───冒険の書283/ローテツハイテツミドルテツ対話篇───
【ケース718:中井出博光/好きになったもののことで心に傷を負う 10点。○】
ンゴゴゴゴゴゴ……ズッシャアアアア……!!
……猫の里に要塞ごと降りると、
自然が反応してか要塞の下部がほどけるように根を動かし、
木々を潰さない程度に里に絡まる。
それを確認してから要塞を出て、里に下りると……迎えてくれる亜人族と仲間たち。
中井出 「やあ」
アイルー『旦那さんニャーーーッ!!』
亜人族 『ハワーーーーッ!!!』
降りた途端に猫たちが襲い掛かる!
頭の上によじ登ったり体にしがみついたりギャアア爪立てないで爪立てないでぇえ!!
彰利 「おーおー歓迎されてるじゃねーの。それにしてもFUUUM……
やっぱキミはその格好じゃないとしっくりこないやね。
中井出=人間だからかね?よーけ解らんたい」
中井出「そこんとこだが俺にも解らん」
彰利 「解られたら逆に怖ェエエエけどね」
ざわざわと賑わう景色。
木々だらけの花々だらけな景色だが、
なんかもう空気が物凄い勢いで洗浄されて美味いからどうでもいいや。
彰利 「そィで?これからどうするん?」
中井出「グレイドラゴンのところに行ってシャモンを返してもらう……
といきたいところなんだけど。空飛ぶとデスゲイズが怖いし」
彰利 「よく狙われんかったよね。別のところで誰かのこと襲ってたりしたんかな」
中井出「そーかも。ということでシャモンは後回し。
まずは晦のところにでも行こう」
彰利 「飛んで?」
中井出「いや。いろいろ思考を凝らしてみたんだが……エーテルアロワノンで!」
彰利 「飛ぶんじゃねーかコノヤロー!」
中井出「飛びやしねー!歩くんだ!根を巧みに動かして、うぞうぞと!
───名づけよう!その名も……ハーネマン教官の動く要塞!!」
彰利 「ゲゲェ聞くだけで中途半端さが滲み出るような名前だぁーーーっ!
ハウルの動く城じゃねぇの!?ハしか合ってねぇじゃん!」
中井出「…………ロムスカ=パロ=ウル=ラピュタの動く要塞!!」
彰利 「ウルしか合ってねー!そういう意味じゃねーのよ!!」
むう……どうしたものか。
いや、だが待て?考えてみるんだ、この要塞が地面を歩く様。
…………それは、あたかも───!
中井出「決めた!これは貴様も絶対認める名前だ!」
彰利 「な、なにをぬかす〜〜〜っ!そんなことがあるものか〜〜〜っ!」
中井出「否定する気満々だなオイ!!だが聞くがいい!!歩く自然要塞に相応しいこの名!
大盛りたこ焼きそば!!」
彰利 「てめぇには負けたぜ中井出……」
一瞬にして敗北宣言した!!
すげぇ!たこ焼きそばすげぇ!!
彰利 「今のガキどもには絶対に解らないそのネーミング……最高だ。
ヘタすりゃ、いか焼きそばさえ知らないかもしれないっていうのに。
たこ焼きそばがあった時代は、まだ“東京ラーメンこれだね”もあったのになぁ」
中井出「あの味は忘れられないよな……」
彰利 「たこ焼きそばが消え、これだねが消え、いか焼きそばが残って……
そういやどうしてたこ焼きそばって無くなったんだろ」
中井出「イカよりタコのほうが数が少なかったからじゃないか?
イカってこう……ごっさり集団行動してる雰囲気あるけどさ、
タコってほら、海底で一匹だけうぞうぞ、って感じがあるだろ?」
彰利 「おおなるほど。そしてなんだってアタイら、
亜人族にしがみつかれながらこげなこと話してんだろ」
中井出「さあ……」
不思議だ。
でも、締まらないなら締まらないなりにそれが楽しみだって気づける瞬間もあるさ。
中井出「というわけで乗り込むヤツは要塞へどうぞ。
歩くかどうかもまだ解っちゃいないのに、
無茶しようとしてる僕と一緒に行く人この指───
とまれるものならとまってみるがいい!!」
行った途端、その場に居た者たちが血相を変えて我が指を狙う!
乗り込むヤツは要塞へどうぞって言ったばかりなのに、
律儀に指を狙うキミたちが大好きだ!
彰利 「とったぁ!」
中井出「《ボキャア!!》ぎゃあああああああああ!!!!」
彰利 「ギャーーーーーーーッ!!!!」
あまりに逃げるもんだから勢いあまったのでしょう。
彰利が乱暴に掴んだ僕の左人差し指は、ボキャリと曲がってはいけない方向に……!!
中井出「ななななななにしやがるてめぇええーーーーーーーっ!!!!」
彰利 「よっ……よかったな!人間に戻れたことを実感できて!」
中井出「言いたいことはそれだけかぁ!」
彰利 「ぬぅぁあらぶぁああ……!!《ボキャア!!》ぐええ痛やぁあーーーーっ!!」
折り返しました。
なにやら彰利が八神庵の真似してたけど、無視です。
彰利 「キャア小指がヘンな方向にぃいい!!指きりが!指きりができない!」
中井出「大丈夫」
彰利 「《キュッ》ぎええええええええええっ!!!!」
中井出「ゆ〜びき〜りげ〜んまん、なに〜が起〜きて〜もは〜りせ〜んぼ〜ん飲〜ます♪」
彰利 「無条件に飲ます気満々ですね!飲ませたいだけですよねそれ!!
つーか折れた指に指絡めんな痛ぇだろうがギャアアアアアア!!!
揺らさないで揺らさないでぇえええええっ!!!!」
中井出「ゲハハハハ馬鹿め!この博光の前で安易に指切りなどとぎゃあああああああ!!!
しがみつかないで今はしがみつかないでください猫たち!!
折れてるの!そこ折れてるからぁああああっ!!」
人差し指に猫たちがしがみつく!
走る激痛!チカチカと閃く閃光!
痛みのあまりに幻覚見えてない!?
彰利 「さっさと敵対心解けコノヤロー!」
中井出「それ言うならてめぇもだろうがこのヤロー!!」
彰利 「おー!?なんだコラやンのかコラ!」
中井出「やらぬ!《どーーーん!!》」
彰利 「アルェエ!?そこで断るの!?」
何故なら僕は戦闘中だろうがHPが回復する、自然の加護に恵まれた状態。
折れた指などこれこの通り、シャキンと復活!
中井出「よし!じゃあ早速でかけよう!ほらっ!彰利も早く早くっ!」
彰利 「《ギュミミミミ!!》いばぁあがぁああああああっ!!!
ててててめぇええええええええっ!!!
近所に住む幼馴染の女の子♪みたいに
人の折れた指掴みながら走んじゃねィェエエーーーーーッ!!」
みんなで要塞にレッツゴー。
ばたばたと乗り込み、あっという間に要塞はギッシリ……
いや、なにもみんな来なくても……。
アイルー『全員乗り込んだニャ!』
ロイド 『鍛冶道具なんかも積み込んだぞ』
シェーラ『……というかな。要塞が猫の里を抉り出して吸収したのだが』
藍田 「おーい提督ー!行ける場所が増えてたぞー!その名も───出張版猫の里!
いろいろ素材が栽培されててありがてえええーーーーーっ!!
……つーか、そっか。その姿がホンモノの提督の姿なんだよな。
えーとなんつーかそのー……悪かった!
現実世界でのことは本当に俺が一方的に悪か《ゾブシュ》たぼわぁああっ!!」
彰利 「サミング炸裂!?」
中井出 「謝罪の言葉なぞ要りません。
ただ対価として目潰しを許してくれれば、僕はあなたの全てを許しましょう」
というわけで発進。
ジークフリードをクリスタルがあった場所の下方、
ようするに地面に突き刺して、意識を集中させる。
するとどうでしょう……まるで僕の願いを聞き入れるかのように木々が蠢き、
太い根が要塞を持ち上げ、動き出すじゃないですか!
彰利 「うっ……うおおおおお!?すげぇ!ほんとに動き出した!!」
中井出「ようは飛ばなければいいのです!ならばこの強靭な根が手となり足となり、
動く要塞を再現してみせましょう!さあゆけ!大盛りたこ焼きそば!
我らと一緒に───夢を見ようぜ!」
藍田 「感動してたのに名前の所為でブチ壊しだ!たこ焼きそば!?」
中井出「え?いい名前じゃん」
彰利 「そうだよ、なに言ってんだ藍田」
藍田 「いい名前なの!?これって!……エーテルアロワノンでもいいと思うんだけど」
彰利 「チッ……解ってねぇなこのタコ」
藍田 「呆れるにしても言い方があるだろオイ〜……」
彰利 「ほら、合体ロボとか変形ロボにだって、カタチごとに名前があるだろ?
それと同じだって。人型だとなんたらガー、とかなのに、
飛行機型とかになると別の名前になるとか、ああいうのと同じなのさ」
藍田 「つまり要塞としてはエーテルアロワノンで、歩行型の場合はたこ焼きそばなのか」
中井出「違う!大盛りたこ焼きそばだ!!」
藍田 「そ、そうか」
彰利 「そうだぜ?普通盛りのたこ焼きそばなんてねーんだから。
そりゃ大盛りたこ焼きそばに失礼だろ」
藍田 「……なんで俺、こんなこと真面目に説かれてんだっけか……」
藍田くんがクロマティ高校の前田くんみたいに頭を抱え出した。
藍田 「じゃ、じゃあ潜水モードの時はどうなるんだ?船モードの時は?」
中井出「潜水モードはゴックズゴックハイゴックで、船モードはマグロ漁船」
藍田 「うわあ……」
中井出「ちなみにウソだ」
藍田 「オイ」
彰利 「まあまあ、名前なんぞその時その時につけるもんじゃろうて」
要塞が絶壁とも呼べる山に根をかけ、身を持ち上げて、越えて、降りてゆく。
とても奇妙な状況だが、そうして歩き出した要塞は───意外なほど速い!?
彰利 「キャア!?なんか速い!速ェエよこいつ!」
藍田 「おお!根がすごい勢いで蠢いて───キモッ!?キモいぞこれ!キモい!!」
中井出「バカモン!素晴らしき自然たちに向かってなんていうキモッ!!」
彰利 「おいおいノリツッコミ的な反応も大概にギャアキモい!!」
樹の根っこが物凄い速度で、ウニョウニョゾルゾルと動く姿を想像してみてください。
それはまるで高速で蠢くムカデのごとく。
ほら、汚い水の中で蠢く蚊の幼虫……みたいな感じかな。
一言で言うとボウフラ。
藍田 「オームにしないか?名前」
彰利 「だめだね。大盛りたこ焼きそばだ」
中井出「そうだぞ藍田くん。大盛りたこ焼きそばだ」
藍田 「………」
ナウシカでも思い出したのだろうか、藍田くんが微妙な顔で蠢く根っこを見下ろしていた。
ちなみに僕は剣を差しっぱなしでテブラデスキーさん。
力自体が剣にあるから、僕が移動しようが要塞は動きますので。
……えーと、あれ?それってつまり……
中井出「……ねぇ。僕っていらないコじゃないよね?」
彰利 「なんぞねいきなり」
いや……心配になったもので。
ともかく準備は整った!
あとはドリアードを返品して晦と会って、
シャモンを取り戻して───ううむ、いろいろありそうだ。
ナギーとシードにはどうするかを訊いて反応を待ちましょう。
彰利 「ほんで?まず何処行くっつっとったっけ」
中井出「晦を捕まえます。そしてドリ姉さんにステータス移動をしてもらいましょう。
大丈夫、ヤツなら既にうまティーの虜よ」
彰利 「オウ?……ああ」
チラリと彰利が視線を動かしてみれば、
自然に囲まれたテーブルで優雅にうまティーを飲むドリ姉さんが居た。
そう……懐柔は完了しているのだ。
閏璃 「さあお飲み」
ドリアード『《こくこくこく……》ふぅ……』
閏璃 「さあ」
ドリアード『《こくこくこく……》ふぅ……』
閏璃 「さあ」
ドリアード『ふふふ、うまティーならわたしはいくらでも飲めますよ……』
あの細い体にどれほど入るのか気になるところだけど、今はなによりもまず晦だ。
中井出「プランを……お伝えしましょうか?」
彰利 「いや。親友であるアタイにはもう解っただぜ?
確かに悠介の力が必要のようだだぜ」
中井出「うむ。なぜ“だぜ”に拘るのかは解らんがOKだ」
要塞が走る。
ぞるぞると、不必要だと思えるほど速く。
それでもやっぱりかかる時間は存在するわけで、
彰利と藍田は錬気修行を、閏璃は射撃の鍛錬を始めた。
僕は僕で人器のコントロールを静かに始めております。
なにをやっても人器が成長するという、妙な状態になった僕……こんにちは、博光です。
人器の熟練度が上がって、なにが変わったのか、といえば───
筋肉痛になる条件が緩和された。
20%以上を使えば問答無用で筋肉痛だった僕だが、今なら50%まで平気になったのだ!
……まあ、一万と八千の熟練があればそれくらい行ってもらわないと困る。
受け皿である俺の体も、度重なる筋肉痛地獄のお陰で、
50%の負担に耐えられるようにはなってくれてたみたいだし。
……問題は51%になったら筋肉痛確定ってことなんだけど。
なにもそこまでピッタシにせんでもよかったのでは……と思わずにはおれん状況さ。
ノートン先生の話では、人器の経験は十分だから、
あとは受け皿をなんとかすれば随分と楽になるとか。
ようするに、僕の体が凡骨なだけだそうで。
中井出「ほぉおおお……焚ッ!!」
ヒュボッ!
人器を開放しつつ正拳突き。
50%開放だが、ううむ……彰利とか人外のやつらの動きを知ってると、
どうにもしょぼく感じて仕方がない。
だが、人間の体でこんな突きが出来る……最高です。
しかもマッスルペナルティ無し!最高です!
この調子で受け皿(体)を人器に慣らして、
いつしか常時100%な僕でいられるようになりたい!
……で、120%開放して筋肉痛に泣くの。ワハハハハ。
中井出「…………結局筋肉痛に襲われないと底上げできないってことだよね、これ……」
どうあっても筋肉痛になれということらしい。
《ピピンッ♪》……早速“鍛錬すればどうとでもなる”とのお達しが届いたが、
鍛錬になぞ興味はない。
何故って最初に決めたのだ。
俺はレベルと武具の強さだけで天を目指すと。
え?人器?……いや、別に訓練してなくても上がってたし、それならそれでいいかなぁと。
レベルも敵を倒せば上がるわけだし、それと同じ同じ。
中井出「ふはははは!軽い!50%開放するだけでも───体が軽いぞぉおお!!」
開放というよりは解放だね。解き放つって方の。
開放だと開けて放つ、って感じだし。
……自分の中に隠れた力の扉を開けて放つって意味では合ってるかもだけど。
でも普段が20%で、30%アップ、ってだけでも随分違う。
何故って、俺の場合はそこにレベルがプラスされて計算されるから。
えーと……適当な計算で、現在のレベルに30%分が加算されるってこと?
今のレベルが7034で、普段の状態が人器20%開放状態。
そこに人器開放50%で普段の20%に30%加算。
7034の30%っていくつくらいだろ……まあいいや。
ともかくそれくらいが加算されるってことに違いない。
…………そんな単純なもんならいいけどね……うん……。
普通の自分として、レベルを無視しての突きなんてタカが知れてる。
だが今の状態での突きは───キュボォンッ!!
中井出「…………《キラキラ……》」
突きだけでステキな音が出せる。
そのことに感動した僕は、拳を突き出したまま陽の光に当てられ、輝いていた。
正拳突きの構えのまま。
中井出「でも音速には達しない、と。うーん難しい」
あれは自らの速度っていうよりは関節加速とイメージ。
彰利みたいに黒のサポートがあればいいだろうけど、俺の場合はこの身ひとつしかない。
人器で解放した身体能力で、高速で拳を繰り出すことは出来る。
出来るけど、それは音速拳じゃないんです。
彰利の場合、普通に音速拳が出来るとして、そこにレベルやら家系の身体能力やら、
さらには黒のブーストが重なった、まさに真・音速拳。
おまけに羅刹掌まで使えるっていうステキっぷり。
僕の方は、ほら……ステータス移動で、
AGIマックスナックルを繰り出してるのと変わらないんです。
これは由々しき事態……!
烈風も疾風も使える。人体能力解放も出来る。
だというのに音速拳が!羅刹掌が出来ないなんて!
中井出「ウムムム〜〜〜〜ッ」
人体奥義ならば是非使いたくなるのが、地界の回路を持つ僕としての野望。
ほら、漫画とかであるような技とか、人間が懸命になって開発した技とかは、
せめてこの異界の回路だらけの群集の中、自分だけでも使いたいじゃないですか。
……いや待てよ?
中井出「すぅっ……ハイッ!《ルフォンッ!》…………ああ……」
疾風奥義で拳を鋭く振るってみた。
でも意味がなかった。
速くはなったけど、音速を超えるなどとてもとても……。
中井出「すぅっ……超速拳疾風打!!はいやぁああああーーーーーーっ!!!!」
フォバァアアアアッ!!!
中井出「………」
パン、とも鳴りゃしない。
ただ前方に爽やかな風を運んだだけで終わってしまった。
なにかないかなぁ、こう……心をスカッとさせるような技───ハッ!
中井出「そ、そうだ!それがあった!」
───まず構える!
腰を少し屈め、重心を腰へ!
そして極力足の力を抜いて───
中井出「ヘアッ!《ヒュッ》」
…………。
中井出「…………」
失敗……っ……!
二階堂紅丸謹製、居合い蹴りを身に着けようと思ったのに、全然ダメッ……!
拳奥義もダメで足奥義もダメとは……いや待て。
中井出「おーい藍田くーん!」
……。
…………。
ッ───パァンッ!!
藍田 『オッ……う、うおおお!!すげぇ!すげぇよこれ提督!』
中井出「………」
蹴りといえば藍田くん。
拳が彰利なら蹴りは藍田くん。
どうせ出来っこねー!と踏んで教えてみたら、
何回かの失敗の上で見事完成する居合い蹴り。
ねぇ神様……チェーンソーで八つ当たりしていいですか?
藍田 『そうかぁ!この発想はなかったわ!さすがだぜ提督!音速蹴りとは恐れ入った!』
中井出「………」
イメージは炎。
彰利が黒なら藍田は赤。
普通に足をイメージするのではなく、足が炎になったようにと助言をしてみると、
これがあっさりと完成。
何気ない一言が、また一段、知り合いを強くしました。
感謝の言葉が悲しみを引き立てる……ヒャッホウちくしょう。
藍田 『じゃあ俺、このことも踏まえて鍛錬に戻るから!サンキューサー!!』
藍田くんが尊敬の眼差しを混ぜたような顔で去っていった。
中井出「フフ……これが……才の差というやつなのか……?」
才1な僕に比べて、果たして藍田くんはどれほど才を持っているのか。
いや正直そんなことどうでもいいんだけどね。
才能なんて気にしてたらつまらないし。
そんなもん無くても楽しむことは出来る。
楽しめたら面白いからつまらなくない。
当たり前のことだけど、とっても大事な僕らの勇気。
蹴りの熟練度が異常だから覚えられたってことにしとこう。
というわけで次!
中井出「次!超・動体視力!!」
人は能力が解放された時、視力や認識力の精度や速度までもが格段に上昇するという!
ならば次は動体視力!敵の動きが止まって見えるぜ!と言えるようになってみたい!
中井出「フフッ……お前の動き、止まって見えるぜ!」
つーか言ってみた!言うだけならタダだし!
声 「フッ……まさか気づかれていたとはな……」
中井出「誰!?」
だから返事が来るだなんて思いもしませんでした!
そうこう思っているうちに、要塞中心に存在する大樹の裏からゴゾォと人影が……!
閏璃 「やあ」
中井出「やあ」
閏璃だった。
どうやら裏でSUVウェポンを出していたらしく、
彼の周りには夥しい数のマグナムが存在していた。
それらは全て鎖で繋がれ、宙を浮いていた。
中井出「な……なにそれ」
閏璃 「SUVウェポン“浪漫幻想百銃”だ。
百丁の銃を出現させて、一回のトリガーで百発の弾丸を撃つ武器だ」
中井出「おお!俺、アレ好きだった!ていうことは奥義はアレ!?」
閏璃 「イエスサー!この武器が完成したのも提督さんのお陰だし、お見せしましょう!
あ、でもその前に天井がないところへ行きましょう」
中井出「そうだね」
アレは天井がないところじゃないと意味が無い。
や、そりゃ全く意味が無いわけでもないんだけどね。
というわけで横っ端にある、陽の当たるえーとベランダみたいなところ?に来た。
この場合テラスって言うべきなのか?よく解らん。
ともかく辿り着くや、閏璃がSUVウェポンをギャリィンと回転さえ、構えに入った。
閏璃 「───この世納めに見届けな!!《ゴコォッキィン!》
百()ック銃()ァーーーーン!!!天中殺!!」
頭上へと全ての武器を構えた閏璃がトリガーを引く!
と、耳を劈く轟音とともに放たれる百銃のマグナムの演奏。
一発では終わらず、それはガトリングのように幾発も放たれ、
やがてSUVウェポンが消える頃、閏璃は息を吐きながら僕に向き直った。
閏璃 「対象がないと寂しいもんだけど、撃ってる方は快感です」
中井出「顔見てりゃ解るよ、うん」
でだ。
弾丸を撃った、ということは自然とそれは降ってくるわけで。
閏璃 「やっぱこのあとはこれだろ」
それを当然の如く知ってか、閏璃は親指をグッと立てるとそれを逆さにし───
閏璃 「百銃銃装騎兵団()!!」
百以上の弾丸の雨が降り注ぐ景色を見て、笑っていた。
……そんな時。
彰利 『ふう……空中修行終了……!やっぱ運動はいいねェ〜〜ィエ。
シャワーでも浴びたい気分だギャアーーーーーーーッ!!!』
空を飛びながらの修行をしていたらしい彰利がモロに鉛雨を身に受け、
地面に叩きつけられ、あっと言う間に彼方の人になってしまった。
中井出「ナイスシャワー!」
閏璃 「ナイスシャワー!!」
それでも慌てない僕らは、きっと神経が図太いんだと思います。
きっと彰利もシャワーを浴びれて満足さ。
中井出「さて!動体視力の実験だー!」
閏璃 「おお?そういえばなにか、そんなことを言ってたような。どんなことするんだ?」
中井出「俺に向けて銃を撃ってくれ!その弾丸……見事躱してくれる!」
閏璃 「OK!《ガオォオン!!》」
中井出「………………《どしゃっ》」
閏璃 「て、提督ーーーーーっ!!」
間も置かずに銃で撃たれた僕は、その場にドシャアと倒れてしまった。
マグナムの威力は尋常ではなく、僕の膝を見事に貫通してくれました。
中井出「ぐふっ……つ、強くなったな…………う、嬉しいぜ……貴様の成長が見れて……」
閏璃 「し、しっかりしろ提督さん!ここはアレか!?
オメェは俺のなにを知ってんだ!?って返せばいいのか!?」
中井出「むしろ離れてから撃ってくださいと僕がツッコムところから始めよう」
閏璃 「撃てと言ったのは貴様だと返そう」
中井出「全くだと返そう」
閏璃 「じゃ、離れてから撃つなー」
中井出「おー」
解決した。
膝はもうとっくに治ってます。
……。
俺と閏璃は、樹木テラスを最大に利用して距離を取ると、立ったままに互いを見て構えた。
閏璃の提案は、俺にもやらせてくれってことで、弾丸躱しは順番にすることになっている。
そのために俺は左腕にホズを出現させており、
弾丸ではないが矢を放つ準備を万端のものとしていた。
え?言葉運びがヘン?いいんですよそんなものは。
閏璃 「いくぞー提督さーん!」
中井出「死ねぇええーーーーっ!!!」
閏璃 「なにぃいいいい!!?」
俺の先制攻撃!
閏璃の顔面目掛けて矢を放った!!
閏璃 「ぬ、ぬおおおお!!《バァア〜〜〜〜ッ!!》」
中井出「ア、アアーーーッ!!」
しかし閏璃は救世主避け(マトリックス)をし、見事それを回避!
閏璃 「《ザクッ》いてぇえーーーーーーーーーっ!!!!」
でも紙一重で見切って避けるのがルールなので、動かせない足目掛けてボウガンを放った。
中井出「お馬鹿!なんのために顔面狙ってると思ってるんだ!
見切り、スッと紙一重で避ける!そういう約束だったでしょ!?《ポッ》」
閏璃 「あぐぐがぁあっ!!あああ赤くなる理由が見受けられないんだがぁああっ!?」
ボウガンが突き刺さった足を庇ってゴロゴロと転げまわる彼。
閏璃 「ふー!ふー……!《ぐぼっ》アァァアォオオオッ!!!
ほ、ほーっ!ほー!く、くそっ……!
今、足にナイフが刺さったロバート・ネビル博士の気持ちが解ったぞ……!」
中井出「……誰?」
閏璃 「アイアム・レジェンドの主人公。
愛犬サマンサ(サム)と一緒にたった一人で世界を救った伝説の男だ」
中井出「な、なにぃいい……そんな男が……!」
閏璃 「というわけで死ね!」
中井出「甘いわ!」
閏璃が銃を撃つ!
俺はそれを見切り、紙一重でドチュゥン!!
───……。
……。
中井出「あの……動体視力と反射神経調べたかっただけなんだから、
なにも二丁で撃たなくても……」
閏璃 「いやいや!俺としてはVIT1で待ち受けてた提督さんの方が驚きだったわ!」
要塞教会の神父にありがたい説教を受けてからしばらく。
頭に風穴を空けた相手に向かって勘弁してくださいと項垂れる僕が居た。
そう、片方の方はきちんと見切れた筈だったんだ。
ただ銃口から逃げたと言ったほうが適当だけど。
でもね、こう、避けた先にもう一発の弾丸があってね?
それでドゴーンと。
思い切り額に当たったのに額を削っていっただけ、
なんていうアブドゥリックス的な奇跡は起こらなかったよ、うん。
中井出「よし!じゃあ次は閏璃だ!よいかウルーリィ!俺は貴様の眉間を狙う!
だが狙われた位置を想定して避けるのではなく、集中力でそれを見切るんだ!
俺の人器能力に集中領域っていう30秒だけの超集中技があるけど、
それを自分の力で弾き出す……それが今したいこと!そんな極意をキミに!」
閏璃 「よし来たさあ来い!言っておくが俺は一つのことに夢中になると、
周りが見えないと都内でも有名だったかもしれない男!
集中力なら任せてもらおう!」
中井出「よろしい!ではゆくぞ!」
閏璃 「───!集中……集中……集───中!!」
ザコォン……ギャ〜〜〜〜ッ……
……。
…………。
中井出「貴様に足りぬもの!それは覚悟だ!」
閏璃 「なんだってーーーっ!!?」
これで何度目かになるかの死亡。
神父の前で復活した閏璃を迎え、きっぱりと言ってやった僕は、
それから覚悟のなんたるかを適当に説いてみました。
ようするにVITに頼るなと。
中井出「“走馬灯”を使えるようになれ!死を前にした己の集中力を使えるように!
だからVITを1になさい」
閏璃 「うう……でもなぁ、矢が眉間に突き刺さるって解ってると、どうしてもな……」
中井出「いいからいいから!さあ!コンセントレーション・ONEの練習だ!
あっはははー!なんか目的変わってる気がするけど気にしないちょー!」
こうして、僕らの修行が始まった……!
……俺が一方的に閏璃に修行させるだけだったけど。
───……。
……。
………………ややあって。
閏璃 「すぅ……はぁ。よ、よし。やってくれ提督」
中井出「うむ!」
ホズを構え、散発連射。
それは、銃を構える閏璃の急所を狙ったものであり、
普通なら撃たれてから構えたところで間に合いやしない。
が───
閏璃 「───ッ!」
ガガガォンッ!!
……パラパラ……
中井出「おっ……おぉおおおおっ!!」
閏璃は、それをしてみせた。
実に修行を始めてから一時間後のことであった。
閏璃 「うぅわすげぇ……。この発想はなかったな……」
散々失敗し、ぐったりしだした閏璃が俺に言われた通りのことを実践。
そしたら一発、次は二発と成功を見せ、三発までが可能になった。
なんのことはない。
集中力が必要だというのならば、STRでもVITでもDEXでもない。
INTを高め、脳を刺激してやろうってことになったのだ。
するとこれが見事にアタリ。
閏璃はコンセントレーション・ONEを会得し、
“早撃ち”と“精密射撃”のスキルを手に入れた。
早撃ちとはいっても、岡田くんのようにブレードスナッパーをするわけでもないけど。
閏璃 「よし!じゃあ次は提督さんの番だな!」
中井出「エ?」
閏璃 「確か“集中”に合うような能力、
あったよな?それの幅を広げるってのはどうだろうか」
中井出「修行はしないと心に誓っているので」
閏璃 「それはそれですごいよな……じゃ、じゃあ一発!一発だけ!」
中井出「ウ、ウーム……断る理由もないしOK!」
言うや、ババッと距離をとって行動開始!
早速閏璃が銃を構え、二丁のままそれを同時に撃ってくる!
中井出(人器解放50%───!)
それに対し、俺は人器解放とともに集中領域を発動。
100%状態なら30秒は保つ集中領域だが、
さすがに50%じゃああまり保ちそうにない。
せいぜい4、5秒くらいだろう。
だがそれだけあれば十分!
中井出「ぬ、ぐっ……!すぅっ───」
人器が発動していても、自分のではないように重い体を動かす。
人が10秒にも感じられる時間を1秒以内で処理しようとしているようなもんだ。
当然体はそんなに早く動かないし、物理的にも無茶が目立つ。
人器が発動してなければそもそも不可能な空間だ。
だが───
中井出「っ!《ダンッ!》」
───烈風脚で地面を蹴り、重い体を軽くした。
そう、今の自分の能力で足りないのであれば、他の能力で足らしてしまえばいい。
地面を蹴り弾き、弾丸の前へと疾駆した俺は、
疾風で手を動かし、弾丸同士がぶつかりあうように軌道修正を施し───
その上で、閏璃の背後に回った───ところで集中が途切れ、
バギィンッ!
閏璃 「うえいっ!?」
俺を見失った閏璃の視界の中で弾丸がぶつかり合い、砕ける。
その音に驚いた彼に、僕は“やあ”と挨拶した。
閏璃 「うおおおいつの間に後ろに!?
弾丸目掛けて走ったところまではなんとか集中で追いつけてたんだけど、
そこからはちと解らなかったぞ!?」
中井出「ごめん……筋肉痛中だから勘弁してください……」
閏璃 「ええっ!?なんで!?」
結論から言いますと、50%じゃ集中領域を展開できませんでした。
死にたくなかった僕は、つい50%以上を発動。
どうせなら100%を発動させときゃよかった、と後悔してるところさ。
だって100%状態だったなら、集中領域の中でも平然と動けてたし。
半分の力を出してるから15秒は保つとか、
そんな簡単な話ではないのだ、人体ってのは。
逆に“そこまで行くからこそその時間が与えられる”って感じだ。
80%だから5秒。
90%だから10秒。
100%だから30秒。
そんな計算や数式で割り出せるほど単純ではないのだ。
さっきは80%で行ったが、80%でも領域の中は重かった。
90%でも重いだろう。
100%で発動するからこそ普通に動ける。
そういう世界なんだ、人体の極限領域ってのは。
で、100%……人間が出せる限界点を越えた場所に、走馬灯が存在する。
何十年を数秒で処理する、人器で言えば奥義中の奥義。
ただしそれは脳内の処理であって、体がそれについてこれるわけもない。
だがもしその先に行けたらどうだろう。
限界だ〜って思ってるものが限界じゃあなかったら?その先があったら?
……結局のところ、人間自体が人間のことを全部解っちゃいないのだ。
だから限界なぞ作らないこと。
それが、僕らに出来る戦い方です。
ということを、閏璃に話ました。
筋肉痛に苦しみながら。
閏璃 「なるほど〜……や、提督さんが言うと説得力あるな。
さすが、唯一の地界回路の持ち主」
中井出「任せてくれたまえ」
ズキズキと痛む体に涙しながら、精一杯胸を張ってギャーと叫びました。
ウフフ……知ってるかい?胸を張るだけでも筋肉は動くんだぜ……?当たり前だけど。
閏璃 「しかしまあ……こんな素晴らしい能力を開眼させてもらったんだ。
なにか礼がしたいな」
中井出「独りにしてください……」
閏璃 「うわーあすげぇ自虐アイ」
才があるってとてもステキですね。
僕はもう悲しみに溺れてしまいそうです。
僕が出来なかったことを、周りの人たちが次々と会得してゆくんです。
神様、そろそろチェーンソーを用意していいですか?
中井出「集中領域も音速拳もなにもかも、結局人器を100%にしなきゃ使えない僕さ。
50%まで解放出来ても、それが全ての力の発動に繋がるわけでもないんだ……」
人器とは人の器。
人体が至れる極限を解放する能力……らしいけど、
解放しなけりゃ結局僕は僕なわけで。
集中領域も音速拳も、なにも出来やしない。
烈風脚はそういうスキルを持っているから出来るだけであって、
無茶をすれば盲目ペナルティがあるほど。
だがこれでいい。これだからいい。
こうして、体も地界の回路の特殊能力“順応”のお陰で人器に慣れていってるが、
なんでもかんでも出せるようになるのはまだまだ先で十分だ。
いきなり全部を手に入れてしまったらつまらないしね。
もちろん手に入れた先でも楽しいことは山積みさ!
我輩は人である。だから迷わない。犬じゃないけど気にするな。
中井出「ふんっ……ぬ、くうう……!」
痛みが治まってきた体を庇いながら立ち上がる。
痛すぎると丸まるのって、生命体としての本能なんでしょうか。
つい倒れてしまっていた体をパンパンとはたき、一息。
筋肉痛の効果時間もなんだか短くなってるような気がする。
うん、これは大変嬉しい。
閏璃 「うーむ……なあ提督さん。提督さんの言葉が本当なら、人器さえ最大解放すれば、
音速拳とか居合い蹴りとかも出来るんだよな?」
中井出「人体で可能なことならほぼ!
もちろん、武具のサポートが無ければなにも出来ない博光です《脱ギャーン!》」
閏璃 「脱がなくていいから。……あのさ、それって気のコントロールとかもか?」
中井出「俺自身の中には気もチャクラもないから、事実上は今は亡きモンクジョブとか、
刀士から来る錬気スキルのものだけどね。それも気というよりは……ええと、
マナを掻き集めてそれを気にしてるみたいな……ほら。
ターちゃんで言うところの、梁師範の外気。自然界の力を気に変えて練ってるの」
閏璃 「あ、あー、なるほど」
中井出「ジョブからくる力も、元々俺に気やチャクラや魔力といったものが皆無だから、
ぜ〜んぶ外からの気ってことになってるから、誇れたものでもないし」
いや……なんかもうほんと……なにも無い自分に泣きたくなります。
でも大丈夫さ!僕にはジークフリードたちが居る!
僕は相棒たちを信じて突き進めばいいのさ!
たとえ力を盾にして立ってると思われても構うもんか!………………あれ?
閏璃 「なぁ提督さん。スネ夫って呼んでいいかい」
中井出「いや……ごめん……俺も今そう思ってたから勘弁して……」
あたかもジャイアンを盾にするスネちゃま。
脳裏にそれが浮かんだ途端、ちょっと考えてしまう僕が居ました。
でも面白いから気にしないことにした。
中井出「へっちゃらさーーーーっ!というわけで動体視力も無理!反射神経も無理!
次だ次次!次に《ぴきーーん!》ある日猫は閃いたニャーーーーッ!!」
閏璃 「うおぉっ!?な、なにごとだ提督さん!」
中井出「猫じゃないが気にするなという考えをあなたに!
そうだよそう!人器を解放するまではよしとしよう!うん!素晴らしい奥義だし!
でもそれで満足してちゃあいかんのだ!限界を作るな……いい言葉です!」
閏璃 「え?えっとつまり……?」
中井出「人器100%解放中に、さらになにかを編み出してみるのはどうだろう!
レッドだってアルカイザーに変身しなくちゃヒーロー技を編み出せない!
だったら俺にも……人体にも、
100%中じゃなければ編み出せないなにかがある筈!」
閏璃 「おっ……おおお!それは興味深い発想だ!そ、そうか!
あんまりにすげぇ能力だったから、
それが最大奥義だって無意識に思い込んでたんだな俺達!」
中井出「その通りだよウルーリィ!」
面白くなってまいりました!
でもただ失敗して痛いのは割に合わんというか効率的じゃないので、
なにか適当な目星をつけて、と───
───……。
……。
メキメキメキ……!!
中井出「己を探る……!己を探る……!己をォオオオッ……!!!」
そして人器120%解放。
100%無視して、引き上げられるギリギリまでを無理矢理引き出してます。
そう、つまりここまで出来るのだからこれが現状の100%。
次にこれ以上を引き出せるなら、それが新たな100%だ。
音速拳、居合い蹴り、無拍子やら居合い抜きやら、鞭打やらなにやら、
思いつくものをとことん試し、それらを成功させてゆく。
あ、空を浮くことはさすがに無理でした、ハイ。
でも空を浮く、でヒントを得て試してるのが今のコレ。
己の中を、100%解放状態の脳を使ってくまなく調べる。
人とはどんなことが可能なのか、どこまでが可能なのか。
それを手探りで探し、そして───ドッコンッ……!
中井出「《メキメキベキビキ……!》オ……がぁああ……!!」
閏璃 「ひぇえい!?提督さん!?顔が!顔が───うおお腕も!?」
───神経のコントロールに至る。
いわゆる狂系脈。
るろうに剣心にて雪代縁が使っていた諸刃能力。
能力がかなり上昇するが、痛覚倍化がペナルティでついてきます。
お次は筋肉コントロール。
筋肉を硬質化させることで、柔軟さを捨てる代わりに破壊力満点の拳を叩き込めます。
いわゆる剛体術……だけど、クッションが無くなるために、殴ったらこっちも痛い。
彰利の剛体術は関節をガッチリ固めて、ってやつだけど……こっちのは筋肉まで固める。
だから滅茶苦茶痛い、やっぱりな諸刃能力です。
あと他は……───フォリュンッ……
閏璃 「……お?」
……腕を振るう。
すると、落ちてきた緑の葉が真っ二つに裂かれ、
だがなんの衝撃も受けなかったかのように普通に降りてゆく。
閏璃 「ざっ……斬撃拳か……!」
あと他は……っと、そうだ。
今出せる全開で能力を解放。
エンペラータイムだのなんだのも発動させて、能力全てをINTに。
考えをぉ……探るんだ、己の中を。
人体にはまだまだ未知なものが潜んでいる筈。
漫画だから出来ること、を今こそ自分で開拓してみるべきだ。
イメージ、イメージ、イメージ……
今なら出来る。
普通の音速拳なら、格好だけ真似ても100%状態だったから普通に完成した。
けど、関節にブーストをかけてとかそんな小難しいことはやってなかった。
だから今こそ、己を改めたことで狂系脈も出来た今だからこそ、
関節や神経を探り、それを可能にしよう。
どうせ人器が解ければ出来なくなるだろうから、この時だけの奥義として。
中井出「………」
全身を関節だらけのバケモノとする。
全てはイメージ……だがそのイメージの関節に、
神経や人器だののブーストを可能な限り乗っける。
烈風も疾風も、鞭打の体の水化のイメージも、全て。
簡単な理屈だ。
拳でさえ音速にさせる奥義、音速拳。
それは腕だけの関節密集イメージだけでも可能となる、っていうのが、
彰利から聞いた“範馬刃牙”から得た法則らしい。
事実彰利はそれを成功させている。
じゃあ、だったら、全身を関節化させればどうか。
そんなものも彰利は実行してたし、それに竜の左手を合わせたのが真・音速拳。
だがそれで満足するのは実につまらない。
中井出「すぅ……はぁ……すぅ……」
イメージ……完了。
覚悟……完了。
呼吸安定、すぐにでも烈風疾風奥義可能……と。
中井出「………」
そう、簡単な理屈だ。
体を少し曲げる。
重心を下に下げるように。
そうすると、体はイメージの通りにまるでバネのように柔らかくしなった気がした。
拳でさえ、腕でさえ音速を超えるというのなら。
やがて、俺は───
この身、この体全てを、音速と化することも───可能である筈!!
地面を蹴り、───音速を超えた。
───……。
……。
神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」
閏璃 「……提督さんよぅ……」
中井出「事故だ!《どーーーん!!》」
音速……超えてきました。
それはまるで別世界!
そんな素晴らしき世界に感動してたら、
前方不注意で閏璃にビッグバンタックルしてしまいまして。
タックル一撃で死んでしまった彼は、こうして神父からありがたい説教を受けております。
閏璃 「すっごいよなぁ……普通に驚いたぞ……。
轢死されたのも驚いたけど、体全体を音速化、だなんて」
中井出「エンペラータイム中じゃないと出来ないけどね」
烈風脚を何度でも使えなければこんなことはできない。
しかも動体視力がついてこないとどうにもならないから、
人器100%解放中限定できっかり30秒のみだな。
ホリュリュリュピキーーン♪《閃きが発動!》
ピピンッ♪《狂系脈を閃いた!音速剣疾風斬、閃連歩烈風脚を閃いた!
斬撃拳、金剛人掌、人器・音速を閃いた!》
……。
で、うむと頷いた途端にこれだ。
見てみれば、ごっさりとあるスキルの中に“体術”項目が増えていて、
それにみっしりと能力のことが書いてあった。
金剛人掌?……金剛神掌じゃないの?……もしかして人だから?
調べてみると、どうやらあの超剛体術のことらしかった。
関節から筋肉から、全てを硬質化させて殴るアレね?
ぬ、ぬう……閃いたとかいって、名前がこうズシャーと並ぶと、
この博光がここまで至るのを予見していたようで癪だ。
だが閃けたのは嬉しいので気にしないことにした。
中井出「………」
いやまあ、どうすれば出来るかは、いろいろ頭に叩き込んだからコツ的なものは解るけど。
じゃあまず狂系脈、と……モキリ。
痛<(
中井出「いっでぇええええええっ!!!!」
閏璃 「うおお!?何事!?」
中井出「あだだだだだだ!!!」
バゴドゴボガドガバキベキゴスドス!!
神父 「キャボブベボラブパボラベラ!!!」
神経が盛り上がった途端、体を打ちつける風でさえもが痛かった!!
その痛みを紛らわすために、近くに居たなにかをボコボコに殴りつけてしまい───
神父 「なめたらかんでぇ!!」
中井出「いぎゃーーーーっ!!?」
慌てて狂系脈を解いた直後、私はボコボコ顔の神父にボコボコにされた。
うん……狂系脈もエンペラータイム発動中以外は使わないようにしとこ……。
まさか神経肥大化が、ここまで反応を敏感にさせるなんて思わなかったから……。
Next
Menu
back