───遥かなるビエネッタ/上質を知らん人のためのパヴァーヌ───
【ケース635:弦月彰利/ありがトてにプり】
ドドドドドド……ズザァッ!!
彰利 「オッ……おーおーおー!アレが噂のパオシャンロンか!」
悠介 「なんだって未来に……?いい加減、気力充実のオフ日とやらを満喫したいんだが」
夜華 「ふっ……ふ、ふわーーーはははは!!猿め!猿め!!猿めぇええっ!!!
このわたしが今すぐ成敗してくれるわぁーーーーっ!!」
ルナ 「わあ、しのっちが元気になった」
彰利 「きっと未来の空気が懐かしいのよ」
葉香 「……すまないな、面倒をかけて」
ダボーデート中、いきなり割り込んできたヨウカンに教えられた通り。
未来に来てみりゃパオシャンロンが居た……しかも物凄くデケェ。
どんな天変地異ですか?
ルナ 「どうせまたエロっちでしょ」
悠介 「いや、ノートに聞いたんだが提督は空界にピクニックに行ってるらしい。
戻ってきた様子もないらしいしな」
ルナ 「む……じゃああれって……」
彰利 「OHパオシャンロン!ブッコロがして素材剥ごうぜ!」
夜華 「だが人が多すぎる。どうする」
彰利 「僕らには“特撮じゃよ〜!”というエクスカリバーがあります」
悠介 「だな」
ルナ 「うん」
夜華 「……この時代の人間には緊張感が圧倒的に欠けていると思う」
これぞ世に言う平和ボケ。
実際、窮地に立たされてみなけりゃどれだけヤバイか解らんのだ。
彰利 「そんじゃあいっちょハデにいきますかぁっ!」
悠介 「いくぞルナ!」
ルナ 「おーらぁい!」
言うや否や、悠介とルナっちが久しぶりに融合!
ゼファーになり、ゴシャーと空を飛んでゆく!
彰利 「夜華さん!アタイたちも負けてらんねー!」
夜華 「な、なに?待て、わたしは───」
彰利 「あなたと───合体したい」
望月の印!月癒力・冥抱融合───発動!!
魂結糸!?そんなの知らねー!足りない分は月影力と闇と影と黒でカバー!
彰利 「合体!アーサー童子!!」
夜華 「《ゴワゴワゴワ……!》うわわわわわわぁあああああーーーーーーーーっ!!!」
叫ぶ夜華さんを無視して融合!
するとライラちゅわんと一体感……じゃなくて、
夜華さんと一つに溶け込んだ、なんていうか説明しづらい感覚に包まれました!
融合体『名づけよう!我が名は───貴公子とカス!!
《ザクザクザクザク!!》いぁだいだだいだだだだだだーーーーっ!!!?』
右手が!右手が勝手に体に貫手を!
しかしこりゃあいい!なんてゆーかポワポワと浮いたような高揚感が身を包む!
貴公子とカス『さあ行くぜカス!
この貴公子が主体となって《ザクザクザクザク!》うぁだいぁあだだだ!!
ウソ!冗談です!僕もカスでした!───名づけよう!カス×カス!!』
……長期休載が訪れそうな名前だ。
T樫先生、今頃なにやってるんだろうなぁ。
いや今はそげなことよりバトルだぜ!
カス×カス『では名づけよう!アタイと夜華さんの文字を取って───瞬神・夜利!』
……寄る年並みには勝てませんなぁとか言いたくなる語呂だった。
ヨルトシ……夜がついてるのはいいんだけど、ものすごく平凡だった。
彰華……もヘンな感じだし、では華利!ハナトシは───ダメェエエ!!
OK!夜彰!ヤショウでいいや!
夜彰 『GO!』
空を飛ぶ!アタイが飛ぶ!雲を突き抜け星になる!
我が左手に込められし竜の左手が光って唸るぜコンナラー!!
夜彰 『ガァアアアアイ!!スゥパァアッ───ナッパァアアアーーーーーッ!!!』
断じて言うがサイヤ人ではない。
ないが、アタイは流星になった。
そう……今アタイが流星!猛き流星!
飛行してパオシャンロンに肉迫すると、
そのままの勢いでナックルをパゴシャア!
夜彰 『ブボルメ!!』
する前に叩き落された。
ぬ、ぬぉおおああ!?なんだこの裂帛の気合はァアア!!
まるで求めているなにかを邪魔された修羅の如き、ものすげぇ殺気だ……!!
だが負けてられ───アレ?
なにやら今、パオシャンロンの首辺りの毛から、
ちっこいのがモシャリと顔を見せたような……ハテ?
ゼファー『はぁあああああっ!!《バチーーーン!》ホギャーーーーーッ!!?』
アアッ!突っ込んでったゼファーがポルナレフソウルされた!
(注:ポルナレフソウル……ポルナレフの魂がダービーによってコインにされる際、
バチーンと両手で潰される様のこと。またはその型のこと)
夜彰 『融合してもあんま能力無いんだから無茶するでねぇーーーっ!』
ゼファー『む、無茶してるつもりはないっ!』
言いながら未完成のラグを振るう悠介だけど、所詮未完成。
むしろヴィジャヤ(剣)のままの方が扱えてただろうってくらいに、
随分とまあおざなりな剣捌きになっている。
夜彰 『だっせぇえーーーーっ!!ダッサダサだぁーーーーーっ!!』
ゼファー『うるさいよお前は!!』
じゃけんど思ったより行動が速いのは困ったもので。
この猿、“デカくて速くて強いこと”が揃ってるんですよね。
や、強いかどうかはまだ判断できてねーけど。
だからまずは遠距離。
竜の手の力をレヴァルグリードに流し、篭手から刃を出現させる。
ダークマターだ。
武器の名称自体が勝手な合成でレヴァルグリードになってしもうたけど、
こうして出現させる黒い刃の名前はダークマターのままになっている。
夜彰 『ショオラァッ!!』
出現させた、柄のない黒の刃を投げる。
それはパオシャンロンの背中にサクシュっと刺さり───刹那!
鼓膜を破らんほどの絶叫が!!
夜彰 『ギャアアアアアイ!!?ななななんじゃあーーーーーっ!!』
ゼファー『くっは……!耳がっ……!!』
え!?なに!?背中!?背中が弱点!?
それってラオシャンロンに似せて作られてるってこと!?
つーかラオシャンロンの弱点って背中の少し内側じゃなかったっけ!?
ええいもういい!大体こいつはゲームモンスターじゃねぇんだから、
作られてるって考え自体が適当じゃあねぇのYO!!
───あ、アタイのこと睨んだ。
……なのにズシンズシン歩いていっちゃった。
夜彰 『グ、グムム〜〜〜ッ!!お、俺を無視だと〜〜〜っ!!』
ゼファー『目的があって動いてるみたいだな……なんだ?』
夜彰 『細かいことは気にしません!まずは───っていかーーん!
なんか知らんけどあいつ、
オンディニエンスストアに一直線に向かっておるよ!?』
ゼファー『オンディ!?』
視線を辿るに、確実にコンビニに向かってる。
正式名称ヘヴントゥエルブ。
天国の12というよく解らん名前のそこは、男たちの溜まり場としても有名である。
何故夜に集うのかは……解らんけどね。
夜彰 『もしやコンビニに用でも!?』
ゼファー『あんなデカブツがコンビニになんの用があって行くんだよ……』
夜彰 『え?ほれ、例えば…………OH!急にビエネッタが食いたくなったとか!』
ゼファー『どこの世界にビエネッタ買う化け物が居るんだ!』
夜彰 『ぬ〜べ〜でだって“だいだら法師”が夜にいろいろ行動してたじゃねぇか!
あれと同じでヤツはきっとビエネッタ大好きの妖怪に違いねー!』
ゼファー『それこそアホウ!!たわけでアホウ!天地崩壊級アルティメット大たわけ!!
あれがだいだら法師ってレベルかこの馬鹿!』
夜彰 『キャアすげぇ言われ様!!いいじゃねぇかよぅ適当な予想立てるくらい!』
ゼファー『とにかく止めるんだ!被害が出てからじゃ───…………別にいいか』
夜彰 『オウヨ!こうして頼まれて来たけど、
アタイたちにとっちゃ世界の平和なぞどうでもヨロシ!
アタイはただパオシャンロン見たかっただけだし』
あわよくば倒して素材を剥いで〜とかしたかっただけで、別に……ねぇ?
アレがアタイたちの所為で出没しちまった〜ってんならまだしも、
急に出てきたヤツの所為で出る被害なんてアタイたちにゃあ関係ねー。
そこんところを悠介も納得してくれているようで、実に嬉しい限りだ。
だがしかしです。
俺……強くなりたい!強くなってレヴァちゃんパワーを全て引き出せるようになりたい!
そのためには普通の修行じゃあ足りないから、
もっともっとバトルして上を目指す必要があるのさ!
これはそのためのバトルと考えれば頼まれごとでも気にしナーイ!
夜彰 『よっしゃあいくぜぃ!《ゴバァン!!》』
左腕から出現させた竜の左手(正確には左前足)をギリィッと硬く握り締めさせ、
コンビニ前に転移!
そして即座にパオシャンロンの顎目掛けてナックルパゴォンッ!!
夜彰 『へぶぅ!?《ドゴドゴドゴドゴ!!》ギャアーーーーーーーーッ!!!!』
……ビンタで叩き落された。
しかも倒れたアタイ目掛け、何度も何度も拳を落としまくってくるパオシャンロン!
おおおこいつ容赦ねぇ!
ていうかね!あの!痛っ!マジでいたっ!ぶぼっ!やブボっ!!
ゼファー『こ、こらこらこらっ!待てお前!』
すぐにゼファーが割って入って拳を受け止めてくれるが、
そうするとパオシャンロンは興味をなくしたかのように移動を再開する。
ゼファー『……?どうなって……』
夜彰 『おがちちち……!そうまでコンビニにこだわる理由があるんかね……!』
砕けた地面からゴボリと起き上がりつつ言うが……いや、ありゃなかなかのお手前。
デカいってのは攻撃面においては有利だねぇ、
こっちの攻撃が当たりやすいっていう、防御面においての不利は当然あるけど。
……おお、なんかアタイ、バトルにのめり込んで言ってる?
まあ嫌な気分じゃないからOKさ!
夜彰 『ともかくバトル!
ここじゃあ周りの家破壊しちまうから別の場所に転移させるぜ?
さすがに家を破壊するのは忍びないし』
自分がやられたら相当腹立たしいからね。
───ギラリ
夜彰 『アルェ?』
転移って言葉を聴いた途端、
パオシャンロンが僕を睨んだようなギュルシュパァンッ!!
夜彰 『おげっく!?』
死角から尻尾が伸びてきてアタイをキャッチ!
突然のことで対応できなかったアタイを見事に絡め取ると、
そのまま宙に浮かせてビタンビトゥンビタァーーン!!
夜彰 『ゲファーーリゴフォーーリブフォーーーリ!!!』
遠慮なしに地面に叩きつけまくってきました!
ゼファー『このっ───!』
アタイを叩きつけるために上下する尻尾目掛けてゼファーが剣を振るう!
が、それより早く尻尾はアタイを離し、解放されたアタイはイヤァアアアッ!!?
夜彰 『キャア待って止まって悠介じゃなくてゼファー!!』
ゼファー『そんな急に止ま』
夜彰 『《ゾブシャア!》ギャアーーーーーーーッ!!!《ヂガガバリバリバリ!!》』
……ゼファーに斬られました。
しかも電撃が体を走り、なんともスパーキングな状況に。
そうしてる間にパオシャンロンはコンビニに辿り着き、
騒ぎをいぶかしんで出てきた店員を引っつかむと、口元に近づけて……!
夜彰 『キャア!食われる!あの店員食われるYO!』
ゼファー『捨て置け』
夜彰 『うおおなんて大胆発言!だが落ち着けゼファー!
食われちまったら特撮じゃよー!が使えない!』
ゼファー『───ええいもう世話の焼けるっ!』
夜彰 『ほんとに見捨てる気だったん!?』
ゼファー『おおよ悪いかっ!守ることをやめるってのはそういうことだ!』
夜彰 『いいやむしろナイスです!』
だが特撮じゃよー!が使えなくなるのは困るので、
アタイたちは急いでパオシャンロンを止めに───って、あ、あらー……?
ゼファー『……おい、何事もなかったように店員を地面に置いたぞ?』
夜彰 『つーかさ、さっきパオシャンロンの口元……つーより喉あたり?
からちっこいのが顔出してなかった?今見えねーけど』
緑っぽいなにかが見えたんだけど。
……ハテ?
あ、腰抜かしながらも店員が店に入っていった。
…………あ、戻ってきた。
手になにか……ってビエネッタじゃねーか!!
夜彰 『なにアイツ!マジでビエネッタ買いにきてたの!?』
ゼファー『金もちゃんと払ってるぞ!?なんなんだよあいつは!』
夜彰 『ええいコノヤラー!我と戦えぇええええっ!!』
ゼノの真似してレッツゴー!
───するよりも、異翔転移を行使してビエネッタを我が手に!
おおっ!?なんかモノスゲェ数だぞビエネッタ!
夜彰 『こ、こりゃあ大人買いというやつか!?買い占めたのかアノヤロウ!
んまあああ節度の範疇を知らぬ者め!これは没収しまキャーーーーッ!!?』
パオシャンロンが叫びながら襲い掛かってきた!
しかもモノスゲェ速さだ!
ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……!
これがあの図体での速度だというのか───って、
だからこの考え自体がそもそも間違いだって、
ゲームん中で理解したじゃねーのよアタイは!
ただ図体がデカいだけのヤツならそりゃ遅いだろうが、
筋肉がしっかりしてて身軽でありゃあ、その規模の分移動の範囲も増えるんだ!
視界に捉えられる範囲が大きいってだけで、それは速度の低下にゃ繋がらねぇんだ!
夜彰 『おぉっと動くなよ!?
動けばこのビエネッタがオシャカに《バゴチャア!!》ウギャーーーリ!!』
容赦なく潰された。
しかもまたゴチャアグチャアと狂ったような拳の弾幕が!
ああっ!ビエネッタが……ビエネッタがゴチャグチャに!
アルェ!?こいつこれが欲しかったんじゃなかったの!?
人質……じゃなくて氷菓質が通用しないなんて、まるで中井出じゃねぇの!
それでもまさかアイスごと潰してくるなんて誰が考えましょう!
夜彰 『こんのっ!《ドッゴォオッ!!》』
振るわれる拳を竜の手で掴む。
掴むというか受け止めるような形だが───う、うし、竜の手なら圧し負けねぇ。
こ、これならいけるぜ〜〜〜〜〜っ!
夜彰 『キョホホ……!アタ《バゴチャア!!》ネーヴェ!!』
ゼファー『彰利ぃいーーーーっ!!?』
片手を押さえたはいいけど、もう片方の手で思いっきり殴られました。
そして始まる無呼吸連打。
また狂ったように振るわれる握り拳が潰したりバウンドさせたりもう大変です。
───ギロリ
店員 「ひっ……ひひひひぃいーーーーっ!!?ありません!もうありません!!」
途中、睨まれた店員がやっぱり腰を抜かしながら叫ぶ。
ああ……やっぱり大人買いだったんだ、あれ。
ぬ、むっ……!しかしこのままやられっぱなしというわけにもいかん!
竜の左手から爪(アンギア)を失敬して───フン!!
ゾブシャアッ!!
パオシャンロン『ギャアーーーーーーッ!!!』
左右の篭手から突き出させた竜の爪を、振るわれまくるパオシャンロンの拳に突き刺す。
自分の拳の速度も相まって、根元までザックリだ。
オホホホざまぁみさらせ猿野郎!!
……つーかやたらと人間チックに叫ぶなこのパオシャンロン。
まさかギャアーとくるとは。
パオシャンロン『ハウルララララルルララァッ!!!』
夜彰 『《ガシィッ!》オワッ!?あがぁあがががごがががが!?』
突然でした。
パオシャンロンはアタイの体をガシィと掴むと持ち上げ、
前後にブンブンと振り始めたのだ。
まるでそう……“範馬刃牙”のピクルが、
アレンくんになにかを訴えようとしている時のように。
つーか揺れる!これ揺れる!脳がッ!脳がぁああっ!!!アァーーーーーッ!!!
夜彰 『助けてぇえええ!!親友助けてぇええええっ!!』
ゼファー『ああもう!そんなの強引に外してしまえ!』
夜彰 『やっっ……それがこいつものすげぇパワーでっ……!!
こっ……ふんぎんがぁあああああああああっ!!!《ミチミチミチ……!!》』
エネルギー全開!!
STRを上昇させて強引に外しにかかる!
……───ギャア外れねぇ!!
ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……!
以前のアタイならまだしも、竜の手の力を得たアタイが力負けするなぞ……!
ブワァッ!
夜彰 『ア』
───皆さんもご存知だろう。
生き物がなにかを投げるフォームというものを。
“まず振りかぶる”。
これ本能なんです。
より遠くに飛ばそうとするなら、より遠心力が手の先に届くようにと身を捻る。
あとは勢いをつけた手の先からそれを逃がしてやればいい。
ただこの場合、少し違いました。
そう、喩えるならまるで───
一掬いの水でも わたしが手にしたならそれは立派な武器になり得る
それが砂ならばなお一層強力な───
ましてその砂に爪や歯などの固形物が入り混じっているとなるともはや───
それは兵器ッッ!!
ルオシュパァッ!!!
夜彰 『ホッ───オォオオオオオオオッ!!?』
かッ……!風を切っているッッ!!
今までにない速度……いやもちろんディルゼイルの飛行速度には負けるんだろうけど、
それでも風を切っているッッ!!
えっ……なにっ……!?投げっ……!?
夜彰 『キャオラッ!』
身を捻るッ!
体勢を立て直し、反対側へ飛翔することで速度を殺して───って殺されねぇええ!!
あっ!やっ!建物が!無駄に高い建物が!
なしてこげなもんがこんな場所にあるん!?
ちぃい!ならば上!吹き飛びながらでも上には飛べウホォオオオオオオッ!!?
パオシャンロン『キッキ〜!』
た、谷川だ!じゃなくてパオシャンロンがいつの間にか上空に!
このやがしぃっ!!
夜彰 『ゲェッ!!』
あっさり掴まった。
ってダメだぁああ!!このままじゃ建物がグシャリと───フワリ。
夜彰 『………』
パオシャンロン『…………《にやあああああ……!!》』
……えーと、バケモンですハイ。
建物にフワリと、重力感じさせない着地をしてみせました。
ええもう、ガシャリとかゴシャリとか、ヒビが入る音も軋む音もしませんでした。
パオシャンロン『ウキョロキョキョーーーーーン!!フギャッフギャッ!!』
夜彰 『ぐ、ぐおお!離せ!離せえぇええええええっ!!!』
動き出すパオシャンロン!
俺は逃げようとするが、さっきよりきつく握り締められてる所為でてんで動けやしねぇ!
何処に向かってるのか解らんが、なにやら危険な香りがするのは確かで───
ストンッ
八百屋「ひいいっ!?」
……ア、アレ?何故八百屋?
つーかやっぱりこの巨体でストンって着地音は変だと思うんですが?
パオシャンロン『ウホロウホロホウホロホホ』
八百屋 「へっ……ひ……?こ、これが……ほ、欲しい……?」
腰を抜かしてヘタリ込む八百屋さんを前にパオシャンロンがバカデケェ指で指差すもの。
それは───……
夜彰 『……!……!《ダラダラダラダラ……!!》
あ、汗が!汗が止まらん!
何故!?何故こやつがアタイの弱点をっ……!!
いや!ちょ、待って!なに普通に金払って買ってんのアータ!
え!?袋は要らない!?うおおエコ上手!待って待ってやめて!
だめぇえええ!!キャベツはだめぇえええええ!!
やめっ───ヴァアアアアアーーーーー…………
【ケース636:ゼファー/地を這う包山龍砲】
……あ、夜彰……っていうか彰利の気配が消えた。
オチたか。
声 『どうするの?悠介』
ゼファー『どうするもこうするも。あんな巨体を野放しには出来ないだろ』
その……一応、頼まれてきているわけだし。
晦家でのことを考えれば上等だ、お払いかなんかを依頼された〜と思えばいいわけだ。
まあその、実力が伴えば……の話になるんだが。
はぁ〜あ、まったく随分と力を落とされたもんだ。
こちとら散々と努力をして得たっていうのに、なんだってこう……はぁ。
……まあ、解らないでもないんだが。
精霊のままじゃあルドラには勝てない。
かといって神の状態でだってどうかも解らない。
じゃあなにがいいか、っていったら……結局は素のままの俺なのだ。
あいつが神魔霊竜人の果て……様々な世界の重みを背負った先でああなったのなら、
俺は元のままの俺、月の家系の晦悠介として、あいつと向き合わなきゃいけない。
守るなんて言わず、自分の道に真っ直ぐな自分のままで。
この時代の俺が幸いだったのか、
いろいろなことの末に俺は守ることにそう熱心にならなくなった。
それがいいことなのかは……正直自分でも解らない。
けど俺は、どっかの知らない他人じゃなくて、
あいつらともっといっぱい馬鹿やって生きていたい。
そのために世界を見放せって言われたら、きっとそうするだろう。
随分と自分勝手な話だけど、そもそも自分勝手なのが当たり前なんだ。
だって、俺は……死神や神の混血みたいに産まれたとしても、人として育ったのだから。
ゼファー『……覚悟、完了』
戦ってもまあ勝てないだろう。
けどそんなもの、ルドラと戦うときにだって感じるであろう恐怖だ。
……今のうちに少しずつでも慣れておけ。
なにを守るためでもない、
俺は俺の未来のために……あいつらと居る未来のために、戦うのだから。
よしっ!難しいこと考えるのは終わりだ!
さっきからあいつ───パオシャンロンがどうして俺を狙わないのかは気になるが、
それでも戦うと決めたなら突っ切る!
ゼファー『───戦闘……開始!』
口にするとともに心の中でセットを唱える。
既に飛翔は行使済み───もはや間近に迫るパオシャンロンへと撃を落とすのみ!
ゼファー『くらえ《バシィイン!!》グワァーーーッ!!!』
……ポルナレフソウルされた。
ああ……今なら数々のバトル漫画に出てきたかませ犬キャラの気持ち……解るかも……。
【ケース637:パオシャンロン/旅行けば………………ホテルミカズキ】
…………。
パオシャンロン『……若すぎる……遅すぎる……そしてなんと弱い……』
ナギー 『ヒロミツが無茶しすぎなのじゃと思うがの』
さて……パオシャンロンになってコンビニを見つけたはいいが、
買ったビエネッタを彰利っぽいヤツに奪われてしまった……博光です。
しかも人質……じゃないな、氷菓質にしようってんだからコノヤローってなもんで、
この博光……じゃなかった、
パオシャンロンには氷菓質など通用しねーという意味もこめて粉砕してやりました。
お陰でビエネッタ粉々。
ごめんなさいエスキモー。
パオシャンロン『つーかなんなんですかこの人たち。
人のピクニックの準備を邪魔しくさって』
ナギー 『きっとティキミックがうらやましかったのじゃ』
パオシャンロン『や……だからピクニックね?』
しかしビエネッタを買いにきたのに邪魔されたお陰で、随分と時間を食ってしまった。
邪魔しない限りは攻撃するつもりなかったのに、
晦……ゼファーまでしつこく追いすがってくるもんだから、
つい思い切りポルナレフソウルをやってしまった。
くそう、空界では僕の家族が待っているのに!
パオシャンロン『ナギー!なんとしてもビエネッタを手に入れるのだ!
───この姿のままで!』
ナギー 『何故その姿にこだわるのじゃ?』
パオシャンロン『そのほうが───面白いからだ!!』
ナギー 『なるほどの!』
僕の首もとの体毛からモシャリと顔だけ出してるナギーにニコリと笑みを送り、出発。
さあてコンビニはぁ〜〜〜っと……がしぃっ!
パオシャンロン『なにぃ!?』
ク……クワッ!と辺りをねめまわしているさなかに感じる足への違和感!
見れば、我が足を彰利の竜の手が掴んでいた!
───と確認した途端、景色が残像のように流れていた。
ブワドッガァンッ!!
パオシャンロン『ブゲェッ!?』
ブン投げられた。
地面に、ドカンと。
彰利 「こ、ここここのヤラ……!ヤロウと言わずにヤラァと呼ぶのはなんで……?」
僕に訊かれても。
彰利 「キッサマもはや五体満足には帰さん!どっから来たのか知らねーけど!」
野郎……どこまでも俺のビエネッタ購入を邪魔する気か。
つーかなにしに来たのこの人たち!僕のことならほっといてよもう!
でも五体満足に返す気がないってことは、五体満足に帰れるとも思ってないのよね?
……打っ潰してやる!潰れたビエネッタ分、打っ潰してやる!
彰利 「キョホホホホ!さあいくぜ《ガシィッ!》オワッ!?」
彰利の体を両手でキャッチ&大空へとレッツ飛翔!!
彰利 「なっ!テ、テメェなにを───つーか飛べるの!?もしや野菜星人!?」
飛ぶ!飛ぶ!飛ぶ!さらに飛ぶ!で、えーと……あ、居た居た。
彰利 「あ、あれ?ジャンボジェット?え?あれ!?ちょ───ヒィイ!!?」
発見したジャンボジェット目掛けてさらに飛翔!!
背中から密かに突き出させたクサナギのジェット噴射であっという間に追い抜くと、
高速回転するエンジンへとゆっくりと彰利を近づけてゆく!!
彰利 「いやぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
いやっ!いやぁあああっ!!なにこのかつてない恐怖!!
ギャア!乗客も驚いてる!そりゃそうだ!!マジでてめぇなんなの!?
衾!?うしおととらに出てきた衾!?随分と毛深いようですけど!?
あのたらこみたいな姿はどうなったの!?───ギャアだめ!
思い出したら気分悪くなってきた!アタイもうたらこ食べられない!
い、いやっ……違うッ!この野郎、エンジンの風圧でアタイをっ……!」
エンジンに近づけて、周囲にある凍てつく空気で凍らせる!
こうすることで彰利の姿がパキコキと凍ってゆき……ビジュンッ!
あ、消えドグオシャァッ!!
パオシャンロン『ほぎゃあああああああっ!!!!』
背中に衝撃ッ!!
痛ッ!痛いとても痛い!!
痛ッ───ァアアアアア!?
どぉっごぉおおおおおんっ!!!!
物凄い速度で落下する僕を、大地が受け止めてくれました。
手っ取り早く言えば、背中の痛みを庇うあまり思いっきり腹から地面に落下しました。
空気抵抗なんて知りませんってくらいの勢い……まるでドラゴンボールです。
だが今こそ好機!爆煙(?)が盛大に立ち上ってる今こそ好機ぞ!
ブリュンヒルデの変化能力と超巨大化を解いて───逃走する!
五体満足には帰さんと言ったなッッ!ならば俺が取るべき行動はひとつ!
五体満足に逃げるのよォオオオオオ〜〜〜〜〜ッ!!!
そして普通にビエネッタ買って帰るの。
ナギー『な、何故逃げるのじゃヒロミツ!
ヒロミツの力ならあれしきの者どもなぞ倒せるであろ!』
中井出「ノー!僕は旅をするためにこの力をつけた!
面白い旅をするための力!それこそこの博光の力よ!
もちろん潰したくなれば平気で信条なぞ打っ潰すけどね?
でも今日は平穏に過ごすって決めたんだい!
彼らが僕をパオシャンロンだと思って襲ってきたのなら、
彼らの相手は僕じゃなくパオシャンロンなのだよ!
で、気づかれずに消えうせるの。そしたら彼らはグオッフォフォ……!!
居もしないパオシャンロンの姿を追ってここで時間を潰すことに……!」
ナギー『……ほんに楽しければ、己のプライドなぞどうでもいいのじゃな……』
中井出「プライドさえも面白さの引換券に!それが我らの原ソウル!
それとナギー!これは僕の力じゃなくて武器の力さ!
そう言ってくれた方が博光嬉しい!僕は武器を愛しているのだから!
技術なんて知らねー!立ち回り方なぞどうでもいい!
ただ武具を!一心不乱に武具を鍛えたい……!そしてともに楽しむんだ!
それがこの博光が旅をする理由の一つ!
倒せるから倒す、じゃないのだよナギー……!
そこに楽しみがあるから僕らは走るんだ!」
ナギー『う、うむ!もはや何も言わんのじゃ!
つまり誰がどう思おうが、人それぞれだと!そういうことじゃな!?』
中井出「そう!それだよナギー!周りが僕にこうあって欲しいと願っても、
僕がそうなりたくないのに無理矢理そうあっても面白い筈もない!
だから僕らは僕らが僕ららしくあればそれでいいのさ!」
ではいきましょう!
ステータスを全てINTに回して、あとは通行人に成りすませば万事解決!
俺の気配なぞグオッフォフォ……!!野次馬たちに紛れ込まれれば解るまい!
だってオラは……人間なんだから!
あ、でもナギーどうしよう。
まあいいや!見つかった時は見つかった時さ!
さあ行こう!まだ見ぬコンビニを求めて!!
俺達の戦いは───始まったばかりだ!
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