───冒険の書26/初心者修練場バトル(再)───
【ケース147:霧波川凍弥(再)/でってげで〜でって〜〜〜ん♪】
キィイイ……コフィィイイインッ!!
景色が輝いたと思ったら、いつの間にか草原に立っていた。
凍弥 「あ───れ……?」
浩介 「ウオッ!?こ、これは何事!?」
見える景色は、目を閉じる前とはまるで違う場所。
広い草原と、崖っぷちの先の海。
そして───吊り橋の先にある大きな城と、その上に広がる広大な蒼空。
それは紛れも無く───地球上の何処にも無い景色だった。
浩之 「お……おおおおお!!!これがファンタジー!?」
浩介 「あの城に行けばいいのだな!?ゴー!ブラザーゴー!!」
浩之 「う、うむ!!早速行ってみよう!!」
ズドドドドドド!!!
凍弥 「あっ───ちょ、待てぇええっ!!状況判断もしないで───」
佐古田「なに言ってるッス。状況判断なんてゲームには邪魔なだけッス。
というわけでアチキも行くッス!!待つッス双子どもーーーっ!!」
凍弥 「ぬお───ったく!
いいやもう、確かにゲームの中でアレコレ考えてもしょうがない!
行くぞ椛!これがゲームだっていうなら、思いっきり楽しむだけだ!」
椛 「は、はいっ!」
椛の手を取って駆け出す。
この先にどんなことが待っていようとも、
ゲームならば全力で楽しもうという意気を持って───!!
───……。
……。
ゴッ……ゴコォンッ……!!
浩介 「ぬっ……くっ……!!」
浩之 「重いねアンタ……!!」
志摩兄弟の手で開かれた巨大な扉。
その先には……やっぱり広大な城の中身が広がっていた。
佐古田「うあ……この城だけで道に迷いそうッス……」
あながち間違いじゃなさそうなのが怖い。
それくらい広い城内が目の前にあった。
と───そんな広い城の中、ひとりの男がこっちに歩いてきた。
ナイト「ようこそ博光の野望オンラインの世界へ。新規の冒険者ですね?」
志摩 『うむそうだ』
ナイト「ここは元ゲームマスター、晦悠介の力で創造された『精神空間』。
さらにそれを精霊たちが安定に導いている世界です。
この世界は精神と精神を繋げる巨大空間であり、
その巨大空間に皆さんの精神を繋げることでこのゲームは成り立っています。
当然皆さんの精神もひとりひとりと繋がっていますので、
発言設定を変えれば何処でも、誰とでも会話することが可能です。
それゆえに『オンライン』という名前がつけられています」
凍弥 「ふむふむ」
ナイト「それを理解して頂いた上で、まずこの首飾りを身に着けてください」
ナイトが首飾りを人数分くれる。
俺達は一応逆らうこともなくそれを首に下げると───
浩之 「むうブラザー!?なにか出てきたぞ!?」
浩介 「う、うむ!これはいったい……!?」
ナイト「バージョンアップによって“ステイト”の言葉を言う必要は無くなりました。
まずはHPとTPが情報バーとして視界の何処かに出ていると思います。
ここまではよろしいですか?」
浩之 「うむよろしい!!」
ナイト「では───はぁっ!」
ぺぺらぺっぺぺ〜♪
凍弥 「っと……?」
ナイトが気合を込めると、突如としてパラメータが変動した。
……どうやらレベルアップを果たしたらしい。
ナイト「レベルが上がったと思います。
ではまず、情報バーに意識を通して開きたい項目に意識をぶつけてみてください。
難しいことではなく、ただこの項目を開きたいと思うだけで結構です」
椛 「……?」
ナイト「ではステータスの項目を開いてみましょう。……開きましたか?」
凍弥 「開けた。そっちはどうだ?」
志摩 『当然開けたわ』
椛 「はい、こっちも大丈夫です」
佐古田「当然ッス」
ナイト「ではステータスの振り分けです。
レベルアップをしたことでステータスボーナスが加算されているので、
好きなパラメータに振り分けることが出来ます。
このボーナスがレベルアップごとに加算されるので、頑張って強くなりましょう。
それからパラメータの振り分けは一度振り分けてしまったら取り返しがつかない、
などということは一切ありません。
いつでも何処でも自由に振り分けることが出来ます」
おお……それはなかなか画期的なシステム
ナイト「では次の説明に入ります。
今回のバージョンアップにおいて、“ジョブシステム”が削除されました。
ジョブチェンジシステムとクラスチェンジシステムが使用不可になります。
代わりに称号システムが本実装されました。これは使う武器によって、
閃く技や覚えられるアビリティが変わるというシステムです。
このことについては、追ってナビに手紙が届くのでそれを参考にしてください」
浩介 「む。了解した」
ナイト「基本的にこの世界はなんでもアリです。
盗みも自由ですし、NPCに喧嘩を売ることも出来ます。
自由度がウリのゲームですので、是非自由に振舞ってください。
ただし常識を逸脱した行動を取りすぎると
指名手配も夢ではありませんので気をつけてください」
浩之 「指名手配……佐古田好恵あたりが一番になりそうだな」
佐古田「大きなお世話ッス!!」
ナイト「さて、最後になりますが───この世界は戦いだけが全てではありません。
そのまま冒険者になるもよし、王国直属の剣士や魔法使いになるもよし、
調合屋や鍛冶屋になるもよし。真実自由に作られています。
現在の勢力はゼプシオン率いるイルザーグ王国、
レイナート率いるエトノワール王国、サイナート率いるランダーク王国、
レックナート率いるセントール王国。
そしてイーヴィルバーグ率いる獣人王国と、
ジュノーン率いるトリスタン王国です。
勢力に入るのならば、トリスタンとイルザーグ以外なら何処にでも入れます。
なお、獣人勢力にはレベルの低い状態でなくては入れませんでしたが、
今回のバージョンアップによって制限が解除されました。
獣人を10体以上倒していない状態で、
戦うのではなく話し掛けて仲間になりたい意思を告げれば
勢力に入ることが出来ます。ただし、他の勢力に入っていない場合のみです。
そのことを覚えておいてください」
浩介 「むう……」
椛 「その勢力には必ず入らなければいけないんですか?」
ナイト「それは否です。自由人という勢力外の存在もあり、
現在ログインしている人の大多数はこれに属しています」
……まあその、なんていうか冒険者らしい、とは思う。
俺も無難に自由人かな。
志摩兄弟は絶対に自由人を選ぶだろうが。
椛 「あのっ……おと───弦月彰利という人がどの勢力に居るのか解りますかっ!?」
ナイト「申し訳ありませんが他プレイヤーのプライバシーをお伝えすることは出来ません」
椛 「あぅ……」
ナイトの言葉に、しゅんと落ち込む椛の頭をポムポムと撫でる。
これも……なんだかんだで彰衛門が得意だった“楓巫女”の慰め方なんだよな。
彰衛門はほんと、椛の扱い方だけは究極の腕前だった。
俺じゃあ、ああはいかない。
ナイト「では武器庫へご案内しましょう。
お好きな武器を手に取って、自分に最も適した武器を決めてください。
大多数の人はそれが一生付き合う武器となります」
浩介 「うむ案内されよう」
浩之 「ムフフフフ……どんな武器を装備してくれようか……!!」
凍弥 「俺は……あれば刀かな」
浩介 「鈍器である!!我は断然鈍器!!」
浩之 「なにぃ!?真似するなブラザー!!鈍器は我が選ぶつもりだったんだぞ!!
貴様は大人しく包丁でも使っていろブラザー!!」
浩介 「なんだと貴様ブラザー!!」
浩之 「やるかこのブラザー!!」
凍弥 「はいはい喧嘩なら余所でやってくれ。───椛はどんな武器で行くんだ?」
話題逸らしの意味も含めて椛に話を促す。
と……椛は難しそうな顔をしたのちに『見てから決めます』の一言。
で、その横で『アチキも鈍器ッスかねぇ……』と呟いているのは佐古田。
俺はそんな鈍器だらけのパーティーになりそうな仲間たちとともに、
案内されるままに武器庫へと辿り着いた。
ナイト「こちらが武器庫になります。
好きな武器防具を装備し、その状態で私に話し掛けてください。
バトルフィールドへ飛ばします」
志摩 『よしきた!!うっひゃっほォーーーーーゥイ!!』
好きな武器防具を装備し、という言葉を聞いて、跳ねるように駆け出す志摩兄弟。
もちろん俺も椛に『それじゃあ後でな』と声をかけたのちに激走!!
男ならば一度は夢に見るであろうファンタジー装備……!!
それを前にして冷静で居られる野郎なんざ野郎じゃねぇ!!(意味不明)
浩介 「なにはなくともまず武器である!!」
浩之 「ウーヌ!!初級武器だけあって攻撃力はカス程度だ!!」
凍弥 「だが種類の多さがこの興奮をいつまでも維持させる……!!」
浩介 「ウッ……ウォオオーーーーーッ!!!!ファンタジィーーーーーッ!!!!」
凍弥 「ファンタジィーーーーッ!!!ウォオオーーーーッ!!!」
浩之 「ファンタジィイイイイイーーーーーーーッ!!!!!」
現状───男衆:暴走中。
女衆:見えないから謎。
浩介 「よ、よし!!では我はこの鉄棍棒で!!」
浩之 「我はこの大木槌で!!」
凍弥 「よし!じゃあ俺はこの太刀で!」
浩介 「ウーヌ!!では次は防具だな!」
浩之 「きっとステキな造型のものがあるに違い無し!!
さ、さあ!どんなものを装備してくれようか!!」
俺と志摩兄弟は逸る気持ちを抑えようともせずに防具コーナーへと駆けた!!
が……
凍弥&志摩『………………』
防具系は皮系の装備と執事服の他には一切存在しなかった。
武器一式の品揃えとの差に、俺達は呆然とするしかなかった……。
───……。
……。
さらにややあって───俺達はバトルフィールドに立っていた。
凍弥&志摩『ッシャアァァーーーーーッ!!!!』
吼えろ刀技!唸れ鈍器!!
俺達の冒険は───始まったばかりだ!!(打ち切り漫画のように)
浩介 「セオリー!まずはスライムを血祭りに上げてくれる!!」
浩之 「スライムに血があるとは思えんがとりあえず粉砕!!」
凍弥 「だったら俺は切り刻む!!」
鉄棍棒を振るう浩介!
大木槌を振るう浩之!
太刀を振るう俺!
杖を振るう椛!
片手斧を振るう佐古田!
……その誰もが執事服だったり女中服だったりするのは……まあ。
皮装備に身を包むよりもこっちのほうが意外性があっていいと思ったからで。
装備した途端に『主人を選択してください』とか出てきた時は訳が解らんかったが。
全員適当に椛を選択したんだが……なんだったんだろな。
ちなみに椛は俺を選択した。
だからなにが起きたってことは……無いんだと思う。
浩介 「死ぬぅぇええええい!!!」
ボゴォッチュゥウウウウウウンッ!!!
スライムA『ピョギャアァアアアッ!!!!』
振るう鈍器がスライムを微塵と砕く!!
浩之 「ミンチにしてくれるわぁーーーーーっ!!!!」
ドオッッッシィイイインッ!!!
スライムB『ブギッ!?』
振るう木製ハンマーが敵をブッ潰す!!
さらに斬り、殴り、ブッた斬る攻撃がスライムどもを一掃する!!
浩介 「ヌオオオオオオオッ!!!!気ン持ちいぃいーーーーっ!!」
浩之 「敵!もっと敵はおらんのか!!」
塵となって消えてゆくスライムは既に無視。
次を望んで叫ぶ彼らは既に修羅のようだった。
……まあその、もちろん俺も。
凍弥 「切り刻む!」
モス 『プギィーーーッ!!』
凍弥 「遅いッ!!」
モンスターと見れば攻撃!
そこに一切の躊躇無し!!
相手もこちらを敵と見做し、攻撃を仕掛けてくるが───
それを歩法の運びで増した速度を以って躱す!!
凍弥 「せェいっ!!」
ゾフィンッ!ザゾスッ!バシュウッ!!
モス 『ビギィイッ!!』
奔る四連斬がブタモンスターの頭、前足、胴、背を斬ってゆく。
……よし。
ナマッてはいるけど、刀を振るう感覚はそう鈍っちゃいない。
消えたモスを見ながら息を吐いた。
浩介 「おお、同志も絶好調だな」
浩之 「我らもなにやら体に力が漲る気分ぞ!!」
佐古田「斧が結構楽に振るえるッス!これもファンタジー効果ッス!?」
志摩 『……元の馬鹿力ではないか?』
佐古田「うるせーッス!!か弱い乙女の腕力をなんだと思ってるッス!?」
凍弥 「落ち着け佐古田。お前はか弱くもなければ乙女でもない」
佐古田「言い切ったッス!?こ、この佐古田好恵!心はいつでも乙女ッス!!」
凍弥 「要所要所で雄々しい貴様が乙女なわけあるかぁっ!!」
浩介 「同志よ……今のはどうあっても心以外が乙女になりようがないという、
佐古田好恵の悲しい告白なのだ……受け止めてやれ……」
凍弥 「……そうか……そうだったのか……。ごめん……マジでごめん……」
佐古田「マジで謝るじゃねぇッス!!てめぇらアチキを馬鹿にしてるッス!?」
浩之 「……改めて馬鹿に出来るほど、脳内がマシになったとは思えんが」
佐古田「貴様マジブッ殺す!そこになおれ!!」
凍弥 「ほら見ろやっぱり雄々しいじゃねぇか!!」
浩介 「この漢女()!!漢女()と書いてオトメめが!!」
佐古田「ギ、ギィイイーーーーーーッ!!!!
今こそ開幕する斬殺ショーに酔いしれるッスーーーッ!!!!」
凍弥 「キャーーーッ!!漢女が怒ったーーーっ!!」
浩介 「逃ーーげーーろーーーっ!!晩飯にされるぞーーーーっ!!!」
佐古田「どういう逃走文句ッスてめぇーーーーっ!!!」
俺達のファンタジーデビューは、やっぱり普段通りに進められたのだった。
ようするにファンタジーに降り立っても俺達は俺達だった、ということで。
椛 「真面目に戦う気ゼロですかっ!?」
凍弥 「───椛よ……今俺達が立っているのはどんな場所だ?」
椛の言葉にハタと立ち止まり、正面に立って彼女の肩を抱いて見つめる。
椛はそんな状況にポムと顔を赤くしたが、律儀に
椛 「ゲ……ゲームの世界、です……」
と答えてくれた。
だから俺もウムと頷いて、
凍弥 「……それが答えだ!!」
再び駆け出した!!
凍弥 「ゲームとは即ち遊び!
遊びの中ではここぞという時以外には難しい考えなぞ不必要!!」
浩介 「そうだ!その通りだ!」
浩之 「よく言った同志!!」
なんでもありならなんでもありに相応しい行動を取るべきである!!
というわけで。
獣人 『フオォオオオッ!!!!』
凍弥 「浩介!浩之!セットイン!!」
志摩 『ラジャー・ビュー!!』
凍弥 「スラァーーイ!!」
出てきた獣人目掛けてまずは俺が牽制のスライディング!!
仕掛ける際に俺達の身体が順番に光り輝いたのは謎だったが、
止まることもないと思ったので続行!!
敵の注意が足元に注意が行ったところで浩介がフランケンシュタイナー!!
倒れたところを浩之がジャンピングパイルドライバーで落とす!!
さらにそんな獣人の足を俺が掴み、強引にジャイアントスウィング!!
散々振り回したのち、横ではなく空中に放る!!
浩介 「いくぞブラザー!!」
浩之 「おうっ!!」
そんな獣人に飛びつき、浩之が背中から両腕を固め───
浩介が飛びつきスイング式DDTで相手を固める!!
丁度バッファローブランディングとDDTとで固めた感じだ。そこへ───
椛 「重力の場よここに!“グラビティ”!!」
椛が空中の志摩兄弟と獣人に向けて重力魔法を発生させる!!
……なんでも武器庫にあった魔法書のひとつらしい。
武器に杖を選んだ時のみ貰えるもので、
初級魔法ならひとつだけなんでも覚えてよかったらしく、椛はアレを選んだというわけだ。
効果はもちろんドッゴォオオオンッ!!!
志摩 『ギャアァァァァァス!!!!』
獣人 『ギアアアーーーーーム!!!』
効果はもちろん、空中からの重力落下により強大。
中空に現れた“技術連携:DSC-グラビティ-”の文字とともに……
獣人は志摩兄弟もろとも潰れた。
浩介 「ゴゲ……ゴゲゲゲ……!!」
浩之 「ヴ……脇腹を強打した……!!」
光に包まれて消える獣人と、脇腹を押さえて痙攣する志摩兄弟。
だがそれもすぐに回復したようで、疑問符を浮かべたような顔のまま起き上がった。
浩介 「む……?ダメージがすぐに消えたぞ?」
浩之 「減ったHPもさっさと回復してしまった……何事?」
浩介 「……むぅ!ブラザー、試しに我を攻撃してみるのだ!!
我の考えが正しければこのゲーム……!従来のオンラインゲームとは一線を画し、
HP回復速度が尋常ではないのやもしれん!!」
浩之 「なに!?そうなのかブラザー!」
浩介 「うむ!だからさあやれブラザー!!」
凍弥 「あ、いや、でもな浩介」
浩介 「止めてくれるな同志!これは我らが明日を元気に生きるための確認なのだ!」
凍弥 「いや、そうじゃなくてだな……!」
ああもう……俺はちゃんと止めようとしたぞ?
したからな?
浩之 「すぅうううううりゃぁあーーーーーーーっ!!!!」
浩介 「どーんとこーーー……オワァーーーーッ!!?」
振り上げられる大木槌!!
軽く攻撃されるだけだと思っていた浩介は、もちろんその武器の大きさに驚愕!!
恐らく浩之の武器がハンマーだということを忘れていたんだろう!!
浩介 「な、なぁあああああああっ!!!
ま、待てブラ《バゴチャァンッ!!》ボッホォッ!!」
ドゴシャメゴシャバキベキゴロゴロズシャーーーアーーーッ!!!!
浩介があまりの威力に跳ね転がって滑って光に包まれた。
ああもう、だから言おうとしたのに。
浩之 「ど、どうだブラザー!
今出来る全力を以って攻撃してみたんだが!……ブ、ブラ……ブラザー?
ブラッ……ブラザァーーーーーッ!!!」
凍弥 「はぁ……」
俺はただ、空中に浮かぶ《クリティカルヒット!!》の文字に十字を切ることで、
光に包まれ消えてゆく彼を見送ったのだった。
【ケース148:志摩浩介/懺悔なさい。よし断る!!】
気づけば我は地底よりも深い底の底の獄……!地下労働施設に居たっ……!!
浩介 「ああっ……!それにしても金が欲しいっ……!!」
神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」
浩介 「むう……戦いもせずこんなところで説教たれるだけの神父に、
そのようなこと言われる筋合いは無いんだが」
死ぬ以前に戦おうともしないヤツに情けなさを説法されるとは。
とりあえずここは大聖堂のようなそうでないような場所。
神父には合っているかもしれんが、我にはほとほと似合わない。
浩介 「ふーむ。ここは先ほどの城か?」
神父の巣窟があったとは驚きだ。
まあそれを言うよりもまず、ブラザーや同志たちと合流せねば。
まったくブラザーめ、少しは加減というものを知れというのだ。
浩介 「しかし……どういうことだ?
死んだ途端に神父の前に飛ばされるのはゲームチックではあるが、
急に身体から力が抜けたような……」(注:執事服効果)
よく解らん。
もしやただの気の所為やもしれんし───
浩介 「おお、そういえばナイトが言っていたな。
自由に振る舞ってくださいと。ならば───」
丁度目の前に、自分の力を試すい〜い存在があるではないか。
浩介 「うむ!では覚悟されませい!唸れ正義の鉄拳!ロシアンフックフォーエヴァー!」
体勢を低くして、身体ごと捻るように顔面を狙い抜く!!
それはかくして、《パグシャア!》という爽快な音とともに神父の顔面に突き刺さった!!
浩介 「ウ……ヌヌ。やはりちと力が下がっているような───」
神父 「なめたらかんでぇ!!」
浩介 「なにぃ!?」
で〜げで〜でってってって〜でで〜、で〜げで〜でってって〜ん♪
突如この場を支配する音楽!!
目をギラつかせる神父!!
こ、これはぁあああっ!!この音楽はぁああーーーーっ!!!
浩介 「しょ、初代熱血硬派くに《ボグルシャア!!》おブるぁーーーーーッ!!!」
その拳は鮮烈なほど美しい。
ではなく、我の意識は神父の拳一撃で天に召されたのだった。
───……。
……。
気づけば我は地底よりも深い底の底の獄……!地下労働施設に居たっ……!!
浩介 「ああっ……!それにしても金が欲しいっ……!!」
神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」
よしこいつ殺そう。
浩介 「うっひゃっほぉーーーーぃ!!!」
サワヤカ笑顔で力強い全力ナックルが《メゴロシャア!!》と神父の顔面に突き刺さる!!
もちろんその後も躊躇することなく殴る殴る殴る殴る!!
神父 「ええことしよかぁ!!」
浩介 「ヌ、ヌォオーーーーーッ!!?」
そして気づけばボコボコにされて天に召されていた。
───……。
……。
神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」
浩介 「くたばりゃぁああーーーーーーーっ!!!!」
後戻りをする気はさらさらなかった。
我は己の中に燻っているハートを地獄の業火で燃え上がらせ、
パラメータをストレングスに託して殴りかかった!!
───そして始まる激闘!!
さあ始まりました!第三ラウンドォゥ!!
司会の“思考回路の俺”さん!今日の戦いはどういった戦いになりそうですかねぇ!!
ゴッパァンッ!!
浩介 「ゴフェエアァアアアアアアッ!!!!」
そうですねぇ……三秒KOですかね。
フフ……意識が飛んでいくぜブラザー……。
───……。
神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない」
浩介 「………」
もうなにも言うまいと思った。
俺はいつかこいつをブチノメすことを心に誓い、ゆっくりとその場をあとにしたのだった。
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