───冒険の書250/VS刻震竜6───
【ケース602:中井出博光/くすぶるハートを地獄の業火で焼き尽くせ!!】
ゴガァッチュドガガガガォオオオンッ!!!
吐き出されるレーザーが辺り一帯を破壊する。
吹き出るマグマがより一層に溢れ出し、大地に流れては水溜りを海へと変えんとする。
場の熱さは既に異常……息苦しささえ覚える熱に頭が揺れる。
赤く染まる景色の中でマグマの上に立ち、咆哮するは刻震竜。
マグマの熱などものともしないほどに硬質化した身体が、
マグマの赤を映しては鈍く輝いていた。
───心に恐怖は当然ある。
どれだけ理屈を並べようが怖いものは怖いのだ。
しかし立ち向かえないかと言われれば否。
死ぬか足掻くかを訊ねられれば足掻くのはもちろん、突破するまでは諦めたくはない。
中井出「おぉおおおりゃぁああああああっ!!!」
マグマの熱は全身に行き渡らせた霊章から出す火闇で殺す。
本来身を焼き爆発させる筈の熱を持つソレを身に纏うことで、
多少の相殺効果を発揮させている。
あまり長い時間マグマに触れるのは危険だが、長い間でなければ大丈夫ということだ。
ヒュゴドガァッキィインッ!!!
中井出「うおおおしゃぁあああっ!!」
超低空飛行&一閃が振るわれた尻尾によって受け止められる。
即座に長剣から双剣に変え、ジークムントで尻尾を圧し、
ジークリンデを刻震竜の巨大な目へと投擲!
だがそれもゴギィン!という音の前に弾かれ、マグマの海へと突き刺さる。
……眉間から鋭く伸びた角……あれが、自身に全く傷をつけることもなく、
ジークリンデを弾きやがったのだ。
要注意だ───あの角の強度、尋常じゃない。
中井出「ぢぇやぁっ!!」
弾かれたと見るや霊章転移でジークリンデを手元に出現させ、
右手のジークムントとともに尻尾を弾く。
斬るなんてものではなく、本当に弾くという言葉こそが合う、ギャリンという音。
金属だろうが斬れるであろう筈の剣が、
生物の肌すら斬れないだなんて……嫌な状況に立ったものである。
中井出「───はぁっ───」
尻尾を弾くと同時に後方に跳躍し、距離を取る。
……改めて見るに至り、
サウザンドドラゴンは目覚めたばかりの面影などてんで残しちゃいなかった。
脱皮の度に姿を変えていたのかどうかは知るところではないが、
今の姿はまるでFF5あたりのバハムートだ……雄々しいったらありゃしない。
相手は既に地面に足など着いちゃいない。
飛翼をゆっくりとはためかせ、軽く宙に浮きながら俺を睨んでいる。
ならばと俺もフロートを使い、浮きながら対峙する───より一気に飛翔!!
距離を詰め、遠慮一切無しの斬撃を比較的柔らかいであろう喉目掛けて繰り出す!!
中井出「ぜいやぁっ!!」
交差させるべく振るった双剣が喉元で交わる。
だが結果は同じ弾かれるだけ───うぅわ硬ぇっ!!
シャレになってねぇよこの硬ゾブシャア!
中井出「がぎっ───」
鉤爪が左肩を抉ってゆく。
咄嗟に身を捻ったお陰で肩だけで済んだが、
あのまま驚くだけだったら、今頃左腕がオシャカになっていた。
だろう、なんて言葉が通じる相手じゃない。
一撃一撃が致命に繋がるのはもう目に見えている。
そういう希望的な判断基準が通用する相手じゃない……そういうヤツと戦っているんだ。
中井出「ふっ……ぉおおおおおああああっ!!」
肩が潰されたために上がらない左手のジークリンデ。
そこにジークムントを重ね、ジークフリードにして右手で振るう。
然の加護が肩を治すまでの辛抱───根性見せろよ中井出博光!
ドゴォンッ!!!
中井出「うおわっ!?───あ、あれ!?」
とか思っていた矢先に左肩に衝撃。
何事かと思い見てみれば、
痛みもなにもなく───ただ傷が塞がっている左肩がそこにあった。
声 『さっきの失態分はこれで返した。頑張って、提督』
中井出「殊戸瀬!?」
tellが直接、メッセージとして届けられた……が、なるほど。
今のが回復砲弾ってやつか───ありがたい!
中井出「両手持ち&フルスウィング!!うおぉおりゃぁあああああああっ!!!!」
ルフォブフォアァッ!!
思い切り力任せに振った一閃が躱される。
後方に飛翔し距離を取られたのだ───が、迷うことなく追って飛翔し撃を振るう!
っていやだめだ危ねガギィンッ!
中井出「つはっ───!こ、のやろっ!」
追った俺目掛けて振るわれる尾撃を弾き、勢いを殺すとともにキャッチ!
地面に向けて思い切り重心移動をしてブン投げる!!
───間も無く、激突音とともに大地震が巻き起こり、マグマの量がさらに増す。
そんな状況下でも倒れながら俺を睨む刻震竜へと接近すると、
振り上げた足にドンナーの雷を込めてぇええ!
起き上がろうとする刻震竜にまずスラッシュダウンキック!!
ドガヂガァンッ!!ヂガァンヂガァン!!
次いで無礼千万の連続踏みつけで雷光を弾けさせまくり、
赤で染まる景色に青白いフラッシュを焚きまくギュルドガァンッ!!
中井出「ぐえっはあぢゃああぢゃぢゃぢゃうおおわっ!?」
硬い身体を踏みつけていた足に巻きつく尻尾と、
驚く間も無くマグマの海へと叩きつけられる身体。
火闇に守られてるとはいえやはり熱くて飛び起きようとするが、
それよりも先に尻尾に足を引かれ、空中へと放り投げられた。
何が起きたのかすぐに判断出来なかったが、なによりもまず敵を視界に入れることが大事。
吹き飛ばされながらも身を捻って刻震竜を視界に入れた───
途端に俺はフロートを全開にした。
ギガァッチュヴォガガガガォオオンッ!!!!
目の前に迫るは巨大な極光レーザー!
喉から勝手に湧き出た悲鳴を耳に残しながら、
フロートだけではなく風も巻き起こしてさらなる空へと逃げ出した。
避ける、なんて格好のいいことなんてやってられない。
逃げるほど勢いがなければ余波でも死んでしまう確信があった。
中井出「攻撃性が増してやがるよくそっ……!ホズ!!」
すぐ下───足元で唸りを上げて飛んでゆくレーザーをやり過ごし、
ホズからボウガンを撃ちまくる。
だがそんなものは付け焼刃にもならない。
鱗に傷さえつけられずに弾かれ、マグマの海に落ちると、跡形も無く溶けていった。
中井出「だったらこれだ!《ドゴォンッ!!》───アトリビュートキャリバー!!」
氷の竜撃砲を撃ってからホズを仕舞うと、
霊章から双剣を引き出して剣閃を放ってバゴガォンッ!!
刻震竜『グォオオオウシャァアアアアッ!!!』
中井出「うぃいっ!?」
一から十二閃を放って力にするアトリビュートキャリバー。
それを三まで放った頃、
直撃すると解りきった竜撃砲をものともせずに飛翔してくる刻震竜。
爆発と同時に冷気が噴き出すが、
少しのダメージも見せず物凄い速さで俺目掛けてザゴォンッ!!
中井出「がっ───ぐああああああああああっ!!!」
防御なんて間に合わなかった。
右胸を軽く貫いた刻震竜の眉間の角が俺の背中から生えるように突き出て、
そこから血が流れてゆく。
……痛い。
筋肉も骨も、障害となるものを容易く貫いた角が、痛みを生み出し続けているようだ……。
気が狂いそうにコァアアカカカカォオオンッ!!!
中井出「───!?あ、あぐっ───!!」
う、あ……!この野郎!貫いたまま、身動き取れない俺にレーザー吐く気だ───!!
数秒先の自分を想像して、背筋が凍りつくのを感じた。
とった行動は本能的なものだった。
刻震竜の頭を足で踏みつけるように押し、貫かれている身体を角から抜こうとした。
だが、足の長さと角の長さが違いすぎる。
手で角を押してさらに抜こうとしたが───もう遅い。
いよいよ光が眩しすぎるくらいに高まったその瞬間!
中井出「───!くっそがぁあああ!!!」
視界の端のナビの、黒くなっていた場所に光が点った───!
それに気づけた俺は即座に解放された能力───マグニファイを発動させ、
長剣化させたジークフリードの切っ先を光り輝く刻震竜の口へと突っ込むと、
躊躇することなく叫び、トリガーを引いた。
中井出「くらいやがれ!オールエジェクトギミック!!」
ヂャガァッギガァアッチュゥウンッ!!
ゾボゴガザファゾファゴババォオンッ!!!
ゴガァアカカォオオンッ!!!
刻震竜『グガァォギャァアアアアアッ!!!』
中井出「ガッ───ぎぁああがぁあああああっ!!!!」
口の中で破裂するように弾け飛ぶ武器と、
数瞬遅れて発射された極光レーザーが交差する。
極光が放たれるより先に武器が口の中に発射されたまではよかった。
だが───次の瞬間、俺の下半身は消滅していた。
それなのに上半身はまだ角に串刺しにされたままで、
痛みに気を狂わせながら叫ぶことしか出来やしない。
けど……生きてる。
死を選びたくなるような痛みの中で、死ぬんじゃなくて生きてる。
だったら……痛みなんか今は忘れろ、
出せる力全てを出すんだ。
どうせこのままじゃ失血死しちまうだけだ───なら!
中井出「ぎ、あおぐぎぁああがぁああああっ!!!」
喉から振り絞るように叫んだ。
死んでたまるか、と叫んだんだのにそれは言葉にはならず、
自分でも不快にしかならない耳障りな、断末魔めいた絶叫を搾り出した。
瞬間、身体に力が篭もる。
バリアチェンジ/月、人器、エンペラータイム、
ありとあらゆる強化アビリティを発動させる中、
刻震竜の身体の中で暴れる武器から器詠の理力と霊章を通して回復スキルが発動する。
中井出「が、あ───はぁっ───……!よし───!」
吹き飛んだ下半身が生え、痛みが引くや否や、
意識を集中させて武器たちを我が右手に帰還させる!!
中井出「大いに暴れて大手を振って帰ってこい!!
ジィイイイイクフリィイドォオオオッ!!」
刻震竜『ゴッ……ゴグガァアアッ!!』
キィンッ!ゾボボガガガガガガァッ!!!
ジャガガガガガガギィンッ!!!
突き出した右手に、まずはグレートソード。
そして次から次へとあらゆる武器が重なり、巨大な剣を象ってゆく。
刻震竜の内部を散々と刺し、斬り、焼いたためか、
それぞれの武器には刻震竜の血や体液がたっぷりと付着していた。
だが拭い去っている余裕なんて無かった。
刻震竜の口の中から次々と戻り、
やがてジークフリードのカタチになり、紫色の光を放ち始めた長剣を双剣化!
それを中空に放り投げ、唱える!
中井出「“滅竜天雷波ぁあっ”!!!」
ヂガァアガガガガォオンッ!!!
弾ける紫電が刻震竜の身体へと落ちる!
刻震竜の鱗の表面を流れる雷鳴は俺の胸に穿たれた傷口をも焼くほど熱く、
相当の痛覚を胸から頭へと叩き込んでくれた。
中井出「ぐっ……う、がぁああああああっ!!!《ヅビギヂチチグチャアッ!!》」
だがそれでいい。
目の前がチカチカと点滅するほどの痛みの中、
俺は刻震竜の鋭角を掴むと強引に抜き去り、
血反吐を吐きながらも役目を終えて降ってきた双剣を
霊章にストンと仕舞いながら追撃を開始した。
突き出したホズからフレアを放ちまくり、刻震竜を攻撃し続ける。
リミッター解除状態の今だからこそ出来る芸当だ───普通なら撃てもしない。
唯一使用可能な魔法を爆裂させまくり、刻震竜の視界周りに煙幕を張ってゆく。
それから巨大化を解除し、バリアチェンジ/然を実行。
敵は巨大化した俺と同等の大きさだ───
超巨大化しても届かなかった少し前と違い、随分と小さくなった。
代わりに小回りが効くわ空飛び放題だわで目が回る。
……なんて愚痴ってても始まらないことは解ってるから、
煙幕が晴れるより先に大地に降り立ち、肉迫して撃を連ねてゆく。
跳躍し、宙に浮いている刻震竜の足を蹴り込むようにして踏み台にし、
ジークフリードで斬りつけながら登ってゆく。
振るわれる攻撃は極力避け、距離が離れればすぐにフレアを放つ。
考えてみりゃリミットは外してるんだ。
武器を仕舞わなくてもホズは出せるし、条件を揃えなくても屠竜奥義は使える。
中井出「うぉおおおらららららららぁぁああああああっ!!!」
ズドォオガガガガォオオオンッ!!!
故に、と。
四十六閃化させた双剣での攻撃を開始し、
距離が離れればレイジングギガフレアを思う様に放ちまくった。
四十六閃全ての刃から放たれるレーザーは視界を埋め尽くすほどの光を放ち、
苛立ち混じりに飛翔し回避する刻震竜へ向けて幾度も光の軌跡を残してゆく。
飛翼を生やした刻震竜の動きは普通じゃない。
さすがは最古の竜だと思わせるほど機敏で、そこいらの飛竜よりもよっぽど身軽だ。
だというのに攻撃力も防御力もケタ外れ。
これでまだ力を封印されているだなんて、信じたくもない。
声 『うぉわぁあわわわ提督!提督ぅううっ!!
ストップ!レーザーがこっちまでヒィイ!!』
直接続でのtellが引っ切り無しに届くが、気にしている余裕なんてない。
一瞬の気の緩みが命取り───竜族バトルはこれだから気が抜けない。
たまに味わうこの緊張感がたまらねェYO!とか彰利なら言うんだろうけどさ───!
中井出「ブレイブポット!V-MAX!!《キュゴォオオオフィィイインッ!!》」
ならば飛翔には飛翔を。
V-MAXを発動させて、身体をコスミックレイヴの青白い光に包み込んだ俺は、
地面に着地するより先に宙に浮き上がるや、宙を舞う刻震竜を追うように飛翔を始めた。
───と同時に刻震竜が旋回し、俺目掛けて突撃を───おおよ受けて立つ!!
男は度胸ォオオオッ!!
刻震竜『ルゴォオウシャァアアアアッ!!!』
中井出「くおぉおおりゃぁああああっ!!!!」
以前ゼプシオンバトルの際にやったレイジングロアエンチャントの黄竜剣。
殺戟斬吼刃(命名:俺)を、×48で振るう!!
対する刻震竜は鋭角に力を溜め、黒かった角を紅蓮に輝かせ、
さらにさらにと速度を上げてゴギィッ!───ィイン……!!
キュヴォアドッガァアアア!!!
正面から激突───瞬間、ジークと角が衝突した虚空を中心に景色が爆ぜる───!!
衝撃で地面が抉れてゆき、マグマが吹き飛び、
空にある雲さえ風穴を空けられたように吹き飛び、
クレーターとなってゆく地面から砕け上がる巨大な瓦礫が、
衝撃波に耐え切れず塵と化してゆく……!!
まるでゆっくりと広がる破滅の波動。
灼色に染まる角は四十八閃の複合奥義を受け止めてもヒビすら入らず、
圧する俺の体と武器を逆に押し放そうとさえしているのだ。
中井出(かっ……この角だけでどんな化け物なんだよこいつは!!)
心の中で舌を打ち、続けざまに殺戟斬吼刃を放つ!
助走なんてものを必要としない一撃は、
耳を劈く轟音とともに今度こそ刻震竜の身体を───遠くの景色へと吹き飛ばした!!
中井出「っ───ふぅううおぉおおおおおおおっ!!!!」
安心は出来ない。
それどころか攻め続けていないと不安が募ってしかたがない。
考えるより先に、吹き飛んだ刻震竜をレイヴで追尾!
ツピシュボォッガァアンッ!!
中井出「あがぎあぁあああああっ!!?」
飛翔の途端、刻震竜の目から放たれたビームが俺の左膝を直撃、破壊した。
突然の激痛にイメージを散らしてしまった俺はバランスを崩し、地面へと落下。
コスミックレイヴで出していた速度の分だけ強く、地面に叩きつけられることに……
中井出(───)
フロートじゃ間に合わない。
クサナギで上昇しようにも、体勢が悪すぎる。
だったら───……なにかを掴めれば───だめだ、そもそも掴むものが無いし、
あったとしても掴むべき腕があまりにも短くて…………───
中井出(───短い?)
落下が酷くゆっくりに感じた。
緊張が高まった結果か、器詠の理力の集中領域が発動したんだろう。
少しもしないうちに効果が切れる筈だ。
……待て、今なにか掴めそうだった。
腕が短いって言葉になにか引っかかりが───腕が?短い?
腕───……そうか!!
ホリュリュリュピキィーーーン♪《閃きが発動!!》
中井出「おおっ!?───よ、よし!」
身体を曲げ、左腕を前に突き出す!
途端、頭の中に“応”という声が響き渡り、身体を覆う燃え盛る炎が一瞬にして伸びると、
刻震竜の角を掴んで一気に俺を敵の眼前へと引き寄せた───!!
中井出「お、おわっ───!?」
頭に浮かんだ説明の通りにやったら出来た技。
なにやら危険な香りがする技だが、これも真龍王の宝玉から来るものらしい。
宝玉の中で“力”だけの存在となっていた真龍王だが、
このたび僕が食しました刻震竜の肉を介して骨組みを固めたそうで───
ピピンッ♪《火闇を固形化させ、攻撃から掌握まで様々な用途に使用可能な技、
火闇スキル“ジャバウォック”が使用可能になった!
真龍王の力が篭もっているため、
STRなどに影響されずに重いものも持ち上げることが可能だ!》
真龍王の力が増せば当然、そこから来る真龍王の力、火闇の能力も向上する。
その副産物がこれのようだ。
───OK!存分に利用させてもらおう!
───バヅンッ!!
刻震竜『───!?』
グミを口に放り込み、足を回復させたあたりで集中領域の効果が切れる。
途端、刻震竜が間近に居る俺の存在に驚愕。
威嚇なのか咆哮を放つと飛翔し距離を取る───が、
俺は逆に、火闇が掴んでいる炎を引っ張るイメージを爆発させると、
離れようとしている相手を無理矢理に振り回し、
勢いよく───地面へと叩き落とす!!
ルヴォドガァアアンッ!!!
刻震竜『ゲグァッ!!』
ゴコッ……ドゴゴシャアッ……!!
岩盤が砕け、吹き飛んで無くなっていたマグマが再び噴き出す。
いい!これいい!面白い!力込めなくても振り回せるって不思議で面白い!!
中井出「わっはっはっはっは!!わっはっはっはっは!どぉっせぇええええい!!!」
ドゴォン!バゴォン!ドゴォンドゴォンバゴォン!!
バゴォンドゴォンゴシャアグシャアドシャア!!
ヒュゴドガァアアアンッ!!!
マグマが噴き出る緋の景色の中、
刻震竜を振り回して大地や山々に叩きつけまくる小さな僕が居る。
火闇操作にはTPを使うようなのだが、今の俺はリミットブレイク状態よ!
思う様に火闇爆破を使用し、勢いをつけて刻震竜を大地に叩きつけまくりぃいっ!
エーテルアロワノンとは逆の方向へと───思いッきりブン投げる!!
中井出「せぁああありゃぁあっ!!」
ブフォォオンッ!!
中井出「エネルギー!全開!!」
地面と平行に飛んでいく刻震竜を、バリアチェンジ/光で速度を上昇させて追ってゆく。
飛ぶのではなく烈風脚で大地を蹴り弾きながら。
と───その時だ。
刻震竜が吹き飛ぶ速度よりも速く走っていた俺より先に、
刻震竜の傍にソイツが出現したのは。
彰利 「ビューティフルサンダー彰利リクリエイショーーーン!!」
身体から黒いオーラを夥しいほど放ちながら、転移で現れたのは彰利だった。
既に筋肉痛で苦しんでいる様子もなく、
吹き飛ぶ刻震竜の上に降り立った彼の手には───巨大な剣が握られていた。
あれを剣と呼んでいいのなら、であるが。
彰利 「うぉおおうらぁっ!!」
ギョファィンッ───ゾガァンッ!!
刻震竜『ガグォオオアァアアアッ!!!?』
無造作に振るわれた黒の巨大剣が、
硬くて仕方が無かった刻震竜の鱗や皮膚を容易く斬り裂く───!
振るわれた剣に黒と闇と影が集い、
死神の黒と家系の緋を混ぜた光となって敵を斬り裂く。
例えるのならばギロチン。
半円月状のギロチンを武器にしたかのような闇の剣を手に、真紅眼の男は撃を連ね続けた。
ギシャゴバガガガゾフィンッ!!!
ドォッガァアアアアアンッ!!!
それに続き、斬りつけ続けたことで落下を始めた刻震竜へ、
ようやく追いついた俺は四十八閃を振るって刻震竜を地面へと叩きつける!
彰利 「うおっほ!さすがじゃのう中井出!」
中井出「かなり必死ですが!?つーかお前それなに!?」
彰利 「さっき解放したばっかのレヴァルグリードの力の一部で、名前はアンギア!
“爪”って意味で、つまりレヴァルグリードの爪並の斬れ味を持つんだと!
……本当はウンギアなんだけど、アンギアの方が素敵なのでアンギアに」
言いながら虚空に指を走らせる彰利。
その指が“Unghia”という文字を描いてゆく。
なるほど、アンギアって読めなくもない。
ウンギアだと“ウンギャアア!!”って悲鳴的に聞こえるのでやめたんだとか。
彰利 「ああ、それとキミとの影の連結切るの忘れてたからさ。
俺、ま〜たリミットブレイク状態でして。
や、月影力は切ったよ?ていうか切れたよ?
でもさ、“影”の方がキミにくっついてたみたいで……ね?」
つまりリミットブレイク状態なのは彰利だけらしい。
ああ、そりゃ物凄く悲しいとばっちりだ。
彰利 「けどまあお陰で常時解放状態だし!
願うまでもなくデスティニーブレイカーが発動しっぱなしだから、
硬い鱗でも怖くねぇってわけさ!
───そしてこの高揚は影を通して貴様から届きし熱き鼓動……!」
彰利が青春に燃える眼で俺を見る。
俺もそれに応えてニカッと笑い───同時に跳躍!!
バゴォンッ!!
瞬間、俺達が立っていた場所に尾撃が落ちる。
彰利 「中井出!いけそうか!?」
中井出「知らん!」
彰利 「いや知らんってアータ!!……まあやってみなけりゃ解らんな!
よし!いけそう、じゃなくて行こうぜ!いけるところまで!」
中井出「うむよし!では───とぉおおつげきぃいいいいいいいっ!!!」
彰利 「サァアッ!!イェッサァアアアーーーーーーッ!!!」
着地と同時に烈風&転移!
瞬時に散開すると、俺と彰利は思い思いに散って攻撃を再開する!
さあ……暴走の時間だ!
【ケース603:弦月彰利/彼の者、時の竜。汝、その名の意味を知るがいい】
ビジュンッ!
彰利 「ほうりゃさぁっ!!」
ギャフィンッ!ズゴゥシャアッ!!
倒れた状態から起き上がった刻震竜へと、黒と緋が混じった剣閃を飛ばす。
“アンギア”を発動させたことで巨大な刃となったダークマターは、
今までの長剣状態よりもよほどこの手にしっくりと馴染んだ。
名前はダークマターのままだが、猛者ども曰く“ジジイブレード”。
“刃”()って言ったほうが解りやすい人も居るだろうが、つまりそんな造形だ。
刻震竜『グガァオ!!ガァアアアッ!!!』
彰利 「オォワッ!?」
ギゴシャドガシャガギャァンゴガァン!!
ルファフォドゴォンブゴォゥンッ!!
彰利 「はっ!ぐっ!とわっ!いぎぃっ!!」
振るわれる尾撃と爪とぶちかましを避けてゆく。
やばい時には斬り弾き、余裕がある時には避ける方向で。
最初に比べりゃ10分の3かもっと下ほど小さくなってしまった刻震竜……だが、
強さは確実に向上しているから笑えない。
こっちの攻撃力も大分上がっているが、残念ながら剣閃じゃあだめだ。
直接斬りつけるほうが事象破壊に適している。
こいつ相手に超接近戦か───うん、眼が回りそうだけど面白そうだからGO!!
彰利 「中井出!俺接近戦でいくわ!お前は!?」
自分の行動を叫びながら肉迫。
刻震竜を挟んで反対側に居る中井出は、
声 「接近戦でGO!持てる力全てを出しつくして滅ぼさん!!
会心&両手剣&フルスウィング───これら全てを全力発動!!
双剣だろうが両手剣効果!突き攻撃なのにフルスウィング!斬撃なのに超振動!
さあジークよ!ブリュンヒルデよ!ファフニールよ!ドンナーよ!!
我が武器に宿る全ての意思たちよ!俺達の力を見せてやろうぜ!!」
リミットが外された技を嬉々として振るい、刻震竜に攻撃を連ねてゆく!
攻撃をくらいそうになれば火闇から手みたいなのを伸ばし、
刻震竜の身体の一部を掴んではそこへと身体を引かせて着地、と同時に一閃。
敵が怯もうものなら伸ばした火闇で敵を掴み、顔面から地面へと叩きつけていた。
……こりゃすげぇ。
俺はレヴァルグリードの“爪”を解放したけど、
中井出は……手、かね。
影から流れる中井出情報によれば、
真龍王バハムートの力が火闇の能力を進化させたそうなんだが。
彰利 「よぅ!ほっ!とあっ!オワァッ!!」
ヴフォンゴファァンブフォォンッ!!
唸りを上げて繰り出される攻撃を紙一重で避けてゆく。
避けついでに指やら尻尾やらを斬りつけてゆくが、
最初に比べれば小さくなったとはいえ、まだまだ身体がデカい敵が相手だ。
一閃一閃はどうしても致命傷にはならないために、連ねて弱らせるしかない。
彰利 「うむ!うむむむむ!なんといういい感じ!新たな力が沸いてくる!いい感触だ!」
レアズ将軍率いる妖精たちや精霊たちにマナを注入してもらって以降、
筋肉痛による激痛は影を潜めた。
とはいっても他のやつらは未だ筋肉痛だろう。
俺が逸早く動けたのは、偏に影を通して中井出から流れる然の加護とマナのお陰だ。
……だけどこのアドミラルズタイムが解けると同時に大激痛を再び味わうことになる。
たまらんねまったく。
彰利 「そぉおおうりゃぁああああっ!!!」
とはいえこの高揚は他では味わえない。
身体が滅茶苦茶軽い上に自分の意思を一心に受けて動いてくれる。
力に振り回されることもなく、願った通りに行動できる喜びは、そう存在しないだろう。
故にコスミックレイヴ状態のまま中井出とともに空を駆け回り、
今や空中で暴れる刻震竜を攻撃しまくってゆく。
弾け飛ぶ鱗や血飛沫は雨の如く。
だが思うことは、事象破壊で斬りつけてる俺ならまだしも、
人間削岩機の如く刻震竜を素で破壊しまくっているアイツはナニモンですか?
ギシャゴバザガガゴバシャガシャゾフィザフィ
ヂャガガギガフィゴフィギファファフィザゴォンッ!!!
束みたいになった双剣から馬鹿デケェレーザーを放ちまくりながら、
屠竜の紫、滅竜の紅紫、黄竜の金色、会心の赤、火闇の灼闇を合わせた、
大気さえ震わせる超振動超速斬が刻震竜の鱗をバキベキと破壊してゆく。
コスミックレイヴでの体当たり自体に屠竜奥義の弾丸男爵が含まれているらしく、
それでさえも刻震竜を多少吹き飛ばす威力を誇っていた。
自然に“すげぇ……”と口からこぼれたことにハッとすると、負けてられんと飛翔する!
彰利 「《ヴァチュゥウンッ!!》ロアァッ!!」
ゾガッフィゾガッフィゾガアッフィゾガァッフィィンッ!!!
振るう斬撃一発一発に闇を纏わせて斬る斬る斬る!!
いやぁいいよジジイブレード!
攻撃の瞬間に剣にヴァチュゥウンって闇が集うのが素敵!!
どうやら攻撃のイメージが浮かぶと同時に蓄積されるみたいで、
つまり攻撃の度に威力の高い攻撃が可能になるってわけで!
普通なら一度アンギアを発動させたら10発しか集束出来ないらしいんだが、
そこはアドミラルスタイム!(エンペラータイム)
“提督のお時間”を以ってすれば、そげな常識なぞ一発ブレイクよ!
やべぇ面白ぇ!面白ぇけど怖ぇええ!!
彰利 「しっかし結構遠くに来ちまった所為で砲弾とかバリスタとか届かねぇなぁ!」
声 「目的地に辿り着かせないのが目的ならそれで了だろ!!」
彰利 「オウヨもちろんさ!───ってギャア!?」
現在、俺が左側面を、中井出が右側面を攻撃していっている。
それがとある拍子で刻震竜が身を捻った際に逆転した───んだが、」
俺の方にきた右側面は……なんというか見るも無残なくらいにボロボロになっていた。
そ……そりゃそうか、俺に比べて中井出ってば四十八閃で、
しかも疾風奥義とか霊章爆破とか使って攻撃速度上げてて、
さらに攻撃強化スキルの全てを以って攻撃しとるんだものね。
たとえダメージが一だったとしても、ここまでボロボロになるのにそう時間はかからんわ。
───なんて思っていた時、中井出の攻撃が刻震竜の左眼を潰した。
刻震竜『グアオギャァアアアアアアッ!!!』
響く絶叫。
空中から放たれる咆哮が大地を揺らすほどで、
当然すぐ傍に居た俺達はあまりの強震に竦み上がった。
だが竦み上がったのは身体だけだ。
他は大丈夫なわけで、たとえば───中井出の霊章から吹き出る火闇や中井出の意思は、
少なくとも行動を停止していたりなどいなかった。
ゴォオオビキビキビキィイッ……!!
炎が固まってゆく。
咆哮に震える虚空の只中で、硬く、そして濃く、より深い灼闇色に。
───そうだ、身体を動かせないなら意識を動かせ。
身体が動かないから何も出来ないなんて考えるな。
彰利 (───呼応しやがれダークマター!
てめぇに預けた皇竜王の力……!全て黒に預ける!!)
アンギアをダークマターから黒へ。
意識を沈ませ、具象に足らない力は月操力で補い、
中井出がそうしたように、自分の身体から噴き出る黒を固めてゆく。
もっと力を……!より圧縮して───!!もがいてやがる目の前のバケモンにぃいい!!
ホリュリュリュピキィーーーン♪《閃きが発動!!》
彰利 「───!!」
頭の中に言葉が走る。
聞き覚えのある声───ついさっき、いや……アンギアを受け取った時に訪れたヤツの声。
いったいいつから俺の中に蠢いてやがったのか、こいつが現れた時は驚いたもんだが───
『もう次を欲するか。つくづく強欲だな、来世よ』
そいつ───俺の前世である月永は、可笑しそうに笑うと握った左手を突き出してきた。
心の深層の中でだ、眼に見える景色でじゃない。
彰利 (強欲上等。守るだの守らねぇだの、そんなことはどうでもいい。
今を勝ちたい。今を楽しみたい。
未来のことを考えるより、今を精一杯に生きていたい。
どうやったって未来は訪れるんだ、
だったら今を生きることこそ人としての生き方よ!)
静かにその左手を掴むと、ニカッと笑って受け入れた。
途端に、胸の中に溢れる熱さ。
中井出から流れてくる高揚と油断するべからずの精神がそれを抑制してくれて、
簡単に力として身体に流れてゆく。
彰利 「《バヅンッ!!》───ぅ、───おぉおおおおおおあああああっ!!!!」
それを感じた途端に身体が動き、溢れる黒が巨大な竜の手となり固まる!!
家系の緋と黒の闇を混ぜたオーラは中井出が放つ火闇と酷似しており、
そのためかどうかも解らないが、申し合わせたわけでもないのに、
俺達は互いに今、相手がなにをしているのかが理解出来た───!!
やることは決まっている!いくぜ刻震竜!!
彰利 「覚悟はいいかぁあ!!」
声 「荊棘を踏んだぞぉおっ!!」
握り締めた巨大な黒の拳を前方へと突き出す!!
刻震竜を挟んだ向こう側に居る中井出もそうしていると確信を持ったままに!
刹那、黒闇と灼闇の拳とが、刻震竜を挟み撃ちにしてブッ潰す!!
グゴシャアッ!!ゴバシャォオオンッ!!!
刻震竜『グギィッ!?───ガァアアアッ!!!』
ガンヴァバババババォオンッ!!!!
途端に発動する中井出のギガボマーが圧縮された火闇全体から放たれ、
虚空の只中に核爆発めいた超爆発を巻き起こす!!
彰利 「う、おっ───おぉおおおおおあああああっ!!!」
爆発の衝撃はもちろん、なにより殴った衝撃で吹き飛んだ俺は、
爆ぜる虚空を眺めながら大地に落下した。
彰利 「あいっ……!い、ってぇえ……!!───!……お……」
……信じられないくらいの手応えが、俺が殴ったわけでもないのに左手に響いている。
とんでもないもんだ、レヴァルグリードの力ってのは。
彰利 「はぁ……!」
高揚が冷め切らないうちに立ち上がり、爆煙を見上げる。
次に見下ろした左手からは、未だに黒が溢れ出ている。
……随分と笑っちまうような話だった。
思い返すのは心をノックされた時。
入ってきたのは月永であり、悠介が黄昏の中で創造したりしたやつとは違う、
正真正銘俺の中に存在し続けていた俺の前世だった。
昔話でもするのかと訊ねてみれば、出てきた話題は皇竜王のもの。
深層に存在し続けていた月永は、
俺が受け入れるより先にレヴァルグリードとコンタクトしていたそうなのだ。
そして、それを受け入れて魂レベルで同化。
“家系の力”側として俺の中の深淵で時を待っていたが、
俺は死神王になったりなんだかんだと家系から離れてしまったため、
肝心な俺とのコンタクトが取れなくなっていた。
故に……今なのだ。
今の俺だからこそ受け取れる。
結局のところ俺自身の力はそう成長してないために、やっぱりせいぜいでこの左手程度。
これでもかなりの無茶をしているが───あとは俺の成長次第。
死神の力に頼るのではなく、家系として強くなることで、俺は皇竜を受け入れられる。
ピピンッ♪《ネロ=アビスを開花!!
左手から溢れる黒を操り、様々な行動に使えるぞ!》
ぞ!じゃねー!と突っ込みたかったが、今は集中だ。
ああ、でも……やっぱ楽しい。家系に戻ってよかった!
ワー!って叫んだあとに、よかった!って涙を流したいくらいによかった!!
しかしこれ、中井出のやつと同じタイプのスキルなんかね。
ジョジョ風に言うと“同じタイプのスタンド!”って感じで。
ここからどう成長するのかでかなり変わってくると思うけど、
それを考えると今からニヤケる顔が締められない。
……でも、そんな喜びも、爆煙が消える頃には開口停止に移行した。
刻震竜『グゥウォオオオオオオッ!!!!』
爆煙は自然に消えたのではなく、咆哮だけで吹っ飛ばされたのだ。
翼を広げ、怒りに身を震わせる刻震竜を見上げる俺達は、やはり身体を震わせた。
───は、と一息。
その瞬間に、刻震竜は行動に移っていた。
たった一息だ。吸って吐くのではなく、吐いた瞬間には行動は始まっていた。
彰利 「───!ひ───」
眼前に巨大な顔───否、赤。
牙が上下に存在し、地面を抉りながら俺を飲み込もうとしていた。
何故、と考えるより先に転移を実行───間に合え!!
ビジュビジュゥンッ!!!
彰利 「っ───はっ───居ない!?」
抉られた地面を見下ろす中空への転移!
すぐに刻震竜の状態を確認するべく地面を見下ろしたが、
ある筈のものがそこにはなかった!
声 「後ろだ!転移!」
彰利 「!くはっ!!」
聞こえた声に反応してすぐに転移!
再び地面に下りた時、
ザンッ!という嫌な音とともに───眼下の大地に中井出が吹き飛んできた!
彰利 「え……これ《ザゴォンッ!!》がっ───ぎあぁぁあああああっ!!!」
驚いた瞬間には俺の胸から巨大な何かが生えていた。
肉を裂き骨を砕き、血を噴き出させて生えるソレ……背後から聞こえる荒々しい息吹。
突き刺さった刻震竜の角が、俺に気が狂うくらいの激痛を与えてくる。
中井出「え、あ……げ、ぼっ……!!」
倒れている中井出の背中は大きく抉られ、弱々しく痙攣する瞳には光が篭もっていない。
そうだ……中井出は背中が弱点だった筈だ。
そこを巨大な爪で裂かれたんだろう。
きっと抗う暇もなかったに違いない。
……これは、油断とか集中とか、そんなもので何とかできるレベルじゃない。
この野郎……時間を止めて行動してやがる。
彰利 (やべぇっ……!このままじゃ……!)
妙な確信があった。
俺達は負ける、と。
最古の竜ってのは伊達じゃない。
まさか未来視へのカウンターだけじゃなくて、時間を止めてくるなんて。
彰利 「月空───げぼぁっ!!が、ぐはっ!げ、月空の()……戦慄き()!!」
ほぼ右半身を削り抜いた角の痛みに苦しみながら、逆に時を止め返す!
秩序の破壊、オーダブレイクの発動により、灰色になった世界で転移を実行。
角から逃れると中井出の傍に下り立ち、自分の風穴と中井出の背中に月生力を流してゆく。
───今思えば、そうした中でも刻震竜から目を離さなければよかった。
中井出の傷が少し塞がった頃、奇妙な違和感を感じて刻震竜が居た場所へと視線を移した。
そうした時には───既に刻震竜はそこには居なかった。
彰利 「───」
背中が、いや───神経が凍る思いだった。
恐ろしい相手が、
恐怖を抱く相手が視界に居ないというのはなんと恐ろしいことなんだろう。
俺はまるで恋焦がれた相手を探すように、辺りを見渡した。
息を荒げ、首を振り、一度探した場所さえ何度も何度も何度も何度も───!!
居ない!なのに居ない!何処だ!?いったい何処に!!
ズ───
彰利 「!!ッ───うわぁああああああああっ!!!!」
背後から物音!
否!止まった空間が何かに押されるような感触!
腹の底から恐怖を吐き出し、振り向くと同時にアンリミテッドストリームを放つ!!
───居た!すぐそこに居た!
直撃コースだ……大丈夫!爆煙に紛れて転移して、
落ち着いてかかれば──────る!!
彰利 「───え?」
あ……れ?
なんで……アンリミテッドストリームが……刻震竜の後ろで爆発……
こんな巨体で……え?俺、なに考えてたっけ。
落ち着いてかかれば、る、って……なに……?
彰利 「……、……───、っ!!!あ、う、そだろ!?勝てるわけ───!!」
混乱していた頭が理解に追いついた……!
無理だ!こんなやつに勝てるわけがない!!
こいつ!こいつ───!時間を吹き飛ばしやがった!!
アンリミテッドストリームを放った瞬間から、当たって爆煙が出る筈の瞬間までの時間を!
飛ばされた時間は無かったことになる!
だから当たる筈のものが当たらなくて、そこになにもなかった場合の事象へと繋げられた!
つまり……!つまり、今目の前で起こってるように、刻震竜の後方の地面に着弾して……!
彰利 「こんなのっ……!どうやって戦えって言うんだよぉおおおっ!!」
刻震竜『ルガァアォシャァアアアアアッ!!』
彰利 「ちくしょっ───ちくしょぉおおおおおおっ!!!!」
ズァゴォッ!!バギッ……ゴギンッ……!!
落とされた爪が俺という存在を砕いた。
斬り裂くだけでなく、骨を砕き、筋を断ち切り……命を潰した。
折れた首で見た世界は歪んでいて、ただただ……真っ赤だった。
そんな真っ赤な世界で、立ち上がれない凡人のアイツが、ゆっくりと噛み砕かれる様を……
俺は、悔しさに歯を食いしばりながら見つめ……やがて、息絶えた。
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