───冒険の書297/地下帝国ノヴァルシオの攻防───
【ケース742:晦悠介/展開みっくみくバトル3】
扉を抜け、地下のさらに地下へと降り立った俺達は目を疑った。
よくゲームとかで“地下世界”、なんて言葉があるが、ここはまさにそれだった。
地下の古代文明、ノヴァルシオ。
空界では空に浮いていたが、こっちでは地下空間に存在していた。
どうやってこんな場所にと思ったが、
それを理屈抜きで出来てこその古代技術ってことなのか。
クリスタルで出来た階段を、地上に降り付くまで駆け下り、
だが───その途中で、ヤツが現れた。
ミク 『侵入者ハッケン───殲滅スル!!』
遠く続く景色の果てから飛翔してきたソイツは、
ツーテールをウィングのように変形させ、飛んできたミクだった。
その右手には近未来SFモノで出てきそうなレーザーガンのようなものが握られており、
左手にはビッグシールドが握られていた。
……コンセプトはガンダムとかそっちのヤツなのか?ガンダムのことはよく知らないが。
悠介 「よし!ルナ!悠黄奈!ここは俺に任せて先に行け!」
悠黄奈「到着早々なに言ってるんですか!?」
ルナ 「先導者が真っ先に離脱してどうするのよぅー!」
悠介 「先導者……?違うな。俺はひとりの男だ。
男として、先を誰かに託して自分が残る状況に一度たりとも憧れぬわけがない。
いや、絶対に一度はやってみたい筈だ言ってみたい筈だ!だから行け!」
悠黄奈「うわー……楽しい遊びを前にした子供みたいな顔してますね……」
ルナ 「……わたし、ゆーすけのこの顔好きだけど、
“わたし”に向けられないのが悔しいんだよねー……」
少々おろおろする二人をよそに、白を発動させて意識を高める。
と、白い雷が光りとなって俺を包み、
なんていうか超野菜人2にでもなったかのような状態に。
白雷光の発動は、これがあるから結構好きだったりする。
もっと深く意識すれば、金髪碧眼……以前の神モードの色にまで引っ張れるんだろうが、
それは色が変わるだけで大した変化はない。
ならば倭国の者として黒髪茶眼を愛するべきだと思うんだ。
……薄い赤だけどな、眼の色は。
元々神と死神の力を人間に混ぜたのが月の家系だ。
その気になればどっちの色にも染まれるだろうが、
生憎と俺は月の家系が光、朧月の家系だ。
神側の色が濃すぎて、彰利のようにはなれない。
ミク 『排除シマス《ガションッ》』
悠介 『いきなりか!?』
ともあれ、俺が神側だからこそ出来ることもあり、それは彰利には出来ないことだ。
反対側同士の男たちが親友だなんて面白いもんだけど、
俺はそれに対して胸を張ることができる。
キュゥイイイ───!!
ミクが、突き出す銃からレーザーを放とうと構える。
いや、むしろ既に構えられた銃からレーザーが放たれようとしている。
悠介 『分析開始!───よし!コインが出ます!弾けろ!』
ミクが持つ大き目の銃……レーザーライフルの銃口を分析、
イメージを完了させると、掌にコインを創造し、そこに雷を込めて指で弾く!
悠介 『超電磁砲!!』
ヂビィィイゥウウンンッ───ガギィンッ!!
レーザーのように軌跡を残し、一直線に飛んだ、雷を孕んだコイン。
それは寸分の狂いもなく、分析した通りの軌道を進み、
ミクが構えるレーザーライフルの銃口へと嵌り込んだ。
ミク 『───!シマ───』
どぉっがぁあああああんっ!!!!
今まさに放たれんとしていたレーザーは行き場を無くし、内部膨張したのちに爆発。
レーザーライフルはコナゴナになり、ミク自身も右手に火傷のようなものを負っていた。
悠介 『よし───!飛び道具さえ潰せば……!“花鳥風月”()!!』
神器で背中に羽根を生やし、空を飛ぶ。
この場でメガレールを撃って戦う方法もあるし、
雷属性はメカたちには効果が高いかもしれないが、メガレールは直線攻撃でしかない。
空を自由に移動できるヤツが相手じゃあ、正直分が悪い。
声 「あっ!ゆーすけ!?もぅー!」
悠介 『おっ……俺に構わず……いけぇえーーーーーっ!!』
声 「空飛んでるだけでどうしてそんなに苦しげに言うんですか!?」
悠介 『馬鹿お前!こういう時の言葉っていったら苦しげに言うからいいんだろうが!』
声 「……ゆーすけが壊れた」
壊れた言うなっ!!
だが俺はもう振り返らなかった。
皇竜剣を手にし、空を飛び、……視界の下に広がる景色にゴクリと喉を鳴らした。
……高い、な。落ちたら死ぬだろうなぁ。
ミク 『対象の接近を確認───殲滅スル!《ズ……ゾフィンッ!》』
悠介 『いっ───!?』
クリスタルの浮遊階段から大分離れた上空。
そこで俺の接近を感じ取ってか、
ビッグシールドの装飾かなにかだと思っていた棒状のモノを抜き取った。
なんだ?と思った矢先にそこから高圧縮であろうエネルギーが刃状に放たれ、
フォトンサーベルと化した。
なんでもありかよノヴァルシオ!ああでもいいなぁ!ビームサーベルいいなぁ!
モンスターの素材で作る武器もいいけど、こう、SF的な武器にも多少の興味はある!
……だが機械文明はどちらかというと嫌いなうちに入るので、欲しいとは思わん。
俺はもっとファンタジーファンタジーしてるのがいい。
剣と魔法、錬金と魔導、そんな風なのが好きなのだ。
悠介 『というわけで独断と偏見で貴様には死んでもらう!』
ミク 『人間の好きな“実力行使”と確認。
付き合う理由が発見できないため、引き続き殲滅作業を続行』
悠介 『作業なのかよ!』
愚痴をこぼしても埒もない。
集中を高め、ミクへの攻撃を開始する───!!
【Side───ユッキー】
悠介さんとミクとの空中戦が始まった。
鋭く剣とフォトンブレードを会わせる彼と彼女は、足場もなく踏ん張りが効かない空中で、
そうとは思えないくらいに綺麗な戦いを見せている。
恐らく相手はスピードタイプのミクなのでしょう。
技巧に長けた立ち回りは、悠介さんのそれに近いものがあった。
と、思考に暮れている余裕があるわけでもありません。
わたしはルナさんを促すと、クリスタルの階段を段飛ばしで降り始めた。
それはとてもとても長く続いていて、
ヘタをすれば雲の上から地上までを目指すくらいの長さだ。
それを延々と走らされる気分を味わえる……最高だ。別の意味で。
ルナ 「…………ところでさ、ユッキー」
悠黄奈「……?なん、ですかっ?」
ヒロライン特有の、疲れないという特性を活かして降り続ける。
ルナさんは空を飛んでるから余計に疲れないし、
呼吸器が揺らされて声が途切れたりすることもない。
……なんとなく悔しかったわたしはフェンリルを召喚して、
その背に乗ってクリスタルの階段を降りた。
……ごめんなさい、フェンリル。
ルナ 「レイナート、だっけ?と、戦う理由ってなんなの?」
悠黄奈「え?それは……機械で世界征服、のようなことをしようとしているからでは?」
ルナ 「支配されたくないから支配し返すってことだよね、それ」
悠黄奈「そうですね。頭が硬い人はどうしてもその問題にぶつかりますけど、
こう考えればいいですよ。たとえば意見ばかりを押し付けて、
あとは会長さん任せにする生徒会役員、みたいな」
ルナ 「……気に入らないから潰す?」
悠黄奈「はい。征服欲なんてどうでもいいんです。
“その意見には賛成できないから、その意見を潰すためにあなたを潰します”。
それでいいんですよ。誰でも自分の意見が正しいに違いないって思うから、
それを好き勝手に提案して、でも責任は負いたくないから会長さんに任せる。
で、それを会長さんが通せば、自分の思惑が通った上に責任は会長さんに向く。
みんな楽して我を通したいんです。戦う理由なんてそんなものですよ」
ルナ 「……ん、解りやすくていーね、それ」
悠黄奈「ただしこの場合は、責任は自分自身のものですからね?
提案するだけしといて責任を押し付ける人なんて死ねばいいんです」
ルナ 「それもさんせー。じゃ、イコっか」
悠黄奈「もう走ってますけどね」
階段を下りてゆく。
フェンリルの特性として、空中を走ることもできるけど、
どうしてかあまりこの階段の外は走りたいとは思わなかった。
でも……戦う理由、ですか。
悠介さんも彰利さんも、そういうものは固まっているんでしょうか。
……博光さんは、はい、確実に固まってるんでしょうね。
ええ、それは絶対に絶対です。
多分、いえきっと、かなり子供っぽい理由で。
【Side───End】
ガィンギャリンバジュンビジュンギョリィンッ!!!
悠介 『〜〜〜っ!うおおお腹立つ!無性に腹が立つぞこの野郎!』
ミク 『戦場で怒りを露にすると碌なことになりませんよ』
悠介 『葱型フォトンブレード振り回してるお前に言われたくないっ!!』
一本目のフォトンブレードを柄ごと切り落としたあとのこと。
ミクはなにを思ったのか襟首に手を突っ込むと、背中からネギを一本取り出した。
……それをキュッと握って構えるとどうだろう、
伸びたネギの二つの穴から再びフォトンの刃が出るではないか。
しかもそのネギが斬っても斬っても代えを取り出せるようで、
そのくせ体に攻撃してもガギンゴギンと弾かれる。
いい加減ハラワタが煮えくり返って……ああもう!
悠介 『踏ん張れないのはやっぱりだめだ!───ディル!』
キュバァンッ!!
ディル『応!』
竜玉をココンッと突付き、ディルゼイルを召喚してその背に降り立つ。
馬乗りではなく、文字通り立つ形で。
ミク 『───竜族の殲滅は優先事項。まず───、……!?』
悠介 『させるかたわけぇえええええええっ!!!!』
殺るからには遠慮も躊躇も一切要らん!
バクンッ!とブレードオープンしたラグからレールガンを放ち、ミクを狙う!
ミク 『この程度の雷撃……どうということもありません』
自分へと放たれたレールガンを、
ミクはビッグシールドを斜めに構え、受け止めるや力を込めて逸らすように弾いた。
ミク 『直線的なものなどこうして弾けば《ヒュゴガギィンッ!!》───!?』
悠介 『疾空 交差セシ白銀ノ閃()”!!』
その隙を穿つように、俺とディルゼイルは互いに飛翔し、
それぞれが一つの刃となってミクに同時攻撃を仕掛けた。
ディルゼイルがぶちかましをし、俺がラグで思い切り斬撃を食らわす。
これより始まるは奥義、四空、誓約ヨリ矛盾ヲ分カツ()。
真は刀技ではあるが、理屈さえ揃えば出来ないものでもない。
一撃目の閃空 飛翔ニ堕ツル万物()をメガレールの弱出力、レールガンで放ち、
続く二撃目を俺とディルゼイルそれぞれが刃となって突撃する。
それは本当に突撃であり、全力だからこそ至れる威力を目指す攻撃だった。
悠介 『烈空 無斬ガ故ニ砕ヲ齎ス()”!!』
ディル『ルォオオオオオオオオッ!!!』
無刃と称するそれを、さらに上空へと旋回した俺達がメガレールと極光レーザーとで放ち、
交差する光はなんとかシールドでの防御が間に合った彼女の盾を完全に破壊する。
ミク 『───!?コンナ───ハッ!?』
悠介 『終空 是即チ()───』
旋回し、体を一列に並べ、ディルを先頭に垂直落下する。
いや、ただの落下じゃない。
自らの力も落下速度に変換するがごとく、飛翼をはためかせ、花鳥風月を振り飛ばし、
いつかのフェンリル戦でやったように破壊のイメージをディルの体に付加させ……
俺達の速度が最高速に達した時───!!
悠介&ディル『歴戦ニテ敗北ヲ知ラズ()!!!』
ディルが敵の硬さに躊躇することなく貫くようなぶちかましをし、
その衝撃が吸収されるより先に、ブレードオープンしたまま、
目が焼けるくらいの眩い雷撃を纏っているラグを───
ディルがぶちかました部分の中心点へと突き立てる!!
ヂガァッフィギババゴバッシャァアアッ!!!
ミク 『ギッ……ギガァアアアアアッ!!!!』
かつて放ったツインスパイクという名の連携を、今ここで使ってみせた。
お互いあの頃とは武器も経験も違う。
今度ばかりは俺の足が砕けることもなく、
貫かれた腹部から凄まじい雷光が放たれ、ミクがショートし、爆発するより先に飛翔。
体術ではないから徹しなんて使えないし、
提督みたいにアーマーキラーが使えるわけでもない。
だったら、二重の極み理論だ。
一撃目の衝撃が完全に消える前に全力をぶち込む。
とはいえ、これは相手がスピード重視型で装甲が薄かったから出来たことだろう。
次に出てくるのがパワー型だったら…………
悠介 『……はは……勝てる気しねぇ……』
けど、いつかみたいに“帰りてぇ”とか思ったりはしなかった。
気力が充実してる。
誰と戦っても勝てる、みたいな……
少年だった頃のやんちゃ加減を取り戻したみたいな、そんな不思議な感覚があった。
……まあもっとも、俺の子供の頃なんてのはやんちゃできる状態じゃあなかったが。
誰にだって負けてたもんな、大人総勢で俺をボコるなんてこと、よくやってた。
でも諦めなかったからこそ晦神社はあそこにあって、俺は俺として生きてこれた。
あそことはもう縁は切ったから関係ないけど、
俺が朧月和哉で晦悠介であることには変わりはない。
悠介 『……よし!』
考え事はあとだ。
飛んできたディルに竜玉に戻ってもらってから、
花鳥風月をコントロールして下方の景色へ向けて降りてゆく。
あとどれだけミクが居るのかは知らないが、速度重視タイプならなんとか勝てそうだ。
……いや、それよりもラグを完全解放してやらないとな。
そうすればもっと簡単に敵を斬れたに違いない。
そんなことを思いながら、エクリプスレコーダー(月蝕機)を操作して、
月の欠片の在り処を探ってみる。
………………すると、俺達が降りてきた階段の上のほうから反応。
見れば、オルランドゥ伯が颯爽と降りてきていた。
って、あいつが持ってグギイッ!!
悠介 『んがっ───!?なっ……』
ミク 『ギ、ギギギ……!!』
背中にある花鳥風月に、締め付けられるような違和感が走った。
自分の肩越しに見やれば、翼には上半身だけとなった、ところどころコゲたミクが……!
こっ……このたわけっ!爆発したんなら潔く全身で爆発しろっ!
戦隊モノの悪役を見習ってみろってんだくそっ!
だああやばい!落ちる!!こいつ人の飛行手段封じて心中するつもりだ!
引っぺがそうにもガッチリホールドしやがってて取れやしない!
い、いや焦るな!ピンチの時にこそ冷静さを取り戻せ!
………………。
ピンチ、という状況。
思い浮かんだのは提督だった。
ああなんだ、セイクーにしがみ付いてるなら、セイクーを仕舞えばいいんだ。
うりゃっ。
悠介 『《がしぃっ!》ぐわっ!?』
セイクーをなくした途端、今度は俺の背中に直接しがみついてきた。
この感覚……きっと野菜星人のナッパ様も同じ気持ちだったに違いない。
すまんな餃子。俺は死ぬかもしれんが必ずこいつを道連れにするぞ。
死ぬからってただ死ぬのはつまらん。死ぬなら貴様も道連れだ……!!
悠介 『ラグ!』
右手に構えたラグを逆手に持ち、上半身よりしたが無くなって、
機械が剥き出しになっているであろう内臓(?)目掛け、下から一気に串刺しにする!
……いや、しようとしたが、思いの他力が込められず、中の機械群は貫けたが、
人工皮膚の下にある強化装甲を貫くことが叶わなかった。
さらにその状態のままラグが機械群に飲み込まれ、引き抜くことが出来なく───!
うわっ……やばい!
こうなったら、とブレードオープンして最大出力での雷撃を放つが、ミクも死に物狂いだ。
どれだけ食らわせてももはや離そうとせず、
むしろ俺の体に自分の体を固定したみたいになって固まり、動かなくなった。
───まずい、まずいぞ。
完全に背中に張り付かれてる所為で花鳥風月が出せない。
このままじゃ───否!
悠介 『強烈な風が出ます!弾けろ!』
だったら風を創って落下速度を緩めればいい!
あとはこいつをなんとか外して……っ……!!
悠介 『かっ!ぐっ!このっ……!』
必死になって、ほんと必死になって外しにかかるが、
背後で、しかも上半身だけという形のために力を込めて掴むことができない。
様々なイメージの解放を試みるが、どれもミクを外す手には至らず、やがて俺は───
悠介 『っ……だめだ!諦めない!
それが俺達に出来る戦い方ってキバヤシとか提督が言ってた!』
だがどうする!?
どれもこれもダメとなると───あ。
悠介 『《ゴクリ……》ヒッ……ヒロミチュードォオオオオッ!!』
困った時の提督頼み!
もはや万策尽きた!俺のイメージが少ないだけかもしれないが、もういい!
提督……俺に救いの手を差し伸べてくれ!
ジャンッ!《ブレイブポット!“自爆”が発動!!》
悠介 『うぎゃあああああああああ!!!!』
……提督を信じたその日。
俺はノヴァルシオの大いなる空の最中……光となった。
こうなるんじゃないかって予想は出来てたのに……。
神様……俺は本当に馬鹿なんでしょうか……。
【Side───ランポス】
ドゴォオオオオオーーーー……ォオ……ォォン…………
彰利 「………」
長ったらしい通路を走り、階段を降り始めた時。
なんだかとても溜め息を吐きたくなったり、頭が痛くなったりする爆発音を聞いた。
……中井出花火の音だ。
また自爆でもしたんかな。
そう思ってから、止めていた足を再び動かして降りたんじゃけんど。
なんか下の方から聞こえてきたから、なんとなくその意味が解ってしまった。
彰利 「あ、あ〜……ヒロミチュードか」
爆発したのは悠介だろう。
悠黄奈さんも中井出ンこと覚えてるからヒロミチュードは使えるだろうけど、
なんとなく彼女の思考パターン上、使わないような気がする。
彰利 「けど、悠介がヒロミチュードね……」
相手はミクか、強化メカかだろう。
自分の能力では太刀打ち出来ないと踏まなきゃ、
あいつは多分そういうものを使おうとはしない筈だから。
彰利 「とはいえ、急いだほうがよさそうだな。
自爆を使ったっつーことはHP1だろうし」
階段を下りる足を速めて、危なっかしくても急いで走った。
伯には会えてねーけど……どれくらい先に居るんだろね。
【Side───End】
ゴコッ……パラパラパラ……
悠介 「カカカカカカ…………!!!」
空中で“大”がつく爆発をしでかした俺は、
瀕死ながらもなんとか風を創造してビルのような建物の屋上に着地。
その場に倒れこみ、今度こそコナゴナになったミクの破片が落下する様を、
どこか現実離れした光景を見てるかのような気分で眺めていた。
…………ああ、いや。とりあえずグミだ。グミとポーション……。
悠介 「かぐっ……!んぐんぐ…………《マキィンッ♪》ぶっはぁあああああああっ!!」
死ぬかと思った!本気で!
落下より自爆の方が数倍痛かった上に怖かったわ!
悠介 「……っし!なんにせよ一体!この調子で《ドゴォンッ!!》…………ワァオ」
気を引き締めようとした途端、
俺の頬を僅かに切って屋上のような場所の床を破壊するなにか。
振り向いてみれば、もうもうと吹き上がる煙を裂いて……ミクが現れた。
しかもツーテールがテールハンドになってるところから、どうやらパワー型らしく……。
悠介 「えーと……」
カミサマ、ボクモウカエリタイデス……。
ああ、そうだな……嫌なことってのは、起こるからこそ嫌なことなんだもんなあ……。
悠介 「《ゾフィンッ!》ち、ちくしょう!かかってきやがれぇええええっ!!!』
もうヤケクソだった。
白を解放した俺はラグを手に駆け出し、ミクへと攻撃を仕掛けた。
しかし振り切ったラグは、まるで研がれていないのではないかと思うくらい、
あっさりとミクの“手の平”で受け止められた。
刃が当たるより先に指でつままれた、とか……そんなものじゃない。
手の平で、ガギン、と受け止められたのだ。
───感じたのは恐怖だろうか。
冷や汗が頬に流れるのを感じた俺は、
即座にバックステップとは呼べない跳躍で大きく距離を空けた。
速度重視型と攻撃タイプでは───マテ。
離れてみて解ったけど、ミクのツーテール……拳の形をしてない。
指を立てた拳の形と思ってたけど、あれ……音符だ。
悠介 『………』
ゴクリ、と喉が動いた。
力でも速度でもない。
ボーカロイドとして存在するべきモノが、歌にこそ集中して製造された。
ク、と小さく口が開く。
咄嗟に耳を両手で塞いだが、そんなものは壁にすらなってくれなかった。
巨大な音が鳴った筈なのに、耳はまるでそれを拒絶したかのようになんの音も拾わない。
いや……或いは既に鼓膜など破裂し、音を拾う器官など崩壊したのではないだろうか。
気づけば足の裏で立っていた筈の地面が目の前まで起き上がってきていて、
咄嗟に避けようとしたら、足が動かなくて地面にぶつかった。
………………地面が起き上がったのではなく、自分が倒れたんだって気づいたのは、
ミクが俺の視界に現れた時だった。
……壁に張り付くように立ってら……と思ったが、そこに重力を感じている様子はない。
だから、ああ、と理解して、壁……地面に手をついて起き上がろうとする。
だがどこかの器官がイカレたのか、それとも脳がダメージを負ったのか。
どれだけ足掻いても体に力を入れることが出来ず、起き上がれなかった。
ミク 『…………、……』
ミクが何かを口にしている。
声が聞こえないために、その内容は解らないが───
なんとか見上げた、俺の横に跪いた彼女は……どこか、悲しげだった。
【ケース743:シドルファス=オルランドゥ/死に場所を求めた老人】
ゴキィン、と空間を斬り裂かんほどの音が鳴り響き、辺り一帯の空気が震動を起こす。
その影響で老いぼれの肌がビリッ……と刺激されるが、階段を降り続けた。
恐らくあの若者は勝てないだろう。
しかし今はそれよりも先に進まなければいけない時だ。
シド 「遺産にすがり、強くなった気でいる馬鹿者に……
それがどういった力なのか、教えてやらんとな……」
難儀なものだ。
いつだって先に年長者が体感してきたものを、
あとから産まれたものが掘り起こし、知らずに発動させる。
どれだけ語ってみせたところで、試してみなければ納得も出来ないのだ。
未知が故の愚考にして愚行。
その先にあるのは滅びと後悔ばかりだというのに、若者というのは学ぶことを知らない。
シド 「ノヴァルシオの力は征服などに使えるほど生易しいものではない……!
意識があるうちに、踏みとどまれ、レイナート……!」
階段を下りてゆく。
急く心にこの階段は長すぎるが、まさか飛び降りるわけにもいかない。
そう思っていた時、こちらに向けて昇ってくる存在を視界に確認した。
シド 「ヌシは……」
離れた距離を一気に詰めて、襲い掛かってくる。
その姿は───忘れもしない、かつての戦友の姿だった。
シド 「っ……愚か者がっ!どこまで力に溺れれば気が済む!神にでもなったつもりか!」
かつて愛した人が居た。
意思無き瞳で自分を見据え、攻撃を仕掛けてくる。
そんな残酷な状況に頭が沸騰しかけたが、だが───逆に感謝もしていた。
死ねない体になったとはいえ、少しずつ老いてゆくこの体。
しかし目の前の彼女は当時のままの姿だった。
……思いを、過去を断ち切るのならば、これは確かにきっかけとなってくれる状況だった。
シド 「……すまんな、セトよ。ヌシが残した剣で、ワシは最愛の人を殺すのだ」
口にした瞬間に覚悟は決まった。
一歩を踏み出し、躊躇も容赦もせず、頭と体を切り離す勢いでエクスカリバーを振るう。
さらばだ、と自然に口が動いたのは、
かつて別れも言えずに死別した彼女への、せめてもの手向けだった。
そして───
ガギィンッ!!
彼女のロッドでエクスカリバーが弾かれることも、
いつかやった模範稽古の時のままの風情だったことに、思わず笑んだ。
弾かれることなど予想できていて、弾かれやすい場所を狙った。
いつかの模範稽古の時、彼女は真面目にやれと怒っていた。
……あれからどれほどの年月が過ぎただろう。
気づいてみれば己は亡者のような生き方をし、仇も打てないまま、ただ日々を生きていた。
シド 「思い出すな、ヒルダ。あの日もこうして武具を合わせた」
ヒルダ『───』
目の前の、かつて愛した人の顔に表情はない。
ただ己を迎撃するためにだけ蘇らせられたのだろう、
かつての技術のままに撃を振るい、我が剣を弾いてくる。
魔法で自分を強化して突貫するのが好きな、滅茶苦茶な女だった。
同じ町で生まれ、同じ町で育ち、
いつか勇者になって世界を救うんだ、と……無意味な正義感を広げて走った。
救おうとした先にはこんな孤独しか残ってなかったというのに。
……戦う理由とは……なんだろうな、ヒルダ。
ワシは過去、どんな思いを胸に剣を取った?
ワシがなりたかったものは本当に勇者だったのか?
ワシが救いたかったのは───
シド 「───そこをどけ、ヒルダ。ワシは───俺は行かなければいけない」
ヒルダ「───」
シド 「……ふふ、反応なしか」
レイナートも気が効かないな。
せめて話せるくらいの再現をしてほしかった。
ああ、本当に……気が効かない。
声 「〜〜〜……♪」
シド 「ム───?」
その時だ。
遠くから音楽……いや、歌が聞こえてきたのは。
何事かと思いながら、
刃を削らん勢いで圧し合っている相手のロッドを押し退けると、間合いを取る。
しかし階段の上では明らかに細々しい動きは効かず、不利だ。
上段に居る方が剣に体重を込めやすいとはいえ、下方の防御が手薄になるのも明白。
この状況はともかく、どちらにも不利といえた。
声 「〜〜♪」
声が近くなる。
リズムをとっているだけのようで、歌とは呼べないそれが、ゆっくりと近づいてくる。
やがて───声が聞こえた、と思ったとき、振り返るとそこに───
彰利 「あぁ〜〜い〜〜〜故ぬぃいい〜〜〜〜〜〜……人〜〜は〜〜〜苦しみ〜〜〜♪
あぁ〜〜い〜〜〜故ぬぃいい〜〜〜〜〜〜……人〜〜は〜〜〜なみ〜〜だする〜♪
た〜だ〜あなとぅぁ〜〜〜〜〜忘れられなくとぅぇ〜〜〜♪
今宵も密かにぃ見上げるゥ〜〜〜……ヴァルキリープロファイル」
……とりあえず殺意が芽生えた。
彰利 「キョホホ、苦労しとるようじゃねぇの伯。
ン?なにか?べっぴんさんに出会って、
おじいちゃんもう辛抱たまらんって感じになったの?ン?
それでたまらず襲い掛かろうとして全力で抵抗されてたのかこのエロザルッ」
ヒルダ「───」
彰利 「ひょ?」
シド 「いかん!逃げろ!」
一瞬気を取られたのがまずかった。
ヒルダがワシの横を駆け抜け、尖った頭の男を殺しにかかった。
ゾブシャアッ!!
シド 「───!」
止めようと剣を振るったが、剣が届く範囲からヒルダが離れるまで、
そう時間があるわけもなく。
ヒルダが魔法で強化した刃付きのロッドが、尖った頭の青年の腹を貫いていた。
……青年は貫かれた体に触れ、手にべっとりついた血を見ると……
意識を混濁させ、階段から地下世界へと落ちていった。
シド 「くっ……ヒルダ!ヌシの相手はワシだろう!」
彰利 「そうだそうだ!ジャイアンの言う通りだ!」
シド 「………」
彰利 「え?なに?」
落ちた筈の男は、どうしてかヒルダの影からひょこりと顔だけ出していた。
ヒルダが刃を落とすが、すぐに顔を引っ込め、
代わりに無数の黒の刃を影から飛ばし、ヒルダを刻んでゆく。
シド 「ぬっ───よせ!そいつはワシが───!」
彰利 「解っとらぁな!やられたからやり返しただけじゃい!
んじゃあアタイは悠介ンとこ行ってくっかンヨ!ヨルロシク(夜露死苦)」
黒の刃は空中で塊になると、気づけばそこにトンガリ頭が居た。
そして、さっさと飛んでゆく器用な状況に少々溜め息が漏れたが───構わん。
エクスカリバーを強く握り直すと、
見下ろす側と見上げる側が逆になった状態で、ヒルダを見上げた。
シド 「なんの因果だろうな。かつて、バハムートとの戦いに躍起になっていた我らが、
形は違えどこうして向き合うとは」
手にしたエクスカリバーを見下ろし、呟いた。
ヒルダの反応はゼロだ。
もはや自我などない、ただの木偶なのかもしれない。
だが───無念は晴らすべきだろう。
クローンであろうが死者蘇生だろうが、
とうに死んだ者がこうして蘇っては、世界の理を捻じ曲げることになる。
愛しいからという、ただそれだけの理由で死んだ人が生き返っては、
この世界はパンクしてしまうのだ。
産まれたからこそ死んでゆく。
その意味を、この長い歴史の中で散々と考えた。
意味自体など見つけることは出来なかったし、
見つけられても全ての者にその答えが当てはまるかといったらそうではない。
……答えなどいらないのだ。
ただ、生きた証が自分の中に残せたなら、死に往く者が誰かに残すものなど無くてもいい。
死人が喋るなんていうことは、もう必要ではないのだ。
シド 「……死人にくちなしだ。安らかでなくてもいい、もう眠れ、ヒルダ」
女だてらに強く、そのくせ、恋だの愛だのには弱いやつだった。
ずっと一緒に生きてきて、いつか全部が終わったら一緒になろう、なんて……
思い出せば今でも笑むことの出来る約束をした。
それが果たせなくなったために狂気し、デスゲイズに挑み……全てを無くした。
高度からの落下で左手は上手く動かなくなり、足腰も随分と弱った。
そんな状態で延々と生きなければならなかったのだ。
戦士として、どれほど己の人生を呪っただろう。
それでも───ああ。呪っても悲しんでも、歩いた道に偽りなど無かったと信じている。
どの瞬間、どの選択も覚悟を以って歩んできた。
ならば。後悔など抱く必要などないのだと。
シド 「ここでもう一度ヌシに───お前に会えてよかった。
それだけは、“俺”の素直な気持ちだ」
随分と突然な再会だった。
レイナートがワシの過去を知っているのはもはや明白だ。
恐らく過去の王の記憶でも埋め込んだのだろう。
だが、殺せず立ち止まると思っていたのなら───それは見当違いもいいところだ。
シド 「人には“乗り越える力”がある。心は確かに揺さぶられたが───過去は過去。
起こり、とうに過ぎ去ったものだからそう呼べるのだ。
未練など、不死とともに我が奥に埋もれているよ」
ゾガァッフィィイイインッ!!!
ヒルダ「───!」
剣を振るった。
直後、クリスタルの階段……
ヒルダの足元から巨大な気の剣が飛び出て、彼女を貫き両断した。
シド 「思えば───お前に向けて技を使ったことなどなかったな」
だからこそ。
反応など出来る筈もなく、悲鳴も出さないままに、ヒルダは塵と化した。
……悲しむことはなにもない。
慟哭など、彼女を失った時に喉が枯れ、血を吐いてまで出し切った。
そして……これで終わりだ。
もはや悲しむことなどなにもないのだ。
……さて。
勘違いをしている小僧に、世の厳しさを教えてやりにいこう。
今、ヌシがやっていることは、ヌシが偉いのではなく機械が偉いだけなのだと。
意識を乗っ取られているのなら、それを破壊した上で骨の一本や二本、覚悟してもらう。
───だが、まあ。
悲しむことはなくても、多少の感謝はしようと思えたのは……
形はどうあれ、決別をすることが出来た故なのだろう。
そんなことに苦笑しながら、走り出す。
もはや心のどこかにあった迷いなど、一切なくなっていた。
───ズキンッ……
シド 「ウ、ヌ……?」
だが、この体に走る痛みはなんだろう。
ヒルダの塵を浴びた時、己の体の中で何かが消えたのを感じた。
これは───
シド 「………………フ、ククッ……そうか。ふははははっ!そうか!そういうことか!」
レイナートめ、やってくれる。
ヤツめ、ワシがヒルダを躊躇なく殺してみせることを予測していたのだ。
───消えたのは不死の呪いだった。
大方デスゲイズの研究でも進め、解呪法を得たのだろう。
この痛みは今まで負ってきた傷の名残か。
シド 「感謝するぞ、レイナート。これで……逝ける」
ヒルダにその役目をさせるとは、どれほど芯が曲がっているのか。
だがそれでもいい。
いい加減、生きるのも疲れた。
争いの絶えぬこの世界だ、生きているだけでも巻き込まれ、
望まずとも死を見せ付けられる。
ああ、まったく……なにを間違えてこんな世界を生きてきたのか。
己の生き方に後悔はなくとも、世界の在り方を悔やむことは幾度とあるこの世界で。
どうやら自分は、ようやく死ぬ権利を得られたらしい。
そう、自分はずっと死にたかった。
いっそここから飛び降りて死ぬのもいいとも思ったくらいだ。
だが、そんな無駄な死に方はしない。
せっかくの命だ……レイナートでも道連れにしてやるのもいいだろう。
【ケース744:弦月彰利/7とフォーティーフォーソニック】
ゴコォッキィインッ!!!
…………ドサッ。
彰利 「あ……が……」
勝負は一瞬でついた。
耳だけではない、体全体に突き抜ける衝撃が“俺”を壊す。
体が闇になって崩れた時と同じ感覚が、今度は痛みとなって襲い掛かる。
……一回だ。
たった一度だけ声を発せられただけで、この有様。
歌とは呼べない音波攻撃をぶつけられ、俺は動けずに地面に倒れた。
ミク 『……お許しください。これもマスターを守るが故。
歌を、こんなことに使うのはひどい行為だとは解っていますが───』
状況確認を怠らないためにも一番に治した鼓膜が、音を拾ってゆく。
聞こえるのは懺悔だろうか。
ツーテールではなく、ストレートの髪に修道服のベールを被ったミクが、
胸の前で手を握り合わせ、俺の横に跪いていた。
……確認したかった悠介の無事も、
倒れ伏しているというだけで、死んではいないいことがわかった。
にしたって、こいつの歌声は危険だ。
勝てる気がしないと本気で思う。
だがやらねばならん時が……人間にはあるのよ。
男か女かなんてのはそこには関係ねぇ。
とにかく───ゴシャーーーーアーーーーーーーッ!!!…………スタッ。
中井出「やあ」
ミク 『───』
中井出が現れた。
剣に乗って、それをサーフボードにするかのように、だけど颯爽と。
その小脇には岡田くんが抱えられていた。
ミク 『…………大魔王、ヒロミツ───とお見受けします。お会いできて光栄です』
中井出「え?あ、はい、これはどうもご丁寧に……うん僕博光」
岡田 「岡田です、どうも」
小脇に抱えられた岡田くんが中井出の手から逃れ、よいしょと柔軟運動をする。
……つーか緊張感ないねキミら。アタイが言えた義理じゃねーけどさ。
中井出「ところであのー、丁寧なミクに会えたのは大変喜ばしいのですがあのー……
………………何故修道服?」
ミク 『この地下世界はわたしたち初音ミクの住まいです。
それぞれのミクがそれぞれの役目を担い、生活をしています。
……とはいえ、製造されたミクはまだ数体。人口など数えられる程度ですが』
岡田 「わあ……。ちなみに俺はナースが好きだ」
中井出「いやあの……誰も訊いてないからね?」
ミク 『……では問いましょう。ここに、どういった用があっての来訪ですか?』
中井出「世界征服したいから機械全部僕に頂戴?」
岡田 「えぇええええーーーーーーーっ!!?
いやちょっ……レイナート討伐に来たんじゃなかったのか!?」
中井出「いや、くれるんだったら無力化も狙えるんじゃないかな〜って」
ミク 『…………つまり、敵、ということでよろしいでしょうか』
岡田 「え?あ、いや……」
中井出「そうだ《どーーーん!!》」
岡田 「おわぁ言い切ったぁああーーーーーっ!!」
ミク 『そうですか。では《ザゴシャォオンッ!!》───』
…………へ?
あ、あれ……?
中井出「グオッフォフォ……貴様が歌唱型のミクだということは晦から聞かされ済みよ。
耳潰れてるようで、こっちの言葉には全然返事なかったけどね?」
岡田 「というわけで喉……潰させてもらったぜ?卑怯とは言うまいね」
ミク 『……、……!』
見れば、ミクの喉は強い力で裂かれたように切断のあとがあった。
……に、したって全然見えなかった───って……あれ?
あ、あれ?目ェおかしいのかな……。
岡田くんの手に、なにか銀色っぽいものが……。
岡田 「では張り切ってまいりましょう!!───《キィン……》エースインザフォール」
呟いた瞬間、光が無数の鞭状の軌跡となって瞬いた。
ヂャガァアガガガガフィィインッ!!!!
岡田の武器の固有奥義、ダンシングソードだ。
それが早撃ち、エースインザフォールで放たれ、ミクを刻んでゆく。
だがそれは既にガード体勢に入っていたミクの硬い手に受け止められボゴォ!
ミク 『……?』
いや。
もう、そんなものが通用するレベルじゃない。
ミクの手は、比較的ヤワいであろう関節ごとにバラバラに刻まれ、吹き飛んでいた。
それを不思議そうに見てしまった時点で───一度ではなく、
幾度も放たれるエースインザフォールの波に飲まれ、
最後にはソレがなんであったのかも解らないくらいにコナゴナにされ、爆発した。
岡田 「ハァッ!ざっとこんなもんっ!」
ビシィとキメポーズを取る岡田を見て、もう確信していた。
あの手の銀は、銀の手なのだと。
閃士としての彼に足りなかった唯一。
それが揃った今、彼の早撃ちはもはや最大の武器。
鞘に収めずに居合いよりも速い撃を繰り出す技は、まさに芸術とも言える業。
中井出「さあヒヨッコども!立ち上がるのだ!敵はもう居ないんだから、
自然回復で回復しているのはちゃーーんと解ってるんだからね!?」
彰利 「んがぎぎ……!!ぬ、ぬふぅ……!ちょいと中井出!?どうなってんのこれ!」
中井出「まあまあ。まずは───えーと……これだけ広いなら大丈夫だよね。よし。
姿を現せ()!エーテルアロワノン!」
彰利 「ホエ?」
ドォッゴォオオオオオオオオンッ!!!
彰利 「ヒアーーーーーーッ!!?」
悠介 「うおぉわぁあーーーーーーーっ!!?」
中井出が!中井出が腕から自然要塞を召喚しおった!
え!?なに!?どうなってんのコレェ!
つーか悠介もう大丈夫なん?
中井出「問答は無用!さあ、準備はしてあるから猫たちに武具を強化してもらいなさい!
素材はホレ!ここにあるから!メカパーツで強化すりゃあ、
メカキラーの特殊スキルが付くから普通に攻撃効くようになるぜ!」
彰利 「マジアルか!?」
中井出「で、晦にはコレね。オズに月の欠片を作れるだけ作ってもらった。
これで結構埋まると思うから思う存分役立てておくれ?」
悠介 「おっ……おおお!サンキューサー!」
中井出「キッチンアイルーに料理も作ってもらってあるから、
武器鍛えてもらってる内に精神を回復させとくように!
───よっしゃあ行くぞ岡田くん!」
岡田 「おお!マシンどもがなんぼのもんじゃーーーい!!」
中井出「あ、武器強化も食事も終わったら、エーテルアロワノンから出てからtellしてね?
霊章転移で回収するから」
悠介 「サーイェッサー!!」
彰利 「サンキューサー!!」
それだけを平凡に伝えると、中井出は岡田くんとともに屋上を飛び降り、
クリスタルの階段が続く先へと走っていった。
彰利 「や……なんだろねぇ。中井出と係わってるとどんどん強くなる」
悠介 「それだけそういう状況に恵まれてるってことだろ?
武具強化に長けた亜人族が仲間に居るっていうのは、相当に心強いと思う」
彰利 「ンム」
話もそこそこに、アタイたちは自然要塞へと駆け込み、
旦那さんのお願いだからニャと、
しっかりと武器防具を強化してくれる亜人族に感謝しつつ、
用意してもらったメシを食って精神安定を図った。
そんなことをしとりゃあ当然ルナっちたちに追いつくのも遅れるし、
メカキラーのない彼女らめがどれほど苦労するから、
アタイらの比じゃあねぇことはよく解っていた。
けど焦ることはしなかったのは、
結局……中井出と岡田くんがなんとか保たせてくれるって信じてるから、なんかねぇ。
……そんなことをしみじみ考えながら、気を抜いていたのが悪かったんだろう。
この領域に侵入者が居たことに、俺も悠介も気づけなかったのだ。
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