もリ・マユ。アンはつかないのです。
訳が解らんからよし突っ込もう。
中井出「各馬一斉にスタートォッ!!」
ジークフリードに乗り、一気に出発。
直後にブレイブポットからサテライトリンカーを発動。
衛星レーザーを射出させ、天から光を舞い下りさせる!!
ヂガァアアガガガォオオンッ!!!!
的の大きさ故だろうか。
地泳竜の時とは比べ物にならないくらい巨大なレーザーが空から下り、
刻震竜の姿をそのまますっぽりと光の柱で包んで見せた。
最初は線程度の光。
大きさからして編み縄程度の大きさだった光は瞬間的に範囲を広げ、
サウザンドドラゴンの巨体を光で見えなくするほどに巨大化。
地面を直撃する光は轟音で耳を劈き大地を抉り、
砕けた前足や斬られた飛翼部の肉を焼いてゆく。
景色や竜を破壊する光を眺めながら山から一気に下りた俺は、
程度のいい高さに来るとジークフリードから地面にむけて跳躍。
中井出「おぉおーーーりゃっ!!」
霊章転移でジークフリードを霊章に納めると、
ウェポンチャクラムにして右手に出現させて即座に投擲。
巨大化した指輪を軸に高速回転する双剣が破壊の光に消えるのを眺めながら着地。
すぐに走り、サテライトレーザーの音に混ざって聞こえる鱗を破壊する音に集中。
チャクラムが戻ってくる頃には消えたレーザーに続き、チャクラムを掴むと同時に閃斬!
中井出「ぜいやぁああっ!!」
ヒュフォゾギィンッ!!!
手に取ったチャクラム───いや、指輪を軸に出ていた双剣の柄を掴み、
振り下ろす動作のままにチャクラムを解除。
手をクロスさせて掴んだために、振り下ろすと自動的に交差の一閃となったそれは、
既に連撃や砲弾やレーザーといった、
度重なる攻撃によってボロがきていた鱗を容易く斬り砕いて見せた。
斬ったのは右の後ろ足。
巨大双剣であるジークムントとジークリンデがつける大きさだ、
ただの切り傷程度じゃ済まされない。
……済まされないんだが、敵の体の規模にもよるよな……うん。
ええい考えるより先手先手じゃ!
中井出「だっ!ふっ!せい!はっ!ふんっ!せあぁあありゃぁああっ!!!!」
ガッゴッギィンッ!ギヒャンゴギィンゾギィンガギィンゴコォッフィィインッ!!
一撃に全力を込めれば鱗は斬れる。
それは解った。
が、連撃となると話は変わる。
速度重視でいこうとしてしまうため、上手く力がノらないのだ。
ならばどうするかって話なら当然全部全力で斬る!
中井出「すぅっ───」
ゾガァッフィゾガァッフィゾガァッフィゾガァッフィン!!
STRマックスだろうが、疾風で放てば問題ない。
ただどうしても大きさには問題が出るわけで───
おまけに呼吸法からくる速度変化だから連発が効かない。
四度ののちに呼吸を整えまた疾風。
連撃速度は相当だが、四度以上先に進めばすぐ盲目だ。
さらに連ねたい衝動を抑えるのも案外大変である───っておわぁああああっ!!!
ルフォドギャアッギィンッ!!!
中井出「ぐぼぉっふぇあああああっ!!!」
呼び動作無しで振るわれた尾撃を、なんとか長剣化させたジークで受け止めた───が、
衝撃は俺の体を軋ませ、かなりの距離を吹き飛ばさせた。
中井出「うげっく……!ガ、ガード越しからなんて威力だ……!
こ、こんなのまともにくらったら一発アウトだよ即通報だよォオオ……!」
ついボクシングマンガ的なことを呟いてしまう。
途中から黒サンタになったが、これは本当だ。通報はウソとしても。
ジークフリードを構えていたっていうのに、俺の体には相当なダメージが徹っている。
飛ばされながら体勢を立て直そうとするが、
生憎こっちにはそう何度も立て直しが成功するほどの身体能力が備わってるわけでもなく。
地面に触れて体勢を立て直すきっかけとなる筈だった左足は見事にスカり、
中井出「ハワァアアーーーーーッ!!!?」
バキベキゴロゴロズシャアアーーーーアアアーーーーーーッ!!!!
中井出「ギョエェエエエアァアアアーーーーーーッ!!!!!」
余計に体勢を崩してしまった俺は豪快に大地を転がり滑ることになってしまった。
だが強引に起き上がると、それでも納まらなかった勢いを無理矢理殺すために、
前へ向かって烈風脚&スラスト!
中井出「リィイイイイヤァッ!!!」
風を巻き込む疾駆と同時に片手で持ったジークフリードでの突き。
ゾブシィンッ!と剥き出しの肉に突き刺さるが、切っ先程度しか埋まらず、
それどころか抜けっ……うえええウソでしょう!?抜けない!抜けないよこれ!!
抜け───ええい構わんブチ撒けオリャァアアッ!!!
中井出「絶破ァッ!!滅焼撃ィッ!!」
ゴババババババォオオン!!!!
ジークフリードに意思を込めて、超振動と炎風を巻き起こす!
軽いものどころではなく、
炎の波動砲でもブチかましたのかと思えるほどの炎と爆発が吹き荒れる!
───同時に、炎風とボマーの爆発に足を少しだけズリ動かされたサウザンドドラゴン。
それを見てニヤリと笑った俺は、休む間もなく全力を振るい続けた。
斬り上げから払い、突き、身を捻りて、続けざまに連ねること三閃。
……が、それもこれも傷口を少し広げる程度の効果しか示さないことが口惜しい。
中井出「うぅっわ硬っ……!!なんつー筋肉してやがるんだ……まるで鋼だよ」
だが諦めない!それが俺達に出来る唯一の戦いなんだよ!
つーかさ!よく一点集中は強いとか言うけど、あれってほんとにそうなのか!?
こっちの体が小さけりゃ穿とうとする場所も狭まるわけでしょ!?
だけどこんな有様で、けど巨大化すりゃそれなりに吹き飛ばせるまでになるわけで!
……規模の問題だな、うん。よし解決!!
中井出「はぁあああああああああっ!!!!」
体に戻したニーヴェルンゲンから霊章を引き出して、
全身に行き渡せると火闇を纏いつつ超巨大化を実行!
そのまま後方に跳躍して───後方に突き出した剣からジェット噴射!
すぐに前方に突き出した剣とともに、我が身を爆裂する刃に変えて突っ込む!
中井出「皇王ォオッ!!」
キュヴォァゴババババォオオオオンッ!!!!
切っ先が肉を裂き、筋を剥ぎ、燃え盛る火闇に焼かれる様を見ながらさらに突撃!!
サウザンドドラゴンが痛みに身を暴れさせたために軌道がずれ、
肉と筋を裂きながら刻震竜の後方へと滑るように着地───
中井出「絶炎衝ォオオオオッ!!!」
───するや、無理矢理体の向きを変えるとともに地面を烈風脚で蹴り弾く!!
サウザンドドラゴンが向き直る前に、千切れた脇腹付近に一閃を決め、
相手が向き直った頃には逆に敵の後方へと至る───!
サウザンドドラゴン『グオ───!?』
中井出 「焼ァアアき尽くせぇえええっ!!」
次いで追ってくるのは火闇の軌跡!
大地を滑るように疾駆し一閃した俺を追うように、地面を走る爆裂する火闇!
それは再び向きを変えサウザンドドラゴンを見据えた俺へと、
巨大化しても見上げるほどのサウザンドドラゴンを小さく吹き飛ばす威力を誇っていた!
中井出「それで済むかよぉっ!!熱衝!蒼刃塵!!」
じゃなきゃ既に準備を始めてた俺が物凄くかっこ悪いので!
軽く地面から飛んできたサウザンドドラゴン目掛け、
虚空に作った輪状のカタパルトへと炎風大砲を放つ!
一撃でも二撃でも終わるような相手じゃないなら終わるまで撃ち続ける!
これ、人間の知恵!
中井出「サイナート!技を借りるぜェエエ!!“双牙旋空衝”!!」
ジークを双剣化させ、さらに奥義を発動!
TP20を消費して六閃化させた剣からこれでもかというほど剣閃を放ちまくる!!
放たれるのは炎と風の剣閃!
ワハハハハ!!一振り六閃の妙技を時折混ざる疾風で加速!
見よ!これぞ暴風烈火衝!(命名:俺!)
中井出「そりゃそりゃそりゃそりゃどすこいどすこいどすこぉおーーーい!!」
ザンゾゾゾゾゾゾガフィゴフィゾフィフィフィフィィインッ!!!!
中井出「すぅ───はぁっ!すぅっ───はぁっ!!ぐおおおお呼吸法が面倒だぁああ!」
だけどその分腕が早く動くのは確かなわけで!
くそうファンタジーって面白ぇなぁ!そして一筋縄ではいかせてくれん!
サウザンドドラゴン『グゥオオオオオオオッ!!!!』
ルヴォアドガァアアアアアォオオオン!!!!
中井出「だぉあぁあーーーーっ!!!」
吹き飛びながらしっかりと攻撃を繰り出してくる刻震竜。
振るわれた尾撃を咄嗟に跳躍で躱すが、俺から目を離さない眼光と、
同時に動く口からレーザーとビームが放たれ───ってちょっと待てぇえええっ!!!
中井出「こおおおおこここんなときはぁああ!!メタルボディ!!鋼鉄の肉体ィイイ!!」
ゴシャーーーン!!
ピピンッ♪《メタルボディが発動!やせ我慢の効果!》
うむ!これでよガォオオオオオオン!!!
中井出「ほぎゃあああああああーーーーーーーーーーっ!!!!!」
鋼鉄の肉体となった我が体を極光が包む!
痛みは───無い。無いが、なにせこれはやせ我慢なのだ。
この状態で蓄積されたものがあとになって溢れだす───これはそういう能力なのだ。
ならば───ズザァッ!!
中井出「ぬぅうううぉおおおおおおっ!!!!」
双剣を霊章に仕舞い込み、振るわれ、速度を失った尻尾を着地と同時に掴む!
あとのことは後で考える!つーか我に策あり!
中井出「STRマックス!ジャアアイアントスウィイイイイング!!!」
巨体を振るう!根性で振るう!腕が悲鳴上げようが振るう!!
───つ、あ、だめ!やっぱ筋肉がちょっと痛ズルゥッ!
中井出「あ」
ゴギャーーーー…………───どごーーーん!!
手からすっぽ抜けたサウザンドドラゴンが、遠くの山に激突した。
っとボケっとしてる場合じゃない!
運悪くエーテルアロワノン方面に投げちまった!
敵を近づかせないのと討伐とが目的なんだ、これはいかん!
中井出「すぅっ───焚ッ!!《バゴォッ!!》」
地面を烈風で蹴り砕いて即座に接近!
置きあがろうとするサウザンドドラゴンの尻尾を再び掴み───って!
中井出「《ギュルグキィッ!!》ぐおはっ!?」
掴むどころか、逆に首に巻きつけてきやがった!
だが甘し!矮小化発動!!
サウザンドドラゴン『ガ───!?』
突然小さくなり、尻尾から感触が消えたことに戸惑ったのか、
こちらを向くサウザンドドラゴン。
その目に向けて、無剣状態の左腕に生えたホズから、集めたマナを光に変えてぇええ!!
中井出「突き刺され!グーングニル!!」
シュカァッ!ゴギインッ!!
中井出「んがっ!?」
発射した赤い光が、閉じられた瞼の前に霧散する。
ったぁあーーーっ!くそっ!硬すぎだってのこいつの鱗ズキーーーン!!
中井出「いがぁあったぁああああたたたたたうぎゃああああーーーーーーーっ!!!!」
驚いた拍子に、と言っていいのか悪いのか。
タイミングってやつはどうにも悪いところにばかり転がり込むようで、
唐突に効果が切れたメタルボディのしっぺ返しに絶叫した。
死にはしないのがこの能力のいいところだが、その分とても痛いので涙が止まらない。
刻震竜のレーザー&ビームだ、食らった時点で脚がそうであったように一発消滅が当然。
それが痛みで済んでるんだ、死にたくないって本気で思うならむしろ望むところ!!
中井出「アイテムマグニファイ!」
落下しながらエクスポーションにアイテムマグニファイを通して流し込む!
───が、HPが大量回復〜ってのを期待するだけ無駄だった。
酷く美味しいだけで、HP回復量は一緒だった事実に、痛みとは別の涙を僕は流しました。
……回復アイテムの潜在能力に期待するのは金輪際やめよう……
そう思ったとある夏の日であった。
こういう時なんだろうな、人がヤケ食いしたくなるのって。
そんなわけでグミをポーションで流し込みまくってヤケ食い&HP回復完了!
おまけに普通サイズに戻るのも忘れてない。
中井出「グオッフォッフォ……!さあいくぞ巨大竜よ……!!
貴様の素材、この博光が貰い受ける!!……つーかあのぉ!?
前衛が既に俺と英雄王とゼットとゼノ助さんとシュバさんだけってどうよ!!
……あれ?ゼノ助さん死ななかったの?」
ゼノ 『……フン、死んだがな。純粋なる死神は人間などより痛覚の類が曖昧だ。
最初こそ痛みはするが、それも長続きはしない。
後方で蠢く趣味などないから再びここに来たまでだ。それがどうした』
中井出「いやあの……ど、どうもしないけど……」
パワフルですね、ゼノ助さん。
でもやっぱり多少の筋肉痛はあるようで、一動作のたびに顔をしかめていた。
中井出「しかし前衛がこれだけって……
敵に“前に進んでください”って言ってるようなもんじゃない?」
ゼット「構わん。前に出て戦える者だけが戦えばいいだけのことだ」
中井出「アアッ!ゼット!僕の親友!
……キ、キミが隣に居てくれたらこんなに心強いことはないよ!」
ゼット「それはなによりだが、俺はこれから要塞に戻る。あとは任せた」
中井出「あれぇ!?な、何故!?どうしてそんなことに!?」
ゼット「……セシルが心配だ。俺にとっては、今は戦いよりもセシルがなにより大事だ」
中井出「………」
赤くなった顔でそっぽ向きながらのお言葉。
……何処のツンデレですかこいつは。
恋に溺れたか……いや、いろいろなしがらみから解放された今、
ずっと昔の感情がゆっくりと怒りしかなかった心を暖めている……そんなとこだろう。
邪魔するのは無粋ってもんだ。スピードワゴンはクールに去るぜ。
中井出「…………ょ」
ゼット「ん───なに?」
中井出「い、いいから行きなさいよ!ここはあたしがなんとかしとくから!
言っとくけど勘違いするんじゃないわよ!?
べべべつにアンタのためにするんじゃないんだからね!?
こここれはそうっ、みさおちゃん!みさおちゃんのためなんだから!《ポッ》」
ゼット「……気色の悪い振る舞いをするな」
中井出「今のてめぇにだけは言われたくないよそれ!!
いいから行け!いっちまえ!そんで愛の告白でもなんでもしてこい!」
ゼット「こっ───!?ななななにを言う貴様!こくはっ……この俺がか!?」
中井出「知り合いすぎてる仲だから告白なんて今更だ!なんてヤツは俺が許さん!
いいか!ここを退いてみさおちゃんのもとへ行くのならば覚悟を持て!
告白orバトル!相手は刻震竜だぞ!?俺が引き受けてなんのメリットがあるのさ!
だからそんなことを願う権利くらい俺によこせ親友!!
さあ!告白!?バトル!?今夜のご注文はどっち!?夜じゃないけど!」
ゼット「ぐっ───!……ふ、ふん、いいだろう。告白だ。告白を選んでやる」
中井出「あ、みさおちゃん?今聞いた通りだから。ゼットが今から告白しに行くって」
ゼット「ぐああああああ貴様あぁああああっ!!?」
気づかれずにみさおちゃんにtellを飛ばしておいてよかった……。
これでゼットはもう逃げられん。別の意味で。
中井出「グオッフォッフォ……!愚かなり黒竜王……!
この博光がなんの準備もなく口約束などすると思うたか……!!
軽く約束して、あとで告白したなどと言うつもりだったのだろうが……ククク、
甘い……甘いのぅ伝説の黒竜とやらも。
斯様なことでこの博光を欺けるとでも思うておったか浅ましい」
ゼット「くぐっ……ぐおおおお……!!《ブチブチブチ……!!》」
ゼットの顔が血管ムキムキコンテストに出れそうなくらい、禍々しくなってゆく。
おお、物凄い迫力だ。
中井出「じゃあ───行け!ここは俺が引き受ける!
……へへっ、親友の恋路を応援できるなんて、格好いいじゃねぇか!」
ゼット「ありがた迷惑という言葉を知っているか!?」
中井出「なにそれ。ありがた迷惑?知らねー」
ゼット「ギィイイイイイイーーーーーーッ!!!!」
ますます顔を赤くしたゼットが叫ぶ。
おお、これからする告白を思って顔を赤らめてやがるんだきっと!ふふ、ウヴなやつめ。
だがご安心!応援って言ってもこれは応援になぞなりゃしない!
むしろ失敗するがいいさという邪魔者根性を出しての“逆の意味での応援”!
恋路に加担するのは嫌いなので、むしろ失敗を望みましょう。
ライン『……人が黒竜王を手玉に取る風景をどう取る、ゼノよ』
ゼノ 『知ったことではないが、貴様の心労は底知れぬものだろうよ。
……ふむ、いや、それは我も同じか。
生粋の地界人に強さで負けるとなれば、我が心労も相当なものだ』
中井出「クズが!!」
ゼノ 『殺されたいのか貴様!!』
中井出「お黙らっしゃいこのパワーハゲ!人にだって強くなる権利はあるわい!……否!
権利がどうと唱える以前に強くなる自由度は存在する!
それをまああああ地界人だから人間だからと雑魚扱い!このクズが!!
心労がなんだい!ろくに冒険もしてない貴様にそんなこと言われたくないやい!
こ、こっちだって楽して強くなってるわけじゃねーんだぞくそー!!
文句言いたいなら守護竜ブッ潰して素材全部俺によこしてみろワラキア!!」
ゼノ 『……フ……フフフッ……!どうやら相当怖い目を見たいとみえる……!』
中井出「おー怖おーこわ山菜おこわ《ベシベシ》」
ゼノ 『ギイイイイイイイイイイイ!!!!』
おどけて尻をべしべしと叩いてみると、
小さく引きつった口の端が一気に、裂けるほど引きつった。
大丈夫!しっかりと俺の意思を受け取ってくれたらしいブリュンヒルデが、
俺の姿を“指紋マン”へと変身させてくれてたから怒りも一入()だ!
ってだからこんなことしてる場合じゃ───あああもう!!
中井出「とにかく行けって!告白してこいって!
こんなきっかけ作ってやらなきゃ、
お前らいつまで経ってもズルズル行くだけだろうが!」
ゼット「───、な、中井出……博光……貴様……」
中井出「あ、ちなみにどう転ぼうが当方は責任を取りません。
発破はかけたけどどうするかは任せるし。
え?恋の手助け?よしてくださいよ冗談じゃありませんぜグオッフォッフォ……」
ゼット「……今すぐ貴様を殴りたくなったんだが。いいか?」
中井出「な、なにー!?キミに任せるって言ったんだぞ僕は!
告白するもしないも自由!それで何故僕が殴られねばならぬ!
告白するって言葉をみさおちゃんに聞かれたことなら、
キミが軽率なことを言ったことに責任がある!違うか黒竜王!!」
ゼット「う、ぐぅうっ……!いちいち正論を……!!」
中井出「……キミは案外純粋なんだな……。
猛者どもだったら絶対に知ったこっちゃねー!って叫ぶところなのに」
ゼット「………」
ゼットがとても遠い目をした。
それは俺が初めて見る親友の目だった。
中井出「じゃあな……お互い、生きてたらまた会おう」
ゼット「待て。俺は死ぬのか?」
中井出「みさおちゃんに聞こえてたってことは晦や彰利も聞いてただろうから。
もちろん死神関係や月の家系の人全員に。
乙女の純情踏みにじりやがってぇええ!とか娘をたぶらかしおってぇえ!とか、
いろいろ言われてフルボコられるんじゃないか?……だから。
じゃあな……お互い、生きてたらまた会おう」
ゼット「言い直すな。……ああいい、言った言葉に責任は持とう。だがな───」
中井出「みさおちゃんみたいに周りのフォローばっかり考えてる子にはな、
そういうこと、きっちり言ってやったほうがいいぞ?
ああいうのは自分の幸せが見えてないタイプだ。
だからお前がそのカタチになってやれば……コロリよ」
ゼット「……その、なんだ。黒いな、貴様は」
中井出「もちろんさ!」
言いながら、再びエーテルアロワノン……というよりは、
エトノワールを目指して前進するサウザンドドラゴンの尻尾を掴む。
ほんとこいつってば敵が目の前に居ないとすぐに前に……!!
ゼプシオンが押さえてくれてるんだけど、そろそろ彼のHPもヤバイらしい。
時々距離を取ると、回復魔法を使って回復しているようだった。
くそ、なんだか疲れてきたぞもう……。
身体的じゃなくて、心的に。
それもこれもこいつがこっちを見ようとしないからだ!
敵を前にして敵を無視するとはなんたる自信!……つーか敵として認識されてない?
よろしい!ならば粉砕だ!
中井出「我が拳に徹しの奇跡を!ぬぉおおおああああああああ!!!」
こうなりゃもう粉砕!敵がこっちを無視するならやり甲斐もあるというものよ!
甲冑男爵『全身甲冑()の武装錬金!“破壊男爵”()!!』
殴り殺す!宣言しよう!貴様は必ず殴り殺すと言っておこう!
宣言なんて軽く破るのがこの博光ではあるが!
言うだけならタダだし。ね?
なんて思ってたんだが、俺が甲冑男爵になるや、
ギラァ!とこちらに敵意剥き出しの視線を向けるサウザンドドラゴン!
え───もしかして男爵様は敵としてみなされてる!?しかも思いっきり!?
甲冑男爵『お……オーケー上等だ!ランドグリーズに身を包んだこの博光の力!
存分に味わわせてくれる!』
なにせ俺の力は全身甲冑を動かしているんだぜぇええ!!
威力など攻撃に必要なもの全ては武具が捻出してくれるわけですが。
ええ、まあその、俺単体や武具固体じゃあなにも出来ない僕らです。
甲冑男爵『ぬぉおおおおああああ《ドオゴォオン!》アァアアアォオオ!!?』
振りかぶっていざ殴ろうって時に顔面に炸裂する砲弾!!
甲冑男爵『ってオィイイイ!!俺に当ててどうするんだァアアアアア!!!』
ブヅッ───
声 『ごめんなさい、手元が狂ったっつーか男爵様がデカすぎて』
甲冑男爵『殊戸瀬!?キミ殊戸瀬だよね!?無理矢理男っぽい口調してても解るよ!?』
声 『距離感を掴もうとしただけ。今から幾つか補助砲弾を撃つから、受け取って。
崩れたアンヘルを回収して、今はこっちで使ってる。
その加護を以って回復魔法や強化魔法を込めた砲弾を撃っただけ。
今のは回復砲弾だから痛くない筈』
甲冑男爵『え?───いやちょ、痛かった!痛かったよ今の!!
ほんと!?ほんとに回復砲弾だったの!?ねぇ!!』
声 『………………あ』
甲冑男爵『あ!?あってなに!?ねぇ!なにがあったの!?
怒らないから言ってごらんなさい!!ちょ《バゴォン!》ぶべっしぇ!!』
声 『……横から尾撃が』
甲冑男爵『言うの遅いよ!!』
声 『ついでに言うとさっきの砲弾は対装甲砲弾だった。
防御力が高いほど威力が増す』
甲冑男爵『なんでよりにもよって今の俺に一番効きそうなの撃つの!?
狙ってる!?狙ってるでしょ!ねぇ!殊戸瀬!?ちょ───殊戸瀬!?
ぐおっ!切りやがったあの二等兵!!』
ええい覚えてらっしゃい!俺も覚えてられるか不安だけど!
今はとにかく目の前の敵をブッ潰すことだけに集中する!
甲冑男爵『ぬぉおうりゃああっ!!』
バッゴォッ!!!
サウザンドドラゴン『ゲギッ……!!』
思い切り捻った体を筋肉を締めることで一気に戻し、反動を利用して速度を上げて殴る。
いわゆる型に嵌らぬヤンキーナックルだが、
単純に攻撃を当てることが重要なこの世界では、
これだけでも十分に格闘家の一撃に匹敵する。
もちろん威力は比べるべくもないが。
ガゾギィンッ!!
甲冑男爵『うおっ……と!?』
サウザンドドラゴンの反撃───左前足の爪が襲い掛かり、
プレートアーマーに大きな爪痕をつけてゆく。
……うわ、やばい。やっぱりこいつの攻撃力って尋常じゃない。
こんなの、技覚えたさ目当てにたいして強くもないのに四魔貴族と戦うようなもんだぞ?
……逃げていいですか?
中井出「───否!頑張りましょう!命が燃え尽きそうになるまで!!」
燃え尽きるまではさすがに付き合ってられん!
命大事に!命大事に!
中井出「ぬぉおおありゃぁあああああっ!!!」
ドガドガドガドガゴバァン!!
バガドガァンガゴォドゴォバゴォバガァン!!!!
疾風の呼吸法とともに殴る殴る殴る!
徹しを込めた拳は鱗の硬さも皮膚の硬さも無視して、
内部からサウザンドドラゴンへとダメージを与えてゆく!
殴りながら敵との位置をジリジリ変えていくのも忘れない!
変えずに殴り続けてたらエトノワールに近づくだけだからだ。
だがもちろんサウザンドドラゴンもやられてばかりじゃない。
こちらの攻撃をものともせずに反撃を仕掛けるのはもちろんのこと、
外れても問題はないと豪語しているのだろう、明らかに大振りなものや、
避けれて当然の攻撃を幾度も仕掛けてくる。
……ただし、全ての攻撃が一撃必殺の威力を誇っているのだろうから気が抜けない。
鎧を装備しているから耐えられたのであって、
あんなの生身の状態で食らったら一発でオダブツだ。
サウザンドドラゴン『コァアアアカカカォオオオオン!!!』
甲冑男爵 『ういっ───!?』
うわやべっ!人に散々殴らせておいて、こいつレーザー撃つ気だ!!
って言っても殴ってもどうしても怯むこともしないんじゃあいくら殴っても───ハッ!?
甲冑男爵『ええいいちかばちか!!伊達さん!俺に力を貸してくれ!
───脇を締め、腕を目一杯捻り……溜めた力とともに、
捻り込むようにして───撃つべし!ハートブレイクショットォオオオッ!!』
ギュルドゴォン!!
───……ゴプッ!
甲冑男爵『───オオッ!?』
血でも吐くみたいに、溜めていた光を小さく吐き出す刻震竜……
だがヤツの時は止まっちゃいない!
ならば止まるまで殴る殴る殴る!!
甲冑男爵『ブレイクブレイクブレイクブレイク!!!』
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴォン!!!
バゴドゴォン!ドゴドゴバゴドゴガンゴンバゴォン!!
ゴシャアアーーーーーーーアアアアアアア!!!
甲冑男爵『いやぁああああああ!!溜めてる溜めてる溜めてる!!
ブ、ブレイクー!!時よとまれ!ブレイク!お願いだぁあーーーーっ!!!』
心臓までの距離がありすぎるのか!?
殴っても殴っても伊達さんのように敵の時を止められない!
甲冑男爵『ならば覇気脚!!』
ドゴォン!メキバキミシィッ……!!
サウザンドドラゴン『グオギャァアアアアアア!!!!』
全体重&鎧と化したジークから属性を引き出し、
再び重力100倍にて敵の足を思い切り踏み潰す!!
激痛に気が散漫したのか、口から散り散りに消えゆく光に安堵する間もなく拳を構え、
まっすぐではなく斜め下に打ち込むように拳を突き出す!!
体重を乗せて打ち込むなら真っ直ぐに突き出すんじゃあねぇ……下に打ち込むんだぜ!
ゴカァンッ!!
サウザンドドラゴン『ギッ───!?』
多少体を屈め、打ち出した拳がサウザンドドラゴンの後ろ足の左膝を打ちつける。
次いで、反射的に膝を折ったサウザンドドラゴンの肋骨、その最下部へと正拳の一撃!!
次に砕けている右前足に手刀を落とし、
叫びながら数歩下がる巨体の左後ろ足目掛けて跳躍蹴り!!
ヒュラベギャアッ!!
サウザンドドラゴン『───グギャァアォオオオオッ!!!』
重力100倍の跳躍蹴りの威力は尋常ではない。
あれほど苦労して破壊していた鱗をあっさりと砕き、
骨や筋までをバキベキブチブチと砕き裂いた。
……悲鳴は当然だ。
痛みに勝てる生物など、そうそう居るわけもないのだ。
それが、バケモンであれ竜であれ、だ。
甲冑男爵『す……すげえ……』
けど驚いてるのはむしろ俺だ。
うろ覚えで愚地独歩コンボをやってみただけなんだが、まさかこうも砕けるとは。
こりゃあアライジュニアじゃなくても嫌がるって。
俺がやったのは力任せの攻撃だけど……空手ってすげぇえええんだなぁ……。
ヒュゴアドガガガガガォオオン!!!!
サウザンドドラゴン『ゴガァアアアアアッ!!!』
だが感心しようがどうしようがやることはやります。
胸の前に突き出してガシィン!とくっつけた両手のナックルガード!
翻すマントの下に隠されているガンザック!!
それらに力の全てを注いでのガンザックメテオ!!
希望を込めた一撃を、先ほどから何度も殴っている左胸付近へと徹しを付加させて一発!!
勢い余ってサウザンドドラゴンとともに地面を滑ったが、これでいい。
少なくともエトノワールは再び遠のいた。
甲冑男爵『ヌゥウウウオオオオオオッ!!!』
それを確認すると、再び追撃のナックル!!
今度こそ時が止まっていたらしいサウザンドドラゴンの顔面に、
STRマックスの拳を落とす!
ドガァン!と爽快感マックスの音と、体に響く殴った衝撃とが心地いい。
甲冑男爵『導き出すは火と大地の競演!メテオレイン!!』
そんでもって勢いを殺しきれず地面を滑る
サウザンドドラゴンを見下ろしながらキャリバー発射!
溜めた属性で弾き出すそれは空中へ向けて放たれ、
しかし俺の意思を受け取ってかすぐに俺目掛けて降ってくる。
これを───!
甲冑男爵『エターナルッ……ディザスタァアアーーーーッ!!』
武具の力が篭もった我が鎧とナックルガードで弾き、
災厄の力を込めてサウザンドドラゴンへと弾き飛ばしてゆく!!
ギャリィンギャリィンギャリィンギャリィンギャリィィイン!!
ドガドガドガドガズガガドガッファァッ!!
ボガガガガガォオオオオンッ!!!
弾き、ぶつける度に爆発する災厄の魔法レーザー!!
メテオがレーザーに変異する様は実に不思議ちゃんだが、
常識なんぞ知ったことではないからむしろOK!
全てのメテオレインを弾き終えた俺は途中から発動させていたフロートを解除。
再びグラビティ&重力100倍状態+屠竜奥義弾丸男爵を発動させ、
ドッゴォオン!!と刻震竜の尻尾の付け根へと落下する!!
途端に大地が砕け、割れ目から閃光が溢れだしたかと思うと次の瞬間にはマグマが噴出!
どうやら下方にマグマが存在していたらしい……そういや他の場所と比べて、
ここらは妙に暖かかった気がする。
それに山に囲まれた場所だ、マグマがあっても不思議じゃ熱ッ!!
熱い!!熱いよ!!
甲冑男爵『ヌゥウウウオォオオオオッ!!!!!』
だが今は耐える!!
耐えて、ガンザックを全力で放ち終える!!
付け根に突き刺さったナックルガードが鱗を砕き皮を裂き肉を崩し骨を砕く!!
絶叫を上げてもがく刻震竜が八多羅滅多羅()にレーザーを放ち、辺りを崩壊させてゆく。
極光によって破壊されてゆく景色は、マグマの噴出と相まってこの世の終わりを思わせる。
だが終わるのはこの世に非ず!貴様の尻尾よ!刻震竜!
甲冑男爵『だぁありゃぁあっ!!!』
勢いが落ちてきた体を、屠竜奥義ではなく普通に発動させたガンザックで発破する。
緩んでいた圧迫感が一気に引き締まった途端、
刻震竜に絶叫は類を見ないほどのものとなり、そしてギュボァァッ!!
───聞いたこともない、
耳に残る嫌な音を合図に刻震竜の巨大な尻尾が付け根からもげる───!!
甲冑男爵『オッ───オォオオオオオオオッ!!!!』
刻震竜に負けないくらいの絶叫を以って歓喜を唱える。
言葉なんか要らない。
ただ今は戦う雄として、目の前の存在の攻撃手段の一つを破壊したことを雄らしく喜ばん!
サウザンドドラゴン『クガァアォアァアアアアッ!!!!』
甲冑男爵 『───!?』
だが喜びなぞ束の間。
突如、高揚が凍てつくほどの殺気を放たれ、俺は本能的に行動を停止した。
怒りに身体全体を躍動させ、ギリギリと歯を食いしばる刻震竜。
なにがまずいのかも理解できないままに、
ぶつけられた殺気を前に、ただ恐怖だけが溢れている。
───やばい。
逃げろ。
こいつとは戦っちゃいけない。
───やばい。
神経がビキビキと凍ってゆく。
もちろん本当に凍っているわけじゃないだろう。
ただ怖いのだ。怖くて仕方が無い。
こんなやつに勝てるわけがないと、体が恐怖してしまっている。
歯が立てるガタガタ音がいやに耳に障る。
───やばいって言ってるのに───!
神経が支配され、心までもが凍っていく。
逃げなきゃいけないのに体は動かず、殺される時を待つみたいに停止している。
───ああ、もう、どうして───!
視界の中で刻震竜が光に包まれる。
また体質変化&脱皮だ。
強くなるんだろうな、なんて暢気に考えている頭にまで冷たさが回ってくる。
これが全部広がったら、もう殺されるしかないんだろうな。
───……
呆気なく、冷たさは砕けた。
身体の野郎が矛盾に気づいたからだろう。
怖いだの殺されるしかないだの……そんなものに怯える程度の覚悟なら捨てちまえ。
殺す覚悟は決めただろう。
だったら殺される覚悟だってとっくに決まっている。
殺されるって解ってるなら殺せ。
震えるより最後まで味わえ……恐怖も、楽しみも。
甲冑男爵『ルォオオオラァアアアアッ!!!』
キュゴバゴドガァアンッ!!!
サウザンドドラゴン『グゴァアアッ!!?』
光になって宙に浮いていたサウザンドドラゴンを強引に殴り、地面に叩き落とした。
───そうだ!覚悟なんて決まっている!今更なぁああにを迷うことがあるか!
レッツブチノメーション!!
相手が誰だろうが結局やることは一緒なのだ!
甲冑男爵『俺は全力で貴様をぶっ潰す!!剥ぎ取る!!武具にする!!
怖いだの動けないだのそんなことほざいてたらなにも出来ぬわ!!
おお怖いさ怖いとも!しかしそれがどうした!
心が凍るほどの恐怖を前にしても、死ぬことばっかり考えてちゃつまらんわ!
こいつ強い!俺死ぬ!って思った時こそ無茶をせよ!
どうせ死ぬんだろ!?ここで死ぬって思ったんだろ!?
だったらなんだって出来るわい!死ぬ覚悟ってのはそういうもんじゃねぇか!
死んだらなにも出来なくなる!だが死ぬまではなにかが出来る!
よろしい!ならば死ぬ気でなにかをせよ!
ここで死ぬんだって思った時こそ───意思ある者よ!立ち上がる時だぜ!?』
圧倒的な力を持つ者を前にしたとする!
足が竦んで動けなくなったとする!
そんな時こそ足以外を動かせ!
金縛りにあったなら頭を動かせ!
成功は保証しねーがそれはきっと面白い!
悟った風情で死を受け入れたり諦めたりするよりよっぽど輝いてるぜあんたの人生!
……というわけで千切った尻尾を、
俺と一緒に巨大になったバックパックに突っ込んで、と。
甲冑男爵『さぁ気を取り直して!ブッ潰れるがいい刻震竜(光)!!
───っていうかいいこと考えた!!』
光になった刻震竜をがばしと持ち上げた。
大きさは既に巨大化状態の俺と同じ程度の光になった刻震竜……
さらに言えば光も衰え、ベキバキと脱皮をし始めた彼。
それを、ドゴーンドゴーンと大量のマグマを噴き出しまくっている溶岩の海へと───
甲冑男爵『投げます』
ぺいっ……ゴボッチャァアアア!!!
サウザンドドラゴン『グゲオギャァアアアアッ!!!!!』
ウヒャヒャヒャヒャ!!
やはり時を飛ばして鱗を固める前のフニャフニャボディにマグマは熱すぎる様子!!
ゆっくり脱皮しようとしていた本体が、ビタンバタンと大慌てで出てくる様は絶景!!
まるで陸に上げられたウナギのようだ!!
絶叫しながらマグマの海から逃れてくるサウザンドズドゴシャア!!
サウザンドドラゴン『ゴゲェエーーーーーイ!!!』
───ドラゴンの顔面に、全体重を乗せた下段突きをプレゼントした。
サウザンドドラゴンよ……恐怖をありがとう。
だから俺からも送らせてくれ……脱皮したばかりのボディに降り注ぐ、
男爵さまからの攻撃の嵐を───!!
甲冑男爵『ヌォオオオリャァアアアアアアッ!!!!』
ドゴォンッ!!バゴッチャァア!!
顔面を殴られて怯んだサウザンドドラゴンを蹴り上げ、
這いずり状態から無理矢理中空へと飛ばす。
体躯などはやはり巨大化状態の俺と似たようなもの。
そんなやわらかいままの刻震竜へと、やはり拳を叩き込みまくってゆく!!
ドガァンドガドガァンドガァン!!
ゴボッチャバゴゴチャドバァンゴバァンバガァン!!!
顔面を往復、ボディを殴り、鼻先を殴りつけ、
拍子に開いた口の端へと左右から一発ずつ、治ったばかりの右前足に手刀、
痛みに苦しむ顔の眉間に一撃、そして再び顔面を殴りまくる。
そこまでした時だ。
再び殺気が溢れバゴォン!!
サウザンドドラゴン『グゲェゥィ!!?』
……たけども、無視して殴った。
しかし同時に時間蝕が始まり、
サウザンドドラゴンの身体がバキベキと音を立てて硬質化してゆく───!!
甲冑男爵『お……おおお』
みるみるうちに固まってゆく身体。
それどころか時が進むとともに角が生え翼が生え尻尾が生え、
より一層凶悪な姿へと変貌してゆくサウザンドドラゴン。
だがしかしザゴシャゴンバババババォオオン!!!
サウザンドドラゴン『クギャァアアォオオオオン!!!!』
中井出 「ワハハハハ!!変身を最後まで見届ける
いい子ちゃんが相手じゃなくて残念だったなぁああっ!!」
完全に固まる前の柔らかい身体に、
鎧化を解くことで巨大長剣に戻したジークフリードを突き刺す!!
同時に発動する炎風の属性と、
ボマーと鎌鼬がサウザンドドラゴンの左胸を爆裂させバゴドガァン!!
中井出「げぶわはぁっ!!?」
状況整理も半端に、顔面が横殴りにされ、景色が回転した。
なにが、と思ったが恐らく尾撃だと判断すると、
地面に激突しながらも体勢を立て直して、
拍子に落としたジークフリードを霊章転移させて双剣にしながら向かい合う。
……もうすっかりコチコチの硬質ボディだ……仕事が速くて頭が下がります。
だが硬質ボディなにするものぞ!!意地でも破壊して貴様の素材をいただきまくる!
マグマの熱で燃え上がるがいい死闘の場よ!
我が心の巴里に───シャンドラの火を灯せぇええええい!!
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