───冒険の書279/やさしさ、プライスレス───
【ケース712:穂岸遥一郎/チョコボでマンボ……?】
じゃっちゃっちゃ〜♪じゃっちゃっちゃらちゃちゃじゃっちゃっちゃらっちゃ♪
ロド 『ゴェエッ!!』
行く当てもなく道を歩くことどれくらいだろう。
俺達は高い山の前まで来ていて、
そこが、いつか見た猫の里前なんだと知る───と同時に、
その前で踊って回って翼を広げるルルカ、ロドリゲスを発見した。
あ、あー……どこからツッコめばいいんだ?これは。
女性 「───!?誰ですの!?」
あ、見つかった。
ロドリゲスの隣に立っていた女性……立ち居振る舞いからして結構高貴そうなそいつは、
俺を見つけるなり敵意剥き出しに睨んできた。
───が、その隣に居た……昏黄に止められる。
悠黄奈「お久しぶりですね、穂岸さん」
遥一郎「……ど〜も」
ノア 「最後にお会いしてそう経ってませんが」
悠黄奈「わたしには10年前のことですから。……その後、お変わりなく?」
ノア 「ええ、マスターはマスターのままです」
遥一郎「や、あのなノア。そういうことじゃなくてだな」
いや、そういう意味でいいのか?ええい解らん。
遥一郎「えっと。ところでなにをやってるんだ?……ロドリゲス、だったよな、そいつ」
悠黄奈「ええ。これからシャルロットさんと一緒に、
デルフェルという場所へと向かうところなんです」
遥一郎「デルフェル?」
ノア 「そこは?」
女性 「コロシアムのある、大きな町です。
そこにわたしの夫が連れ攫われたので、奪い返しにいくのです」
遥一郎「穏やかじゃないな……大丈夫なのか?その、女二人で。
昏黄はその、解るとしても───」
悠黄奈「ああ、その点はご安心、です」
かくりと小さく笑顔を傾けながら、立てた人差し指をくるりと回転。
そして教えてくれる。
このお嬢さんがエトノワールの王妃さんで、しかも中井出の嫁さんで、
皇帝マラジンが中井出だってこととか、
亜人族を庇ってコロシアムに連れ攫われたこととか、
そのマラジンに機械の鎧と簡易ネックレスを預かったお陰で、死んでも神父行きだとか。
その代わり簡易なために、メールしか受け取れず、
バックパック機能もステータス機能もないんだとか、いろいろ。
遥一郎「その機械っていうのは、強いのか?」
悠黄奈「はい。ビームサーベルからガトリングカノン、レーザービームやガードシステム、
ビットシステムからミサイルランチャーシステムまで完備です」
遥一郎「とんだびっくり鎧だ……」
悠黄奈「博光さんが所有してたものですから、
ただものではないとは思ってましたけどね……」
中井出の所有物か……道理で。
でも珍しい……って思っていいのか?
あいつが誰かに武具を渡すなんて。
───…………ってそうだよ!
遥一郎「嫁!?夫!?妻!?ど、どうなってるんだいったい!」
悠黄奈「ふふ、反応が遅いですねぇ穂岸さん。それじゃあ順を追って説明しますから、
まずはデルフェルに向かいましょう」
遥一郎「向かうって……ルルカに乗って?」
悠黄奈「はい。ロドリゲスさんに乗って、空を飛んで」
遥一郎「───え?」
空?空って───
……。
コォオオオ……ばさばさばさっ……
そんなわけで空を飛んでいる。
昏黄とシャルロットはルルカに、俺とノアは、俺が作ったエアリアルボードに。
エアリアルボードっていうのは空飛ぶ風のボードみたいなものだ。
遥一郎「大丈夫なのかー?その、空飛んでるとデスゲイズに───」
シャル「ご安心をー!わたくしの髪飾りには、
飛空艇にも組み込まれている躯骸王除けの機械が埋め込まれていますからー!
ですからあまりわたくしから離れないようにしてくださいませー!」
そ、そうなのか。
やっぱり姫さまともなると、いろいろと大切にされてるものなのか?
遥一郎「中井出が攫われたって言ってたけどさー!……叫ぶの面倒!
tell:昏黄悠黄奈───っと。もしもし?」
悠黄奈「はい、よく聞こえますよ」
目が届く場所に居るのにtellっていうのもヘンな感じだけど、
こう風が強いのでは話にならない。
昏黄の口の動きと、tellを通して届く声が同期することに頷きを返し、話を進めてゆく。
遥一郎「中井出が攫われたって言ってたけど。
それとコロシアムとなんの関係があるんだ?」
悠黄奈「それはですね、
コロシアムがモンスターたちを見世物みたいにする場所だからです。
博光さんはモンスターになっていましたから……その、運営委員が捕獲して……」
遥一郎「逃げ出そうと思えば出来たんじゃないのか?
それとも、この世界の機械っていうのは中井出でも太刀打ちできないくらい……」
悠黄奈「ああいえ、それは違います。さっきも言った通り、亜人族を庇ってです。
もちろん亜人たちに気づかれずに始末することも出来たんでしょうけど、」
……チラリ、と……言葉を濁した昏黄が、シャルロットを見る。
なるほど、さすがに姫様の前で人殺しは───
悠黄奈「既に帝国貴族を彼女の前で始末してしまったと言っていましたが、
それは自分を殺しに来たからで───捕らえようとしている者を殺すのは、
やっぱり抵抗があったんだと思います。
無力化を狙うことも出来たのでしょうけど、
その騒ぎを亜人族に知られたら、いらないいさかいが起きますから……」
遥一郎「……そっか」
やっぱり、いろいろ考えてるんだな、あいつ。
いや……それもそうなのかもしれない。
本意じゃないとはいえ、人を殺してしまったんだ。
殺しに対して、戦に対して敏感になってしまうのも頷ける。
どれだけ強くなろうが、中身は、心はやっぱりただの人間なのだ。
シャル「む……あの?後ろでボソボソ話されていると気になるのですが?
隠し事は感心いたしませんわよ」
と、ここで昏黄のネックレスを通してのシャルロットの声。
昏黄の前でルルカに乗る彼女は、面白くなさそうに口を尖らせてそう言った。
ノア 「ええ、まったくですね。マスター、わたしも面白くありません」
もちろん、俺の目の前のノアも。
前を向いていた体をこちらに向かせ、
上目遣いに見上げてくる目は、どう見ても俺を責めていた。
遥一郎「いや、けどな、中井出の話を聞いたって、お前は嬉しくもないだろ?」
シャル「わたくしは嬉しいですわ!」
遥一郎「お前じゃなくてノアに言ったんだが……」
ノア 「無視されるよりはマシです」
遥一郎「………」
ノアのメイドさん宣言からしばらく。
こいつの独占欲みたいなのは相変わらずらしく、
どこか怒りを含んだ顔で、じ〜〜〜っと俺を見上げてくる。
勘弁してほしい。
メイドさん、なんてものに興味がない俺は、お前がお前らしく居てくれるのが一番なのに。
なんとかならないのか、その服装は。
……はぁ、と溜め息ひとつ、俺はノアの頭の上で手をポンポンと弾ませた。
急ぐか。いろいろと面倒なことになる前に。
───……。
……。
悠黄奈「え……出ていった?」
解説 「ああ、お陰で商売あがったりだよ。
オルランドゥも居なくなったってんで、グラディエーターは雑魚ばかり。
モンスターも居なくなっちまったし、捕らえようとするとすかさず逃げるしで。
今ここに居るグラディエーター同士が戦ったところで、てんで盛り上がらねぇし」
悠黄奈「はあ……」
解説を名乗った男から話を聞いた昏黄が、たととっと戻ってくる。
で、立ち止まってから俺達の前で首を横に振った。
聞こえてたから解るものの、何処へ行ったかくらい解ればよかったんだが……
悠黄奈「すいません、あの様子では何処へ行ったかさえも解らなそうだったので」
遥一郎「ん。それは俺もそう思ったから」
シャル「遅かったのでしょうか……
わたくしがもっと早くに助けに向かう覚悟を決めていれば……」
悠黄奈「仕方ありませんよ。機械鎧の扱いに慣れる時間がかかったのですから」
シャル「……あ、ありがとう、悠黄奈。あなたは本当にやさしい人……」
ノア 「キッパリ言いますが、
あなたがあまりにも世間知らずなだけかと《ぽがっ!》はうっ!」
遥一郎「そういうことはきっぱり言わない」
ノア 「うう……も、申し訳ありませんマスター……」
どうしてこう、俺以外のヤツにはキッパリなんだ?
……俺にもきっぱりか。忘れよう。
シャル「ああいえ、それは本当のことですから構いません。
それよりも町の人から少しでも情報を集めましょう。
そうすれば何処へ向かったのかくらい───」
遥一郎「……いや、それは必要ないみたいだ」
シャル「……はい?」
やってらんねぇ、と選手名簿を投げた解説。
その落ちた名簿を拾うと、その中から見知った名前を見つけた。
【Side───かろやかに……愛の悲鳴】
ピッツィーーン!!
マギエル『もきゅっ?』
閏璃 「ぎゃあああーーーーっ!!!」
彰利 「だからてめぇ!急にキモエルになるのやめれって言っとるでしょ!?」
マギエル『キモエルじゃないよ!マギエルだよ!!』
10分10分の楽しみがここにある…………こんにちは、博光です。
あれから彰利、藍田くん、閏璃くんとともに、ひたすらに北を目指しています。
北になにがあるのか!?それは……モンスターユニオン、真名・エルメテウスがあります。
というわけなので、マグニファイを発動させて八頭身チャチャブーになった僕は、
ジークフリードを虚空に寝かせてその剣に乗る。
その動作にハッとした彰利と閏璃は、
きょとんとしている藍田くんの腕を取って無理矢理ジークフリードの上に!
マギエル『て、てめぇらぁあああ〜〜〜〜〜っ!!
この博光の同志を土足で踏みにじりやがってぇ〜〜〜〜っ!!』
彰利 「てめぇだって踏みにじっとるでしょうが!それよりハイ!
各馬一斉にスタート!ね!?はい!ねっ!?」
マギエル『…………いいこと思いついた!!』
彰利 「ホエ?《ドゲシッ!》アウッ!!」
早々に三人を蹴落とし、僕も降りるや巨大化&鎧化発動!!
甲冑男爵となった僕は三人を掬い上げるように手に乗せ、ガンザックオープン!!
彰利 「こりゃあ───キ、キミたち!衝撃に備えたまえ!」
藍田 「命令してんじゃねー一等兵風情が!」
閏璃 「何様だコノヤロー!!」
彰利 「ギィイイイイイイ!!なんか懐かしい反応なのに素直に喜べねぇーーーっ!!」
ドンガァァアアォオオンッ!!!!
総員 『ほんぎゃあぁああーーーーーっ!!!!』
そして僕らは蝶になりました。
そう……ジャンボジェットという名の蝶に……!
え?そんな蝶は居ない?
……ぞ、造語って言葉があるなら、造生き物があってもいいと思うんだ僕。
彰利 「ヌッ!?tellだ!誰じゃいこげな時に!」
閏璃 「馬鹿者!乗り物に乗ってる時は、
ケータイとかいうものの電源を切っておくのがマナーだろう!」
藍田 「そんなことも解らないのかこのクズが!」
彰利 「やかまっっしぇい!解りましたよ切っときゃあいいんでしょ!?なんだよもう!」
ブツッ……
彰利 「悪は去った……誰だか知らねーけど」
藍田 「ナイスマナー!」
閏璃 「ナイスマナー!」
彰利 「センキューマナー!」
藍田 「───あ。《ブツッ》……ふう」
彰利 「……オ?なに?今のなに?ン?もしかしてマナー違反?お?」
藍田 「な、なななに言ってんだよ違うよ、ちょっと時間調べてただけだって」
閏璃 「じゃあ見せてみろ!そうすればログで解る!」
藍田 「な、なんだよ〜!やめろよ〜!ほんとそんなんじゃねぇってよ〜!」
彰利 「見せなさい!この!見せなさいっての!」
藍田 「や、やめろよ…………!それ以上やったらお前…………人権だぞっ…………?」
彰利 「だからどうした!」
閏璃 「生憎だがここは地界の法律の届かぬ場所……人権なぞ知ったことか」
藍田 「この世界にだって人権問題くらいだるだろ!うわやめろっ!ほんとやめろ!」
閏璃 「ひゃひゃひゃひゃ、嫌よ嫌よも好きのうち、ささ、朕にすべて委ねるでおじゃる」
彰利 「このホモが!!」
閏璃 「お前にだけは言われたくないぞその言葉!!なんでそんなに嬉しそうなんだよ!」
こんなにジャレあって……平和だなぁ……。
なんて遣り取りを、3分経ったあたりでデスゲイズに襲われるまで続けてました。
ええ、もちろん開幕メテオでほぼ全滅でしたが。
僕は不死身なのでそのまま逃げました。
【Side───End】
……。
遥一郎「………いや、あのな」
シャル「…………」
悠黄奈「………」
ノア 「はあ……」
視線が集中していた。
名簿にある弦月、藍田にtellを送ってみたんだが、ことごとく受信拒否。
残るは岡田なんだが……ええと、tell:岡田省吾、と…………
ピピンッ♪《ただいま悶絶中のため、受信拒否中です》
…………。
悶絶?
いったいなにがあったんだ、岡田の身に……
と、思うのも束の間。
俺へと注がれる視線、視線、視線……
遥一郎「い、いや、こんな筈じゃ……」
悠黄奈「頭も要領もいい筈なのに失敗続き……あの、池くんと呼んでいいですか?」
遥一郎「なンかヤだからやめてくれ」
溜め息混じりにそう言うと、
素直に“悪い”と頭を下げて、地道な聞き込み作業に入ることにした。
これで要領いいっていうんなら、どれだけかはマシなんだよ、昏黄……。
───……。
……。
ざわざわ……
遥一郎「うん?」
コロシアムがある高台から町まで降りてくると、
その町でなにか人だかりのようなものが出来ていた。
俺は一番手前に立っていた男に小さく訊ねると、
それが物乞いを見ている集まりだということを知る。
ノア 「物乞いですか……気分が悪いですね」
遥一郎「ノア?」
ノア 「失礼します。少し道を空けていただけますか」
溜め息を吐いたノアが、人垣を押し退けてゆく。
しかし中には物乞いを見ていたいヤツも居たようで、
先に進もうとするノアを罵倒しツキューーン!!
男 「はごお!」
……撃たれた。
それで道はモーゼの十戒のごとく開け、
ノアはその間をメイド然とし慎ましやかに歩みゆく。
そしてボロボロの布の服を纏った女性の前に屈み込むと、
その手に……何処で手に入れたのか、オロ通貨と食料を与えた。
女性 「あ、う……?」
ノア 「足りないものを乞うことは無様ではありません。
余裕があるのにそれを与えもせず、笑う人を無様と呼びましょう」
男2 「な、なんだぁ?これは俺達の町の問題だぜ!?
よそ者は引っ込んでてもらおうか!」
ノアの言葉がカンに触ったのか、一人の男が身振り手振りで怒りを声に乗せる。
そんな男に対し、ノアはゆっくりと身を立ち上がらせると静かに向き直り、
ノア 「ほざきなさい。町の問題だからと、弱っている人をよってたかって囲んで、
見世物にするのがこの町のやり方だとでも仰るつもりですか?」
男2 「ぐっ……!?そ、そんなのっ……てめぇには関係ねぇだろうが!
すっこんでろメイド風情が!!」
ノア 「《ビキッ───》……メイドさん秘術書、項29より……
メイドさん自身が罵倒されることは、主への忠誠を穢されたことと知れ……。
並びに、自身のメイドさん然たる態度に間違いがあった、と、お、ぉおお……!」
男2 「あ、あん?なんだ?」
遥一郎「あ、あの……ノアさん?ちょっと待って欲しいかな、なんて───」
ノア 「《ジャコォン!!》───排除します」
遥一郎「待ってくれぇええええっ!!!」
アークをガンマスターモードに切り替えたノアが、眼光鋭く男を睨む!
ノア 「マスター、許可を。この者を───」
遥一郎「ダメ!」
ノア 「許可申請、降りました。では排除します」
遥一郎「ダメだってぇえええっ!!」
ノア 「ですから、この者を逃す許可を、と。
マスターの気持ちを汲んでのことだったのですが、
言い終える前に却下が下ったので。
嬉しいですマスター、こんなところで共感を得られるなど」
遥一郎「うそつけぇっ!!お前最初っから殺す気満々だったろぉっ!!」
などと叫びながらも、町の人たちに逃げろとアイコンタクトをする。
ノアもそれを解っているようで、はぁ、と肩を竦めながらそれを見逃す。
が───ノアの殺人劇場は、意外な結末を持って終えることとなる。
男3 「メイド……はっ!?も、もしかしてあいつが噂の辻斬りメイド!?」
悠黄奈「はい?辻斬り……メイド?」
ノア 「メイドではありません。メイドさんです」
遥一郎「……弦月のようなことは言わないでいいから」
シャル「……?なんですの?その辻斬りメイドさんとは」
女 「ご、誤魔化そうったってそうはいかないわよ!
あなたでしょう!最近ここらで人を襲い続けてる野良メイドっていうのは!」
……初耳だが。
男2 「辻斬りメイド!?こ、こいつが!?
あの、身の丈以上の大きな剣を片手で振り回す、絶世の美女……!
漆黒のメイドサーヴァント!?」
……なんか解った。
ノア 「……マスター」
遥一郎「ほぼ間違いない……レイチェルさんだ……」
俺の知る限り、メイド姿で大剣使いなんてあの人だけだ。
男4 「け、けどよ、漆黒さんは悪事を働くヤツしか襲わねぇって訊いたぞ!?」
男2 「知るかよそんなこと!とにかく俺は逃げるぜ!つきあってられっかぁっ!!」
ドタタタタタ……
…………ひょおおおお……
遥一郎「…………一気に、だな」
ノア 「はい」
そして誰も居なくなった。
はあ……助かったんだか呆れるべきなのか。
なにやってんですかレイチェルさん……こんなところで辻斬り呼ばわりなんて。
ノア 「いかがなさいますかマスター。夜を待って、レイチェル様を探しますか?」
遥一郎「何故夜?」
ノア 「辻斬りは夜と相場が決まっていますから」
その言葉に相場は関係あるのか?
そう訊ねたかったが、訊ねた途端にねちねちと説明をされそうだったので、やめといた。
悠黄奈「待ち人がいらっしゃるのでしたら、わたしたちは先を急ぎますから───」
遥一郎「ああ、ええと……いや、ヘタに知り合いと遭遇して、
観咲に捕まるのもナンだしな。行くよ、一緒に」
ノア 「懸命です。わたしもあの馬鹿と遭遇するのは避けたいので」
遥一郎「……お前、観咲のことになるとキツイよな」
ノア 「天敵ですから」
なんだかんだで結構認めているらしい。
巻き込まれる側としては、傍迷惑な話だけど。
まあ、そんなこともあって……町の人に恐れられた俺達は、
結局大した情報も得られないままに出発。
行く当ても得られないまま、適当に空を飛んだのだった。
【ケース713:晦悠介/やがて夜へ】
ゴララララララ……
レイル 「くあぁ〜〜あぁあ……ふぁひゅひゅ……うぁ……眠い……」
悠介 「そろそろ陽も落ちるな。
……ところで、向こうのほうで起きた地震、結局なんだったんだろうな」
ジャミル『爆発音も確認しました』
陽が落ちるより早く、遠くでなにか巨大なものが落下したような音を聞いた。
なんだったのかイマイチ解らんが、
のちにデスゲイズがその音がした上空あたりを飛んでいたから、
生き物だったら生きちゃいないだろう。
ジャミル『…………♪』
悠介 「……ところで〜……ジャミル?
お前がさっきから楽しげに世話してるその物体は……」
ジャミル『え?あ、はっ。実は陽が落ちる前、どこからかリアカーによじ登ってきまして。
ご覧ください、まるで人形のような可愛さでしょう!』
悠介 「ん……んあ〜……なんか……使い方、間違っちゃいないか……?微妙に……」
きゃー♪といった感じに両手で突き出されたのは、
ぐったりとした……チャチャブーだった。
確かに人形といえば人形チックだが、人形のように可愛いって言葉は普通、
日本人形を喩えて言わないか?───……ん?チャチャブー?
悠介 「……も、もしかしてだが……あ、あー……提督?」
チャチャブー『………』
ぐったりしてる。
試しに調べるを発動してみると───“マラジンは計り知れない弱さだ!”と出た。
そっかーマラジンかー、って皇帝じゃないか!!
悠介 「提督!?提督だろ!?おい!なにやってるんだこんなところで!」
ナギーに提督がチャチャブーになったとは聞いたが、まさか皇帝にもなってたとは……!
ああいやいや今はそんなことはどうでもいい!
いや待て!?もしかしてさっきの落下音とかも提督が原因!?
チャチャブー『ボクハコノアオイチキュウガダイスキデシタ……』
悠介 「うわわ死ぬな死ぬな死ぬなぁあーーーーーっ!!
ほら提督!空赤いから!もう陽が落ちそうで暗くなるけど赤いからぁっ!」
チャチャブー『ククク馬鹿め……一部だけ青なのを知らんのかクズが……』
悠介 「おぉおおおおお瀕死になってなおムカツク野郎だなぁもう!!」
ジャミルの手から提督を引ったくり、ガクガクと揺らす。
するとサイコロに変身したヌ・ミキタカゾ・ンシのようにオエエエとゲロを───って
悠介 「うおわーーーっ!!」
レイル「うわっ!?ばかこっち投げるなっ!」
まるでスローモーションだった。
思わず投げてしまった提督がレイルにはたかれ、前方……サンが走る方向へと飛び、
大地に叩きつけられたのちにリアカーの車輪(三人の体重+)でバキベキと轢かれ……!
悠介 「ひぃいい!?ててて提督ーーーーっ!!?」
レイル「うわあぁああわわわ今すげぇ嫌な感触がケツからベキベキって震動で……!!」
進んでゆくリアカー。
流れゆく大地。
……そこに残されるのは、ズタボロになったチャチャブーの姿だった……!
内臓なのか、妙な黒っぽいものがズリズリと車輪のほうから伸びていて……うえぇ……。
悠介 「………」
レイル「………」
ガラガラガラ…………
悠介 「……夜空が綺麗だな」
レイル 「そうだな……」
ジャミル『ええ、本当に』
俺達はなにも見なかった。
チャチャブー?きっとマボロシだったんだよ。
───……。
悠介 「で……」
マラジン『やあ』
悠介 「なんであんたはここに居るのかな……」
マラジン『火闇巻きつけときました!』
悠介 「あの黒っぽいのはそれかぁあああああっ!!!」
内臓かと思ったぞ本気で!
しばらくモツ煮込みは勘弁だって思ってたのに!
あ……ダメ……思い出すだけでもやっぱりモツは……。
悠介 「……で、あの後ろをオーガストリートを駆ける
スピードワゴンさんとその仲間たちみたいな彼らは?」
マラジン『デスゲイズに殺された人たち。教会で復活して、すぐ追ってきたんでしょ。
僕不死身だから普通に追ってきた』
レイル 「お前さんはほんと、存在自体が面白いなぁ」
マラジン『フッ、やめときな。俺をおだてたら脳漿が飛び出るぜ?(俺の)』
レイル 「そっ……それは怖いな……!」
悠介 「おだてても何も出ないって言うところだろ、そこ……」
マラジン『いつも同じ反応じゃあつまらないじゃないか』
そういう問題なのか?……そういう問題なんだろうなぁ、少なくとも提督にとっては。
悠介 「で……提督、こんな場所までなにか用だったのか?」
マラジン『うむ!………………なんだっけ』
悠介 「お……ぼえてない、のか……」
マラジン『いや、なんか漠然と貴様を追おう!ってことになって、
本当は封印を解かなきゃいけなかったんだけど、えーとえーととりあえずこれ』
悠介 「?」
提督が鬼面をぐるぐる回転させると、そこから───出るわ出るわの月の欠片!!
悠介 「て、提督!?こんなに、どこでっ……」
マラジン『コロシアムの宝物庫を襲って!最強!』
言って、ミギー!と両腕を大きく挙げて背伸びの運動をする鬼面族一匹。
一人、って喩えたほうがいいのかもしれないが、
どうもチャチャブーは一匹と数えたくなってしまう。
これは俺だけか?
マラジン『……ってそうだ、藍田くんに太陽の紋章をあげなければ。
なにせ太陽だ、発熱量はきっとハンパじゃないこと請け合い!
藍田くーーん!早く来てくりゃれー!太陽の紋章あげりんすー!』
藍田 「速ぇえええんだよその運び屋ぁあああっ!!
ちょっ……ほんと待て!待ってぇえええっ!!」
マラジン『………』
閏璃 「提督さんっ……ちょっとほんとっ……そいつ止めてくれぇえええ!!」
マラジン『………』
彰利 「こ、これ!おやめ!中井出はそういうこと言うと───」
マラジン『悟空、修行じゃ』
彰利 「やっぱりぃいいーーーーーっ!!」
提督は火闇を器用に扱い、リアカーの上から石を拾い集めると、
後方を懸命に走る三人へとビスビスと投げ始めた!!
彰利 「あででででで!ててててめぇえええええ中井出ぇええええっ!!!」
マラジン『マラジンである!余はエトノワール皇帝マラジンなるぞ!
さあ、この試練を乗り越え、ここへ来るのだ!
来た者には褒美として、この太陽の紋章を《がたんっ!》あ』
石にでもつっかけたのか、リアカーが大きく跳ね、
その拍子に人が引いているとは思えない速さだったリアカーから提督が振り落とされ───
バキベキゴロゴロズシャーーーアーーーー!と跳ね転がって、
追いついた三人にボコボコにされた提督がAHEEEEYYY!と叫んだ。
ああ、もう……さっきまで静かだったのが、一変して物凄く煩くなってきた……。
───……。
……。
レイル「かー……こー……」
悠介 「どうしてこの状況で寝れるかな……」
散々な騒動ののち。
別料金を払うってことで止まってくれたサンは、彰利や提督をリアカーに乗せ、
額に爽やかな汗を掻きながら走りだしていた。
そんなぎゅうぎゅう詰めな状況で眠る一人の猛者が、こいつだ。
マラジン 『きっと疲れてたんだよ。そっとしておいてあげなさい』
悠介 「とか言いつつ、必死になにか書くものを探すのはやめないか?提督」
マラジン 『とか言いつつ創造してくれるキミが大好きだ。それではご一緒に?』
悠介&マラジン『ホ〜ワ〜イトニング〜♪《キュッキュッ♪》』
創造した二本のサインペンで素敵なアートを描いてゆく。
以前の俺ならばまずやらなかっただろうが、
原中の僅かな生き残りとして、そんな遠慮はもはや不要。
楽しむためなら無茶もしよう……それが我らの原ソウル。
彰利 「あ、ちょっとそっちもうちょい詰めて」
閏璃 「おぉおお押すな押すな」
藍田 「あっ」
マラジン『《どんっ!》あれぎゃあああああああぁぁぁ…………───』
ジャミル『……お、王?人形が落ちてしまったのですが』
悠介 「どうせすぐ戻ってくるさ」
マラジン『やあ』
ジャミル『わあっ!?』
悠介 「な?」
心なし、サンの息遣いが大分荒い気がするが、休むタイミングはサンにほぼ任せている。
辛くなったら休んでくれって言ってあるから休みたくなれば休む筈だ。
……と、ここでサンからの降参の合図。
リアカーを大木の下に止め、大木に背中を預けてゼーハーゼーハー言い出した。
マラジン『フォァッ!』
彰利 「スゥッ!」
藍田 「ホウ〜〜〜〜ッ!」
閏璃 「ウォヤウェタコッチャケタムジィ〜〜〜ン♪」
そんな彼を囲むようにして歌う彼らはいったいなんなんだろうな……。
と、俺の困惑の視線に気づいたのか、振り向いた閏璃が律儀に教えてくれた。
閏璃 「ぜーぜー疲れてるヤツ見るとさ、ポリスストーリーのED思い出さないか?
正確な歌とか知らないから適当に歌っただけだけど」
知らん。
悠介 「よく解らないが……ところで閏璃、その手のソレは……」
閏璃 「お?おーおー、魔王の斧だ!装備したら外れなくなった!」
悠介 「そ……そうなのか」
彰利 「チッ……せっかくあえて無視してたのに……」
藍田 「台無しだよ畜生……」
悠介 「あーこらそこ、申し合わせてもいないのに無茶言わんように」
彰利 「中井出は黙っててくれたもの!」
藍田 「提督は普通に生暖かい目で見守っててくれてたぞ!?」
悠介 「あぁあああの人の感性と俺の感性を同一視するなぁあーーーーっ!!」
彰利 「キャアあの人だって!中井出慕われてる!」
藍田 「おぉおお……提督の素晴らしさは晦も認めるほどってことなのか……!
こりゃますます興味が沸いてきたぜ……!」
…………。
少し離れてただけで、つくづくいろいろあったらしい。
藍田が提督のことを提督って呼んでるのだけで驚きなのに。
悠介 「で……なんの用でこんなところまで来たんだ?」
マラジン『今なら空も飛べる気がしたんだ』
悠介 「ワケの解らんツッコミどころ満載の言葉はいいから」
彰利 「いや、今なら空も飛べる気がしたんだって」
悠介 「……藍田?」
藍田 「空も飛べる気がした」
悠介 「閏璃……」
閏璃 「ああ、空飛べる気がした。ほんとに」
悠介 「……なぁ、なにひとつ意味が解らないんだが……」
空飛んでなにがしたかったんだ?
ていうか、なんだ。空飛んだんじゃないのか?
マラジン『空飛んで、丁度落下する時にデスゲイズにあってさ。
いや〜それがもう物凄いボロクソやられ様でさ。
危うくホントに昇天!ってな感じでうん、空も飛べる気がした』
悠介 「昇天しにきたわけじゃないだろうがっ!ここに来た理由を訊いてるんだって!」
閏璃 「…………本当に、わからないのか?」
悠介 「え……閏璃?」
頭が混乱しかけたところに、閏璃の一言。
その真面目な顔が、俺の頭の中を落ち着かせてくれた。
彰利 「お前の手の中にあるもの、見れば解るだろ……?」
悠介 「手の中、って……あ」
握り締めていた手を開くと、そこには月の欠片が───
悠介 「そ、それじゃあ……」
藍田 「提督はな、それを届けたくて、
こんなところまで少ない情報を頼りに走ってきたんだよ……」
彰利 「デスゲイズにも襲われたし、高い空から落下したりもした」
閏璃 「遠い旅だったよ。だけど提督さんはスピードを落とさなかった。
それがどうしてか……もう、解るだろ……?」
悠介 「《じぃいん……》お、お前ら……」
じぃんと来た。
こんな感覚は久しぶりだ……
自分が誰かに思われるって……ああ、そうだ……こんな気持ちだった。
ルナのように女性に思われるのとは違う、この暖かい気持ち……仲間だということ。
それが、俺の中でじんわりと───
マラジン『コロシアム襲って宝物庫荒らしたの、
モンスター軍勢ってことになってるからよろしく』
悠介 「なぁああかいでぇええええええっ!!!
てめぇえええええええええええええっ!!!!!」
おぉおおおおおほんと人の喜びに水を刺すのが上手いヤツだなぁああ!!
差すどころの話じゃないぞ!?ブッ刺してるぞ水を!!
マラジン『フェゲヘハハハハハ馬鹿めぇええ!!!
この博光がなんの面白さも求めずにタダでアイテムをくれてやると思うてか!!
それを受け取った時点で全ての罪は貴様行きよウェーーッハッハッハッハ!!』
彰利 「そうだこの馬鹿!」
藍田 「馬鹿め!」
閏璃 「馬鹿め!!」
悠介 「ギッ……ギィイイーーーーーッ!!!
返せぇえ!!俺の純情を返せぇえええええっ!!!」
彰利 「失礼な!そんなものは受け取っておらぬ!!」
悠介 「そんなとこだけ奇妙に真面目に受け取んなぁっ!くっそぉおおおっ!!」
彰利 「《がしぃっ!》むっ!?なにをするのかね人の襟首を突然!
失礼ではないのかね!?離したまえ胃炎持ち風情が!」
悠介 「いっ……胃炎が今の状況の何処に関係あるんだコノヤロォオオオオオッ!!!」
彰利 「ホキャーーーッ!!?悠介が怒ったぁあーーーーっ!!」
リアカーを降りてしばらく。
休憩していた筈の俺達は早速悶着を始め、
まるっきり子供のように暴れたり倒れたりマウントとったり取られたりで、
砂だらけ泥だらけになりながら暴れまわった。
中でも衝撃だったのが───
マギエル『天照……降臨……』
悠介 「キャーーーーーーッ!!?」
提督の、八頭身キモエル(命名:彰利)だった。
目にした途端に全身の毛穴が開くような寒気が走り、気づけば絶叫!
俺は力の限りに叫び、腰を抜かしてしまった。
そんな俺に、閏璃が近づいてきて、屈みつつ肩に手を置き一言。
閏璃 「人間、度胸だけが強さじゃないよなっ」
何故だかとても嬉しそうな顔で、親指を立てられてしまった。
……なにがあった、ここで会う前に。
悠介 「い、いったいなにごとなんだ、提督……」
マギエル『手短に話すけど、いい?』
悠介 「ああ、そうしてくれると助かるけど」
マギエル『ブレイクしたらなれるようになった!』
悠介 「手短ぇ!!いくらなんでも手短すぎるだろ!!」
マギエル『え……でも要点は押さえてる……よね?』
彰利 「オウヨ」
藍田 「物凄く解りやすいな」
閏璃 「すまん、俺もよく解ってない」
マギエル『えーとつまりね?封印された武具は指輪になってて、
封印を解かないとジークフリードに出来ないの。
でも彰利が指輪にデスティニーブレイカーぶつけて、封印の力を弱めてくれて。
その所為かマグニファイを使えば3分間だけ武具が元通りに!』
悠介 「…………」
マテ。
悠介 「……それとその八頭身と、なんの関係があるんだ?」
マギエル『…………』
……あ、あら?
なんか場の空気が滅茶苦茶沈んだ、んだが……?
悠介 「て、提督?」
マギエル『……べつに……僕だってなりたくてなったわけじゃないよ……』
悠介 「へ?」
彰利 「悠介……言っていいことと悪いことがあるだろ……」
藍田 「いくらなんでもそりゃひでぇよ晦……」
閏璃 「さすがにそこは空気読もうぜ晦……」
悠介 「ま、待て!なんだこの空気!俺か!?俺が悪いのか!?」
マギエル『いいのですよ、マギエルは全てを許しましょう。あなたの───』
悠介 「マギエル?キモエルじゃないのか?」
彰利 「キャア馬鹿っ!それ《ギョギギィッ!!》ギョアーーーーーッ!!!」
マギエル『坊ォオオオオオオオッ!!!』
本当に突然の出来事だった。
提督が彰利の首を、漫画版餓狼伝説のギース=ハワードのように締め、
くかか死ね……死ね……と呟き始めたのは。
……掛け声の坊ォオは、坊、をきちんと発声してから、
“ぉおお”を続けさせるのがセオリーである。
なんのことかは知らないほうがいい、というか俺も覚えてない。
昔、中井出が中学に持ってきたホラー漫画であったのは確かだった筈だ。
母親が子供を列車から庇って、なぁ?その時に坊ぉおおと叫んでた、と思った。
つまり首絞めの掛け声としては意味がない。
彰利 「掴みかかり対処奥義フロントスープレックス!!」
マギエル『ギャーーーッ!!』
そんな意味のなさも手伝ってか、あっさり外された提督は、
背中から地面に叩きつけられゲホゴホと悶絶。
……実に異様な光景だった。
彰利 「……こやつ見てるとナナフシ思い出すの、アタイだけかなぁ……」
悠介 「いや、物凄く共感持てるぞそれ……」
藍田 「あっ……あーあーあー!なにか引っかかってる気がしたんだけどそれかぁ!」
閏璃 「いや、ここはタイコウチで手を打とう」
彰利 「オオ!それ似てる!」
本人を前に、ひどい言い草である。
さっきまで空気読めとか言っていいことと悪いことがとか、
そんなことを言っていたやつらとは到底思えんぞ、おい……。
ジャミル『王、燥ぐのも結構ですが───』
悠介 「……っと、そうだったな」
難しい顔をしているジャミルに声をかけられて、ようやく落ち着く。
それから手の上に創造した疲れを落ち着かせる水をサンに渡して、
俺はジャミルの隣に寝転がった。
ジャミルもレイル同様大木に背を預けていて、俺もそれに習ったわけだ。
ちらりと視線を動かしてみれば、どうしてか三人に胴上げされてる提督。
そして予想通り落とされて、ピグッピグッと痙攣していた。
そんな、姿が変わってもどこまでもいつも通りなあいつらを見て、
俺はくつくつと笑いながら、体の力を抜いていった。
休憩は多めに取るだろうから、少しでも眠っていこう。
悠介 (あー……あれだけ機械臭かったのにな……)
今は溢れる自然の香りに、身を撫でる風さえ心地よい。
そんなことを知ってか知らずか、燥ぎ回る四人は本当に仲のいい子供みたいで───
……ああ、そうだな、一言で言えば……世界は平和だった。
頭に浮かんだ思考に笑みを飛ばしながら、ゆっくりと意識を混濁させていった。
うん、いい夢が見れそうだ───……
……。
……ちなみに。
目を覚ましたレイルと俺が、顔の悪戯書きに気づいて絶叫するのは、少しあとの話。
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