───冒険の書286/忘却と滅びへの軌道───
【ケース722:晦悠介(超再)/ゼロの使い魔-三馬鹿の輪廻旋風-】
中井出「ステッピンアァ〜ウ♪ふっつうのに〜〜〜ち〜〜〜よ〜〜〜〜びぃにぃ♪」
彰利 「ステッピンアァ〜ウ♪きぃっせきが起ぉ〜〜〜こ〜〜〜る〜〜〜♪」
中井出「イッツマァイデェ〜〜〜イ♪……でよかったんだっけ?」
彰利 「確か。昔すぎて覚えてねーや」
歌ったり踊ったりをして、時間を潰す俺達。
なんのために時間を潰しているのかといえば、
姫さんがここに辿り着くのを待っている……というのが理由なわけで。
提督に頼んで実戦訓練をやって、その合間の休憩時間にこうして遊んでるわけだ。
主に提督と彰利が。
閏璃 「提督さ〜ん!ボウガンで頼む〜!」
中井出「任せとけっ!なにを隠そう、俺はボウガンの達人!!」
そして誰かがやりたいと言えば、即座にその武具を構えてバトルスタートだ。
ちなみに……槍で頼んで戦ってみたんだが、レオンが強すぎて相手になれなかった。
抜群の槍捌きに、打突と同時に発動する超震動。
一撃くらった腕が、破裂するみたいに血が噴きしたときはたまげたもんだ。
中井出「ぐへへははははは!!踊れ踊れおんどりゃぁああああっ!!!」
閏璃 「集中!───ぬぅうりゃぁああああっ!!!」
ガンガガガガガガガガガガァンッ!!!
出鱈目な方向に矢を撃ちまくる提督。
それに対し、集中力と神経を研ぎ澄ませ、放たれた矢を確実に打ち落としてゆく閏璃。
悠介 「すごいもんだな……随分持続時間が増えてるじゃないか」
彰利 「オウヨ!やっぱ実戦はいいもんじゃぜ。
アタイも今、ようやく“右手”が使えるようになった」
悠介 「それって、竜のか?」
彰利 「そうなのYO!いや、苦労してたのに中井出の助言で一発ポン。笑ったね、もう。
悠介は?悠介はどうなん?」
悠介 「いや……俺も世界創造が簡単に出来るようになった……」
彰利 「…………ほんと、簡単に常識ブチ壊してくれとるよね、中井出……」
悠介 「ありがたい限りじゃないか。苦労が霞むようだが」
ザゴココココ!!!
閏璃 「ギャアアアアアアム!!!!」
彰利 「あ、刺さった」
悠介 「集中力が切れたんだろ。よし、次は───」
レイル「よっしゃあ次俺だな!なにかしらの能力解放できてくれ!カオスコントロール!」
中井出「ドォゥラゴンインストォオオオゥル!!!!」
ドォッゴォオオオオンッ!!!
提督の能力解放!ドラゴンインストール発動!
レイル『いくぜ!まず《ゾゴォッフィィインッ!!!》』
はい一撃。
構えた先から斬り滅ぼされたレイルが、塵となって飛んでった。
悠介 「次誰だったっけか」
彰利 「悠介でいいんでない?」
閏璃 「矢ガモな俺と一撃で斬滅させられたレイルは無視か」
レイル「待った!俺復活!そしてドラゴンインストール以外で来てほしい!」
あ、戻ってきた。
中井出「じゃあ───…………………………《モゴシャァッキィン!》」
しばらく目を閉じていた提督の姿が急に変わる。
チャチャブーにでもなるのかな、と……そんなことを考えた───俺が馬鹿だった。
バルバトス「さあ!来いよ!貴様ら全員ンン!!微ィイ塵切りにしてやるぜぃ!!」
総員 『うぎゃああああああああああっ!!!!』
あとは語るまでもなく。
抵抗すら出来ないままに、ジェノサイドブレイバーで全員ケシズミと化した。
……。
総員 『バルバトス禁止!』
中井出「大丈夫!なにを隠そう、俺は禁止の達人だぁあああああっ!!」
そうして教会で目覚めてしばらく。
神父の説教など無視して提督のもとに戻った俺たちは、声を揃えて叫んでいた。
それに対して、目をクワッと開いての提督の返事は、それでいいのか正直解らんが。
レイル「ほんと頼むぞ……あんなヤツと戦っても練習にならないから」
中井出「別のやつならいいんでしょ!?なによもう!《ポッ》」
レイル「気持ち悪いな」
中井出「わあ、正面から冷静に言われたの初めて。そんなあなたの相手にこいつを。
え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……………………………………
……………………っと、捕らえた!」
悠介 「捕らえた?」
中井出「よ、よーし!ちょっと暴れん棒だから気をつけてね!?
ていうかもういっそ全員で叩きノメしちゃってもいいから!
そ、そいじゃあご紹介します!竜の魂の半分が記憶してた存在!
古の勇者さまです!どうぞーーーーっ!!《ゴヒャアッキィンッ!!》」
レイル「へ……?」
勇者?勇者って……
中井出「…………ここは……?俺は、死んだ筈じゃあ……」
レイル「隙あり死ねぇええーーーーーっ!!」
中井出「───!《シュカァッ!》」
レイル「おっ……!?」
レイルが振るった拳が、相当の紙一重で避けられる。
その一瞬。
提督の目がレイルの容姿、攻撃態勢などを見るように動いた───と思うと、
ヒュトンッと軽いくせに結構な速さで攻撃範囲から逃げ出した。
そして構える。
取り出したのは……灼闇の剣だった。
よほどに圧縮してあるのか、黒赤の金属のように固まったソレは炎の揺らめきも見せずに、
本当にひとつの剣としてそこにあるかのようだった。
中井出「よく解らないけどやるっていうなら相手になる」
レイル「是非きてくれ!カオスコントロール!」
二度目のカオスコントロール。
両目を変異させたレイルは地を蹴り、
離れた分の距離を詰めると再び拳を突き出し攻撃する。
提督はそれをやはり紙一重で避けると剣を閃かせ、
レイル『へ?───うおぁっ!?』
音すら鳴らさずに突き出されたレイルの腕を根元から切り落としていた。
あの斬り方───恐らく斬られた感触さえなかっただろう。
急に手の感覚がなくなったから気づいた、って感じだった。
そしてその驚きこそが既に隙なのだ。
躊躇することなく喉を貫通した剣がゆるんっ……と抜かれた時、
既にレイルは塵と化していた。
悠介 「っ……つっ……」
彰利 「強ぇえええーーーーーっ!!!」
中井出「《ビクッ!》うおわっ!?……な、なんだ、他に誰か居たのか……!
お、驚かせないでくれよ……心臓に悪い……あれ?俺死んだ筈じゃ……あれ?」
総員 『………』
ああ、そうか……馬鹿なんだ……。
強いけど馬鹿そうだ。ほんと、馬鹿そうだ。
悠介 「……あんた、誰だ?」
中井出「セト=アザカ。通り名は……忘れた」
悠介 「通り名?」
セト 「周りが勝手につけた名前。勇者だなんだって、勝手につけられたんだ。
もし俺を知ってるんだったら、セトって呼んでくれ。通り名は好きじゃない」
彰利 「なんつーか樹雷星に居そうな名前やね……樹雷の鬼姫って呼んでいい?」
セト 「姫?あー……一応男なんだけどな、俺」
悠介 「…………勇者って感じ、しないな。随分軽い性格だ」
セト 「当たり前だろ、勇者だなんだなんて、周りが勝手に言ったことだ。
俺はただバハムートと戦えてればそれでよかったんだから。
それを周りが勝手に勘違いして、勇者だなんだって……まったくつまらない」
閏璃 「《ピクッ》……面白いこと、好きかい?」
セト 「大好きだ」
その一言で、俺達の行動は決まった。
───……。
……。
セト 「あっはっはっはっはっはっは!
あっはっはっはっはっはっは!!《ボチャア!》おぶっ!」
彰利 「ィヤッハッハッハッハ!!やった!勝った!しとめ《パァン!》ぶぼっ!」
で……なにを始めたかといえば、パイ投げである。
紙皿に乗ったホワイトクリームのパイが空を飛ぶ、アレである。
藍田 「うおおお!閏璃が強い!無駄に強いぞ!」
閏璃 「集中……!集中……!集中……!集中……!」
レイル「強いのになんかブツブツ言ってて怖いぞこいつ!」
悠介 「創世八幡宮!鳩を───パイに変える力ァアアア!!」
彰利 「キャア!?景色がなんか日本古来の神社風景に!?
つーかなにこれ!鳩が!鳩がすげ───ヒィ!?鳩がパイになった!なにこれ!」
悠介 「一斉掃射ァアーーーッ!!ワァーーーハッハッハッハッハ!!!」
ゴパパパパペパパパボパパパパパパパァアアン!!!
総員 『ギョベベパパァアアーーーーーッ!!?』
鳩を呼び寄せ、変換し、した先から放つ放つ放つ!
それはあたかもガトリング砲の如く他のやつらを襲い、彼らを真っ白に染めてゆく!
───故に気づかなかった!
真正面しか見てなかった俺に、横からパイの群れが来ているのを!
悠介 「へっ!?うわ《ゴパァン!!》キャボブ!!」
彰利 『…………南無』
頬に破面を出現させた彰利が、
竜の両手にパイをごっさりと持ち、その上での合掌で俺を潰したのだ。
……その彰利も、既に全身真っ白だ。
もちろん俺も。
悠介 「……ぬあっ!しまった!また世界が消え《ゴパァン!》ぷぼっ!」
セト 「隙ありだ!あっははははは《パァン!》ぶぺっ!」
閏璃 「甘い甘い……!こんな状況で笑うなど《がぼぉっ!》ぶへぇっ!
甘っ!すげぇ甘い!なんだこのパイ!無駄に甘いぞ!?」
レイル「フッ……地界のピザ屋に勤めて幾日……円盤状のものの扱いなら負けぬわ!
オラオラオラオラパイソーサー!!」
彰利 『ぬ、ぬうこやつめ!パイを円盤のように!』
藍田 「《ドスッ!》いてっ!ちょっ……こらぁっ!当てるならパイを当てろ!
紙皿って回転して飛んでくると地味に痛いんだぞ!?」
彰利 「───《ゴシャーン!》ウルーリィ!」
閏璃 「よしきた!いくぞ!ハイハイハイハイハイハイハイ!!」
彰利 「ハイハイハイハイハイハイハイ!!」
なにを思ったのか、彰利と閏璃が藍田を挟んだ状態でパイを投げ合い始めた!
こ、これは……いつだったか北斗の拳で、二人の男がケンシロウにやったあの技!?
だが藍田はそれを面白がってサッサッと避け続け、一向に当たらない!
だがこの技の恐ろしいところは、
投げているやつらの距離がどんどんと狭まっていくことにあるのだ……!
閏璃 「ハイハ《バチョォン!!》ぶぺぇい!!」
彰利 「ゲゲェエーーーーーッ!!」
しかし掴んだ先から手がパイで滑り、軌道がズレたパイが閏璃の顔面にヒット!
突然視界を奪われた閏璃はムスカ大佐のように、
閏璃 「へぁああ〜〜……!
目がぁ〜〜……!目がぁああ〜〜……!!《ゴドォ!》ウチュチューーーッ!?」
と言った矢先に、続けて飛んできたパイが炸裂。
鼻にヒットしたようで、蹲って苦しみだした。
藍田 「ルッハッハッハッハッハ!!アルメドレールパイシュートだ!
さすがにこれだけ勢いがついていれば紙でも相当痛《パカァン!》いてぇ!!」
レイル「隙あり……だぜ?《ボチャア!》ぶわっぷ!」
彰利 「隙あり……だぜ?」
レイル「人がせっかくキメてるところにっ!いい度胸だぁあーーーーっ!!」
セト 「───!待て!」
閏璃 「何事!?」
悠介 「お前、鼻は……」
閏璃 「自然回復万歳!ふう、相手が提督さんじゃなくてよかった……!」
悠介 「ああ、それはな……」
提督のヤツ、遊びでもダメージ与えると敵対心解いてくれないからな……。
彰利 「ほいでなによ鬼姫!なんかもうソレッタ鬼姫とか呼びてー気分!」
藍田 「盛大に違うだろそれ!」
彰利 「樹雷のソレッタ鬼姫……略してジュラキ。
すげぇ……獰猛なヤツらがうようよ居そうな名前だぜ……!」
樹雷のジュラに、鬼とか姫とかの読み方のキな。
彰利 「それでなに?ソレッタ」
セト 「……タイムリミットだ。まだ遊んでいたいけど、
このままこの状態で居続けると宿主の体がヤバいそうなんだ」
悠介 「提督か」
藍田 「なるほど、人間の体だもんな」
セト 「中井出……博光っていうんだな。……いいやつだな、こいつは。
いろんなものすっとばして、とりあえず面白い」
すっ飛ばすのか。
そこって結構重要なところなんじゃないか〜?とツッコみたかったが、
セトはさっさと引っ込んでしまった。
中井出「やあ」
で、そうなれば自然に戻ってくる提督。
極々普通に軽く手を挙げ、挨拶してきた。
……その姿は真っ白だった。
中井出「うおっ!甘ったるい!臭いからして胸焼けしそうだ!」
パイの香りを嗅いでだろうか、提督は顔をしかめて水のキャリバーを発動!
同時に景色の果てから巨大な津波が、って大海嘯ォオオオオオオッ!!?
悠介 「たっ……退避ぃいーーーーっ!総員退避ぃいーーーーっ!!」
彰利 「命令してんじゃねー!一等兵風情が!」
藍田 「何様だコノヤロー!!」
悠介 「うおおほんと素直じゃねぇ!!こんな時くらい団結を見せろぉおおっ!!」
閏璃 「バーーリア!!《バァッ!》」
悠介 「おおっ!ってサランラップなんてどこから持って来たんだお前!」
閏璃 「サランラップ!(訳:黙れ!)」
悠介 「ハンスンの真似してる場合かギャアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
ツッコミ入れてるうちに飲まれた。
激しい波に叩きつけられ、
やがて波が消える頃……そこに残ったのはぐったりとした俺達の姿と、
女性 「……何事ですの、これは……」
しばらくしてルルカに乗って飛んできた、呆れる女と悠黄奈だけだった。
───……。
……。
シャル「はあ、本当に……あなたという人は……楽しければなんでもいいのですね」
中井出「そのことに人生をかけていますから」
シャレにならない言葉だった。
やっぱり、なんとかならないのか〜的な視線を送ってしまうが、
提督は首を横に振るうだけだった。
シャル「それよりも。やはり顔を見ていたらムカムカしてきました。
マラジン?あなたは───」
中井出「あ、今の僕は中井出博光なので、マラジンは勘弁」
シャル「……ではヒロミツと。ええ、この響きはあなたによく合ってますわね」
閏璃 「思わず“お茶を入れて頂戴”と頼みたくなるような響きですね。わかります」
彰利 「ああ、あの白髪で褐色肌のお茶の間の正義の味方ですね。わかります」
よく解らないが、わかるらしい。
悠介 「さて、と。それじゃあ、提督」
中井出「え?なに?」
悠介 「や、なに?じゃなくて……デスゲイズ除けだよ」
中井出「……………」
……マテ。
もしかしなくても忘れてたのか?
中井出「シャル」
シャル「……?なんでしょう」
中井出「デスゲイズ除けって、その髪飾り?」
シャル「《ムッ……》……最初に言うことがそれなのですか?
わ、わたくしはコロシアムに連れ攫われたあなたを探すため、
各地を飛び回っていたというのに……」
中井出「名物お菓子、美味しかった?」
シャル「ええっ!まるで頬が落ちてしまうような味……で……した、わァア…………」
語るに落ちた。
中井出「トルネードフィッシャーマンズァアアッ!!!」
シャル「きあーーーーーっ!!!」
俺達はその時、颯爽と捕まって回転しながら空へと誘われ、
やがて落下してゆく姫さんを見送ることしかできなかった。
【ケース723:弦月彰利/クズどもへの鎮魂歌】
彰利 「おい、これ頼む」
閏璃 「あいよ」
中井出「ヒキガエルの在庫、まだあったか?」
藍田 「あと4匹〜」
レイル「そうか……今週中に補給しないといかんな」
マグナスとクラースくんの真似をしつつ、悠介に髪飾りを複製してもらってる。
当然、一個や二個じゃ効かないから、
再び運命と常識を破壊するオールブレイカーモードでの創造で。
悠介 「コンセプトは一粒で二度美味しいだ。一口で二度美味しいでもいい。
創造するからには+アルファが欲しい」
中井出「こういうのはどうだろう。マイナスイオンが出るんだ、ゴファーと」
閏璃 「提督さん……俺はあんたに惚れたぜ……」
彰利 「なんて人にやさしい考えなんだ……」
悠介 「いや……いいのか?それ……」
彰利 「+アルファなんて、些細なありがたみがあれば十分なのYO!
だからはい、マイナスイオン」
悠介 「………」
悠介が、いいんだけどさ……と難しいことを考えてる子供みたいな顔で、創造を続ける。
複製といってもやっぱ+アルファめいたものはやっとるようで、
なんつーかそのー、髪飾りを木に触れさせると、こう……ね?木に溶け込むの。
したっけ木からマイナスイオンがムハァ〜と。
……あ、なんか和む。
レイル「エルメテウスの方にももっと髪飾りくれ〜」
藍田 「大盛りたこ焼きそばの方にも頼む〜」
それがだんだんと楽しくなってまいりまして、
アタイたちは木という木に、大地という大地に髪飾りを埋め込みまくり、やがて───
総員 『完・成…………!!』
一つのマイナスイオン浮遊要塞、一つのマイナスイオン浮遊大陸が完成……!
これで本当にデスゲイズ除けが出来ているのかは不安ではござーますがネ。
彰利 「うしゃー!ほいじゃあこれからどうするネ!?
いろいろ移動できるようになったぜ〜〜〜っ!という思いを胸に、
何処かに攻めてみる!?ね!はい!ね!!」
藍田 「いろいろ回ってみるってのはどうだ?こう、町を練り歩くみたいにさ」
閏璃 「あ、それいいかも」
レイル「獣人はどうする?話に行くんじゃなかったのか?」
彰利 「ヌムー、それはねぇ……」
ほんにどうしましょう。
事情があるから嫌悪感を抱くとまではいかないものの、
正直やっぱり今の元・原メイツどもは苦手です。
中井出「じゃ、行きましょう。
獣人たちに話を通して、協力を得られるかどうか確認するのさ」
彰利 「ごえぇえええ〜〜〜……?マジでいくのぅぉ〜〜〜……?」
中井出「あ、あれ?何故そこでねちっこくなるの?」
彰利 「ヌ、ヌヌーーーッ!前に既に誰かが言ったような気がしねーでもないが!
もー我慢ならぬ!中井出よ!獣人族は原メイツどもだ!
貴様はどう足掻いたって受け入れちゃもらえねーのよ!だから諦めめされい!」
中井出「あれ?そうなの?だが断る」
彰利 「なして!?エィイ解らず屋め〜〜〜〜〜っ!!
そんな解らずはその名の通り売り払ってしまえばいいものを〜〜〜っ!」
中井出「話してみるまでは解らないじゃないか。
敵意を以って接してくるなら敵意で返すだけだし。
あ、でも裏切りに裏切りで返すのはちょっと気が引けるかなぁ……うーん。
まあその時の感情に任せるよ。よっぽど頭に来たらどうなるか解らないし」
閏璃 「その時は俺も全力で協力しよう」
藍田 「俺は……まいったな。多分俺、協力できない」
彰利 「ええんじゃねーの?それが普通さね。
アタイはどうあっても中井出優先にするけど」
悠介 「俺もだな」
レイル「俺は状況に応じてだな。面白そうな方に移る」
中井出「あ、じゃあ僕も」
総員 『お前当事者だろうが!』
中井出「えぇ!?だ、だめかなぁ!!」
こやつ、ほんにマイペースよね……。
けどまあさすがというとこザマスね。
いろいろ他に気になることもあるけど───結局、
俺達は獣人たちのもとへと行くこととなった。
───……。
……。
ほんで……まあ、予想通りっつーかなんつーか。
飯田 「はぁ〜ん……?それで同盟?《バゴルチャア!》たわばっ!!」
中井出「よし、滅ぼそう」
総員 『うわっ!めっちゃいい顔!!』
初っ端から見下した態度できた元原メイツを、
中井出が容赦なく殴ることで戦いは始まった。
くすくすケタケタ笑っていた獣人族……元原メイツどもが立ち上がり、
武器を構えるのを見ると、中井出も能力を解放し───一分かからず全滅。
独り残された島田くんが、怯える目で中井出を睨んでいた。
島田 「はっ……そらみろ!結局お前は殺人鬼で」
中井出「やー」
島田 「《ベパァン!》ぶっ!───な、なにしやがるっ!」
中井出「ザ・ビンタ!《どーーーん!!》
それより面白いこと言ったねぇキミ!ブシャシャシャシャなに!?殺人鬼!?
よってたかって独りを殺そうとするキミらが俺を殺人鬼!
偉いねぇまったく偉い!集団で独りを殺せば殺人鬼にならないってことか!
あーそりゃすごいねぇまったくすごい!責任の一つも負えない逃げ文句だよ!
だったら俺も集団で殺してれば責められなかったかねぇ!どうなんだよコラァ!」
島田 「っ……」
中井出「俺を忘れるのはそりゃいいさ!殺人鬼とか言われるのも事実だから受け入れる!
けどなぁ!自分を自分勝手に正当化した上で人を完全に見下す野郎どもに、
お前らが至っちまったことがなにより許せねぇ!」
彰利 「アルェエ!?沸点そこなの!?」
中井出「え?ほかにある?」
彰利 「………」
先生、ここに馬鹿がおるよー……。
中井出「おふざけでなら!仲間うちで笑いを取るためとかなら全然構わん!
だがこいつらの目は腐ってやがる!それが許せねぇんだ!
……あの頃のことを思い出してみなさいよ。
あんたあんなに綺麗な目ぇしてたじゃないの」
島田 「お前ェは俺のなに知ってんだ!?」
中井出「ハン!少なくとも貴様が輝いていた頃のことは知ってるね!
だが……もういい、今回のことでようやく目ェ覚めた。
信じる心って大切だけどな、自分が不快になってまでしたいとは思わないさ。
麻衣香のことだって、お前らのことだって……。けどさ、最後に訊かせてくれ」
島田 「……ンッだよ」
中井出「お前さ……今楽しいか?」
島田 「───!」
ざわり、とショックを受けたような顔をする島田。
そう、それは俺も訊きたかったことだ。
やさぐれた顔をして、チャラリーナみたいな雰囲気を出して。
無駄に周りに威圧的にして、目的もなくぶらぶらと威張っている。
そんな風にしか感じないこいつらを見て、そう訊いてみたかった。
時間があったならきっと、髪とか染めたり脱色したりしてそうな雰囲気だもん、こいつ。
じゃなきゃ、あの中井出がこんなに悔しがる筈がない。
もっと軽かったなら、それを利用してからかうだけで終わってた筈なんだ。
いきなり殴りかかるなんてこともなかった筈だ。
島田 「はっ……真面目な顔してな〜に訊くかと思えば。くっだらねぇ。
楽しいですか〜ってか?ん〜なのてめぇに関係《バゴチャア!》ぐへぇ!」
彰利 「オワッ!?」
視界の端から伸びた腕が、島田の顔面を殴りつけていた。
誰、と確認するより先に安堵している自分が居る。
……誰にも殴られなけりゃ、俺が本気の本気で殴ってた、と思うからだ。
島田 「つっ……ンッだよなにしやがる!」
殴られ、倒れこんだ島田が起き上がりながら言う。
対面する相手は……閏璃だった。
閏璃 「俺……ここまで他人に怒り覚えたの、初めてだ」
島田 「あぁ!?だからなんだよ!いきなり殴りやがって……覚悟出来てんだろうなぁ!」
閏璃 「へぇ……じゃあお前も覚悟出来てるってことか。じゃ、死んでくれ」
島田 「《ゴリッ……》っ……」
喋りながら近づき、島田の額に銃口を突きつける閏璃。
頭に血が上りすぎて、冷えた行動しか出来なくなっているんだろう。
その目はひどく冷たかった。
中井出「あ……やめて。それ以上、いけない」
けど、それを止める姿があった。
何故か孤独のグルメ風だったけど。
閏璃 「…………はぁ。あ、ああ……ごめ……ごめん、ちょっと頭冷やす」
中井出「いいって。ありがとうござる」
頭に手をやって、深い溜め息をついて戻ってくる閏璃の肩で、
中井出がポンポンと手を弾ませる。
そして……今度は中井出が島田の前に立った。
島田 「……今度は拷問でもしようってか。
俺一人残してるんだもんなぁ、なにか考えがあんだろ?あ?」
中井出「まだ答え聞いてないから。……楽しいか?」
島田 「んっ……だよ……!なんでそんなこと訊きたがるんだよ!
ワッケわかんねぇ!楽しいか!?そんなのマジてめぇに関係ねぇじゃんかよ!
なんだ!?お節介ってやつか!?
殺人鬼サマの考えることは解らねぇことだらけですねぇ!」
中井出「しーまーだ。俺が訊いてるのはな、そんな御託じゃない。
楽しいか楽しくないか。それを訊ければ俺は満足出来るんだ。
ここからも立ち去るし、ちょっかいも出さない。お前にとってそれは最善だろ?
だからほら、言え。言っちまえ。楽しいか楽しくないか。
この世界で、まだワクワクしてられるかしてられないか。それを、さあ」
島田 「ペッ!」
中井出「《ベチャッ!》っ……」
島田 「死ねドカスが!だぁれがてめぇなんかの質問に答えるかよ!
殺せばいいじゃねぇかよ!お前ほんと馬鹿な!訊いてどうする気だったんだ!?
楽しいって言やぁ満足顔でもするのか!?他人の楽しみに笑顔!?
うっわ気持ち悪ぃ!死ねよカス!うぜぇんだよ!」
…………。
中井出が、罵声を浴びながらも頬に吐かれた痰を拭う。
だが、拭った先に再び吐かれた。
それでも中井出は無言で拭い…………
悠介 「……止めるなよ」
彰利 「……冗談。加勢しなきゃやってられねぇ」
いい加減、沸点も最高潮。
鏡を見れば青筋さえ浮かんでいるであろう顔を想像しながら、
俺と悠介は一歩前へ歩み出た。
それは、決別の証。
原中なんてものは、もう存在しない。
島田の反応でよく解った。
そして、原中って思い出がどれだけ中井出を中心に展開されていたのかも。
ここに居たヤツはみんな、目が腐ったチャラリーナたちだ。
情報に流されるだけ流されて、それに流されるままに人を見下すようなクズ集団だ。
……まさか、本心から原メイツをこんな風に思う時がくるなんて思わなかった。
それでも中井出は信じてる。
島田が“楽しくない”って言ってくれれば、きっとあいつは手を差し伸べるんだろう。
俺と一緒に楽しいことをしよう、って。
仲間ってのはそういうものなんだ、って。
だから───
島田 「しつっけぇな!うぜぇってんだよ!!」
中井出 「《ばしぃっ!》つっ───!?」
彰利&悠介『っ───《カッ───!!》』
その手が乱暴に払われ、中井出の背中に悲しみが浮き出た時。
俺と悠介はもう迷わなかった。
───……。
……。
ソレの排除は、30秒もかからずに終わった。
過ぎてみれば一瞬のこと。
だけど、受けた傷は大きかった。
中井出「…………は、はは…………ほんとに……終わっちまった……」
洞窟の中心で、へたり込むように座った中井出が、目を覆うようにして額に手を当て、
その指で頭を掻き毟るようにしながら……そう呟いた。
中井出「馬鹿みてぇ……ほんと……いつまで希望に縋ってるんだって……はは……」
ただ信じたかったんだろう。
どれだけ曲がっても原中が存在したのは事実で、
この時代、この場所にこれだけの人数が集まっていたことは、
きっとあいつらが楽しい時代を紡いできたからだ、って。
けど、そんなことはなかった。
ただあいつらは同窓会めいたもののため、行事として集まっただけ、という結果に終わる。
そこには仲間意識なんてなく、ただのクラスメイト程度の関係でしかなかった。
中井出「受け入れた筈なのに……信じてたくて……ほんと……はは、ほんと馬鹿だ……」
綾瀬に続き、原中自体もだ。
中井出は言葉のない裏切りを受けて、身を丸くして、涙した。
彰利 「馬鹿め!」
中井出「なんだとこの馬鹿!」
そして一言で復活した。
さすが中井出。
中井出「うむよし!すっきりした!やっぱり忘れられるって辛いね!ほんと辛い!
でももういいや!あそこまで言われりゃ逆にすっきりする!
だからえーと……皆様。俺のこと忘れるまで、よろしくしてやってください」
悠介 「提督……」
彰利 「なにをウォーターくせぇこと言っとるんだこの男は……」
中井出「ウォーター臭い!?……あ、ああ、水臭いね……」
彰利 「少なくともアタイは貴様のことを忘れるつもりなんかさらさらねー!
だって忘れちまうにはもったいないヒューマンだし。ね、悠介」
悠介 「………」
彰利 「あ、ありゃ?悠介?」
悠介 「……提督。知ってたのか?俺達の中からも、少しずつ記憶が消されてるってこと」
中井出「それこそ当事者だからね。
だからさ、忘れる気はないとか、そういうことは言わないでくれ。
忘れるまででいい、よろしくやってくれればいいから」
彰利 「グ、グーヴ……」
こやつ……全て知っておったのか……。
アタイらの記憶のことも、記憶のことがどうにもならんことも、全部。
彰利 「なんとかして覚えておく方法とかってねーもんかね」
中井出「俺自身になれば忘れないかも!」
彰利 「無茶言うなコノヤロー!!」
閏璃 「提督さん、提督さんの武具の中にある意思は、
提督さんのことを一切忘れてないんだよな?」
中井出「うむ。みんな覚えててくれてる。
でもそれとは関係なしに、みんなに忘れられても僕寂しくないよ。
こっちにもいろいろあるからね。大丈夫、一人ぼっちでも独りじゃないんだ、俺」
彰利 「意味が解らん!さあ山岡くん!説明してくれるね!?」
中井出「てめーには教えてやんねー!くそして寝ろ!」
彰利 「まさに外道!?」
おのれこの子ったら妙な意地張っちゃって……!
独りじゃないって、そげなことあるわけねーじゃねぇの!
否!それ以前に忘れられても大丈夫、なんかじゃない!
“俺達が”忘れたくねーのよ!
悠介 「提督。一つだけ答えてくれ。
……その、俺達が忘れちまっても、本当にお前は独りじゃないのか?
本当に、寂しくないのか?辛くないのか?」
中井出「忘れられるのは辛いな。でも寂しくはない、と思う。
その時にならなきゃそりゃわからないけどさ。
……大丈夫、みんなここに居る。
俺は独りじゃないし、一人になっても笑ってられるから」
悠介 「そっか」
彰利 「…………?」
なんか引っかかりを感じた。
言い回しがヘンだ、と。
一人と独りを使った喋り方っつーのか……なんか違うんだ。
独りじゃないし、一人になっても笑える、って……おかしいだろ。
なにか、気づかなきゃいけないことがある気がするのに、ピンときてくれない。
悠介はなにかを感じ取ったみたいだが、俺はどうにも感じ取れなかった。
“みんなここに居る”って言った……よな。
それってどういう意味なんデショ。
中井出「そんなわけだから。もう、行こう。ここには僕の楽園は無かった。
それが解っただけでもう十分さ。
俺はキミらの記憶とこの世界が消えるまでを精一杯楽しむよ。
だから、その時が来るまで思いっきり……うんと楽しもうな」
悠介 「───ああ。もちろんだ」
中井出「バカモン!そうじゃないだろう!」
悠介 「サーイェッサー!!ってこんな時くらい普通に言わせろ!」
中井出「断る!《どーーーん!!》」
悠介 「断るなぁ!」
彰利 「ウ、ウヌー!会話に入れないのはなンかヤダ!アタイも仲間に入れろ!」
閏璃 「おっとフフフ、この閏璃凍弥を忘れてもらっちゃ別に困らないぜ」
彰利 「困らんの!?なにそれ!」
レイル「話終わったかー?そろそろ獣人どもが戻ってくるから移動するぞー」
藍田 「なんか複雑な気分だよ……はぁ。
なにも知らなきゃ、俺も島田と同じだったんだよなぁ……」
中井出「はいはい、ショック受けたからって腐るな腐るなぁ。
さっさと出発しますよ?俺達の戦いは───始まったばかりだ!」
総員 『どうしてそういっつも打ち切られてそうな文句で出発促すんだよ!』
中井出「え、えぇ!?だめかなぁ!!
打ち切りから始まる物語があってもいいと思うんだけどなぁ!!」
……そうして。
アタイらは、組み立てられないパズルを渡された気分のまま、出発した。
結局中井出がなにを言いたかったのか、アタイにゃさっぱり解らず終いだったのだ。
……いつか解る日が来るのかね。
そう思いながら、せめてそれが、あいつを忘れる寸前じゃないことを強く願った。
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