───冒険の書306/VSジェノサイドハート1───
【ケース765:双月朧弦/最終兵器1】
景色が完全に変わった。
今までのバーチャルシフトとはモノが違う。
プログラムの空間に投げ出されたような───彰利の記憶から抜き取るに、
バーチャロンで言うラスボスなどの仮想空間に飛ばされたような感覚だ。
果てもなく、感触以外は地面もないこの場所で、存在するのは0と1の文字の羅列と、
それがなにかを中心に回転を続けるというこの空間。
レイナートは今や0と1の羅列が作る顔だけの存在となり、
それはオズの顔のままに俺達を見ると、愉快そうに笑った。
オズ 『では始めよう。ルールは簡単だ。私の中にある核……小さな球体にしてあるコレ』
ズボ、と額に出現させたソレは、蒼に輝く光の球体だった。
オズ 『コレを破壊すればいいだけだ。いわば心臓。
これを破壊した時点で、“私”は終わる。……好きなだけ抗うといい』
まず聞こえたのはヴフィィイイイン……!という音。
辺りを見渡してみれば、それは0と1の羅列が回転する音。
バーチャルシフトとはよく言ったもんだ。
これはもう、世界創造の域に近い。
ゼノ 『ならば───いかせてもらうぞ遠慮なくッッ!!《ゴバァンッ!!》』
強風を受けて勢いよく広がった傘のように、瞬時に広がるゼノのマント。
武器である両手の鎌爪を鈍く輝かせると、マントに弾かれるように疾駆。
地面というものが見えないが、確かに足場が存在しているこの空間で、
感覚を狂わされることなく真っ直ぐにオズへと向かった。
次いで、セレスが疾駆し、岡田と藍田とアルビノは力を溜め始めた。
朧弦 『───』
俺は冷静に、だが心が熱くなるのを押さえずに分析をする。
だがレイナート……いや、オズの言葉に虚言はなく、
あいつの額の球体は確かにあいつ自身のコアだった。
朧弦 『……いや』
しかし、その構造が複雑すぎて分析しきれない。
いくら意識を深く沈めようが、結果は同じだった。
とどのつまり、アレは……古代技術の結晶。
核を限界まで圧縮し、ついには固形物という物質から脱し、
現象的な光となってそこに存在するもの、ということだ。
読みきれるのはそこまで───残りの読みきれない部分は、ただただ俺に不安を齎した。
朧弦 『とはいえ、やらないわけにはいかないよな───!』
遅れて疾駆。
武器としてレヴァルグリードに包まれた手でラグを構え、
皇竜の力を黒の雷としてラグに流してゆく。
竜の力に関しては、少なくとも彰利よりは悠介のほうが経験がある。
その経験を生かし、彰利の経験も上手く混ぜ込み、利用する。
朧弦 『ッ───シィイアァアアアアアアッ!!!』
速度重視の、それこそいつ倒れてもおかしくないほどの前傾姿勢で突っ走る!
走ってみて───近づこうとして解ったが、相手は常に移動をしていた。
景色もなく、見えるのはオズの顔と0と1の羅列。
景色全ては蒼と紫を混ぜたような色一色で、
オズの顔自体すら0と1の羅列であることも考えれば、全てはそれだけで形成されていた。
恐らく。
もしあの“蒼と紫の色”に近づけるのだとしたら、その色さえもが0と1の羅列。
そう思わせるなにかがここにあり、それ以外がここには無かった。
それを確認した頃、敵にアクションがあったようで、
ゼノが右五本の爪で黒の球体を引き裂いていた。
途端、それが爆発。
咄嗟にマントで爆風を吹き飛ばすと、ゼノはクッ……と口の端を持ち上げ、笑った。
まるで、おもしろい、とでも言うかのように。
朧弦 『はぁあっ!』
それを横目に、俺も斬りかかる。
黒雷を纏ったラグを振るい、まずは下方から。
跳躍は隙になるし、ヤツが言うように額の球体だけを狙ったところで、
分析の結果が全てと信じるのは少しまずい気がした。
弱点をさらすという行為は自殺行為に等しいが、
逆に“そこを狙えば勝てる”という概念を相手に送る。
送られた相手はといえば、馬鹿正直にどうしてもそこへと注意が集中してしまう。
送った相手は、だったらそこにトラップでも仕掛けておけばいいのだ。
確実に狙うであろうそこへ、ドデかいトラップを。
朧弦 『針が出ます!』
じゃあ試してみればいい。
掌に創造した小さな針を球体目掛けて投擲。
針は真っ直ぐ球体へと飛び、なにに邪魔されることもなく───突き刺さりはしなかった。
それはそうだ、固体としての概念が消えているのなら、
光を消すようななにかじゃなければ効果はない。
あの球体には物理攻撃は効かないと考えるべきだろう。
だったら
岡田 「インスタントブースターフルブースト!!
アァンドッ!ダンシングゥウッ───ソォオーーーードッ!!!《コキーン♪》
んでもってぇ!《ゴコォッキィン!!》ブレードパルサァアーーーーッ!!!」
ヒュゴギファァアィンッ!!!
朧弦 『うおぉっ!!?』
思考の途中で、力を溜め終わった岡田がアクションを起こす!
かなり離れてるっていうのに剣を振りかざし、一気に払うと───
離れた場所から様々な能力が付加された衝撃波が呆れるほどの速さで飛んで来……やべぇ!
朧弦 『みんな伏せろぉおおおっ!!』
総員 『へ?───ホワァアアアアアッ!!!?』
驚いた瞬間には伏せているのは流石の反応速度。
だがオズは顔の形のまま伏せることもせず、
肉眼でもくっきり確認出来るほどの衝撃波を球体に受け、
場を震わせるほどの悲鳴を上げた。
悲鳴といっても、女性があげるようなものとはまるで違う、重い悲鳴だが。
藍田 『おおナイス!岡───』
岡田 「《バヂィイイヂヂヂヂィインッ!!》づぁああああああっ!!!?」
そう、攻撃が当たった。
当たった瞬間に、予想通りだったことを喜ぶべきか───カウンター攻撃が発動。
岡田の足元に光の輪が現れ雷の光の柱を天に向かうほど高く放つと、
甲圧縮の雷が岡田を鋭く打ち付けた。
岡田 「あ……が……!!」
藍田 『岡田!』
岡田 「っ……他人の心配……すんな……!とっとと……いけ……!」
藍田 『───おう!それでこそ原メイツよ!』
体が痺れているのか、行動に移れない岡田をそのままに、
カタチの無い地面を蹴り弾いて瞬時に接近してきたのは藍田。
俺達のほぼが攻撃を連ねている中に突っ込んできて、勢いもそのままに
藍田 『悪魔風脚!“羊肉()ショットォッ”!!』
ドボォンッ!!と、プログラムの羅列を燃やし尽くしかねないほどの火力を以って攻撃!
だが藍田の体はそのままオズの体に埋まると、反対側へと飛び出てゆく。
藍田 『んなっ……!?どうなって───《ヂガァォンッ!!》ぐあぁあああっ!!?』
直後に落雷。
見えない地面に衝撃波が走り、地面での攻防を続けていた俺達の足場を揺らした。
オズ 『ふはははは……!!バーチャルシフトは景色のみを変える能力ではない。
弱点、通用する攻撃、属性───それらを変えることが出来るのだ。
皇帝竜カイザードラゴンの能力を知っているか?バリアチェンジという能力だ。
私が手に入れた能力の中にもそれがある。
これにバーチャルシフトを合わせると、
攻撃手段とともに身を構成する物質も変わる。ハハハハハ!
私が、せっかく手に入れた魔王をなんの調査もせず捨て置くと思うか!?』
アルビノ「なに……!?てめぇ、なにしやがった!」
オズ 『古代の技術を使い、クリスタルを透過させ、ヤツの武具を調べたのだ。
あれはもはや秘宝と呼んでも遜色ない逸品だ!
霊章を調べ、力の調査をし、手に入れたのだ!
解放条件には“人器”というものが必要だったが、
それも貴様───A-20012よ。貴様のお陰で手に入った』
アルビノ「───!俺、の……」
オズ 『爆発事故ののち、貴様が行方知れずになった時は肝を冷やしたぞ。
せっかく成功したクローンだというのに、
ソレが居なくなってしまったのだから』
アルビノ「性根が腐ってるとは思ってたけど、そこまでかよ……」
オズ 『当然だ。クローンなど量産して研究するための対象だろう?
もう解るだろう?人器をプログラムとして抽出できた今、貴様はもう用済みだ』
アルビノ「───!」
光が放たれる。
額の球体から放たれたソレは、迷うことなくアルビノの心臓を狙いボチュンッ!
オズ 『なにっ!?』
届く前に、弾き消された。
声 「フハハハハハ……!甘い甘い……なんて甘さだダイダロス……!
……おお?随分人相変わったか?」
朧弦 『……!その声───』
聞こえた声と、遠くからでも光を打ち落とせる集中力───
そしてなにより嗅覚に届く薬莢の香りは……!
閏璃 「俺!俺俺!俺ーーーーっ!!」
朧弦 『必要以上に自己アピールするなっ!』
悠黄奈「わたしも居ますよ。……そもそもですね凍弥さん。
ここはまず、ようやく現れた人、
という感じをじっくりと見せ付けるために“溜め”というものを───」
レイル「そうそう、ちょっとキザっぽくだな。
その声……!とか言われたら、
煙を出している銃口をフゥッと吹いてから───名乗る!」
閏璃 「《フゥッ……》───ドナルドです」
レイル「違う!!」
来て早々に、この厄介な状況で漫才に走らないでもらいたいんだが。
ちらりと後ろを見てみれば、ホギャーと全身全霊を賭して戦っているやつらが居るのに。
いや、ひとまずはそれは置いておこう。かなり薄情だが。
朧弦 『お前ら、どうやってこの中に───』
閏璃 「伯が空間切り裂いて中に入れてくれた」
悠黄奈「バーチャルシフトだからと、場に足を踏み入れれば入れると思ったんですが、
なかなかそうはいかなかったので……」
レイル「途中であったじーさんが、ほんの少しの間だけ空間を切れるから、
そのうちに突入しろってさ」
朧弦 『………』
とんでもないな……創造空間に近いここに穴を空けて潜らせたってことだろ?
閏璃 「そんなわけだから加勢するぜ〜〜〜〜っ!!」
レイル「《ギパァンッ!》俺達が来たからにはちっとも安心できねぇぜ〜〜〜っ!』
悠黄奈「《シャァアン……ッ!》さ、いきますよ、フェンリル』
それぞれ銃を構え、カオスを解放し、精霊解放をして前を向く。
とりあえず悠黄奈、スルーはしておいて正解だ。
閏璃 「じゃあGO!司令部!SUVウェポンの起動を申請する!
無数拳銃のSUVウェポン!浪漫幻想百銃()!!&ビットシステム!」
朧弦 『あ、すまん。あいつに物理攻撃って効かないんだ。
だから《ガラタタタタタ!!!》ホワァアーーーーーーッ!!!?』
閏璃 「先に言えこの酢だこさん太郎ォオオオオオッ!!!!
SUVウェポン出してしまったではないかぁあああっ!!
ええい死ね!死んで死ね!詫びなくていいから死ね!!」
朧弦 『やめろたわボケ者っ!同士討ちなんてしてる場合じゃ───』
閏璃 「?……俺は貴様を仲間だと思ったことなど一度もないが?」
朧弦 『ほっ……本人を前になんてひでぇ!!』
藍田 『そこぉおおっ!遊んでねぇで戦え《ヂガァン!》アバァアーーーーーッ!!!?』
朧弦 『藍田っ!?……くそっ!とにかく!物理攻撃とか実弾とかは効かないんだ!
ボディには効くが、弱点は額の光の球体で、
けどそこに攻撃するとカウンタープログラムが発動する!
おまけにバーチャルシフト(ボディタイプ)で通用する攻撃さえ変えてくる!
銃を持つお前が来てくれたのはありがたいから、出番が来るまで待っててくれ!』
閏璃 「解った!好き勝手やっとくな!?」
朧弦 『頼り甲斐のある顔で何一つ理解してねぇ返答ありがとう!!』
もう係わるのはやめておいた。
とにかく、額の光はバーチャルシフトに関係してないのは、
予測の範疇ではあるが間違い無しと踏んでいい。
問題は、ダメージの通りは悪いだろうが、唯一物理攻撃が通用するボディだ。
ボディっていってもデカい顔面ではあるんだが、高級の位置が高い所為で、
狙うとしたらどうしても顔面になってしまう。
ボスランクの敵相手に跳躍は隙がデカすぎるのはさっきも思考した。
空を飛ぶにしても、果たしてこの足場が完全に把握できない場所を、
自由に飛べるのかどうか。
……考えても仕方ないな。
朧弦 『弱点が解ってるのに向かわずは漢にアラズ!!』
漢とは困難にも敢えて突っ込む馬鹿野郎!
知るがいい!勇気と無謀は別ものだが、勇気が無ければ無謀な行為などは出来はしない!
朧弦 『いくぜ───ラグ!』
覚悟を決めろ!
なにかを為すと決めたなら、為しとげるまで諦めないという覚悟を!
…………覚悟?
あれ…………?
俺……誰にこんな風に、覚悟決めることを教わったんだっけ……?
朧弦 『───シィッ!』
余分なことは考えるな。
今はただ、とにかくあいつを滅ぼすことだけを考える!
【ケース766:閏璃凍弥/最終兵器2】
ギャガガガガガガガガガガンガンガンッ!!!!
閏璃 「うおっ!本当に実弾が効かないんだな……!」
弱点って言われたところを集中的に撃ってみたが、
擦り抜けてその先の額に当たるだけで、ダメージらしいダメージは通らなかった。
さらにカウンタープログラムが発動して、雷を含んだ地震を放ってくるわ、
自分を中心とした輪状の衝撃波を放ってくるわで、
額を狙うとしっぺ返しがとにかく痛かった。
そうなれば額じゃなく顔面を狙うしかなく、
ロマンタジーノの効果が続く限りは顔面を狙うことに集中する。
今は───OK!銃は通用する!───代わりに、剣や魔法や打撃が通用しないらしい。
今!俺が光る時!
藍田 『打撃がダメならキャッチング!!───うおわ擦り抜ける!!
やっぱりダ《ズキュキュキュキュキュキュン!!!》あだだだだだだだ!!!
ちょっ……やめてぇえええええっ!!今俺向かってってるだろぉおおっ!!?』
閏璃 「失礼な!俺は撃ってる!!」
藍田 『───俺に考えがある!』
閏璃 「俺にもある!」
藍田 『いいや俺の方がマシだ!』
閏璃 「信じろーーーっ!俺の方がいい!」
藍田 『退かねーぞ俺は!!』
閏璃 「譲れねぇ!!」
岡田 「お前らはゾンビの真似してゾンビ屯す荒野を歩く生存者か!?
どっちでもいいから攻撃してくれよ!!」
朧弦 『あれが漢・魂の真似だって解るお前もどうかと思うぞ』
藍田 『物理攻撃も魔法もダメなら弾でいきゃいいんだ!
───唸れ!!《コキーン♪》魔神破天弾!!』
そう叫び、藍田が振り上げた具足から、灼熱の巨大闘気が放たれる!!
それはテイルズオブファンタジアのオズっぽい顔の巨体に直撃し、
確かにダメージを与えた!
藍田 『おっ……おおおおおお!!やっぱりだ!
“弾”なら文句ないんだよコレ!《ヂガァアアン!!》ギャアーーーーッ!!!』
岡田 「ああっ!藍田がカウンター落雷に!!」
ルナ 「もうちょっと考えて行動するべきだと思うんだ、わたし……」
朧弦 『いいからお前は集中してろ』
ルナ 「むー……あいつに任せるの、イヤなのに……」
そういう遣り取りが続く中でも銃を乱射しまくり、
ビットシステムとともに一瞬にして300発を放ち続ける!!
けど、やっぱりダメージは酷く低い。
スーパーアーマー状態なのか、怯みもせずホワホワと笑みのカタチを作る文字の羅列に、
奇妙な焦りめいたものを感じてゆく自分が歯がゆい。
ピポプピピッ───キピィンッ!!
閏璃 「んっ───!?」
そうした中、耳に届く電子音。
気づけば弾丸はオズの体を素通りし、
オズの顔面が宙……って言っていいのかどうか解らないが、
俺達が立っている中空めいた場所からすれば宙へと浮いてゆく。
ピピンッ♪《セキュリティレベル:2に移行───》
閏璃 「……《ヒクリ》」
魔神破天弾は相当高威力だったらしい。
辿り着いてから銃を乱射しまくった……けどそれもほんの数分の話だった筈なのに、
もうセキュリティレベルが2に上がった。
攻撃らしい攻撃も受けてない状態……
冷静に考えてみれば、その“攻撃”さえもが特に来なかった。
ギキュウゥウウイイイインッ……!!
朧弦 『…………、……!?』
藍田 『《シュゥウプスプス……》う、ううぅむ…………うおっ!?』
そして、違和感に気づく。
この空間を囲うように動く0と1の羅列の1が、まるで銃口のような形に変異してゆく。
この空間を囲む二つの輪の1の字の全てがだ。
ピピンッ♪《射撃マスタリーをインストール……砲撃が開始されます》
閏璃 「あ───」
やばい。
その言葉が胸に落ちた。
相手の魂胆が解った。
朧弦 『こいつ……!強化の上塗りをやめた代わりに、プログラム習得を───!!
散れ!みんなっ───散れぇええええっ!!!』
男の言葉よりも速く、それは放たれた。
視覚から感じるだけなら、果てにこそありそうな文字の羅列から一斉に。
ギガチュンチュンチュンチュンッ───
バガガガガガガォオオオンッ!!!!
閏璃 「うぅわぁああああああっ!!?」
セレス『ちょっ……!これはっ……!』
鋭い雷属性を含んだそれは、いわゆるレールガンと呼ばれるもの。
輪状の羅列から放たれるために、ひどく確認しやすい範囲に放ってくるが、
囲まれている限りはいつかは当たる時が来るのだ。
なにせあの羅列、ゆっくりとだが様々な方向へと回転している。
閏璃 「悪い!銃はもう効かない!誰か次いってくれ!」
岡田 「行けったってこりゃ───!」
閏璃 「───コンセントレーション・ONE!!《キィ───ィン……!》」
既に消えたロマンタジーノに代わり、
次なるSUVウェポン、レーザーシステム“グロームアタッカー”を装備!
これでレールガンを破壊していく!!
閏璃 「突っ走れ!レールガンは俺がなんとかするから!」
藍田 『お前……───ははっ、お前、そんな真面目な顔も出来るんだな!』
閏璃 「やりたい時にやりたいことをするのが俺の信条だ!!」
藍田 『よし───!』
俺以外の全員が俺を信じて走りだす。
さて───どこまで集中が続くかだよな。
いくぜ、根性見せろよ俺!!
【ケース767:セレスウィル=シュトゥルムハーツ/最終兵器3】
ヴォンガガガガガァアアッ!!!!
セレス『っ……!仕方ないとはいえ、騒々しいですね……!』
降り注ぐレールガンを、閏璃凍弥が放つレーザーシステムが破壊してゆく。
その正確さは異常だと思うほどで、がむしゃらに撃っているのではなく、
確実にわたしたちに向かってくるものだけを破壊してみせていた。
レーザーとレールガンが衝突する音と衝撃は凄まじく、
気を引き締めていようが、衝撃と轟音に身が数瞬でも竦んでしまう。
それでもオズ、と呼ばれる巨大な顔に近づき、攻撃を仕掛けてゆく。
手に力を込めて、斬り裂くように───!
セレス『はぁああああああっ!!!』
ジュフィィンッ!!ズガシャシャシャアアォッ!!!
伸ばした爪を振るい、中空を裂く行為が爪閃を飛ばし、オズを傷つける。
……効く!ともすれば、今通用するのは剣撃か体術か……
そう思考した瞬間、
岡田 「《バッ!》ぜぇえええやぁあああああっ!!!」
岡田さんが跳躍し、中空に居るオズへと斬りかかる!
岡田 「早撃ち───メテオドライブ!!いっけぇええええぁあああっ!!!」
いや。
オズに迫る高度どころではなく、さらに高く跳躍した彼は、
その空から一気に急降下して斬りにかかった!
ルフォォンッ!!!
岡田 「───おぉあらっっ!?」
けれど斬撃は擦り抜けるようにして通用せず、
その威力を剣に宿したまま、彼は見えない地面へと着地した。
……確定だ、今通用するのは体術───!
藍田 『うしっ!俺の出番だな!』
ゼノ 『少々癪だが、仕方あるまい───!』
セレス『高慢に出るのは勝手からにしてください?』
ゼノ 『ぬかせ』
朧弦 『熟練レベルを体術に移行……《ガヅィンッ!!》よし!行こう!!』
セレス『こんな時に駄洒落はやめてください』
朧弦 『駄洒落!?いや、俺は移行で行こう……ぐあっ!?ち、違うぞっ!?これはっ!』
最後まで話を聞かず、それぞれが地面を蹴る。
敵は中空に居る。
だからそれを追うように跳躍して、オズ自身に乗っかった状態で攻撃を開始する。
飛ぼうと思えば飛べますが、背に生えるコウモリの翼はあまり好きではない。
セレス『しぃっ!』
わたしの武器は拳ではなく爪だ。
引っ掻くのとも違う、爪閃の攻撃が主体。
空気を裂くようにして爪を振るい、放たれる斬撃で攻撃する。
けれどもそれは体術として数えられているらしく、攻撃は通用した。
ゼノ 『チッ……!当たってはいるがダメージを与えたという実感がまるで沸かぬわ!
言いたくはないが───破壊出来るのだろうな、この物体は!』
セレス『意外ですね、ゼノ。あなたの口からそんな弱気な言葉が聞けるとは』
ゼノ 『黙れ吸血鬼!無意味なことなどしたくないと言いたいのだ我は!!』
それはわたしだって同じだ。
けれど、セキュリティレベルの向上が見られたということは、
少なくともダメージの蓄積はあるということ。
朧弦 『九頭竜闘気───戦武雷迎!超武技轟天!!』
ドバァンドバァンドバァァン!!
バガァンッ!ドガァンッ!バガァンッ!!
容姿からして、悠介さんとトンガリさんが融合した姿の彼が、
跳躍の上昇中、下から上へと連撃を加えてゆく。
右足で回し蹴りの連撃と、続いて左足での三連撃。
そして、上昇が終わった辺りで右足を大きく振り上げ、
落下開始とともに踵落としの要領で振り下ろす!
ドッ───ガガガガァッ!!!
羅列を削るように、勢いが弱まらないために力を込め、一気に振り抜くように。
しかし直後に強風をくらい、振り抜くより先に見えない地面へと激突した。
バガァン!と、上空にまで届くくらいの鈍い音が鳴った。
風というのは、想像しづらいかもしれないが、強ければ強いほど兵器になる。
彼を襲った風は、家くらい一瞬も耐えさせずに潰すほど……いえ。
それ以上の強風だったのでしょう。
心配にはなりましたが、この敵は自分のことを第一に攻撃に入らないと勝てそうにない。
ですから、少々残酷ではありますが、自分のこと以外は頭から度外することにしました。
セレス『まだ、まだ───』
エドガーを引きずりだしてゆく。
いっそ意識交換をしたほうが早いということもありますが、
それは経験にならないのでやめておく。
限界ギリギリを保った状態で、
それをより鮮明に、わたしの意識を殺さないように引き出す。
それが、わたしがすべきことだ。
だからそうした。
そうして、より強く力を引き出し、攻撃を繰り返す。
相手の反応は特にない。
ただ、攻撃が当たっているという事実を確認することしかわたしには出来ず、
悲鳴をあげるでもなく痛がるでもない、効いているのかも解らない状況に少し歯噛みする。
ふと意識を外に向けてみれば、
わたしが攻撃を下ろし続ける中でも、幾度も幾度も撃を連ねるみんなの姿が。
───今思えば、そんなものに意識を向けなければよかったのかもしれない。
丁度その時だった。
藍田さんが、オズが放ったスクリームという音波攻撃で腕を破壊され、負傷し、
飛び散った血が───わたしの目に付着したのは。
セレス『───』
赤。
なんて、赤い───バヅンッ!!
あ───
まずい、と思った時にはブレーカーが落ちていた。
エドガー『ふ……ふふ、ふははははは……はぁあっはっはっはっはっは!!!』
赤い。
なんて心地のいい赤だ。
くだらん仲良しごっこの果てに、散々と喉を潤していなかったこの身に、
たとえ色だけであろうと染み入る赤。
弱々しかったこの体に、それだけで力が篭る気分だ。
エドガー『おいそこのお前!』
朧弦 『───……その雰囲気。エドガーか』
エドガー『御託は要らんぞ。今すぐ血を創造しろ』
朧弦 『───』
男は何も言わずに、大きなボトルと、そこに血液を創造。
わたしに向けて投げつけると、わたしはそれを中空で叩き割り、
不可視の力で血液のみの落下を防ぐと、そのまま口へ移動させて飲み下す。
そうしながらも、男にまだ足りぬと目で語り───語りながら、
既に溢れ出始めた力を爪へと送り、
眼下の顔のバケモノを削ぎ殺しにかかる。
いい高揚だ───血が騒ぐ!!
エドガー『ふふふははははは……!!はぁーーっはっはっはっはっはぁっ!!』
引き裂いてゆく。
斬撃が通るたびに顔を形成している羅列が崩れ、その先からくっつこうとするが、
それを不可視の力で砕いてゆく。
再生など許さない。
今この場で微塵と消えるがいい!
ザンガガガガガガガガガ!!!!
削る……!削る削る削る削る!!
頭頂から削り続けると、他の部分から羅列を寄せて直そうとするが、
それも許さず削ってゆく!
次第にフォローが間に合わなくなると、
顔の大きさ自体が小さくなってゆき、羅列の蠢く速度が向上する。
反撃も当然来たが、それすらも不可視の力で捻じ曲げ、
わたしに当たらない場所まで飛ばすと爆発させた。
そうして一回りも二回りも小さくなったソイツへ、
自ら手の甲を切りつけ噴き出させた血で作った血の爪を使って攻撃する!
エドガー『フッ───』
そうしている中、投げつけられた瓶をやはり中空で割り、
飲み下すと、一気に力を最大まで引き出した。
細々とするのはここまでだ。
ここまで削ればこの程度、全て破壊出来る筈。
羅列の数と再生速度で全て捌くつもりだったんだろうが、アテが外れたな機械王!
ゴガァッフィィインッ!!!
空間を切りさかんほどの鋭い音とともに放たれた、我が血液の爪閃。
だが───
エドガー『なに……?手応えが消えた……?』
いや、それだけではない。
わたしの体が飲み込まれていっている。
エドガー『機械王!貴様───!』
オズ 『いつまで帝王の頭上で笑っているつもりだ、無礼者め』
ピピンッ♪《セキュリティレベル3に移行───》
ゼノ 『チッ!敵に接触しながら図に乗るからそうなる!魔人漆黒鎌!!』
が、飲み込まれた体はしかし、死神の十の爪により掘り起こされ、
さらに言えば蹴り飛ばされて事無きを得た───途端、頭上よりレーザーが降り注ぐ……!
ゼノ 『ッ……チィイイッ!!』
捕まっていたわたしの代わりにその場に居るのは死神だ。
機械王は今度はゼノに纏わり付き、
自らを焦がすのも厭わずに巨大レーザーを降り注がせた。
ゴガァアアアアアォオオオンッ!!!!
聴覚を劈く轟音。
しかしそれはすぐにも消え、その場には……無傷の機械王と、
無残に焼き焦げた死神の姿があった。
……なんという威力だ。
ヤツは、その気になればわたしたちをああして焦がすことなど容易いのだ。
だが見るに、ヤツの力はまだプログラムに浸りきっていない。
セキュリティレベル、というのはヤツの力が馴染みきっているかどうかのレベルだろう。
それが今は3。
今まで攻撃らしい攻撃がなかったのは、
単に馴染んでいなかっただけのこと、というわけか。
オズ 『ふはは……そろそろこちらも反撃といこうか。
……おっと、このスミクズも解放してやらねばな』
声 『スミクズとは随分な口だな、ガラクタの寄せ集めが』
オズ 『───!なにっ!?』
スミクズが崩れる……いや、翻された。
それはゼノのマントだ。
死神の中でもほぼ唯一とされる、高い能力を持つマント。
それが、ゼノをレーザーから守っていた。
だが流石に無傷というわけにもいかなかったのだろう。
ゼノの体にはひどい火傷の跡があり、痛みのためか少なからずゼノも表情を歪ませていた。
ゼノ 『さて。爪でもレーザーでもダメージが通らない今……
貴様に通用するものはなにかと考えた。……ダークスライサー《ジャギィン!》』
言とともにゼノの黒衣が無数の黒の刃に変わり、
高速回転し、ゼノの体に纏わりついたままの機械王へと向けられる。
途端、機械王は動揺を見せ、死神の体を吐き出そうとする。
ゼノ 『フン、所詮視覚的恐怖には耐えられんのが人間というものか。……いけ』
それが合図だった。
宙に浮いていた、黒衣だったものが一斉に襲い掛かる。
狙い通りだと言えるだろう、無数の刃は機械王の体、
顔の形を形成している文字の羅列を削ってゆき、
体の半分ほど埋まっていた死神はいとも簡単に逃れ、見えない大地へと降り立つ。
が、効果ありと踏んでなお、死神は舌打ちをした。
ゼノ 『忌々しい……!こうも通用しないとは……!』
そういうことだ。
削れることはあっても、それがダメージとして通るかは別だ。
機械王は最初の恐怖こそあったものの、ほとんどダメージを負っていない。
そもそも、レベル、というものがわたしたちを縛っているこの世界では、
たとえ以前のように力を解放しても、それが全力になるわけでもないのだ。
なるほど、死神の言葉も道理だ……実に忌々しい。
そう思った瞬間、足元にレールガンの光が落ちてくる。
見れば、レールガン破壊をかってでた男の集中力が切れかけていることに気づく。
……ふむ、頃合か。
エドガー『武具が刃の者たち、ここは貴様らに任せるぞ。
不本意ではあるが、こんな存在にナメられっぱなしなのは実に癪だ。
あの常識破壊男が居ればそうでもないのだろうが───ああいい、
貴様らは忘れているのだったな。精々気張れよ』
言って、大きくバックステップをする。
レールガンを打ち落としている男とは、機械王を挟んで反対側に。
そこで血爪を構え、幾重にも降り注ぐレールガンへと爪閃を放ち、相殺してゆく。
それに気づいた岡田という男が、
無数の剣閃でレールガンを落とすことを止め、走ってゆく。
なるほど、確かに一人で打ち落としているにしては、やけに取りこぼしが少ないと思った。
代わりに藍田という男がその位置に立ち、降り注ぐレールガンをあろうことか蹴り飛ばし、
別のレールガンへぶつけて破壊し始めた。
……滅茶苦茶だな、こいつらは。
さて、こうして向かったのは融合男と悠黄奈と岡田とアルビノ、
それとルナ……あの死神か。
ミクという女は完全にサポートに周り、傷ついた存在に歌での癒しを齎している。
あの天界人の男は凶々しい力を放ちながら、
やはり降り注ぐレールガンの破壊に協力している。
エドガー『……さて』
あの元人間に負けるのは癪だ。実に癪だ。
機械だか古代技術だか知らないが、こんな存在に圧倒されていると思うと腹が立つ。
まだ、己の能力で力を編み出していった“教会”のやつらのほうが好感が持てる。
…………。だからといって、破壊された恨みが無いわけではない、というかある。
喩えの問題だ、喩えの。
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