───冒険の書09/暴走する獣な人たち───
【ケース87:桐生真穂(再)/武羅坊!おお……武羅坊!!】
篠瀬さんが疾駆する。
先んじたその速度は、いったいどんな技法なのか───
速度的には同じ筈なのに、それでも前へ前へと先んじた。
夜華 「はぁああっ!!」
切羽とともに振るわれる刀。
その速度はやはり外国のあらゆる武器に引けを取らぬ速さ───まさに居合いであり、
獣人の体目掛けて一気に振るわれる。
けどガギィン!!
夜華 「───!?」
その攻撃はあっさりと逸らされ、地面に突き刺さった。
さらにその動作と動揺の隙を突かれた篠瀬さんへと獣人が斬りかかる───!
ザグシュッ!!
夜華 「ぐぅっ……!!」
獣人の攻撃───けれどそのダメージはそう高いものじゃあなかった。
そう……確かに攻撃力だけ見たら『楽な相手』なのだ。
それなのに───
粉雪 「たぁあああっ!!」
獣人2『シッ───』
フォンッ!ブフォンッ!!ブンッ!!シュバァッ!!パシィッ!!
粉雪 「あ、あれぇっ……!?」
獣人2は攻撃のことごとくを避け、弾き、逸らしていた。
そして一度体勢を整えようと粉雪ちゃんが下がろうと予備動作をした刹那───!!
ズバシャアッ!!
粉雪 「あうぅうっ!!?」
隙だらけのその身体に短剣での攻撃が振るわれた。
クリティカル───無防備な時にダメージを食らうとそうなるようで、
粉雪ちゃんはあっさりと戦闘不能になってしまった。
その一方で───
ルナ 「このこのこのこの!!」
ドカボカゴスガスッ!!
獣人1『フガァアッ!!!』
バゴシャォンッ!!
ルナ 「うあぁあっ!!?」
獣人1の方は案外攻撃は当たるんだけど、
それでも無視して攻撃してくるからカウンター分のダメージを確実にくらってしまう。
しかもそれがクリティカルで決まると手に負えない。
……おかしい。
楽な相手の筈なのに、いきなり苦戦してる。
獣人1のほうはみんなでかかれば倒せる……と確信が持てるけど、何故だろう。
獣人2のほうには、どれだけの人数でかかっても攻撃を躱されてしまう気がする。
あれは強いとか弱いとかの次元じゃない……とにかく『巧い』んだ。
夜華 「〜〜っ……くそ!こんな筈はっ!!飛燕龍───!!」
獣人2『構エガ隙ダラケダ!』
ザゴシュウンッ!!
夜華 「かはっ!?」
クリティカルヒット───篠瀬さんは力尽きた。
真穂 「え───えぇっ!!?」
このパーティーの攻撃の要であった篠瀬さんがあっさりとやられた。
確かにこの世界じゃ強さとかは均一に下げられてしまうけど、
それでも篠瀬さんにはわたしたちなんかより実戦経験があった筈だ。
それなのに一方的にやられちゃうなんて……。
真穂 「〜〜〜っ……」
試しに『調べる』を実行してみるけど、何度見たって『楽な相手』。
それなのにこの理不尽さはなんだろう。
春菜 「攻撃を避けるのが得意みたいだけど、これならどうかな───!?」
篠瀬さんが神父送りにされた今、今度は春菜さんが弓を引き絞る。
手には何本かの矢を用意してあるあたり、あれは連射が目的だろう。
春菜 「───シッ」
ピシュンッ───スザァッ!!!
春菜 「っ───まだまだ!」
紙一重で矢を躱した獣人に向かい、さらに、さらにと矢を放つ。
けどその全てを獣人は躱してみせ、さらにどんどんと春菜先輩に近づいてゆく。
春菜先輩はそれを感じて後方へ下がろうとした───けど、すぐ後ろには岸壁。
ぶつかり、驚いて後ろを向いた───まさにその時!!
獣人2『タワケ───!!闘イノ最中ニ余所見カ───!!』
春菜 「あっ───」
ドバァンッ!!
春菜 「ひぁっ!!?」
間隙の一切も逃さないその動きは達人みたいな感じで、
春菜先輩をあっさりとスタンさせた。
普通ならば不意を突く際にはそのまま攻撃するんだろうけど、
その獣人はその裏をかくように足払いをしたのだ。
それによりバランスを崩し、倒れた春菜先輩へ狙いを定めた連撃が落とされた。
ゾガガンッ!ガンガンガンッ!!!
春菜 「っ───!!」
一撃だけをぶつけるんじゃなく、連撃を。
それはまるで、
最初っから『一撃で倒せるなんて思ってない』ってくらいに計算された連撃だった。
……やっぱりそうだ。
この獣人、強さはあまりないけど……戦い慣れてる。ううん、慣れすぎてる。
春菜 「こ、このっ───!!」
フフォンッ───
短剣での連撃をくらいながらも反撃をした春菜先輩。
けどその攻撃はまるで予測されていたかのように避けられた。
春菜 「〜〜〜っ……ずっこい!!こっちの攻撃全然当たらないじゃない!!
システムの横暴!!責任者出て───」
ジョパァン!!
春菜 「はぴっ!?」
……クリティカルヒット。
システム面への怒りを空に唱えた先輩の隙を見逃すほど暇じゃあなかった獣人は、
その隙をあっさり突いて先輩を神父送りにした。
獣人2『………』
ギロリ。
真穂 「うひゃっ!?」
睨まれた───ああ、次の得物はわたしなんだ。
嬉しくないなぁ。
しかもこの獣人2さん、ふたりと戦ったのに1ダメージも受けてないよ。
真穂 「お母さん!ルナさ───あ゙」
死ュ〜〜〜……
真穂 「あ───わっ……わひゃあああああああっ!!!?」
振り向けば、ふたりとも神父送りにされてるところだった。
獣人1『───』
ギラリ。
真穂 「うわぁ〜あああ……」
しかも獣人1さんまでわたしを睨む始末。
生きた心地がしないままに、
わたしは静かに十字を切った───途端に隙を突かれて昇天したのだった。
【ケース88:弦月彰利/愛・超アニタ】
マシュゥウウウン……───真穂さんが神父送りにされた。
それを見送った我らはまず一息。
ぺぺらぺっぺぺ〜♪
しかもレベル上がった。
どうやら獣人勢力だとプレイヤーキラーやっても経験値が入る模様。
おおステキ。
つーか何気に悠介の方がレベルアップ数上じゃん。
やっぱノーダメージボーナスとかってあるんかな。
ヤグード『ヨクヤッタ同志タチ!
自分タチノ連レ添イヲ始末シテ見セルソノ意気、気ニ入ッタ!
人間ナラバ家族トテ差別スルコト許サナイ!!』
周りに居た獣人たちもギャースカと喜んでいる。
うむ、たまにはこういうのもステキさ。
ヤグード『ダガ客ハ別。我ラニモ金銭ノ概念ハキチントアル』
そうだろう。
じゃなきゃ俺に武器くれたり、鍛えてやるなんて言ったりはしないと思うし。
彰利 『しっかし驚いたね。キミてっきりおなごには手を上げないと思ってたのに』
悠介 『やるからには徹底的にだ。
それに、俺が守りたいものの中にはもうあいつらは含まれちゃいない』
彰利 『あらそうなん?だったらキミ、なに守れりゃいいの?』
悠介 『ん?ああ、お前の未来』
彰利 『───へ?』
……マテ。
今なんとおっしゃいましたかこのモミアゲ。
彰利 『あのー、俺の未来なんぞ守ってどうすんの?』
悠介 『知らん。けど、それが最終目標になるって予想がつく。
俺とお前はもう人間なんてとっくにやめちまってて、
生きる時間の他のやつらとはケタからして違うだろう。
……多分、いつかはこうして笑っていられてるやつとも別れなきゃいけなくなる。
それでも───ああ。死神王であるお前は、他の誰よりも生きるんだろうな』
彰利 『……ふむ』
悠介 『そうして、いつか長い長い時間が経った時にさ、
俺たちは未来よりも過去のことを思い馳せるだろう。
あの時中井出はああだったとか、自分たちの子孫はなにやってるんだろう、とか。
でもさ、もう───なんつーか解っちまった。
どんなことよりも、なにを失うよりも───俺は多分、お前の未来を優先させる』
彰利 『?……なんでさ』
悠介 『言ったろ、解っちまったって。小さいけど確かな感情の中で考えてみた。
ずっと先の未来───【守りたかったもの】を失った時の自分。
……そしたらさ、ルナと別れるよりも深冬と別れるよりも───
中井出と別れるよりも全てを失うよりも……
俺はさ、お前との思い出やお前が消えちまうのが一番怖かった』
彰利 『───告白タイム!?』
悠介 『たわけっ!!ンなわけあるかっ!!』
彰利 『ソ、ソーリー』
マジで怒鳴られちまった……。
でもね、正直その気持ちは俺も解る。
というより……解りきったことだったんだ。
なにせ───俺はずっと、
目の前の親友の未来を守るためだけに無限地獄を味わってきたのだから。
『自分のためより他人のため』。
そんな生き方を俺はずぅっとしてきたのだから。
そして───その生き方の全てが、きっと目の前の親友に向いていた。
だから今の悠介の気持ちなんて、それこそ自分のことのように解る。
だから俺は───
彰利 『でも───そっか。んじゃあ……前にも言った気がするけど、
だったら俺はそんな馬鹿な親友の未来を守ろう』
悠介 『彰利?』
彰利 『水臭ぇこと言うなって。いったい何年親友やってっと思ってんのさ。
悠介の未来を守ることに関しちゃあ俺の右に出るヤツァ居ねぇのじゃよ?
人呼んでヘールパーオヴモミアゲ』
ドボォス!!
彰利 『ゲネファー!!』
親友の拳が我が脇腹を打った。
まあその、獣人防具があるから全然痛くないが。
悠介 『面と向かってモミアゲ言うなこのトンガリ!!』
彰利 『トンガリとな!?お、俺の頭はツンツンでもトンガリでもねーやい!!』
ヤグード 『同志タチ、ナニヲシテイル。狩場ヘ向カウゾ』
彰利&悠介『へ?』
いざ言い合おうって時に、ヤグさんからお呼びがかかった。
つーかナイスナックルでした悠介。
目では追えても反射速度が付いてこれんかったよ。
いやぁ、低レベルの悲しいサガだね。
動体視力とかはまるで落ちてないのに体がまったく追い付かねぇや。
───……。
……。
ドトトトトト───そうして、我ら獣人族は野良ルルカとやらに乗って大地を駆けていた。
向かう先は他のナワバリ。
そこに辿り着く過程、人間を見つけたら問答無用で攻撃を仕掛けてもいいとのこと。
獣人王ったら話が解るんだからもう。
彰利 『それにしたってよぉお〜〜〜〜っ、お前いったいどういう強さしてんだ〜〜〜っ?
レベル1の状態でよぉお〜〜〜っ、
四人相手によくひとりで勝てたよなぁあ〜〜〜っ』
悠介 『正直篠瀬にはヒヤヒヤさせられたけどな。他はまあ……予測しやすかった。
それに篠瀬の刀技のクセは頭の中に叩き込んであるし、
先輩に実戦向けの弓術教えたのって俺だからな……』
彰利 『なるほど』
あっさり納得。
しかも『守りたいもの』が固定された今、
悠介の中に遠慮ってもんは無くなっちまってるのかもしれない。
彰利 『あ───けどさ』
ゴブリン 『人間、ミツケタ!!』
彰利&悠介『WHOOOOOOOOOOOO!!!!!』
ニンゲンハッケン!!話なんて後!後!後!!
俊也 「え───おわっ!?な、なんだぁっ!!?」
佐知子「ちょ、な───」
我らはルルカから飛び降りると同時に奇襲攻撃を仕掛けた!!
が───ガギィンッ!!
彰利 『グオッ!?』
俊也 「い、いきなりっ……なにしやがるかっ……!」
相手はなんとグレゴリ男だった。
だが構わん!汝、我が礎となりんさい!!
彰利 『弱イ人間、我ガ一撃ヲ防御シタノハ褒メテヤル!!』
俊也 「なっ───いきなり奇襲かけてきたくせに偉そうだぞお前!!
それにっ……俺につきっきりだと夏純とサチ姉ェがもう一体をノシちまうぞ!?」
彰利 『ノス?誰ガ誰ヲダ?』
俊也 「だから───」
死ュ〜〜〜……
俊也 「え───えぇえええええっ!!?」
我が後ろでは奇襲攻撃を確実にキメ、ババアと夏純ちゃんを昇天させた悠介が。
愚かよのぅ……このゲーム、
博光の野望オンラインは複雑な物事以外はリアルとそう変わらない。
それはつまり、
人体のことに関して知識をもっていれば急所を突いてクリティカルを出すなど容易いのだ。
まして、彼女たちの相手だったのは戦いをある程度極めた上に、
己を高めるために様々な努力や研究をし、その果てに辿り着かんとする男。
レベルが低かろうが、そんじょそこらの新米冒険者に負けるなど在り得んよ。
さらに言えばまあ───人がどう動けば速く駈けることが出来るかとか、
どうすれば攻撃の威力を上げられるかとか熟知してる分、
ある意味でレベルの高い冒険者などよりよっぽど危険である。
だってね、それってレベルが基準となってる『調べる』じゃあ解らんことだし。
『楽な相手』だと確信して襲い掛かれば、負けるのは大体が相手のほうだろう。
俊也 「こ、のっ……よくも夏純とサチ姉ェを───!!」
ゴォッ───モファアアンッ!!
彰利 『ナニゴト!?』
《隠し固有スキル『怒り』が発動!!───俊也の攻撃力がUPした!!》
彰利 『隠シスキルトナ!?』
これは驚きだ───よもやこんなシステムがあろうとは!!
もしやこれはスターオーシャン効果!?味方が死ぬと怒ったりするアレ!?
俺、シウスの『あとは任せろ!───ブッ殺す!!』って言葉がえらく好きだったYO。
俊也 「っ───だぁああああっ!!!」
ググッ……ギャリィンッ!!
彰利 『グオッ!?』
グレゴリ男が剣で我がナックルを押し戻した。
さらに体勢を崩している俺目掛けて剣を構え、一気に攻撃を仕掛ける───!!
だがバゴシャアンッ!!!!
俊也 「げはっ……!?」
諸刃カウンター発動。
グレゴリ男、一撃で死亡……神父送りの刑に。
……ちなみに諸刃カウンターってのは獣人のモンクに教えてもらった技である。
敵の攻撃を躱しつつダメージを与えるカウンターとは違い、
相手の攻撃をむしろ受けて全力で攻撃をする恐怖の技である。
その分確実に当たり、
しかもクリティカルとカウンターダメージが加わるために鬼のような破壊力。
ただしこちらも無事では済まんがね。
彰利 『あーくそ……“怒り”状態って結構ヤバイぞ……?
ルナっちや仁美が相手でもそれほど高いダメージは受けなかったっつーのに、
一撃だけで相当HPもってかれた』
げに恐ろしきは潜在スキルよ……。
ともあれ。
ぺぺらぺっぺぺ〜♪
おお……再び我らに成長の奇跡が。
とりあえず俺はVITにボーナス振り分けてと……。
いやぁ、やっぱ諸刃カウンター使うなら防御力と最大HPは重要だぜ。
ヤグード『同志ヨ!次ヘ行クゾ!!』
彰利 『オウヨ!って素朴な疑問いい?どうやってニンゲン探してんの?』
ヤグード『同志ノ中ニ狩人ガ居ル。ソイツガ広域探知デ気配ヲ探ッテ探スノダ』
さいですか。
ともあれ俺と悠介は再びルルカに乗り、大地を駈けたのだった。
【ケース89:閏璃凍弥/王国兵士】
凍弥 「ウォー!」
コッパァンッ!!
凍弥 「はぶぅいっ!!」
とある午後、俺は王国兵制式装備一式に身を包みつつ、王国兵士の真似をしていた。
まあやった途端にスリッパで叩かれたのは紛れも無い事実だ。
ちなみに叩いた張本人はもちろん来流美だ。
来流美「はいはい、馬鹿はいいからとっとと続きしましょ」
凍弥 「ぬおお、喜びも満足に分かち合えんとは。この青ビョータンめが」
来流美「どういう罵り文句を」
振り向けば来流美。
俺と同じく───というか、パーティー全員と同じく王国兵制式装備を装着している。
何故なら俺たちは王国の兵になるという意思を申請し、それを受諾されたからだ。
それだけで王国兵制式装備一式がタダでもらえるなんて最高だ。
何気に防御力も高いし。
隊長 「お前たちは今回が初めての訓練となる。
実戦訓練はヘタなレベルUPよりも大事だ。それを忘れないように」
総員 『サーイェッサー!!』
……いかん。
どうにも原中の猛者どもに付き合ってたりすると、
上官に何かいわれるとこう返してしまう。
ぬおお、これではまるでパブロフドッグではないか。
隊長 「なお今回の訓練にはレオン様が特別に参加してくれている!
入りたての新米兵士の訓練を見に来てくれるなど奇跡に近いものだ!
失敗などしないよう、気を引き締めていけ!」
凍弥 「断固断る!!」
ポッポ〜……遠くで鳥が鳴いた。
鷹志&柿崎&御手洗『なっ……なにぃいいーーーーーーーっ!!!?』
そして近くでみんなが絶叫。
隊長 「貴様何を言っている!
貴様は兵士に志願したんだろう!国のために働かずになんとする!!」
凍弥 「黙れボケ!俺は兵士になるとは言ったが国のために働くとは一言も言ってない!
俺はこの装備が欲しかっただけだ!文句あるか!!」
来流美「威張って言うことじゃないでしょ!ちょ───謝りなさい!早く!!」
凍弥 「だってママン、この隊長物凄く偉そうなんだもん」
来流美「誰がママンよ!!」
凍弥 「お前が教育ママみたいな口調で言うからだろうが!
せっかくノってやったってのに普通にしか返せんとは!ええい嘆かわしい!!
こんなことでは単身赴任中の夫が盲腸に泣くぞ!!」
来流美「盲腸ならとっくに終わってるわよ!ていうかなんでアイツの話が出てくるの!」
凍弥 「そりゃお前……考えても見ろ。
このゲームに柾樹や他の小童どもが参加してるっつーことは、
あいつらも空界に行くってことにイコールするんじゃないのか?
だったらホレ、原因不明の行方不明事件としてアイツ孤独になるし」
来流美「まさか。柾樹たちは地界に残るわよ。というか行かせない」
凍弥 「なにぃ、地界滅亡の事態になってもあいつらだけは避難させんというのか。
ぬおお、お前がそこまで残虐非道な幼馴染だったとは」
来流美「どうしてアンタはそうやって話を大袈裟にするの!!」
由未絵「く、来流美ちゃん落ち着いて!隊長さんが睨んでるよぅ!」
真由美「ねぇ鷹志……閏璃くんっていっつもこんな感じなの……?」
鷹志 「おお、言っちゃなんだがある意味では弦月彰利より性質が悪いぞ。
あいつのほうはオカマホモコンが無くなってから随分落ち着いたもんだけど、
こいつは素でこういうヤツだから、しょっちゅう手に負えん時がある」
柿崎 「まるで猛獣のようなヤツだ」
鷹志 「むしろボブ=サップン」
御手洗「サップじゃないんだね……」
鷹志 「凍弥だからな」
どういう理屈じゃい。
隊長 「き、貴様らぁあ〜〜……!!レオン様の前だぞ!静かにしろ!!」
凍弥 「なにぃ、俺なんぞより貴様のほうがよっぽどやかましいぞ隊長」
隊長 「貴様が騒がしくするから大声で止めているのだ!解ったなら黙れ!!」
凍弥 「ところで隊長、奥さん元気?」
隊長 「黙れと言っている!!」
凍弥 「だ、ダメであります隊長!俺は隊長の奥さんの体調が気になります!!
これでは訓練に身が入りません!!」
隊長 「何故だ!!」
凍弥 「気になるからだって言ってるだろうが隊長!!」
隊長 「そうじゃない!何故気になるんだと言っている!!」
凍弥 「実は俺にも妻が居るのだ!だから同じ夫の身として、
戦に赴く隊長を見ると奥さんが気になるんだ解ったかこの野郎!!」
隊長 「ぐっ……俺は独身だ!悪いか!!」
鷹志 「おお……そんな設定があったとは」
ポム。
凍弥 「よかったな柿崎。同志だ」
柿崎 「喧嘩売ってんのかてめぇえええ……!!!」
隊長 「ええい静まれ!!ともかく!
兵士に志願したからにはそれなりのことはやってもらう!!」
凍弥 「隊長!兵士やめるからこの装備くれ!」
隊長 「やるか馬鹿者!!」
凍弥 「なにぃ!?だったら契約金返せ貴様!
俺のものは俺のもの、お前のものも俺のものって言葉を知らんのか!!」
真由美「ある意味ジャイアンより傍若無人なんだね。契約金なんて払ってないもん」
凍弥 「任せろ」
来流美「威張れるこっちゃないわよ……」
確かにそうだが───そもそもこのレオンとかいう男がどれほど偉いのか、
新米兵士の俺たちに解れというのが無理だ。
レオン「───」
凍弥 「で……隊長?こいつ強いのか?」
隊長 「ば、馬鹿者!レオン様に向かって『こいつ』などと!!
レオン様はこの世界“クレアチオン”における、
ただひとりの竜騎士であらせられるぞ!!
その強さはどこぞの騎士団の群れなどを遙かに超える!」
凍弥 「うそつけ」
隊長 「ウソとな!?」
鷹志 「凍弥、とぉ〜ぅや……話が進まんからからかうのもそれくらいにしとけ」
凍弥 「ぬう」
からかうだけなら襲い掛かってこないから面白かったんだが。
凍弥 「さて───ところでこれからどうするんだっけ」
来流美「あのね……。これから初心兵士用の訓練を始めるんでしょ?
それともなに?本気で逃げるの?
言っとくけどここで逃げたら絶対に王国指名手配にされるわよ」
凍弥 「なにぃ、俺は真正面から『辞める』と言って、
記念品として兵士装備一式をもらうだけだぞ」
来流美「了承貰えなきゃ立派な泥棒でしょうが!!」
凍弥 「ぬう」
そうかも。
というよりそうか。
───などと思っていた時だった。
ドドドドドドドドドド!!!
柿崎 「な、なんだぁっ!?」
鷹志 「何かが近づいてきてる……?」
最初はあまり気にならなかったが、段々と近づいてきている物音に心が警鐘を鳴らす。
慌てて辺りを見渡せば───
獣人×2『WHOOOOOOOOOOOO()!!!!!』
なにやら珍妙な生き物に乗った獣人ふたりが真っ直ぐこちらへ向かってくるではないか。
凍弥 「よし行け隊長!」
隊長 「馬鹿か貴様は!それを言うのは私の役目だろう!!」
凍弥 「じゃあ言うのだ!早く!『よし行け隊長』と!!」
隊長 「よしきた!って何故私が私によし行け隊長と言わなければならんのだ!!」
凍弥 「なにぃいい!!?貴様自分で言ったことを偽り宣言するというのか!
だから貴様は隊長なんだ!この隊長め!」
鷹志 「や、どういう罵り方だよ」
知らん。
凍弥 「ふむぅともかく。これは敵が攻め込んできたと取るべきなのか?」
鷹志 「兵士用のイベントかもしれないぞ?」
凍弥 「ゲーム的なイベントなのか普通のバトルなのかの区別がつかんな」
来流美「どっちも似たようなもんでしょ?どのみち逃げられそうにないんだから」
それもそうか。
だったら戦うしかないってこったな。
凍弥 「よっしゃあ行くぜ!」
鷹志 「オーライ友よ!」
柿崎 「全力でブッ潰す!」
由未絵「がんばれ〜!」
来流美「……やっぱり戦闘っていったら拳よね」
真由美「そうかな。わたしは刀のほうがいいと思うけど」
御手洗「価値観の違いってやつだね。僕は誰かの助けになれるほうが嬉しいよ」
それぞれが思い思いに構える。
隊長は何故か俺たちを盾にするように下がり、後ろからギャースカ言ってるが。
とか思っているうちに獣人ふたりは動物から降りて、俺達に攻撃を仕掛けてきた。
フフォン───フィィンッ!!
凍弥 「っとぉ───!!」
奇襲攻撃を、まずは避ける。
───と同時に剣を前に突き出し、避けと攻撃を同時に行う───が。
バッ!
凍弥 「おっ───」
獣人もそれをあっさりと躱すと、
迷うことなくバックステップをし終えた俺の体勢の立て直しの瞬間を狙って来た───!!
凍弥 「んなっ───ちょっ」
待て、と言うより早く短剣が振るわれる。
それは確実に俺の脇腹を狙ってガキィンッ!!
獣人2『───』
鷹志 「っとぉ、間一髪か」
……いや。
短剣は俺の腹に届く前に鷹志の剣によって弾かれた。
だが獣人2は別に気にした様子も無く、
俺、鷹志、柿崎に囲まれてるにも関わらず落ち着いた様子を見せていた。
もう一方の獣人は来流美と郭鷺と由未絵と博樹が相手をしている。
とはいえ───
凍弥 「フフフ……3対1……卑怯とは言うまいね」
鷹志 「普通は卑怯だろ」
凍弥 「いや、これゲームだし。むしろ正当?」
獣人2『闘イニ卑怯卑劣、無イ。コノ状況、望ムトコロ』
凍弥 「うおう」
鷹志 「度胸あるなぁこの獣人」
凍弥 「じゃあ許可も出たことだし───」
鷹志 「ヘルユー?」
柿崎 「フフフ……この王国兵士装備に身を纏った我らに勝負を挑んだこと、
たっぷりと後悔させてやろう」
そして何故か柿崎はやる気満々だった。
凍弥 「それでは一斉にいきましょう」
鷹志 「トライアングルフォーメーション!!」
柿崎 「アルファアアアーーーーーーーッ!!!!」
俺たちは獣人を囲んだ状態で、ひと動作ずつ遅れて攻撃を繰り出す。
こうすれば同時に防がれることもなく、相手にとっても受け止めづらい攻撃になるからだ。
だが───
獣人2『シッ───』
ギンッ───ガガァンッ!!!
凍弥&鷹志&柿崎『いぃっ!!?』
俺たちは我が目を疑った。
だってそうだろ?一番最初に振り下ろした俺の剣を逸らして、
それを鷹志が振るった剣が落ちる方向へと向けて、
俺の剣が鷹志の剣を弾いて───さらに弾かれた鷹志の剣が柿崎の剣を弾いて……
たったひと動作で三人からの攻撃を弾きやがったよこの獣人……。
凍弥 「敵ながら天晴れ───!!死んでくれ兄さん!!」
獣人2『ダレガ兄サンダ!!』
フフォンガギィンッ!!
凍弥 「つっ……!?」
がむしゃらに振り下ろした剣が強く弾かれる。
その衝撃の強さに驚愕した俺は手を痺れさせ、情けないことに隙を見せすぎてしまった。
もう確実だ。
この獣人、強さ的には『楽』とか出てるくせに、その実かなり強い。
現に───そいつはまるで計算していたかのように、
痺れていた俺の手の中から剣を奪うと即座に構えを変えた。
鷹志 「二刀流───!?」
柿崎 「構うかよ!デストローーーーイ!!!!」
柿崎が駈けた!!
後先考えずにマグニファイを発動させた柿崎は王国兵制式長剣の力を引き出すと、
その切っ先から衝撃波(弱)を放った!!
ゾフィシィンッ!!
獣人2『っ……!?』
さすがにそんな能力があったとは予想もしなかった獣人は、その衝撃波をまともに喰らう。
柿崎 「よっしゃ!当た───」
獣人2『呆()ケルナタワケ───!!!』
だが。
一撃が当たって喜び、次弾を構えもしていなかったのではどうにもならない。
衝撃波をくらってなお駈けた獣人は柿崎に二刀一閃を見舞い、
一瞬にして柿崎を神父送りにした。
鷹志 「うーあー……ちとシャレにならんぞこいつ」
凍弥 「つーか武器が無い。なんとかならんだろうか鷹志」
鷹志 「ふむ───おお、あいつがいい」
凍弥 「……おおなるほど」
鷹志が顎で対象を促す。
そこには腕組みをして偉そうに俺たちを見ている隊長の姿が。
俺は即座に走り出し、その腰にある立派な長剣を奪い取った!!
隊長 「あっ!き、貴様なにをするか!!」
凍弥 「隊長!これは戦です!戦に武器が無い場合、訓練にはならんでしょう!!
おお隊長よ、あなたのお蔭で私は救われそうです。
あなたに黄泉路への扉が開かれんことを」
隊長 「なっ───ま、待てぇえええっ!!!」
《王国隊長制式長剣》を手に入れた!!
凍弥 「よっしゃ行くぜぇええっ!!!“マグニファイ”!!」
10分アビリティ発動!王国隊長制式長剣の潜在能力を引き出す!!
そして獣人へとダイレクトアタック!!アックスレイダー撃破も夢じゃない!!
……筈だったんだが。
ガギィンッ───スチャッ。
凍弥 「あら〜……」
ふと気づけば俺の手には剣は無く。
代わりに、敵である獣人の手にその剣は握られていた。
鷹志 「……あのな友よ。助けるどころか事態を悪化させてど〜〜〜〜すんだよ……」
凍弥 「この魔物……!あまりに危険よ!!」
鷹志 「よし解った。キサマが今の状況をたっぷり楽しんでるってことがよ〜〜く解った」
凍弥 「しょうがないだろ……こいつ、どうにも戦い慣れしてるっぽいし」
つーことはあれか?
モンスターどもも、戦って俺たちを倒せば経験値とかを手に入れるってことか?
現にこいつはこんなに強いわけだし。
きちんと経験を積んでる証拠だと思う。
凍弥 「そんなわけで───ぬおお、武器が無くなってしまった。
これはテブラデスキーさんもびっくりなくらいな手ぶらっぷりだな。
というわけで任せた。お前だけが頼りだ」
鷹志 「大丈夫だ友よ。手ぶらな貴様でも出来ることがある」
凍弥 「ほう。その心は?」
鷹志 「心もなにもあったもんじゃないが。あいつを押さえててくれ。悟空さのように」
凍弥 「おお、あの伝説の“魔貫光殺法殺人事件”をリバイバル生上映しろと。
よし解った、地獄に落ちろ我が友よ」
まあ正直、今生き残っててもこれくらいしか出来ることが無いわけだ。
ならばこの命、我が友鷹志にくれてやる!!
凍弥 「───」
獣人2「………」
さて……ならばこの、どっしりと構えた獣人さんを如何にして押さえるかだ。
なんて言ったらいいんだか……素人目から見ても解るくらいに隙が無い。
試しに獣人の少し後ろを見てニヤリと笑ってみるも───
獣人2『………』
常人ならば後ろが気になってしょうがないだろう雰囲気の中、
獣人はそれを完全に気にしていない構えで俺と鷹志を見据えている。
そればかりか、俺が再び同じ方法で隙を作ろうとした途端、
体を跳ねさせるフェイントを使うもんだから、こっちの精神が逆に疲れる始末。
いやぁ……どうしたもんか。
このままでは千年戦争の型()が完成してしまう。
凍弥 「ぬう……よっしゃ覚悟完了!いっくぞぉおお鷹志!!」
鷹志 「へっ!?あ、お、おう!!」
結論はあっさり出た。
元々黙って待つのが苦手な性質だ、そうなりゃ本能に従って猪突で猛進!これっきゃ無い!
凍弥 「タックルは腰から下ァーーーーーッ!!!!」
獣人2『───!』
奇襲成功!
いきなりの行動に獣人もびっくりして両手に持ってた剣を落とした!
これなら───
鷹志 「あ───と、凍弥!待───」
凍弥 「へ?あ゙───!!」
気づいた時には遅かった。
目の前には既に拳があって、それが下から掬い上げるように俺の顎を空へと殴り弾いた。
ズパァン!!
……と、いい音が鳴った。
さらに顎ごと体勢を立てさせられた俺の顔面に、
まるで申し合わせたような綺麗なストレートが決まる。
それで俺の意識は薄れ───目を回したままに地面に崩れ落ちた。
……こりゃ困った、完全に誘われた。
落ちた剣はびっくりして、なんかじゃなくて、自分から落としたのだ。
ああくそ……世界が回る……。
鷹志 「くっそ……!こうなりゃヤケだ!はぁあああああっ!!!!」
獣人2『───』
ズ……フィンッ……───鷹志の疾駆を静かに見つめ、
獣人が地面に刺さっている二本の剣を手に取った。
次に、余っていた短剣を鷹志に向けて投擲する。
鷹志 「うおっ!?っと───!あ、危ね───えぇっ!?」
鷹志はそれを避けた───が、それがマズかった。
獣人はその大きすぎる隙を狙って駈け、既に鷹志の目の前まで来ていたのだ。
鷹志 「うわわちょ、待───!!」
獣人2『ルガァオッ!!』
ヴオッ───ガギィンッ!!ガシャァアアンッ!!!!
鷹志 「あっ……やべ───!!」
振るわれたのは、降ろす交差と振り上げる交差。
一撃目はなんとか耐えた鷹志だったが、一撃目で既に手が痺れていたんだろう。
ニ撃目の振り上げる剣の交差によって剣を弾き飛ばされ、完全に無防備になってしまった。
そして───そこへ無情にも振るわれるトドメの一撃。
それは、どんな隙だらけな相手を攻撃するよりも有効なものだっただろう。
手の痺れた相手など、逃げることは出来ても攻撃や防御することなど出来ないのだから。
フオゾッパァアアアアアアンッ!!!!
鷹志 「うぐぁあああああっ!!!!!」
凍弥 「───……」
最後の一撃はまさに情け容赦の無いくらいに、傍目から見ても威力の高いものだった。
結果、鷹志は吹き飛び、大地に落ちる間も無く虚空で神父のもとへと飛ばされた。
……やばいな、こりゃ強い。
強いけど……待て?今の一連の攻撃、どっかで見たような気が……。
ドゴシャドッパァアアアアンッ!!!!
声 『ギャァアアアアアス!!!!!』
凍弥 「へっ……!?」
ふと聞こえた声に、視線だけを動かしてなんとか離れた場所を見る。
すると───王国装備に身を纏ったものたちの屍の上に立っている、ひとりの獣人が。
獣人1『ウググ……イカン……ヤッパリ諸刃カウンター、強イケド痛スギル……』
獣人は既にフラフラだった。
で、そのフラフラだった獣人が───ひとりの騎士にスッ飛ばされて塵と化した。
凍弥 「……へ?」
殴ったのは───我らが総隊長のレオンとかいう男だった。
レオン「怠けた兵士たちへのいい刺激になるかと思ったが。我慢の限界だ。
クリムソン、大臣には『兵士が傷つくのを見ていられなくなった』と、
ありのままの事実を伝えてくれ」
隊長 「は、ハッ!!」
敬礼をする隊長と、腰から長剣を引き抜くレオン総隊長。
次の瞬間には地面を蹴り、一瞬で獣人の目の前まで疾駆していた。
獣人2『───!?』
獣人はその速さに驚愕し、だが振るわれた剣をなんとか受け止める。
自らバックステップしながらの受け止めだ、それなら確かに剣の威力は殺せただろう。
だがその剣の威力は獣人の体を宙に浮かせるほどのもので、
獣人はまるで吹き飛ぶかのように後方へと風を切る。
レオン総隊長はそれを隙と断定し、身体を回転させてから一気に剣を振り下ろす───!
レオン「ソニックブレスト───!!」
と、その輝く剣からは眩く大きな衝撃波が放たれた───!!
柿崎がマグニファイで放ったものとは比較にもならない……!!
獣人2『───ッ……チィ!!』
さすがにあの獣人でも空中では身動きが取れない。
あの大きさだ、当たれば確実に一撃で───ドカァッ!!
凍弥 「───!?」
……いや。
あの獣人はそんなに簡単に諦めるようなザコを貫くつもりはないらしい。
なにを思ったのか獣人は後方の地面に向け、一本の剣を投げ立てた。
そしてそれを強く蹴り弾くことで体勢を変え、なんと衝撃波を避けて見せたのだ。
凍弥 「っ……!!」
……震えた。
敵ながら天晴れってのは、本来こういう時にこそ使うのかもしれない。
───けど。そこから先はお世辞にも『戦い』とは言えなかった。
獣人は見る間に追い詰められていき、しかし防戦一方でもそれをなんとか凌いでいた。
だが再び衝撃波(ソニックブレストと言うらしい)を放たれた時、
今度はもう避けることができなかったのだ。
結果、獣人は塵と化し───その場には静寂だけが齎された。
レオン「平気か。大臣からの命令とはいえ、すまないことをした」
チン、と剣を鞘に納めると俺に手を伸ばすレオン総隊長。
俺はその手を取って立ち上がり───なんというか、
威張るでもないその総隊長にただただ唖然とした。
レオン「最近の新米兵士は怠けているから、という命令が上から降りたのだ。
そこで急遽実戦訓練をすることとなった。
その際、隊長は一切手を貸さずに兵士のみに戦わせること、とだ。
本来ならば総隊長が首を出すことではないと言われたんだがな。
だが私には見てみぬ振りなど出来なかった」
凍弥 「………」
こりゃ困った。
なかなかに出来た隊長じゃないか。
レオン「それに、お前らがやる時はやる者たちだという結果も得られた。
それで大臣が望んでいたものは達成出来ただろう。
他の者達にはすまないことをしてしまったが……」
そりゃあ……俺以外全滅って結果になってるわけだしな。
しかも経験値0。
そらそうだ、レオン総隊長はNPCで、しかも俺たちのパーティーメンバーじゃない。
けど……強さだけは本物だ。
こいつ、本気で強い。
でも逆に、鍛えればここまで強くなれるんだって目標が出来たみたいで嬉しかった。
兵士……そう、今は兵士の身でいい。
覚悟は決まった。
凍弥 「まずは……」
まずはもっと強くなろう。
やっぱ、な。
男ってのは強い存在、強い自分に憧れるものなのだ。
こんな俺でもそうなったんだから、これはきっとロマンにも似たサガってもんだろう。
俺はその場で『うん』と頷いてから、
レオン総隊長のことも忘れて教会へと走り出したのだった。
……ああもちろん、途中で眩暈に襲われて盛大に転倒したが。
自分が目ェ回してたの、思いっきり忘れてたよ。
【ケース90:晦悠介/拳は語らない(外道番長に拳で語ってみろと言われた人の意見)】
コォオ……パパァアッ!
悠介 『……はぁ』
獣人神父『大丈夫カ?コレカラハモット気ヲツケテ戦エ』
悠介 『ああすまない、助かったよ』
蘇生してもらい、目を開けてみればオルクヴィレッジ。
どうやら派手にコロがされたらしく───
獣人神父の隣に座っていた彰利が、よぅと手を上げた。
彰利 『や、強かったなぁあいつ』
悠介 『ああ。まさに相手にもなれなかった』
防戦じゃなけりゃ長続きもしなかったし、そもそも本気出してなかったぞあいつ。
やっぱり10レベル以下の実力じゃあ、どれだけ頑張ってもこんなもんだろう。
悠介 『他の獣人たちはどうしてるかな』
彰利 『さあ。キャンプを作って休もうって時に抜け出してきちまったし。
まだあのキャンプのところに居るんじゃね?』
やっぱそうだろうか。
だとすると悪いことをしたな。
独断専攻作戦無視もいいところだ。
しかもこっぴどくやられてる。
一応数名のプレイヤーを倒すことでレベルアップはしているが、金は半分持ってかれた。
うーん……もしあの騎士を倒せたら、きちんと金は戻ってくるんだろうか。
悠介 『それ以前に今の俺達じゃあ絶対に勝てないか』
虚しいが、それが現状ってやつだった。
けど強敵が居れば自ずと目標ってものが見えてくるもので───
案外俺は、あっさりと負けてしまった事実を嬉しく思っていたりした。
悠介 『よし彰利!もっともっと自分を鍛えよう!』
彰利 『えぇ〜〜?今からかぁ〜〜?オラ腹減ったぞぉ〜〜〜』
悠介 『……悟空のその言葉っていちいちねちっこいよな』
彰利 『うん、俺もそう思う』
しかし確かにそろそろ空腹は満たさなきゃいけないだろう。
そう思った俺たちは、
歓迎された際に貰った食料をバックパックから取り出して食うことにした。
それはキラービーの丸焼きとかクロウラーの蒸し焼きとか、
普通ならば食いたくないようなものだったが───
ムシャアリ……
悠介&彰利『───!!』
覚悟を決めた先に見えたもの。
それは───
悠介&彰利『うぅううまぁああいぃいいぞぉおおーーーーっ!!!!』
───それは。
かつてない味に目覚めた我らだった。
彰利 『や、やべぇ!これ美味ェYO!!』
悠介 『虫系統の食材だと侮ってた……!!これが……これがゲームの世界……!!』
それを驚きと唱えずになんと唱えよう。
そして……まあその、こうして俺たちは獣人社会にどっぷりハマっていくんだろうなぁと、
俺たちはしみじみと考え耽ったのであった。
Next
Menu
back