───冒険の書305/最終兵器───
【ケース763:中井出博光/幕間劇1】
フィンッ───ギシャゴバァアアォオオンッ!!!!
ガガンッ……ゴシャンッ!ガランガランッ!!!
中井出「はぁっ!ざっとこんなもんっ!!」
黄竜剣で破壊したジェノサイドハート(機械神バロール)に見向きもせず、次へと走る。
敵が同じなら破壊しやすい部位を覚えるのも楽だ。
だから、最初を抜かしてほぼバロールを怖い怖いと念じて、
出てくるジェノサイドハートにとことんまでにバロールの姿で出現させる。
出たら頭部にギガブレイクか黄竜剣で一閃破壊。
ジークフリードのメカキラーが本日も光って唸る!
……うん、それはいいんだけどね?なんか俺、集中的に狙われてない?
今のヤツなんか、出会い頭にカーネイジだったよ?
放たれる前に全力黄竜剣で仕留めたけど。
……っと、マグニファイが続いてるうちに次だ次!
これでもうストック2個目だけど、カーネイジだけはくらいたくないから仕方ない。
全力で、なにかやられる前に仕留めないとこっちがコロがされる。
中井出「とはいえ……」
そろそろ“想いの力”も尽きかけている。
霊章や武具に存在するみんなから、
少しずつ想いの力を貰って破壊力に変えているからこそのワンターンキルだが、
そろそろ剣に篭る光が薄くなってきた。
だが負けん!みんなには休んでもらって、あとは俺が!
…………な、なんとか出来る……よね?
くそう心が弱い僕を許して!
こういう時って虚勢でもいいから勝てるって言えばいいのかなぁ!
ええい構わん!失くすものなどまだまだ沢山あるが、今はないと言っておこう!
カーネイジを撃たれる前に破壊!これでOK!出来るものならだが!
中井出「想いの力───休養!代わりに霊章の中から、
煮込みすぎて溢れ出る煮汁の如く湧き上がるマナを力に変換!」
───した途端に、バーチャルシフトが始まった。
どうやらまた来たらし……あれ?
中井出「えっとあのー……」
目をこしこしとこする。
……意味がなかった。
あのー、どうして僕の目の前に、最終防衛システムがいっぱい……。
か、軽く見積もっても10以上居るよね?
え?あれ?女神は?女神はどこ?はにわは?ハニワは何処!?七支刀は!?
いっ……今すぐ女神10人以上と出会いたい!
中井出「ちっ……ちくしょおおおおおおおっ!!!」
結局シリアスになんていけない僕が居た。
ようこそ筋肉痛!ともに白髪の生えるまで!
中井出「ドォオオオゥラゴンインストォオオオオオオゥル!!!」
本日のお題。
人は3分間でどれだけのジェノサイドハートを破壊出来るのか。
気、引き締めないとな……うん。
そんなことを思いながら、マグニファイから始まる人器関連能力を余すことなく使い、
いっそこの都市を破壊する気で暴れ出したのでした。
もちろん近づくのもめんどいから、1万以下略閃でのレイジングギガフレアの乱射で。
中井出「力を分散させて一気に叩くつもりだったんだろうが、
火力だけなら負けはしない…………博光です」
脱ぎませんよ?ええ脱ぎませんとも。
剣振り回しながら脱げるわけが──────…………いや。
べ、べつにオモシロそうだとか思ってないんだからねっ!?
などと顔を赤らめている場合ではなく。
面倒と言いながらも音速で移動して、接近するや黄竜剣で防衛システムを破壊する。
相手が大きいこともあってか、一撃じゃ破壊しきれないところは、
後を追う剣の閃きが破壊し尽くしてくれる。
一撃の動作が終わる頃には防衛システムも俺を狙って照準を合わせてくるが、
その頃にはもう振り向きザマのレイジングギガフレアで、相手の破壊は済んでいた。
それを確認するより速く、音速烈風で地面を蹴り、
擦れ違いザマの黄竜一閃剣で、俺を狙っていたシステムのレーザー砲を切断。
続く連閃がボディを切り刻んでゆくと、その防衛システムも爆発を起こして消える。
中井出「速く、速く───もっと……!」
バーチャルシフトが続いている今しかない。
メインルームに戻られたら、この数だ───避けれる自信が全く無い。
……っ……いや待て、なんかおかしくないか?
結構な勢いで破壊してる筈なのに、一向に敵の数が減った気がしない。
烈風脚で撹乱してるから攻撃は来ないが、それでもこの数は異様だ。
どうして───
声 『おのれ、忌々しい───!
魔王博光、やはりキサマは一番最初に殺しておくべきだった───!』
中井出「───!その、声は───」
聞き覚えのある声が耳に届いた。
これは───
中井出「政さんッ……!!」
声 『違う!!』
中井出「そこだ死ねぇええーーーーーっ!!!」
声が聞こえた方向へと、振り向きザマの横薙ぎレイジングギガフレア!!
鞭を振るうように放たれた極光レーザーは周囲の防衛システムを巻き込みながら滅ぼし、
やがて一体、色違いの防衛システムへと───ヴミンッ!!
中井出「なにっ!?浮いた……だと!?」
声 『ふははははは《ザゴゴゴゴゴゴゴゴゴシャザギャシャゴヴァアアン!!》───』
浮いた瞬間にオールエジェクトギミックを発動。
一瞬にして中空のレイナートAI搭載のシステムを囲うと、
容赦のひと欠片も見せずにハリセンボンの如く突き刺し続け、やがて破壊した。
えーとなんかすまん!時間ないから御託聞いてる暇なんてないんだわ!
と思ったら、残る一体がゴシャンと色を変え、俺目掛けて突撃を───!
声 『キサマ───私は帝王だぞ!帝王が話そうとしているのに───』
中井出「滅殺()ァーーーーーーツ!!!」
ゾッ───ゴバシャォゥンッ!!!
声 『ギ───』
ガゴ、ンッ……どぉっがぁあああああああんっ!!!
中井出「……葬竜剣」
突撃してきた最終防衛システム目掛けて俺も疾駆し、擦れ違いザマに葬竜奥義を一閃。
横一文字、真っ二つに斬られた防衛システムはしばらく空を飛び、
離れた位置の地面で数度跳ねると、耳を劈く音を出して爆発した。
それを合図にするかのようにバーチャルシフトは解け、
俺を包んでいた自分強化の能力も自然と消える。
中井出「……はぁ」
見上げてみれば、片手で数えられる分を残して、全てが砂嵐になった映像があった。
あとは───岡田たちと悠黄奈さんたちと……アルビノ?来てたのか、あいつ。
連れはミク……何故?
ああ、まあいいや。
とりあえず筋肉痛の心配はなくなったわけだし、他のやつらの援護に……いや。
中井出「………」
向かうなら“核”だ。
多分、“レイナート”はそこで俺達を見てる。
中井出「ストックは残り三本か。
マグニファイが二つと……ワールドデストロイヤーが一つ……よしっ!」
突っ走る!目的に向かって真っ直ぐGO!だ!
核は───上の方だったな!よし!
螺旋階段から見下ろして見れる場所にあったんだ───そう遠くない!
遠く───………………しまった走れない!
飛ばないと届かない!これは盲点!突っ走るって決めたばっかだったのに!
少し前に見つけた螺旋階段使えば走れるけど、勢いには乗れない気がする!
なんて言葉のアヤを捜してないでとにかくGO!!
ゴ…………ゴー………………ああもう!!
中井出「解ってんのかよ俺!もうみんな忘れちまったんだぞ!?
俺なんてただの魔王でしかなくて、邪魔者で、…………悪で…………」
…………。
中井出「……貫くって…………決めたんだもんな……」
ばーさんはあの日、大切な人と出会ったら、
その人に全てを見せて、悪であることなんて忘れればいいって言った。
でもそれじゃあ、過去を忘れるのと同じで───いや、違うか。
過去は、その大切な相手が受け止めてくれている。
だから悪であることなんてやめればいい、なんて言ったんだ。
けど……じゃあ、受け止めてくれる人が居なくなった俺は、どうしたらいい?
そう、胸に手を当てて考えてみた。
……答えは、すぐそこにあったみたいにあっさりと出た。
そうさ、みんなが俺を忘れても、俺が忘れられることを望んでも、
彼らが俺の“かけがえのない仲間”であった過去は変わらない。
そんなやつらを本当に裏切って、
自分の道だけ選ぶことなんて、俺の中の悪は頷いてくれなかったんだ。
だから。
世界平和のためなんていう意味での、世界中のみんなの期待を裏切って、
俺はみんなの平和を選んで加勢する。
世界がどうなろうと知ったことじゃない。
後回しにすることで、レイナートがミサイルでも撃ったりして、
どっかの村がコナゴナになりました〜とか、そんなこと言われたって知らない。
俺は俺がなりたい悪になる。
伝え聞いた話じゃ、機械文明についていけない貧民のみんなは魔王に期待したっていう。
帝王レイナートをなんとかして、
苦しくても同じ“人”からの圧力がそうなかった時代をもう一度、と。
……そんなものは勝手な期待で、俺の悪にはなんの関係もない。
勝手な期待を裏切ることは間違いじゃないし、間違っていても俺はいいと思える。
思えるから、笑える。
中井出「《ゴコォオッフィィイインッ!!》───一発で沈めてやるよォオオ……!!」
キャリバーを解放する。
合わせるのは闇と元素。
双剣に属性を込めて、長剣にして、
さらにギガノタウロスの斧を主体に、体をゆっくりと捻ってゆく。
キツイところまで溜めて、それでも溜めて、なお溜めて───!!
やがてギガノタウロスの斧に走る無数の回路が赤い光で満たされ、
その光が閃光となって斧から放たれるほど密度が高まった時!!
バシュンッ!
俺の体はバルバトスのソレに変わり、
バルバトス『覚悟はァア……出来たかァア……!?』
かつてフリーズドラゴンにやった時のように、勢いよく斧を───振り下ろす!!
バルバトス『ワァアルドデストゥォルォィヤァアアアアッ!!!』
周りに敵なんて居ない。
いや、居ないのは当然だ。
そうと解っててやったのだから。
じゃあなにを目的として放ったのか。
それはギバシャドンガガガァッシャアンッ!!!!
岡田 「…………うおぉうわぁえぁあっ!!?」
?? 『───なんだこりゃ、急に景色が……───あっ!魔王てめぇ!』
アルビノ「はっ、はぁっ……な、なんだ……?
なにがどうなって……や、だめ……酸素が……
酸素がたりなっ……ぜひっ……はぁ……!」
悠黄奈 「あ───博光さん!」
そう、敵なんて狙っていない。
ただこの場に構築されていた“バーチャルシフト”っていう仮想世界を破壊した。
結果、閉じ込められていた全員がこの場に揃い、
揃いも揃って僕を見て様々な表情をしていた。
破壊が終わった瞬間にはバルバトスだった姿も元の俺に戻り、
そんな俺を見るなり“てめぇ”呼ばわりした誰かが………………誰?まあいいや。
中井出「グヘヘハハハハ……!!
愚かなる人間どもよ……この程度で音をあげてもらっては困るな……!
いずれこの魔王に挑もうとする者が……あれ?───しまった人間俺だけだ!」
岡田 「なんだとてめぇ!そりゃ俺たちが人間じゃないってことか!」
中井出「うるせーーーっ!!
人間が武具の加護なしに空飛んだり魔法使えたりするもんかーーーっ!!
貴様らどうせあれだろ!回路使って魔法使えたりとか出来るんだろ!
う、うらやましくなんかないんだからねっ!?《ポッ》」
岡田 「顔赤らめんなぁあああ!!どうしてここでツンデレだよ!!」
中井出「寿司と富士山と芸者とツンデレとポニーテールは国家財産なんだよ!
でもそこまで言うならそこに消えちまった朝倉を入れてもいい!!」
岡田 「朝倉関係ねぇ!心底関係ねぇ!!」
中井出「そんなわけだからキサマら!さっさと上に行け!!
残ったハート様たちは俺が破壊しとくから!」
空間破壊は完了した。
が、それはそれだけの数、ジェノサイドハートを野放しにするのと同じだ。
ここで手間取ってても埒もないなら、いっそ俺が引き受けて一気に殲滅すれば早い!!
藍田 『いきなり出てきてなんだコノヤロー!』
中井出「博光である!《どーーーん!!》」
藍田 『いや名前訊いてるんじゃなくて!』
中井出「うむ!やはり将軍が居るだけでも口調に棘がないのはいいことだ!
俺を忘れるよりも彰利を将軍にしたのは間違いなどではなかった!
でも気になるので一つだけ。……敵が現れました!相手は女だ!どうする!?」
藍田 『女に乱暴できるわけないだろが!無力化を狙う!!』
中井出「やっぱりだよこのクズめらが!!
親御さんの所為で女に暴力振るうのは嫌だろうなぁと思ってたよ彰利大将軍め!
つーことは原メイツは女に手を上げられん者たちの楽園かくそう!
ええいもういい!もういいわ!さっさとお行き!!
敵全部請け負うって言っとんのじゃーーーっ!!
目的遂行だけを考えて行動しろ!
敵はノヴァルシオの核があった場所に居るに違いない!
そこのところはもう伯に頼んで調査しに行ってもらってるから!」
それが、俺がやっておきたかったことだ。
都市探索っていうよりは、伯探索。
彼はプレイヤーじゃないから、tellを持ってなかった故でございます。
中井出「あ、ちなみにあっちの壁際に螺旋階段があるから、上るときはそれをどうぞ」
岡田 「じゃあ任せた!」
藍田 『全部お前に任せた!』
?? 『取り返しはつかねーぞ!』
中井出「迷いもしないよこいつら!だが承ろう!!貴様らの背中……俺が預かった!!」
悠黄奈「それではわたしが博光さんの背中を預かりますね」
閏璃 「なにぃ、じゃあ俺の背中は伯に任せよう」
レイル「ここに居ないヤツに任せてどうすんだ」
中井出「ていうか……あれ?悠黄奈さんはともかく、何故キミたちが僕の傍に?」
閏璃 「フフフ、それはな───あの“ミッション:まさかなぁ”が成功したからさ!!」
中井出「性交!?」
レイル「死んでしまえ」
中井出「真顔で死ねとな!?」
ほんの冗談が状況を悪くすること……よくありますね。
今日はそんなことを教訓に、頑張っていこうと思います。
中井出「僕を……こんな僕を覚えていてくれた人が居たなんて……!!
じゃあご一緒に上へどうぞ」
閏璃 「覚えてる事実とまったくもって関係ない返答だな」
レイル「普通こういう時って一緒に戦おうとかそういう気の利いた言葉が出るだろ」
中井出「で、ミツ=ショーンくんとマ=サカナァさんが性交したってホント?」
悠黄奈「真面目にやってください」
中井出「ご、ごめんなさい」
真顔で怒られてしまった。
ていうか振り返りもせずあっさり上への向かってしまわれたかつての仲間の反応に、
僕は嬉しがるべきか悲しむべきか。
悠黄奈 「とにかく。わたしと閏璃さんとレイルさんはあなたのことを覚えています。
他の方たちはみんな忘れてしまったようですけど───」
フレイア『ねえ。なんか素でわたしのこと無視してない?』
悠黄奈 「強い方は今すぐ上に行ってレイナート討伐でもしててください」
閏璃 「行ってこい提督!!」
中井出 「任せとけ!!」
レイル 「お前が行ったら意味ないだろが!!確かにお前強いけどさ!
このジェノサイドハートとかいうの一掃してくれるんだろ!?」
中井出 「い、一掃だけに……イッツソー!!」
レイル 「意味も解ってないのにとりあえずノリで返事するのやめなさい!
頭の悪い高校生みたいに思われるでしょ!?」
悠黄奈 「レイルさん、口調がおかあさんになってますよ」
閏璃 「一昔前、やたらと中ニ病という言葉が飛び交ったが───
そんなものは自分の感性は正常だと思いたいヤツが、
ちょっといきすぎなヤツを見下したいがために使い始めた言葉らしいぞ」
悠黄奈 「閏璃さん、“そんなものは”で始めてる時点でウソ丸出しです」
閏璃 「タバコも吸わないのに急にジッポライターを持ち始めて、
暇さえあればそれを人の目の前でいじってた誰かさんが心底鬱陶しかったり」
中井出 「仕方ないからライター関連の話すると、
訊いてもいないのにライターの値段を自慢げに語ったり、
ヤケにお前も買えよとか進めてきたり」
閏璃 「目の前でシャッコンシャッコン開いたり閉じたりして、
漫画の渋いキャラがやるようにカッコイイライターのつけ方に偶然成功すると、
なんかすげぇニヤニヤ顔でこっち見てくるんだよね」
フレイア『ああ。で、奨められたから買ったりすると、俺の真似だとか吠えたり、
価値も解らんのに知ったかぶって“ソレダッセェエヨ”って言うのね』
総員 『オウイェアァアアアッ!!!』
悠黄奈 「あの!?解ってますか!?馬鹿話してる間に囲まれてますよ!?」
中井出 「解ってるさ!ほんとに凄いのは、
それを解っていてもやり続ける人だってことくらい!」
悠黄奈 「今の状況を解ってくださいぃいいいいいっ!!!」
大丈夫!囲まれているのも作戦のうちさ!
脳内のだから、なんの解決作もないけど!
閏璃 「───……みんな、俺の話を聞いてくれ」
レイル「!───閏璃……?」
閏璃 「…………その他にもさ、やけに世界に対して酷評、っていうのもあるよな」
レイル「中二病の話はもういい!!」
閏璃 「評価とイチャモンの区別もつけられん理想脳の塊が一丁前になにをほざくか。
そういうヤツが物語を作ったら、
きっと“この作品の良さは低俗野郎には解らんのさグベヘハハ”とか言うんだ」
レイル「その笑い声だけでそいつが普通じゃないのがよく解った」
中井出「………」
レイル「そこで居心地悪そうにするなよ!確かに提督さんも笑い方とか怖いけど!!」
閏璃 「ちなみに俺の周りでは、
中学校高学年頃にもなるとジャンプを卒業するとか言う者が増えた。
しかし俺は少年ジャンプを見続けて、
周りはまだそんなの読んでるのかよと笑ったものさ」
中井出「そんな彼らに僕は言ってやったんです。……俺が見たい漫画は俺が選ぶと」
総員 『ヒャッハァーーーッ!おっとなぁーーーっ!!』
悠黄奈「………」
悠黄奈さんがジェノサイドハートの中心で絶望を叫んだ気がした瞬間だった。
中井出「無理して背伸びして、面白くもないもの見てどうしますか!
ガキだなんだと言われようが面白いものを見て!
中ニ病だなんだと言われようがスタンスなど変えはしない!
大体僕は僕のまま大人になった僕なのだから、
そのスタンスが周りに中二病だと言われても痛くも痒くもないわ……俺は俺だ!
面白ければそれでいい!周りに否定されてやめてしまうくらいなら、
中途半端に自分じゃない自分なぞ演じるでないわ!
そんなものはある日の不良クンが雨の日に、
子犬エサをやって傘を傾けるくらいで十分じゃい!!」
閏璃 「おお!思わず少女が惚れてしまいそうな漫画ネタ!」
中井出「まあでも基本不良なので将来性がないから惚れられるわけないんですけどね」
レイル「冷静にブチ壊した!なにやりたいんだこいつ!」
中井出「女子に惚れられて付き合ってハッピーエンドなんて漫画やゲームの中だけで、
本当はそれからシャブ漬けの世界とかデキちゃったトラブルとか満載!
ア、アナタの子よ……!ハァ?堕せよメンドクセェ。
───ハイ!男としてクズ野郎!!甲斐性以前の問題ですクズ野郎!クズ野郎!」
レイル「確かにクズ野郎だけどそこまで何度も言うなよ!」
中井出「男ならよォ……男なら、漢を目指して生きるべきだろうがよォ……。
己が惚れた女ァ泣かすヤツなんざぁ一生男よ。
それ以前に好きでもない女性を快楽のために抱くとか有り得ん。
普通に滅べ男ども。女を泣かすヤツは男。女を守るヤツは漢。
女を守り、ファミリーまで面倒見るモノが侠。そんなオトコにキミはなれ!!」
閏璃 「断る」
レイル「俺がなりたいものは俺が決める」
中井出「卒業だ」
悠黄奈「あの……もうなんでもいいですから戦ってください……」
中井出「よし解った!ここは任せて───ゆけ!」
総員 『サーイェッサー!!』
中井出「うぐっ……!も、もうサーじゃないから!サーじゃないから行って!」
そう……そうさ!この博光は既にただの博光よ!
彰利に全てを託した今、一人の人間としてこの世界を楽しみとうございます!
……なんで昔風に言ったんだ!?俺!
閏璃 「いいや。あんたはサーだ。提督だ。過程はどうあれ、俺はあんたの号令が好きで、
あんたの無茶さ加減も好きだ。
だから気に入ることが出来たし───提督さん、って呼び始めた。
そこに、原中の歴史はそう関係してないし、周りの意思も関係ない。
俺は原中じゃないからあんたが提督だった事実は伝え聞いただけのことで、
後から知った事実だとしてもこの呼び方が好きなんだ。
誰にも迷惑はかけない。だから、誰にも文句は言わせない。あんただって同じだ」
中井出「…………《ぐっ……》うおっ!?」
ば、馬鹿な!涙!?この博光が、涙だと!?
閏璃 「……お?泣いた?今ジンときた?」
中井出「目から水が…………これが……涙…………?」
閏璃 「ぬおお!?せっかくの感動シーンをどこぞのヒロイン的反応でぶち壊した!」
中井出「ふはは馬鹿め!泣いた?と訊いてきた時点で既にB級よ!
“感動に確認は不要”!これはどの物語にも現実にも暗黙の了解よ!
感動話のあとに“どうだった?”と訊ねるうつけものどもに口チャックを!」
閏璃 「口チャックって!また随分と古い表現だな!」
中井出「しっ……仕方ないでしょ僕もう随分前に地界離れたんだから!!
いいから《ヂバチャアッ!》げがぁっ!?───っ……いいから……行け……!」
閏璃 「───!……わ、悪い!足引っ張ることだけはしないつもりだったのに……!」
今更不意打ちもないものだが、脇腹にレールガンをぶちかまされた俺は、
痛みに体を庇いながらも閏璃たちを先へと促した。
閏璃は本気ですまなそうな顔をして謝ると、レイル氏たちを促して走り出す。
……飄々としてるだけかと思ってた。
ちゃんと本気で悪いって思ったら、謝れるヤツだったんだな……。
中井出「そうだ……ちゃんと走ってくれよ……」
走ってゆく背中たちを眺めながら、足にマナを集め、
振り上げてから一気に地面を踏み潰す感じに叩き落す。
途端、彼ら彼女らが走る道一直線を囲むように、大木の道が床を突き破って生えてゆく。
押し上げられたプログラムたちは無視だ。
通路に一体残ったヤツはフレイアさんが鎌で削り飛ばし、
ひとまずはそれで抜けられたようだった。
すぐにプログラムたちが追おうとするが、
中井出「重力100倍!!」
メゴォッシャァアアッ!!!
場の重力を100倍にすることで潰し、追撃を無理矢理阻止する。
中井出「無駄だ無駄無駄ウィイイッヒッヒッヒッヒ……!!この博光が居る限り、
貴様らがやつらを追うことなぞ叶わんわグオッフォフォ……!!」
さあ……!核のレイナートにも届くほどの地獄以上の恐怖を見せてあげよう!
……地獄がどんなとこか、詳しくなんて知らないけどね。
は〜あ……ヤキが回ったなぁ……。
誰かを行かせるために敵を請け負うなんてこと、絶対にしたくなかった筈なのに。
中井出「最初に言っておく!俺はカメムシ相手に全力を出す男だ!
相手が誰だろうが全力解放!そしてようこそ10分後の世界!
ジャスト10分───武器はしっかり二刀流!!」
よし潰そう!
今の僕にはそれが出来る!
俺が夢見る未来へと!ただひたすらに突っ走れ!!
【ケース764:朧弦/幕間劇2】
カンカンカンカンッ───ズザァッ!!
朧弦 『伯!!』
シド 「───……誰だ」
朧弦 『アルェ!?いや、俺だよ俺!小学ン時同級生だったブスジマ=ドブス!!』
シド 「余計に誰だ!!───チィ、もはや猶予もない!
おいお前!よく解らんが敵ではないなら手伝え!レイナートが覚醒する!!」
朧弦 『覚醒!?』
いきなりだが意味が解らん!
解らんが───階段を上った先の通路、
その広間に存在する核のデカさと、神経で感じる肌を断続的に弾くような気配は異様だ。
この中にレイナートが居るっていうなら、その力の量は計り知れない。
朧弦 『どうすりゃいい!』
シド 「完全に覚醒する前に破壊するのみだ!全力で攻撃し続ける!いいか!全力でだ!」
朧弦 『解った!』
広間の中心に存在する金色の球体は、まるでなにかの卵のように脈動している。
核、ではなく、核であったものとして、なにかを生み出そうとしているのか。
いや、自問なんてあとだ。
俺は即座に伯とともに攻撃を開始しながら、遅れてきたやつらに対処を説いた。
藍田 『全力でっつったって───デケェなおい!!』
岡田 「なんつーんだえーっと!子供の頃に頭の中に描いてた太陽のデカさ!?」
アルビノ「いや、違うな。これは南方に生息するといわれる巨大種、
オオツボエノキガエルフロッグゲロゲロモドキの卵のデカさだ」
二人 『こんなん産んで裂けたりしないの!?』
アルビノ「ウソだ」
藍田 『今すぐ木琴マレットで殴りたくなるような返答をありがとう』
岡田 「ていうかそれだけどこぞのカエルらしい名前なのに最後がモドキなのが疑問だ」
朧弦 『喋りながら攻撃してるのは見事だけど集中しろぉおおっ!!』
藍田 『どんな時でも楽しむ心は忘れない!』
岡田 「それが俺達原メイツ!」
アルビノ「ていうかお前誰だ?」
セレス 『───《ハッ!》あ、あなたは───!』
藍田 『!?……し、知っているのか雷電……!』
セレス 『しょっ……小学生の時同級生だったブスジマ=ドブスさんっ……!!』
朧弦 『《カァア……!》それはもういい!!
聞こえてたからって今ここで言うなぁああっ!!』
セレス 『だったら真面目にやってください』
藍田 『そうだこのドブス』
岡田 「シャキっとしろよドブス」
朧弦 『ぎぃいいいいいい自分で名乗っておいてやたら腹立つ……!!!』
気を取り直して攻撃を繰り出す。
どんなものが通用するかを分析してみたが、
属性攻撃のことごとくは通用しないようだった。
さすがは“ノヴァルシオの核”だ。
それくらいじゃなきゃ、浮遊都市の核でなんていられない。
ゼノ 『反撃がないのならいい的だ!ふはははは切り刻んでくれる!!』
それは確かに、だ。
いくら攻撃をしても反撃らしい反撃はなく、
だが───なにか、違和感のようなものを感じてならない。
機械技術だろ?
それなのにどうして、こんな生き物の誕生みたいなことを……
ボギョオッ!
朧弦 『───!?』
ゼノ 『ぬ……!?』
散々と攻撃を加え、それが赤く光り始めた頃。
球体の内部でなにかが躍動し、内側から球体の膜を押し出した。
まるで卵からなにかが孵るように、球体が破れ始めたのだ。
シド 「……!覚醒するぞ!構えろ!」
朧弦 『───!あ、ああ!!』
そうだ、暢気に眺めてる場合じゃない!
これが破れるってことは、中の何かが目覚めるってことだ!
疑問なんて後回しだ!今は───
ゴシャァアアアアア…………ン……!!!
内側から壊れたこの核の中のモノをどうするかに集中するべきだ。
球体ははらりと紙細工のように割れ、
それとともにもうもうと冷気めいたものを放つ。
そのためハッキリとは見えないが、
球体だったものの中心になにか、人の姿めいたものが───!
中井出「天象…………降臨…………!!」
…………。
総員 『………』
……生まれた。
朧弦 『なにやってんだ魔王ォオオォおぉォオおオ!!?』
中井出「なにを……!?遊んでいるのだが!?」
朧弦 『堂々と言いやがった!おいお前!ジェノサイドハートは!?』
中井出「潰してきましたが?
それより騙されるな鉄郎!これはただの耐久力の高い囮よ!!」
朧弦 『潰っ……!?あれだけの数を───いやそれより囮!?
ええいなにに驚いていいやら!』
中井出「ではまずそこのレイナートをご覧ください」
朧弦 『レイナート!?───……伯じゃないか』
シド 「………」
そう、オルランドゥだ。
だがみんなの視線を受けた伯は、俯いたまま動こうとしない。
……そうか、違和感の正体。
それは核とは関係ないものだったけど、この伯は……俺のことを“お前”っていった。
ヌシ、ではなく。
しかもやたらと全力を出せと言って、まるで俺達の力の消費を願ったような───
アルビノ「ちょっと待った。……ニセモノはそっちだ」
朧弦 『アルビノ?』
中井出 「なに!?この博光がニセモノとな!?証拠は!証拠はあるのかね!?」
アルビノ「霊章がない。武具を持ってない。竜玉を持ってない。
俺の知る情報の中のどれにも当てはまらない。
そして───なにより“妙な繋がり”みたいなのを感じない」
中井出 「───………残念だが違うな」
アルビノ「なに……?」
中井出 「どちらもニセモノだ!!」
言うや、魔王の体と伯の体が爆発するように肥大化し、中空へと飛び上がると合体する!
それらは生き物のカタチをとっておらず、
やはりプログラムのようなカタチになると、一体の機械モンスターに変異した……!
その姿は……多少の違いはあれど、
先ほどまで戦っていた存在、ジェノサイドハートと酷似していた。
巨大だった姿は今や人間大の大きさにまで納まり、この広間の中心へと降り立つ。
声 『プログラム/ジェノサイドハート……完了。
貴様らの全力、全て覚えさせてもらったぞ』
藍田 『───っ……てめっ!最初からそれが目的で!!
じゃあここに行けって言ってた魔王は───!!』
声 『いいや、あいつは本物の魔王博光だ。
だが、やつがオルランドゥに話を持ちかけた時には、
既に私はこの都市と一つになりつつあった。
会話を聞き、オルランドゥを足止めし、
こうして騙すことなど軽く準備が出来たわ。
魔王は人を出し抜くことが好きだったからな、
ヤツの悔しがる姿が目に浮かぶ……!』
アルビノ「振り回されまくったのが相当悔しかったんだなぁ……」
声 『やっ……やかましい!!』
図星のようだった。
声 『先に言っておいたな。油断もせず全力でと。
そう、油断などしない。万全を以って、貴様らを打ち下す力を得る。
そのためにジェノサイドハートというプログラムを開発したのだ。
貴様らの苦手とするものをコピーし、
貴様らに力を出させ、その強度を覚えて力とする。
まんまと騙された貴様らの攻撃は、
もはや全力以上を以ってしなければ私には通用しないということよ!!』
朧弦 『実は俺は本気など出していなかった!』
声 『なんだと!?』
藍田 『実は俺もだ!』
岡田 「もちろん俺もだ!」
セレス 「ええ、わたしもです」
ゼノ 「もちろん我もだ」
アルビノ「出せと言われたからってホイホイ出すわけないじゃないかアホの子か貴様」
声 『ぐっ……貴様……!誰に口を利いている!誰のお陰で誕生出来たと───!』
アルビノ「古代技術と魔王の遺伝子のお陰でだ!貴様は一切関与してねー!」
ミク 『それについては同意見ですね。逆に、あなたがいったいなにをしたと?』
声 『くぐっ……!』
つくづく格好のつかん機械頼りの男だった。
まあ、ある日急に力を手に入れた男なんてこんなものなのかもしれない。
だから“力をつける”ってのには、地道の積み重ねが必要なんだよ。
アルビノ「でもさっきのオリジナルの真似は結構上手かったと思うぞ?
ここに入ってからのあいつを分析してたんだろうけど」
声 『───ああ。あいつの行動を逐一分析していた。お陰でいいデータが取れた。
だが解せん……ただの人間が何故あそこまで───』
アルビノ「御託はもういいだろう?
どのみちこの戦いはどっちがこの世界に残れるかを決める戦いだ」
声 『ほう……?死ぬのが怖くないのか?』
アルビノ「もらった命、似せられた人格、借り物の武器……
俺が誇れるものなんて何一つないのかもしれないけどな。
だったら俺はこの人生を誇ろう。
あいつはクローンの俺にも普通に接してくれた。
俺がホンモノだとかお前はニセモノだとか、そんなことはどうでもいいんだ。
……作られた、ってだけで下に見るようなお前には解らねぇ。
俺はあいつから作られたことを嬉しいとさえ思ってる」
声 『フン、クローン風情が粋がるな。いいだろう、望み通り殺してやろう。
そろそろオルランドゥがここに辿り着く頃だ。
まとめて滅ぼしてやる、かかってこい』
レイナートの声でそう聞こえると、今立っている空間が薄暗くなる。
それとともに───再び虚空に現れる映像の数々……!
声 『先ほどまでの数だけのプログラムだと思うな。もはや核は私とともにある。
この都市は私の意のまま───私は真の帝王になったのだ!!』
藍田 『その名も───』
岡田 「合衆国日本!!」
声 『違う!!貴様らどこまで私をおちょくれば───』
藍田 『強者が弱者を虐()げない!!』
岡田 「合ッ衆ゥウ国ニッポンポン!!」
藍田 『歴史の針を戻す愚を!』
岡田 「私はオカオカ犯さない!」
声 『ギィイイイ人の話を聞けぇええええええええっ!!!!』
朧弦 『言おう言おうと思ってたんだけどさ。お前って結構律儀だよな……』
無視されてもちゃんと話そうとしてるし。
けど、もう戦いは始まってる。
その証拠に、バーチャルシフトが始まった。
声 『ふざけたことを……!もういい……!
その悪ふざけごと、貴様ら全員を血祭りに上げてくれる……!
完全体になった今、能力をインプットして強化することは出来なくなったが……
貴様らなぞ今のこの力だけで十分よ。
さあ来るがいい!!私こそが核!
私こそが───最終兵器ジェノサイドハートだ!!』
岡田 「このリズムの良さが解らんとは……」
藍田 『だがしかし!やるって言うなら全力で破壊しよう!』
……もう、さっきまでのように楽にはいかない。
といっても石化されたりレールガン撃たれたりと、いい思い出はなかったわけだが。
だからこそどんなことにも対処できるよう、心構えだけは固めておこう。
さあ───戦闘、開始───!!
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