───冒険の書18/VSアンデッドキングダム───
【ケース109:Interlude/戦とは】
オォオオオオオオオオッ……!!!
───人の進撃がまるで地鳴りのように高鳴る。
突撃する兵の数は百では済まない───ともなれば、
この戦いでトリスタンを潰す気で居るのは間違い無いのだろう。
そう……様子を見るだとか悠長なことを度外した戦争が、今───幕を開けたのだ。
兵士 「セェエエィイイッ!!!」
ゾフィィンッ!!!
ゾンビ『グエェエァアアッ……!!』
最前列の兵が振るった剣が、トリスタン城前に群がっていたゾンビの胴を横一文字に裂く。
その後を追うように次々と疾駆し、
魔物に成り下がった存在への攻撃を連ねてゆく兵士たち。
そして───
アンデッドモンスター『ルェエエエエゥウウウッ!!!!』
その進撃に気づくや否や、地面や城の中から次々と出現を始めるアンデッドモンスター。
兵士たちは一瞬たじろぐが、それでも剣を強く握ると前進を再開する。
隊長 「突撃せよ!!アンデッドモンスターどもなぞに遅れを取るなァッ!!」
兵士たち『オォオオーーーーーッ!!!!』
隊長の言葉に猛る兵士たち。
だがその目の前に居る敵もまた、猛る兵士たちと同じと思えるほどに出現する。
その数はまさに脅威。
凶々しい姿の大群を見るだけで、一部の者は吐き気のあまりに動きを鈍くし───
その隙を打たれては、その後ろの兵が敵を屠る。
兵士 「はぁあああっ!!」
フオンッ───ギィンッ!!
兵士 「ぬっ───!?」
スケルトン『ケカカカカ……!!』
やがて敵の群れがゾンビやグールではなく、武器を持った存在になると、
先ほどまで押していたエトノワール軍の勢いも一気に弱まる。
隊長 「破墜の陣!!構えぇっ!!」
が、そういう事態になると隊長が声高らかに叫び、兵の陣形を変える。
剣を持った兵が下がり、その後ろから現れたのは───
長柄のハンマーを持った巨漢の兵たちだった。
兵士 「そぉおらぁああああっ!!!!」
ゴォッ───バゴシャァアアアアンッ!!!
スケルトン『グケェエエエッ!!?』
振るう一撃はまさに破壊の意を込めた一撃。
一振りで三体ほどを一気に吹き飛ばし破壊したそれは、
骨系モンスターとの戦に備え用意されたものだった。
そしてその戦略が吉であったか凶であったかなどは、砕け散る敵を見れば一目瞭然だろう。
隊長 「突撃ィーーッ!!相手は怯むことなど知らん亡者だ!!
ならばこちらも恐れず進み、見事討ち取ってみせよーーーっ!!」
兵士 『おぉおおおおおおっ!!!!』
兵士たち全員の声が、まるで震動の膜のように辺りに響き渡る。
突撃し、破壊し、斬りつけ、燃やしつくす。
剣士に魔法使いの連携は、これぞ王国の連携だと言わんばかりに綺麗なものだった。
そして、そんな中に混ざる、兵士たちとは呼吸の合わない冒険者たち。
彼らは───
【ケース110:清水国明/アンデッドフォース】
ワァアアアアアッ!!!
清水 「っ……!!」
田辺 「すげぇ声だ……!つーか敵の数が尋常じゃねぇぞ!?」
岡田 「どうこう考えても仕方ねぇだろっ!突っ込むぞ!!」
兵士に混ざり突撃をする。
振るう剣は弱い相手なら一撃で屠れるが、
相性に合わない敵や強い敵が相手では一撃では終われない。
それでも振るう。
俺達は足手まといになるために参加したのではないのだから。
スケルトン『ケェエッ!!!』
岡田 「遅いっ!!“ヒートブレード”!」
ゴギィンッ!ボファンッ───
岡田が振るう剣がスケルトンの鎖骨を砕く───と同時、剣から火が発生して骨を焦がす。
かつて提督が見せてくれた、剣から火が出るものの1ランク上位の技だ。
俺や田辺もそれに続き、怯みはするが逃げ出すこともなく向かっていった。
隊長 「怯むな!かかれぇっ!!」
兵士 『オォオオオオオッ!!!』
兵隊長からの声が聞こえる。
だが、その言葉は俺達の魂を揺るがすほどのものじゃない。
岡田 「ああくそっ!提督は何処に居るんだ!
原中に染まってからというもの、提督の掛け声じゃなけりゃ気合が入らん!!」
田辺 「ほんなこつー!!って言ってられもしねぇ!!くそっ!だぁりゃあっ!!」
ブンッ───ゴバシャアッ!!
ゾンビ『グェエエゥウウ……』
田辺が振るう剣と鞘の連撃が、ゾンビの頭部を破壊し砕く。
が、倒れたゾンビのすぐ後ろから襲い掛かるグールに対応するには動作が多すぎた。
田辺 「うわやべっ───」
清水 「マグニファイ!!」
俺はそれを察知するとすかさずマグニファイを発動。
風切りの刃の潜在能力を解放し、横一文字の剣閃を放つ!!
清水 「真空───波斬!!」
キヒィンゾッフィィイイインッ!!!!
グール『───……!!』
放たれた剣閃はグールの頭部を切り裂き、
その先に居た雑魚アンデッドどもをも屠ってゆく。
清水 「大丈夫か田辺!」
田辺 「わ、わりぃ!!大丈夫だ!」
岡田 「それにしてもくそっ!この数どうかしてるだろ!!」
相手にとってのこっちの数が大群だとするなら、逆もまた然り。
俺達は斬っても斬っても思うほど減ってくれない軍勢に、次第に追い詰められていった。
───と、その時。
声 「“腹肉シュートォッ”!!」
バゴシャァアアアアアンッ!!!!
グールども『ゲァアアアアアアアッ!!!!』
清水 「───!って、え……!?」
岡田 「な、なんだぁっ!?」
突如、少し離れた場所の死人垣が吹き飛び、宙に舞ったのだ。
そしてその現象は一度や二度ではなく、次々と連続して起こった。
これは……!?
声 「お客様……!?静かな景色の中では極力音を立てぬよう……!!
アァンチマナァアアーーーッ!!!キィックコォオオーーーーース!!!!」
バゴシャァアアアンッ!!ドゴォオオンッ!!!
グール『ゲギャァアアアッ!!!』
ゾンビ『ルゲェエエゥウウ……』
どっかで聞いた声とともに、次々と吹き飛ぶアンデッドモンスター。
そして───
声 「うむその意気だ藍田二等!!混ざる気などさらさら無かったが、
憩いの空気を吹き飛ばした者にはソレ相応の罰が必要である!!
総員!これより我らはエトノワール王国の兵士どもに助力し、
さっさとアンデッドモンスターどもをブチコロがすものとする!!
全力を以って───皆コロがしだぁああーーーーーーーっ!!!」
声 『Sir()!YesSir()!!』
───!!
……その時、俺の中になにか……喩えようのない熱いなにかが通った。
清水 「お、おい!今の声───」
田辺 「提督───提督だ!!」
岡田 「ウソ!?本物!?」
田辺 「間違いねぇ提督だ!!」
三人 『中井出提督がここに居るッッ!!』
そしてそれは、田辺と岡田も同じようだった。
やはりこうじゃないといけない。
あんな兵隊長ではなく、やはり我らは提督の掛け声こそに熱き魂を燃やす!!
岡田 「よっしゃあ!!どーんとやったるでい!!」
田辺 「ああっ!やってやる!!」
清水 「俄然やる気出てきた!!行くぜ我らが同志!!最高気分でハラショー!!」
こうなりゃいけるところまで行くだけだ!!
ゲームとはそういうものであり、それこそがまさに原中魂!!
我らの炎よ業火となれ!!嗚呼!心の巴里が今こそ燃ゆる!!
───などと勢いをつけたはいいが。
ゾンビやグールなどはまだ戦えたが、
スケルトンは予想以上に硬く、武器も盾も持っている分厄介だった。
現に兵士たちもゾンビやグールなどは簡単に倒せたが、
相手がスケルトンになると梃子摺っていた。
───と、その時。
声 『唸レ───!!魔神破天弾!!』
ドゴシャドッパァアアアアアアアンッ!!!!!
スケルトン×10『ギョェエァアアアアアッ!!!!』
清水 「オワァアーーーーーーッ!!!!」
やはり少し離れた場所のスケルトンが、
黒い衝撃の波動によって空高く飛ばされ、塵と化した。
一瞬見えたその先の姿。それは───
獣人1『弱イ人間ドモヨ!!コノ戦、故アッテ協力シテヤルゾ!!』
獣人2『怯ムコト無ク猛レヨ人間!!』
───それは、タクシムグレートの一件の時に見た、あの獣人たちではなかったか───?
岡田 「なにボサッとしてんだ!来るぞ!」
清水 「あ、ああっ!」
確かにボーっとしてられるほど楽な状況じゃない。
俺はもう一度気を引き締めると、
既にマグニファイの効果時間が切れた風切りの刃を手に駆け出した。
【ケース111:弦月彰利/駈ける者たち】
悠介 『鳥のように舞いて撃つ也───!!弓術奥義、鷲羽()!!』
悠介が、創造した弓と雷の矢を用いてゾンビどもを空から破壊する。
その間俺はヴォルトを倒し、テインジングマウンテンを降りる際に
モンスターをコロがしまくったお蔭で手に入れたエキストラスキル、
“ためる”の昇華スキルの“常にためる”を温存しまくっている。
一度でも攻撃をしてしまうと、その一撃めで“ためる”の効果が吹き飛ぶからだ。
だからなるべくため、一気に放つと……これがまた面白くて。
で───
彰利 『唸れ……破天弾!』
それに錬気を加えたのがこの奥義。
戦争が始まるまで溜めた力も錬気も、
初撃の魔神破天弾に使っちまったからそこまでの威力は無いが───それでも。
バゴォッ!!シュゥウウ……ン……
……グールやゾンビどもを塵と化すには十分すぎる威力ではある。
おお、拳闘士さん最強、最強拳闘士さん。
彰利 『ソッチハドウダ!ゴルダーク!!』
悠介 『勝者ハ依然、コノ“ディアヴォロ”ダ!!』
彰利 『ワケワカンネェヨ!!』
悠介 『マッタクダ!!』
悠介はなんだか、親父さんのことでなにかを吹っ切ったみたいに元気だった。
戦いの場でふざけるなんてこと、滅多になかったっていうのに。
もちろん俺もそういう反応が嬉しかったため、さらにさらにと攻防を重ねていった。
親友と無茶やっていられる瞬間てのはどうしてこんなにも楽しいのか。
ふと疑問に感じることもどうでもよくなるような思考の中で、
俺と悠介はザコどもを逃がすこともなく潰していった。
一気に結構な数を潰しているんだが───それよりも凄いのは遠くの方の誰かさんだろう。
空に舞う敵の数がハンパじゃない。
声 「武器はしっかり二刀流!!さらぁーーに!!」
声 「“空軍・()パワーシュートォッ”!!!!」
声 「攻撃力+勢いの二乗攻撃!!受けてみろ!!マグニファイ+鬼靭モード+速度!!
貴様を屠る───この俺の一撃ィイーーーーーッ!!!!
クリティカルブレェーーーーーーーーード!!!!」
ソガァアアアアアシュシュシュシュゾバズシャバキャゴキャゾッパァアアアアンッ!!!
悠介 『いぃっ!?』
彰利 『だっ───いかん悠───ゴルダーク!避けなさい!!』
なんと、遠く離れた場所から一直線、
その直線状に居る敵全てをブチコロがしながら飛翔してくるのは提督!!
いったいどんな能力を使ったのか、赤い残像を残しながら振るう剣は、
スケルトンだろうがなんだろうが全て一撃で破壊している───!!
が───
中井出「あぁあああああーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
シュゴォオオオオオーーーーーッ………………
ドゴッ!ゴシャッ!バキベキゴロゴロズシャーーーアーーー!!!
……やっぱり上手く着地する術がなかったのか、
散々敵をコロがしはしたが転がり滑り、遠くの景色の中で動かなくなった提督が居た。
……この技、連携としてはかなり諸刃だと思う。
ゾンビ『ジアァアアア……!!!』
グール『コォオァアアア……!!』
悠介 『チッ───キリが無いっ……!おいゴルベーザ!!』
彰利 『解ってる!!』
今は提督のことは捨ておこう。
この数は異常だ。
いくらザコだからって、このまま続ければいずれこっちは負けるだろう。
それは、人間側に兵士が腐るほど居ようが居まいが同じだ。
悠介 『───!ゴルベーザ!あいつだ!』
彰利 『ヌ───!?』
舌打ちをしたくなる状況の中、悠介がある一点を睨む。
その視線を追ってみれば───そこには王冠のようなものを被ったミイラ。
それだけなら別に、ただミイラが居るだけだと視線を逸らしただろう。
だが───!
ミイラ『……ルゲイム、アルゲルイ、ガルディオル、ガルディエル……』
そのミイラの周りには凶々しい“文字の羅列”が浮かび、ミイラを中心に広がると───
ボゴッ!メコモコ……!!
彰利 『───!なっ……マジか……!?』
そいつの周りの地面からゆっくりと、
だが確実に新たなアンデッドモンスターが生まれてくるじゃないか。
これには俺も悠介も、驚愕を隠すことは出来なかった。
彰利 『くそっ!減らねぇわけだ!!
行くぜゴルダーク!なによりもまずアイツをコロがす!!』
悠介 『解ってる!!解ってるが───!!』
彰利 『へっ!?おわっ、おわぁああああっ!!!』
こちらの意図を読み取ったのか。
突如、兵士たちと遣り合っていたゾンビにグール、
スケルトンどもが俺達への攻撃を開始する。
が、一方で兵士の手が空いたのかといえばそうじゃない。
新たに魔術かなんかで呼び出されたアンデッドゴーレムが、その行く手を阻んだのだ。
これはちょっと……いや、かなりシャレになってねぇ。
悠介 『くっそ……!邪魔だ!!───彰っ……ゴルベーザ!!溜めは十分か!?』
彰利 『あ、ああっ!!一応───』
悠介 『だったら───来い!!お前を飛ばす!!』
彰利 『飛ばす!?それって───いや解った!今行く!』
考えるまでもない。
あいつが来いって言ってるなら行けばいい。
俺達はずっとそうして、互いの意思を信じて乗り切ってきたんだから───!!
彰利 『ちょっと失礼っ!!』
俺は既に囲まれているような状況の最中、振るわれたスケルトンの剣を避け、
地面に刺さったソレを踏み台に一気にスケルトンの身体を駆け上る。
そしてさらにAGLをMAXに振り分け、
周りに居るゾンビやグールやスケルトンどもを地にするかのように疾駆し───
彰利 『ゴルダーク!』
悠介 『行くぞ!!一発でキメてこい!!』
彰利 『あいよ了解!!』
悠介 『吹き荒れろ烈風!!風精闘気-昇-!!』
悠介の側にまでアンデッドや兵士を踏み台にして駈けると、
今度は悠介が創造した“昇る風”にノって空へと舞う───!!
彰利 『上空からなら狙いようがねぇだろ!!
唸れ、無情なる錬気の波動よ───我が敵なる者を微塵と砕け!!
紅葉刀閃流無刀の型……!』
風によって上空へと飛んだ俺は、その先でミイラの野郎をする。
そうして狙いをつけると、俺を押し上げた風さえも巻き込み力に変換し……!!
彰利 『闘覇-滅-“降龍”!!』
───一気に放つ!!
ドゴォッッチュゥウウウウンッ!!!!!
斜め下。
見下ろす視線の先に居るミイラ目掛け、
錬気とともに足から放った闘気の塊は、寸分の狂いもなくミイラへと落ちてゆく。
放ったソレは確実にミイラくらい破壊出来る威力はあるだろう。
これがミイラを破壊すれば戦況は大きく変わる。
それは確実だった。
だが───その時だった。
アンデッドゴーレム『グォオオオオオオォオオオンンッ!!!!』
彰利 『あ───ちぃっ!!』
ミイラまでの一直線……その軌道上に、アンデッドゴーレムが立ち塞がったのだ。
まるで召喚主を守るかのように。
こちらも半端な覚悟で放ったわけじゃない。
心配するまでもなく、アンデッドゴーレムを破壊するくらいの威力はあるだろう。
だが───アンデッドゴーレムを破壊してもまだ、
ミイラを屠れるほどの威力が残るかは解らな───
悠介 『失敗した時のことなんていちいち考えるな!!考える暇があるなら実行しろ!!
それが出来ないならすぐに指示くらいよこせ、このたわけ───!!』
い、と思考しようとした頭は一気に冷や水をかけられたかのように跳ね、
俺を現実へと引き戻す。
そして落下してゆく景色の中で見下ろしたものは───
アンデッドゴーレムへと疾駆する悠介の姿だった。
悠介 『邪魔なのはこいつだな!?───イメージしろ……破壊し、塵と化すその対象を!
黄竜の波動よ!僅か一時のみ我に破壊の恵みを与えたまえ!』
タタタタタンッ───!
悠介がアンデッドゴーレムの朽ちた身体を駆け上り、
高い位置にある頭頂までに至ると後方へ跳躍。
その刹那になにかのアイテムを口に含むと、すぐ後ろに迫る“降龍”を一瞥して笑んだ。
悠介 『吼え猛ろ咆哮!!』
キィンッ!!
───そして。
手の内に創造した長剣を一回転させた次の瞬間。
後方へと飛んでいた筈の身体は“降龍”より速い流星となり、
眼下の巨体へと舞い降りる───!!
悠介 『“黄竜剣”!!』
ギシャゴバァアアォオオオオオンッ!!!!
彰利 『うぃいいっ!!?』
兵士 「なっ……!?」
清水 「ひっ……ひえぇえええっ!!?」
金色の波動が景色を眩しく照らした。
悠介が放って見せたのは……まさかの黄竜奥義、黄竜剣。
その一撃はアンデッドゴーレムを一撃で破壊しても飽き足らず、
その足元に居たアンデッドどもまでも余波で破壊するほどの破壊力だ。
当然喰らったザコどもは塵と化し、
まともに喰らったアンデッドゴーレムなど、
断末魔の叫びを上げる余裕さえ与えられなかった。
悠介 『───だめか。もう効き目が切れた』
けど、それはヘンだ。
今の悠介に竜人剣技が使える筈は───って効き目?
彰利 『あ、あーあーあー!!そうかそういうこと《ドグシャアッ!!》ブゲッ!!』
ようやく理解に至った途端に地面に落下した。
しかも脇腹痛打……おお痛い。
彰利 『いづづづづ……まあそれはそれとして』
思い出した。
そういやテインジングマウンテンを降りる時、
一際綺麗な宝箱から妙な名前のグミを手に入れてた筈だ。
確か……10秒間だけHPが減らない、なんていう効果のアイテム。
あんな無茶な攻撃が出来るのは、それを使って創造を行使したからだろう。
HPが減らないのなら創造の幅なんて気にせずイメージ通りの創造が可能となる。
悠介はそれを利用したのだ。
普通に考えて、俺には必要ないと思ったからあげたんだが……こんな使い道が。
彰利 『ははっ……よっしゃあ!こりゃ負けてらんねぇ!!いっくぜぇええええっ!!!』
その強さが俺を奮い立たせる。
負けてられないって思いと、頼りになるという思い。
信頼して背中を預けることができるって思いが、俺をさらに前へと走らせた。
───直後、離れた場所で爆発。
“降龍”が呪文を唱えていたミイラを破壊し、
周りのアンデッドモンスターを吹き飛ばしたのだ。
他の場所にもミイラの姿は見て取れたが、これで今よりも数は減る筈。
あとは可能な限りブッ潰していくだけだ!!
【ケース112:中井出博光/くすぶるハートに業火を灯せ】
中井出「ゲェッフ!ゴフッ!!い、いででで……!」
空を飛び、大地を転がり滑った自分を起こす。
少し気絶……というかスタンをしていたようで、しばらく動けもしなかった。
が、すぐにアップルグミを噛むと立ち上がった。
中井出「ぬおおおおっ!!!」
既にマグニファイの効果は消えてしまっていたが、こっちには鬼靭モードがある。
よし……怯むなよ?と、自分に言い聞かせるように、自分を信じた。
グール×4『キョエェエエエエエエッ!!!』
───途端、ひとりの兵士を4体がかりで倒したグールどもが一斉に俺へと向かってくる。
中井出「フッ、俺をかつての俺だと思うなよ?鬼靭モード全開!!
ご覧に入れよう、昇華せし俺の剣技……剣技・ファイアソードのモード!」
説明しよう!ファイアソードのモードとは、
かつて俺が初心者修練場で閃いた、剣から小さな火が出る剣技を昇華させるものである。
中井出「とっととあの世へ逝っちまえぇえーーーーーーーっ!!!!」
死人には火葬!!
土葬って手もあるが、生憎俺は火葬派なのだ。
ヴォフォンッゴバシソフィザフィブファァアンッ!!!
連ねる炎剣の連撃がグールどもを切り刻み、燃やしてゆく。
おお、この切れ味……最強!!
ゾンビ 『マ゙ァアアアーーーーーッ!!!!』
スケルトン『コケケケェエエエッ!!!!』
中井出 「オワッ!?」
───などと、強くなった自分に喜んでいる暇も無い。
こりゃちょっと数が多すぎないか!?
中井出「や、やべっ……!こりゃ素直に藍田二等たちと合流したほうが良さそうだ……!」
そう思った俺はもちろん突貫。
藍田や丘野たちが居る場所まで一直線に進むつもりで双剣ガザミを振るってゆく。
が、双剣ガザミは鬼人化を発動させてこそ強いようで、
通常状態ではあまりに戦闘向けではないことが判明。
……もちろん、予備の武器なぞ持っちゃいない。
中井出「ああくそっ!やってやるわぁあああっ!!!」
もうヤケだぞ俺は!!
我が双剣に焔よ宿れ!!
そう、鬼人化は無くとも鬼靭モードがあるのだ!!
TPは減っていくが攻撃力は上昇している!
これがあればまだまだそこいらのザコには負けん!!
───などと思っていた時だった!!
声 「提督!?おおっ!やっぱ提督だ!!」
中井出「なにやつ!?」
戦場のド真ん中で声を掛けられた俺は即座に武器を構える!
が、振り向いた先に居たのはなんと、
ブックオフの某ヘビーユーザーとは関係ない、我らが原中の清水国明ではないか。
しかもその横には田辺と岡田まで居る。
中井出「お、おお!貴様らこんなところでなにをやっとるか!
ここは戦場!殺意の篭らぬ攻撃で倒せる敵などただ一人として無し!!」
清水 「興奮してるのは見てりゃ解るけど落ち着け提督!」
田辺 「どっから説明したもんか解らんが、
ともかく俺達ゃエトノワール所属の冒険者なんだよ!!」
中井出「そうなのか!?じゃあなに、この戦いってイベントなのか?」
岡田 「イベントというよりはミッションであります!サー!!」
中井出「ぬううそうか!!では貴様らの健闘を祈るとともに、さらなる力をここに!
オペラツィオン:無敵の進軍マァーーーーチ!!!」
声高らかに叫ぶ。
説明しよう、オペラツィオン(オペレーション)無敵の進軍マーチとは、
我らのパーティー内で決めた合図である。
この言葉を聞いたら10分アビリティを使用するものとす───それが無敵の進軍マーチ。
べつに奏ではしないが、なんとなくつけた名前である!!
ゴォッ───モンシャンシャンシャンシャアアアン!!!
清水 「お……おぉっ!?なんかいきなりHPとTPが回復して……!?」
中井出「うむ!漢神の祝福である!!
残念だがいつの間にか行われたバージョンンアップによって
攻撃力25%アップ効果が削られてしまったが、それでもこのアビリティは最強!
パーティーでなくても効果が出て、尚且つ攻撃力5%アップ!!
さすがに範囲能力となるが、それでも十分なほどだ!」
岡田 「サッ……サンキューサー!!」
中井出「うむよし!それでは各自武器を持ち、挫けることなく進軍せよ!!
全軍突撃ィイーーーーーーーッ!!!!」
ザザッ!!
総員 『Sir()!YesSir()!!』
掛け声とともに三人は敬礼をし、次の瞬間にはもう戦闘に復帰していた。
するとどうだろう。
その勢いは他の兵士のそれとは比べ物にならんほど勢いづいていて、
次々と敵をコロがしてゆくではないか。
……あれも一応、“エール”ってことになるんだろうか。
中井出「っと、こうしちゃおれん!さっさと合流しないとなっ!!」
双剣を握る手に力が篭る。
ええい!いざいざいざぁああああっ!!!
中井出「敵は所詮動きの遅いアンデッド!ならばこちらは攻撃力のみに特化した閃き技!
昇華しろ剣技!“剛刃流走()”!!」
火のモードから刃のモードへ!
属性は何も付かんが攻撃力に+修正の、防御を知らぬ我が攻撃を受けよ!!
ゾバシュゴバドバザシュゾシュゾパァンッ!!
アンデッドモンスター『ホォオオルェエエエエエエエエッ!!!』
クオオ、この“敵を一撃で屠りまくる”という快感!!
まさに三国無双気分!!
スケルトン『ケァアッ!!』
ザフィィンッ!!
中井出「いがぁっ!!?っ……こンのっ───!!」
爽快感に飲まれるのも束の間、背をスケルトンに切りつけられて目を覚ました。
振り向き様にスケルトンを破壊し、頭を振って爽快感を消す。
ゲームだからって、今は真面目にやらなきゃ負けるだけだ。
あまり浮かれるな───そう言い聞かせるように。
中井出「我が名は原中の中井出博光!御用とお急ぎでない方はどんどん来やがれぇっ!!」
でも楽しいのは確かだから、
双剣を強く握ると目の前に広がるモンスターの大群へと駆け出した。
中井出「焚ッ!!」
フオッ───バカッ!ガギィンッ!ゴパキャッ───!
軽快に双剣を奔らせてゆく。
破壊力は十分。
一撃で頭部を破壊し、それが済むと次へ、次へと駆けてゆく。
───これが戦いだ。
晦や彰利が、空界で見てきた視界。
緊張感と高揚感、そして不安に包まれながら剣を振るう世界。
一瞬の判断ミスが死へと繋がる世界だ。
けど俺は、こんな状況が嬉しい。
この世界はニセモノだけど、ようやくあいつらと同じ景色を見ることが出来たんだから。
……ゲームの名前はアレだけど、ここに来れてよかったって思える。
中井出「オラオラオラオラどけどけどけどけぇええええっ!!!」
群がる敵をバッタバッタと薙ぎ倒す!!
剣が届かなかったら蹴り込んで吹き飛ばし、
腰にしがみついてくるやつが居ればDDT!
ブレーンバスター!リバースジャイアントスイング!!
中井出「ふははははは!!俺をただのゲームプレイヤーだと思うなぁーーーっ!!
既存の設定に縛られた剣士には到底理解出来ん!!」
エトノワール兵士どもが異常者を見るような目で俺を見るが、そんなものは無視無視無視!
見よ!これが貴様ら平凡兵士との違いだ!!
俺達は自由だ!型にハマった戦いなどせず、いつだって常識の壁への下克上の毎日!
これぞ原中魂!略して原ソウル!!
中井出「オラオラオラオラ帰()れ帰れ帰れ帰れ!!」
グール『ホェアァアアアアッ!!!』
群がるグールを斬り、足を掴もうとしてくるゾンビに炸裂アイアンシューズシュート!
遠き者は耳に聞け!近き者は目にも見よ!
中井出「俺が原沢南中学校提督!!中井出博光であるーーーーーーーっ!!!!」
名乗りに名乗って暴れまくる。
やがてアンデッドどもの海を越えると、
そこには尚も敵を蹴りコロがしまくる藍田二等の姿が。
藍田 「おお提督!無事だったか!」
中井出「余裕!(多分)」
ズビシィと決めポーズを取るも、内心とてもいっぱいいっぱいだった。
とりあえずまずはレモングミだ。
と、HPを回復させた時点で漢神の祝福の効果が切れた。
藍田 「くっそ……相変わらず切れるの速いな……!」
藍田も一旦後ろへ下がるとレモングミを噛み、呼吸を整えた。
だが今の漢神の祝福のおかげで一気に敵の数は減った。
あとはトリスタン王城の壊れた門の下に少し居る程度だ。
藍田 「っし───あと一息!!」
中井出「よし───って、丘野は!?」
藍田 「生分身の術を駆使して奥に居る妙なミイラをコロがしに行った!
そいつがアンデッドモンスター召喚してたみたいだ!」
中井出「そか!じゃあ俺達は他のザコどもを───」
ドガァンッ!!
兵士×4『ぐあぁあああっ!!!』
中井出 「へ───?」
藍田 「なんだぁっ!?」
いざ、と───藍田とともに駆け出した時だった。
壊れた城門の下へと向かったエトノワール兵どもが宙に舞ったのだ。
何事かと目を凝らせば、そこに居るのは───!!
兵士 「で、出たぁっ!!ジュノーンだぁあーーーっ!!!」
そう。
いつか見た、不死戦士と呼ばれる怪物だった。
凶々しい鎧に身を纏ったそいつは、
他のアンデッドモンスターもろとも兵士を吹き飛ばし、ゆっくりと歩いてくる。
隊長 「なにをしている!進め!敵は既にあいつのみだぞ!!」
ここから見える王城の景色。
そこでミイラらしきものが暗殺された瞬間、
確かに他のアンデッドモンスターは塵と化した。
だが不死戦士は別だ。
最後の一体になったってのにゆっくりと、ゆっくりと歩いてくる。
兵士 「くそっ……でやぁああああっ!!!」
隊長の言葉に触発されたからだろう。
極度の緊張に包まれていた兵士は声を上げ、剣と盾を手に駆け出した。
ジュノーン『………』
そう、普通に考えれば盾でガードすれば、少なくとも死ぬことなんて無いだろう。
けどそれは───
ゴバシャァアンッ!!!
兵士 「え───ぎゃぁあああああああっ!!!!」
相手の攻撃力が、盾の耐久力より下だった場合のみなのだ。
結果、兵士は身の丈ほどある盾ごと胴を斬られ、絶命した。
兵士 「ヒッ……!?」
それを見れば、他の兵士も自分が持っている盾や、
身に着けている鎧が如何に無駄なものかが解るだろう。
藍田 「ちょ……ちょっと待てよ……。なんだよあいつ……。
盾や鎧ごと兵士ブッた斬りやがったのか……?」
それは───藍田がそう呟いた次の瞬間だっただろうか。
不死戦士はやはりゆっくりと剣を横に振り被ると、
右手だけで持っていた剣に左手を添え───笑ったような気がした。
獣人2『───!伏セロォオーーーーーーーーッ!!!!』
中井出「え───、っ!!」
俺達は聞こえた獣人の声に素直に反応した。
どうしてかは解らない。
だが、そうしなければ───
ジュノーン『薙ぎ……払え……烈風……!ソニックブレスト……!!』
ゴアゾバガギィイヂヂギギャァアォオオンッ!!!
兵士 『ひっ……ひぎゃぁあああああああああっ!!!!!』
ゴォッ……ォオオオゥウゥゥ───ンン……!!
───そうしなければ。
恐らく俺達はこの場に立っていることは出来なかっただろうから。
中井出「っ……」
藍田 「………」
唖然とする他無い。
あれほど、邪魔臭くなるほどにごった返してた兵士が、少数を残して全て全滅したのだ。
死んだわけじゃない。
けど、誰が見たところでそれは再戦不可能と思えるくらいの状態だった。
藍田 「剣……一振りでこれだって……?は、はは……冗談じゃねぇ……」
これが格の違いってやつだろう。
俺達はトントン拍子でレベルが上がることに、どこか浮かれてたのかもしれない。
だが、誰が思おう。
あんなザコたちの先に君臨するアンデッドキングがこれほどまでの強者だということを。
隊長 「くっ……!こんな馬鹿な!!───おい!突入部隊はまだ戻らんのか!!」
兵士 「は!それがまだ……い、いえ!戻って来ました!
パウダー発生の元の破壊は終了したそうです!!」
隊長 「そうか!!では各自撤退を開始しろ!余裕のある者は他の兵に肩を貸せ!!
鎧を捨て、身軽になってでも逃げ切るのだ!!それが国王の指令だ!!」
兵士 「ハッ!!退避ーーーっ!!総員退避ーーーっ!!!」
ピィーーーーッ!!
戦場に高い笛の音が響く。
恐らく撤退の合図だろう。
俺と藍田、麻衣香と殊戸瀬と木村夏子は頷き合うと、
丘野の合流を待ってから行動を開始した。
藍田はジュノーンを引き付け、殊戸瀬が漢神の祝福で兵士たちを回復させる。
さっきは麻衣香だけしか使ってなかったらしく、
こんなところでも殊戸瀬の用意周到っぷりが役に立った。
木村夏子は……呪われ中だ。
藍田 「出来るだけ早く逃げてくれ!こっちはそう長くは保たねぇ!!」
中井出「解ってる!!」
不死戦士の強さは常識外れだ。
恐らく、いくら藍田二等でも一撃保てばいいほう。
避け続けてくれるのを祈るしかない。
ジュノーン『ルォオオオ……!!』
ブフォンッ!!
藍田 「っ───」
不死戦士の攻撃を避ける藍田。
攻撃自体は遅いが、その威力は先ほど見た通りだ。
一撃でも喰らえば、上半身と下半身が乖離させられるだろう。
そんな絶望への緊張もあってか、藍田の動きにはいつもの軽やかさがまるで無かった。
やばいぞ……あのままじゃ……!
ドカァッ!!
ジュノーン『グ……?』
獣人1 『遊ボウカ』
思考に嫌な予感が流れたその時。
藍田を標的として見ていた不死戦士に蹴りを加える獣人が居た。
藍田 「お前はっ!!くそっ!こんな時に───」
獣人1『勘違イスルナ、弱イニンゲン。我ラハ手助ケニ来タダケダ』
藍田 「そ、そんなの信じられ───!」
獣人2『問答ヲシテイル場合カ?死ニタケレバ別ダガ』
二体の獣人が、戸惑う藍田とともに不死戦士を睨む。
その内に兵士たちは次々と戦線を離脱する。
一人、また一人と引き───やがて最後に清水たちが俺達に手を振って去っていった。
あとは───
中井出「藍田二等ォーーーッ!!!離脱は完了した!お前も早く逃げろォーーーッ!!!」
藍田 「っ……待ってましたその言葉!!」
そうして、脇目も振らずにこちらへ戻ってくる藍田二等と合流。
俺と丘野とで先に女性軍を逃がし、それから俺達も離脱した。
獣人2『ゴルベーザ!我ラモ離脱スルゾ!!』
獣人1『解ッタ!!』
その後方では、俺達の手助けをしてくれた獣人たちが戦線離脱をする。
不死戦士は───俺達や獣人たちを追うでもなく。
ただ静かに、低い唸りを上げるように笑っていた。
先ほどまでの轟音のような戦いが嘘のような、静寂に包まれた戦場。
そこに……ただ静かな笑い声だけが残された。
Next
Menu
back