───あなた死ぬわ/ヤツの名は包山龍───
【ケース633:中井出博光(再)/豪放磊落真弓(タイム)】
コチャッ、キィ……
中井出「博光です」
ノート『藪から棒になんだ』
晦ルームでヒロラインの調整をしていたらしいノートン先生を発見。
居なかったらそのまま閉めるつもりでいたドアノブから手を離し、テクテクと中へ。
もちろん鍵は閉めてと。
中井出「グヘヘヘヘ、じょ、嬢の体にもうとんでもないことしたるわ。
す、すぐによくなるし大声あげてもあのー、
誰も来やしねぇのじゃよ?《ベパァン!》ポルポ!!」
ノート『話があるならばさっさとしろ』
中井出「ハ、ハイ……すんませんした……」
後ろ手に鍵を閉めるという行為で思いついたネタは、
顔面に放たれた衝撃波であっさり無駄に終わりました。
うう……鼻血が……。
ドリアード『こんにちは、博光さん。ニーヴィレイは元気にしてますか?』
中井出 「気絶してます」
ドリアード『……あまり無茶はしないでくださいね』
苦笑いがとても印象的でした。
ううむ、こんな綺麗な苦笑いは見たことがねー。
中井出「で……話なんだけど。ノートン先生や他の精霊やイセリ子さんは知ってるよね。
僕が近い将来、死亡することは」
ノート『…………ああ。汝はルドラとの決戦を前に、既に脱落していることになる。
そういった未来なら、既に何度も確認している』
中井出「ウワー……改めて言われるとショックだ……か、回避する方法とかはないのかな」
ノート『様々な事柄を想定してみたがな。無理だ。
それこそ奇跡めいたことでも起きぬかぎり……いいや、その奇跡ですら不可能だ』
中井出「おお!絶体絶命か!ここまで言葉通りの絶対絶命初めて!」
ていうかあのー、アナタにそんなこと言われると物凄くグサリと来るんですが?
ノート『ふざけるな。真面目な話だ』
中井出「失礼な!僕は真面目さ!や、確定しちゃってるなら慌てることでもないでしょう。
だったらそれを受け入れて、抜け出せそうな裏道を探しつつ楽しめばいいのさ。
絶対絶命だからって、その瞬間までの時間が一気に消えるわけでもなし。
だから僕は楽しみます!それまでの時間を!俺は俺の命を諦めねーぜ!?
確定してるんだったらその常識の先に行くために足掻いたらぁ!!」
ノート『無理だ、と言っているんだがな』
中井出「無理じゃねー!無理と決めるのは最後まで足掻きに足掻いて、
それでもダメだった時に言う言葉だ!貴様こそふざけるな精霊王!
視ただけで、訪れてもいねー未来になにをそんなに怯えておるか!」
ノート『…………』
ノートン先生が呆れた顔で、俺の目から俺の足へと視線を移す。
無様に震えている、俺の足へと。
中井出「怖い!滅茶苦茶怖いさそりゃ怖い!これだってただの破れかぶれみたいなもんさ!
だ、だがなー!こうでもしなきゃ立ってられない俺が居るんだ!
ふざけてるとか真面目じゃないとか誰に言われようが、
俺は俺が俺らしくあればそれでいいと思っています!それでいいじゃない」
ノート『破れかぶれで楽しもうとして、汝は本当に楽しいか?』
中井出「破れかぶれでも楽しもうとしない余生になぞ希望を持ちなどしねー!
ていうかもっとじっくり話そうと思ってたのに!
物凄い勢いで俺の死亡が確定してしまった!しかも助かる見込みがないなんて!」
ノート『私の“不可能を可能にする力”を使えばどうとでもなるだろうがな。
だがそれを使ってしまえば、ルドラとの戦いで私は使い物にならなくなる。
それだけは避けねばならん』
中井出「あぁうん、それは解るかも」
ノートン先生は主力になる筈だ。
そんなノートン先生の力が衰えてしまえば、こちらの負けは確定。
なにせ相手側にもノートン先生が居るのだから、それだけは避けねばならない。
ノート『死んだ汝を生き返らせるという方法もあるが───』
中井出「NOそれはダメ!死者は死者!もう復活だのは無しだと決めたでしょう!
断っておくが俺は蘇生なぞ望むかもしれねーけどされても嬉しくねーからなー!
たった一度の人生!だから栄えるぜ人間魂!!
俺はどこまでも人としてありたいのだ!だから復活させないでください」
ノート『…………さて、マスターや弦月彰利がどう出るか───』
中井出「絶対に止めてください。僕とキミの約束だ!!」
ズイ!と突き出した右拳。
とくに意味はないが……ノートン先生は残念そうな顔をしながらも、
そこに自分の右拳を当ててくれた。
ノート『本当に、いいんだな?』
中井出「後悔は後でするものだから後でたっぷりします。
俺が死ぬのってヒロラインの中……だよね?」
ノート『ああ。いずれルドラの力で魂の回復能力が塗り替えられる。
そうなった世界では、死んでしまえば復活できず、そのままだ。
そこで汝は死ぬ。傷だらけの姿を雨に打たれ、孤独なままにだ』
中井出「うへー……」
夢で見たまんまの死に方じゃないですか。
中井出「逃れられんのですね?」
ノート『ああ。全ての者がヒロラインから抜け出た景色の中、
汝の魂のない体だけがそこに転がり、残されていた。
汝の魂自体がヒロラインとともに消滅するのだ、当然だろう』
中井出「あうう……」
ああもう……狂おしいほど死亡確定。
……OK上等だ、ならばその未来、なんとしてでも塗り替えてくれる。
だって死にたくはないし、まだまだ楽しみたい。
精霊王にキミは死にますよと言われて、
頷きはするし受け入れはするが、
諦めてしまうほどつまらん人生を突き進むつもりはないのです。
でも、あの夢が確かなのだとしたら───……
中井出「……それだけがショックだなぁ……。まあ、そっちも頑張るからいいけど」
頑張ってもダメだったらもう盛大に泣こう。
泣きまくりながら、それでも最後まで粘ってやる。
中井出「OK!すっきりしました!じゃあ僕これからピクニックだから戻るね?」
ノート『緊張感のない男だな……これから死ぬという話をした矢先にピクニックか』
中井出「や……だからぁあ……。もうノートン先生!?何度言ったら解りますの!?
ヘンに悟るのはおよし!死ぬからなんだというのです!
さっきも言ったけど死ぬまでの間になにも出来ないわけではないのですよ!?
こ、これは侮辱!もっと生きよう!
もっと楽しもうとしている人へのこれは侮辱だ!」
ノート『そう言うな。これで、ここに居る精霊全員が汝をわりと気に入っている。
死んでほしくないと思う気持ちに嘘はないのだ』
中井出「ウソ!ウソよ!あなたっていっつもそう!
そうやって悟ったフリして《ゴパァン!!》ウモルチェ!!」
ノート『嘘はないと言った』
中井出「コワカカカカ……!!」
また鼻に衝撃波が……!
ノ、ノートン先生……俺の鼻になにか恨みでも……!?
ノート『現在、汝を生かす方法を皆で探している。
それに集中しているわけでもないが……可能性はほぼゼロ……いや、ゼロだ』
中井出「言い直したぁあーーーーーーっ!!」
希望すら持たせてくれないよこの精霊王!
すげぇ!これでよく死んでほしくないとか言えたものだ!それは褒めてやる!じゃなくて!
中井出「1%もないんじゃケンシロウも諦めるしかないじゃないか!
も、もっと頑張ろうよ!ほら!ねっ!?」
ノート『0だ』
中井出「うわぁああああああん!!」
どうあっても死ぬらしいです。
ノート『汝が生き残る方法はあるにはある。
もちろんルドラとの戦闘にも出ることが出来るだろう。
だが、それをすれば負けるのは確実に我々の方だ』
中井出「え?もしかして僕がルドラ側に寝返るとか?」
ノート『いいや。肝心なところがフィルターをかけられていてな。
忌々しいことだが、それ以上を視ることが出来ないでいる』
中井出「なんでそんな中で僕の死だけが確定事項!?」
ノート『ルドラの思惑だろう。どうやらルドラは汝には死んでほしくないらしい。
それがどういった経緯からくるものなのかは測りきれんがな』
中井出「そ、そうなの?」
ルドラが僕に死んでほしくないと?
何故だろう。
未来の僕が彼になにかしたのかな。
中井出「まあいいや、ともかく僕は今を生きます。無茶で無謀でも結構!それが冒険!」
大体死ぬと言われたからって落ち込まなきゃいけない理由が俺にはない。
そりゃあ生きたいとは思うけど、だからって落ち込むのとは違うのだ。
他のやつがそうだろうが、ともかく俺は違う。
ノート『やれやれ……───中井出博光』
中井出「え?なに?」
戻ろうかな、と振り向いたところにノートン先生の声。
振り向くと、小さな光が俺に向けて投げられていた。
中井出「うるさい」
コパァン!!
ノート『ぬおわぁあーーーーーっ!!?』
そこで炸裂するリーダーうるさい!
光を叩き落した僕は、それがなんなのかも解らず、
とりあえずノートン先生にニコリと笑みを贈った。
ノート『たわけ!今すぐそれを拾って飲み込め!』
中井出「え?やだよばっちぃ」
ノート『叩き落したのは誰だ!』
中井出「俺だぁあーーーーーーーっ!!!《どーーーん!!》」
でも拾います。
ばっちぃと言ったのは言ってみたかっただけですので。
中井出「で、これを飲むのはいいとして。人をやめることになったりしないよね?
なったら呪い殺しますよ?」
ノート『……人にそんなことを言われたのは初めてだぞ、私は』
中井出「ありがとう世界初。で、どうなんですか?」
ノート『人をやめるということにはならん。
ただ魂を増殖させる───待て待て!何故わざわざゴミ箱に捨てようとする!』
中井出「馬鹿野郎ォオーーーーーッ!!!
あれほど蘇生めいたもんはやらんと言っただろーーがーーーーっ!!
魂を二つに増やすなど冗談ではないわ!
俺は俺のままで居たいと言ってるでしょ!?」
ノート『解った!解ったから待て!
その魂とて簡単に作り出せるものではないんだ!今すぐそれを返せ!』
中井出「え?ダメだよ?だってこれ僕が拾ったんだもん」
ノート『………………ま、待て。汝、それをどうする気で───』
中井出「…………《ニコリ》」
笑むや否やダッシュ!!
廊下へと続くドアをガッと掴んでアレ開かない!!
なんで!?どうして!?ってしまった俺鍵かけたじゃん!!
ええい開け開けってギャアアアア!!焦って上手くいかねぇええええっ!!
ノート『はっはっはっは、何処へ行こうというのかね……』
中井出「開いてぇえーーーーーっ!!!」
その後わたしは怒気溢るる精霊王にボコボコにされた。
───……。
ガシャァアーーーーーン!!!!
声 『しまった逃げられた!!』
中井出「ワハハハハ!!油断大敵だぁあーーーーーーーっ!!!」
しかしタダではやられません!
隙をついて窓ガラスをブチ破った僕は、庭の芝生に降り立つや激走!
すぐにノートン先生が魔法で我が体を戒めようとするが、ゴキィンッ!!
甲冑男爵『全身甲冑の武装錬金!破壊男爵!!』
声 『なっ───』
全身を男爵様で包み、魔法を跳ね返すとやっぱり逃走!!
しかしその直後、
目の前に転移してきたノートン先生御自らに、拳でボコボコにされた。
───……。
死ュウウウウウ…………
中井出「グビグビ……」
ノート『まったく……とんでもない人間も居たものだ……』
で、現在は晦の部屋に連れ戻され、うつ伏せで倒れている状態。
すぐ傍には呆れる風情のノートン先生が居て、
ドリアードに僕の回復を頼もうとそちらを向いている。
フ、フフフ……!愚かなり精霊王……!この博光を前に余所見をするなど……!
あ、足だ……!足を掴んで……!掴みさえすれば……!
ほぉおうわりゃぁっ!!
ノート『《がしっ》───?なんだ、起きれ───』
中井出「“三陰光圧痛(