───冒険の書41/不死鳥が泣く頃に───
【180:中井出博光(再ヤ人)/スクランブルダッシュ】
───さて。
宿で一夜を明かし、万全を以って再出発をした俺達は、
今こそ時ぞとばかりにルルカを駆り、それぞれの精霊が居る場所目指して邁進していた。
い〜かげん俺達も宝玉が欲しいってことだ。
行動の理由などそれで十分。
丘野 「あ」
中井出「む?どうした丘野二等」
丘野 「いやぁちょっと気づいたんだけどさ」
忍び言葉じゃない言葉でハタと語り出す丘野二等。
いったいなにが……?
丘野 「ほら、俺の武器ってシュバルドラインじゃん?そうなると……ねぇ?
龍虎滅牙斬が出来ないんじゃないかなー、って」
藍田 「あぁ、あの龍刀と虎刀装備時に出来るっていう無月散水の追加秘奥義?」
丘野 「そうそう。……憧れていただけあって、難しいなって。
しかもここまでいい武器を手に入れた後じゃあねぇ……」
中井出「ああ、解る。いい武器を手に入れると、二度と手放したくなくなるもんだし。
けどいいんじゃないか?龍刀と虎刀が見つかるまではそれでも。
で、手に入ったら双方比べてみて、好きな方を装備するって方向で」
丘野 「それはもちろんなんだけどさ、そこでちょっと考えてみたんだ。
提督、これ持ってマグニファイ発動させてみてくれ」
中井出「む?いいけど」
ルルカを一度止めて、乗った状態で受け渡し。
稀黄剣を受け取ると、一本の状態でマグニファイを発動。
すると───
中井出「お?お、おお……っ!?」
なんと剣に金色の光が現れたじゃないか。
俺はパーティーの皆様を一度見渡し、皆様がコクリと頷くのを見ると───
リンゴを宙に放り、それを稀黄剣で斬ってみた。
するとギシャゴバァォオンッ!!!
総員 『ヒャーーーーーッ!!?』
ルルカ『ゴェエエエエォアァアアアアゥウウウッ!!!』
ルルカを含めた総員が叫んだ。
何故ってこりゃ───おいおいおい!!
藍田 「こ、こここここ黄竜剣!?」
そうなのだ。
ロマンシングサガ3伝統、剣技の極み───黄竜剣である。
斬った途端に四方に飛び散る金色の竜闘気が、その在り方を示していた。
しかし一度斬っただけで剣にこもっていた光は消え───
どうやら一度のマグニファイで一度しか効果の無いものらしいことが理解できた。
中井出「……リンゴ……コナゴナだよ……」
塵も残ってねぇ……おっそろしい威力だ……。
軽く振っただけでこれなら、全力で……それこそSTRMAXだったらどうなるんだ……?
中井出「と、とりあえず返すな」
丘野 「お、押忍。10分後まで走ろうか……」
剣を返すと、丘野はそれを恐々と受け取った。
あんな威力の技が発動する武器じゃあ、確かに誤発動したりしないかと怖いのも頷ける。
そんなわけで俺達は、なんだかんだで少々恐怖しながらもルルカを駆った。
───……で、10分後。
総員 『…………ゴ、ゴクッ!!』
再びルルカを待機させた俺達は、
今度は稀黄剣を双剣にした状態でのマグニファイを実行した。
もちろん武器はしっかり二刀流!の掛け声も忘れない。
が……
中井出「ありゃ?この双剣は鬼人化ってわけじゃないのか……」
剣から赤い残像は出ていない。
が、金色の光なら出ていて……試しに振るってみると、
ほんの少しの距離を飛ぶ金色の剣閃が出た。
藍田 「これって……ミニ黄竜斬光剣?」
中井出「みたい……だけど、10秒で終わった。一分も保たないとは……」
それでも十分な威力だろう。
10秒あれば敵をコロがせるものだ。
それ以前にこの剣、相当に育て甲斐がありそうだ。
俺はフゥと息を吐きながら剣を合わせ、元に戻るように念じる。
すると双剣は長剣に戻り、俺はそれを丘野二等へ返した。
丘野 「こうなると、剣士もいいなって思うよな」
藍田 「なんなら剣士になるか?
今のヒロラインならレベル下がるわけでもなし、案外楽に剣士になってられるぞ」
丘野 「フフフ、そうはならない。何故なら俺は忍者だからだ」
どうやら忍者以外には興味が無いらしい……流石丘野。
丘野 「あ、でも侍には憧れるな。あれはいい」
藍田 「ようするに時代劇っぽければなんでもいいんだな、お前って……」
丘野 「だってさ、考えてもみろって。
ファンタジーに侍と忍者だぞ?どう考えたっておかしいだろ」
藍田 「うお……みんな知ってはいたけど言わなかった違和感を暴露してしまった……」
丘野 「でも俺はそれを選ぶね!忍者も侍も好きだし!
サムライニポーン!ハラキリゲイシャ!!」
どうあっても芸者さんに切腹しろと言いたいらしい。
こいつはなにぞ、芸者さんに恨みでもあるんだろうか。
麻衣香「博光ー!ここでしょー!?風の谷ゲイルヴァレイって」
中井出「おっ───とととっ!!」
話しながらだと案外早いもので───
気づけば俺達は、巨大な渓谷を見下ろせる場所に辿り着いていた。
中井出「でっ……でっけぇえええええっ!!!」
藍田 「うぅわすっげぇえっ!!グ、グランドキャニオンを彷彿とさせるこの絶景!!
くぅうああぁあっ!!冒険者やっててよかったぁーーーーーっ!!!
タダでこんな景色見れるなんて最高じゃん!!」
丘野 「海外なんてクソくらえぇーーーーっ!!
読み方同じでもやっぱ“界外”だぁーーーーっ!!」
夏子 「はは……ほんと、男って元気……」
麻衣香「でも解るよ。ほんと絶景だもん」
殊戸瀬「カメラがあればよかったのに……」
そんなものは心のファインダーでなんとかするのだ!!
人間は“初めて見たもの”ってのは案外忘れないように出来ているのだ!
だから大丈夫!
人が文字列を忘れやすいのと、景色を忘れないのとにはそういう理由があるのだ!!
文字ってのは既に頭の中に常識としてあるから忘れやすい!
だが、景色ってのは同じ場所が無いから覚えていられるのだ!!
それがこうも綺麗なところなら尚更!!
ああ!空界のハローナル渓谷みたいに突風だらけじゃないのがまたいい!!
中井出「で!シルフは何処に居ると思う!?」
藍田 「押忍!いっちゃん下方にあるあの陸なぞどうでしょう!!」
丘野 「おお!如何にもって感じだ!そしてお誂え向きにって感じでもある!!」
中井出「心の巴里が猛っている!!歌おう友よ!」
藍田 「い〜ぃくっにつっくろ〜ぅジ〜ンギ〜スカ〜ン♪」
丘野 「なくっようっぐいっすジ〜ンギ〜スカ〜ン♪」
中井出「いくっよいっぱぁ〜つジ〜ンギ〜スカ〜ン♪」
三羽烏『ひつっじひっつじ〜、ひっつじ〜肉〜♪』
麻衣香「はいはいはいはい、こんなところでこのみソング歌ってないで、そろそろ行こ?」
中井出「オッケー!!もはや誰にも我らを止めることは出来ん!!」
藍田 「つーか提督!シルフの姿を確認しました!やはりあの陸に居るようです!」
中井出「おお!よっしゃ丘野二等!───シュートヒム!!」
丘野 「ラーサー!!拙者の貫殺飛び苦無!!受けてみるでござる!!」
丘野二等がシャキィンと出した苦無を、かなり遠くに居るシルフ目掛けて投げる!
───が、全然届かなかった。
丘野 「だ、だめでござるな……」
中井出「むう!ならば麻衣香!頼む!」
麻衣香「どうなっても知らないよ……?───炸裂する力よ。エナジーブラスト!!」
───……どごぉーーーん……!!
遠くでシルフが小さな爆発に飲まれた。
しばらくして怒り心頭のシルフがシュゴォオオオオオ!!と飛んで来た!!
シルフ『なにすんだてめぇ!!』
……おおっ、こっちのシルフは男なのか。
しかも小僧で口も悪い。
一見、空界のノームと間違えそうになる。
シルフ『用があるならちゃんとあそこまで来いよ!
段差を利用した攻撃は卑怯だってFFに習わなかったのかよ!』
麻衣香「フー・ファイターズ?」
シルフ『違う!解ってて言ってんだろてめぇ!!』
中井出「黙れクズが!!」
総員 『死ね!!』
シルフ『なっ……俺は精霊だぞ!口の聞き方に気をつけろよ!!』
藍田 「ン〜なこたどうでもいいんだ。それより貴様の持つ宝玉を寄越せ」
シルフ『ハッ、冗談じゃないね。この前は妙な侍に不覚をとったけど、
そう簡単に負けてやるほど安くねぇんだよ俺はー』
中井出「そんなこと言わずに頼んます、シルフ様〜。俺達あなただけが頼りなんですよ〜」
シルフ『敵わないと思って下手か?無駄だね、冗談じゃねぇや』
中井出「じゃあ死ね」
シルフ『ほっ……本性出すの早すぎるぞ!!』
中井出「ふはは黙れ黙れクズが!」
藍田 「ゴミが!!」
丘野 「ゲスが!!」
麻衣香「カスが!!」
夏子 「シデムシが!!」
殊戸瀬「ウジムシが!!」
シルフ『お、お前ら俺が誰なのか解って言ってるのか!?
つーかそれが人にモノを貰おうとする態度か!?』
中井出「じゃあ寄越せ今寄越せさあさあさあさあ」
シルフ『やるかっ!!』
ワガママなヤツだ。
シルフ『へっ、どうしても欲しいんだったら俺を倒してから』
丘野 『ヘルユゥー』
シルフ『え?』
ゴカァッ!バガァッッチュゥウウウウンッ!!!!
シルフ『───……!!!!!』
シルフがわずか一秒で炭クズと化しました。
ああ、やっぱり稀黄剣の秘奥義って強ぇええなぁ。
とか思っているうちに丘野二等は麻衣香の手によって回復。
シルフ『てめぇらには順序を守ろうって気がねぇのか!!』
あ、生き返った。
さすが精霊、復活機能まであるとは。
丘野 「倒したぞ。さあ寄越せ今寄越せさあさあさあさあ」
シルフ『ちったぁこっちの心配しろよ!!』
丘野 「うるさいでござる!!いいから出すヨロシ!!」
シルフ『フン、嫌だね。どうせ秘奥義が無けりゃただのザコだよザァコ!ヒハハハハハ!』
総員 『………』
シルフ『え?な、なんだよその目。
そんな目ぇしたって怖くなんかギャアーーーーーーッ!!!!』
───……その日、俺達は全員でシルフをボコボコにした。
───……。
シルフ『ちくしょ〜〜〜……』
中井出「さあ出せほら出せさあさあさあ」
シルフ『お、俺はまだ負けてなギャアーーーーーッ!!!』
───……。
シルフ『お、俺はギャアーーーーーーーーッ!!!』
───……。
シルフ『ひ、卑怯だぞよってたかってギャアーーーーーーッ!!!』
───……。
シルフ『あげます……あげますから勘弁してください……』
ようやくその言葉を聞けた。
何回ボコボコにしたかは忘れたが、
それが相当の惨状であったことはシルフの顔が物語ってくれている。
なんだかな、こいつが篠瀬さんに負けたの、解る気がする。
こいつ、篠瀬さんが嫌いそうな性格だし。
中井出「風は……丘野二等だったな」
丘野 「ラーサー!!さぁ寄越すでござる!」
シルフ『はい“あ〜げた”っ!《ボゴシャア!!》ぶべっち!!』
丘野 「面白ぇなぁあああアンタ……いっぺん死んでみるでござるか……?」
シルフ『ジョ、ジョーク!
ちょっとしたジョークじゃんかよぉ!!笑って見逃せコノヤロー!』
丘野 「生意気なクソガキャアのジョークほどむかつくものは無ェでござる!!」
藍田 「それともなにかおんどりゃあ!!
どこぞのジュニアみたいに負けてないってテコでも言い張る気かコノヤロー!!」
殊戸瀬「聞き分けの無い子は嫌い。眞人を困らせる子は……もっと嫌い」
麻衣香「で、どうかな。くれるのかなくれないのかな」
夏子 「今ならまだ間に合うよ〜?地獄見たくなかったら素直に渡そう。ズズイっと」
シルフ『やだプー』
───その日、彼は総員の手によってボコボコにされた。
───……。
……。
シルフ『あげる……から……も、ゆるして……』
そうしてシルフの言葉など完全無視してマジバトルを始めた我らは、
戦力差にあっさりと屈したシルフに宝玉を貰うこととなる。
まあ、そらそうだわなぁ、普通ならレベル30かそれ以前にでも手に入るのが宝玉だ。
それから考えて倍以上のレベルならば、既に精霊も大したことなどない。
で、宝玉を渡したら渡したで一目散に逃げ出すシルフ。
中井出「これン懲りたらァ!もう悪さするでねェぞォーーーーッ!!!」
そんなシルフに叱咤激励。
シルフはまるで、
罠から解放してもらったキツネかタヌキのように一目散に遠くに消え去った。
中井出「よしゃ、次行こう」
総員 (哀れだ……)
そんなわけで次に移動!!
次は───よしゃ!光の塔である!!
中井出「次、光の塔でいいか?ここから一番近いところってことで」
丘野 「異議なしでござるよ!」
藍田 「光の塔かぁ……やっぱウィルオウィスプが居るのかねぇ」
麻衣香「テイルズシリーズっぽく精霊が配置されてるなら、多分レムだよ」
中井出「睡眠?」
麻衣香「違う」
丘野 「拙者としては月の精霊ルナに会ってみたいでござるよ!!」
麻衣香「フラットゼファー?」
丘野 「違うでござる」
藍田 「あぁ、でもルナさんって月っぽいイメージあるよな。
やっぱアレか?月の家系に一番身近な死神だからかな。
はたまた名前がルナティックだから?」
丘野 「や、名前はルナでござろう」
藍田 「ものの喩えだが。ちなみにルナティックってのはウサギっぽいモンスターで」
丘野 「知ってるでござる」
中井出「というわけで光の塔へゴー!!こっから遠くないからルルカでならすぐさ!」
総員 『イェッサァッ!!』
こうして我らは次の目的地───
木村夏子二等が望む光の宝玉を得るため、光の塔へ向かったのだった。
もちろん、この谷にある宝を全て手に入れてから。
といっても篠瀬さんたち一向が通った後だから、宝らしい宝は残ってなかったけど。
───……。
……。
で……光の塔。
目の前に聳え立つ……とんでもなくデカく高く目が眩むほどの高さの……塔。
え……?ちょっと待ってくれトニー。
これを昇れってのか……?
丘野 「提督殿!あそこに入り口があるでござる!」
中井出「はぁ……行くしかないか」
藍田 「何事も冒険です!サー!!」
渋々ながらに塔の中に入り───……出てきた。
ソーサラーリングが無ければ攻略出来ないと、デカデカと書いてあったからである。
こりゃ参った───いや!
中井出「よしみんな!STRをMAXにせよ!」
藍田 「は───何故でありますか提督!」
中井出「うむ!中がダメなら外からだ!考えてみれば我々は疲れることを知らない!!
ならば!塔の外壁を登って頂上を目指すことくらいワケないことである!!」
丘野 「おおなるほどでござる!
ところで今さらでござるがナギー殿をカポリトカステに忘れてきたでござるよ!」
総員 『はうあ!!』
や、やべぇ〜〜……本当に今さらだ。
こりゃあとでどれほど怒られることか……!!
ルルカに乗ってる時、静かだなぁとか思ったら……道理で。
麻衣香(……博光、震えてるわね)
夏子 (なんだかんだで提督さんに一番懐いてたからね〜。
そうなれば、あとの報復も全部提督さんに行くのは目に見えてるでしょ)
殊戸瀬「子供に恐怖するようになったら親に威厳なんて無いわね……」
中井出「あのさ……だから全部聞こえてるってばさ……特に殊戸瀬」
殊戸瀬「聞こえるように言ってるもの」
中井出「あの……お願いですから丘野二等の5分の1でいいから、
もうちょっとだけデリケートに扱ってください……」
殊戸瀬「やだ。わたしの全ては───……」
総員 『じーーー……』
殊戸瀬「《カァアアアアア……ッ!!》ば、ばかっ!変態っ!!」
中井出「なんで!?」
殊戸瀬「うるさいうるさいうるさい!!」
グゥウウムムウウ……何が言いたいのだ殊戸瀬二等は……。
ゴッド、俺はもうなにがなんだか解りません。
周りに振り回される、ねぇ。
やっぱ、妻たちに囲まれてた彰利もこんな感じだったのかね。
中井出「……あー、まあいいや。それでは各自、己が握力を以って岸壁を登るものとする!
幸いにしてこの塔の壁面は出っ張りが多い!きっとなんとかなるだろう!!
それでは各自の健闘を祈る!イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!」
ザザッ!!
総員 『Sir()!!YesSir()!!』
こうして我らは、冒険者からロッククライマーへと変貌した。
───……。
……。
ゾガガガガガガガガガガ!!!
ゾガガガガガガガガガ!!!!
中井出「フヒャホフヒャホヒャフヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
丘野 「オーッギョッギョッギョッギョッギョ!!」
藍田 「キキルケルケルキキルケル!!」
麻衣香「ちょ、ちょっとぉっ!速いってばぁっ!!」
さて、このロッククライマー……慣れてしまえばどうということもなく、
俺と藍田と丘野の男衆は早くもコツを掴むと、
金色のガッシュで言うナオミちゃんのように壁面をザガザガと登っていた。
もしくはポッチン。
女性陣はそんな器用なことはできないらしく、しずしずと丁寧に昇っている。
だが───疲れない登山(山じゃないんだが)がこんなに楽しいものだとは!!
しかもSTRMAXだからスルスル昇れるし!!
たぁあーーーのCィーーーーーーッ!!!
中井出「俺……前世はロッククライマーだったのかも!」
丘野 「拙者はきっと名のある冒険家だったでござるよ!」
藍田 「俺は───」
総員 『オリバだ』
藍田 「か、架空のマッチョが前世なんてヤだぁあーーーーーーっ!!!」
彼は正直だった。
───……。
……。
中井出「フヒャホフヒャホヒャフヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
丘野 「オーッギョッギョッギョッギョッギョ!!」
藍田 「キキルケルケルキキルケル!!」
中井出「フヒャホフヒャホヒャフヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
丘野 「オーッギョッギョッギョッギョッギョ!!」
藍田 「キキルケルケルキキルケル!!」
中井出「フヒャホフヒャホ……フヒャー……」
丘野 「オーッギョッギョッギョッ……ギョー……」
藍田 「キキルケルケルキキルケル……はぁ……」
長ぇ……長すぎだよこの塔……。
カリン塔なんて目じゃねぇんじゃねぇかって思うくらい長ぇよ……。
これでてっぺんに居るのがカリン様だったら絶対落とすぞ俺。
丘野 「なんだろねー、これってさ、なにかに似てないか?」
藍田 「なにかって……うん。俺もそう考えてたところなんだけどさ。
なんだろなー、きっと疲れたりしてたんなら解ったんだろうけど───」
中井出「ふむぅ……確かに。
随分と味わってないけど、確かに味わったであろう感触が……あ」
丘野 「あ───ああ……あれでござるな」
藍田 「だな……晦神社の石段だ」
思い出した。
これと同じ感覚を、確かに我らはあの石段で味わった。
こう……なぁ?延々と同じ景色が続いてゆく現実の悪夢を。
いやぁ〜、あれはホンッッットに疲れた!
宣言と断言をOH高らかに!!もう二度と登りたくねぇ!!
中井出「しっかし長いなぁ」
丘野 「おお〜〜〜……既に睦月たちが見えないでござるよ〜〜〜……」
藍田 「つーか怖ッ!!見下ろす景色がワールドマップになってるぞオイ!!
どうなってんだよこの塔!!」
中井出「ワールドマップ?───ヒィ!!高ッ!!高すぎっ!!」
藍田の言葉に促されるように見下ろしてみれば───
マジでワールドマップと化している大地。
つまり高すぎて、遠くの方まで見渡せすぎてるってことだ。
藍田 「あのー、提督殿に提案があるであります」
中井出「む、むう!なんであるか藍田二等兵!」
藍田 「この塔で用を終えたら、頂上から飛び降りてみるのはどうでしょうか」
中井出「ウヌ!なかなかいい提案!
でもその前に、上のほうから侵入して中のアイテム全部取ってからね」
丘野 「おお!流石は提督殿!抜け目が無いでござるな!」
中井出「レアウェポンとかはなんとしても押さえておきたいからな……。
合成してステキな武器に……クハァたまらんばーーーい!!」
丘野 「おおぉ……!提督が冒険者の目をしてるでござるよ!」
藍田 「俺もそろそろステキな具足を手に入れないとな。
稀黒装レヴァルグリードだっけ?あれ欲しいなぁ」
中井出「防具も合成できるんだっけか?出来たらいいよなぁ」
などと話つつさらに高みへ。
そろそろなにやら息苦しくなってきた気もしないでもないが───
もしかして酸素濃度が少なくなってきた?
しかも寒いし。
藍田 「寒くなってきた」
丘野 「藍田もか?俺もだ」
中井出「おぉ、俺もだ〜〜〜っ」
そして今、雲を突き抜けた。
つまり標高2000〜4000メートル級……結構ヤバくないか?
それでも塔の先は無情にも見えない。
……これ、やっぱりヤバいって。
中井出「ど、どうするお前たち〜〜〜っ!!
空の先はまだまだま見果てねぇぜぇ〜〜〜っ!!」
丘野 「フッ……愚問!!」
藍田 「普通ではやらないことを好んで実行!それが原ソウル!!
ここで遣り遂げねぇのは男じゃねぇ〜〜〜っ!!」
中井出「おお〜〜〜、お前らならそう言ってくれると信じてたぜ〜〜〜っ!!」
ならばもう迷うまい!
全速前進!!突き進むが吉!!グッバイ・ヘルベイベー!ゴートゥーヘヴン!!
ゾガガガガガガガガガ!!!!
中井出「フヒャホフヒャホヒャフヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
丘野 「オーッギョッギョッギョッギョッギョ!!」
藍田 「キキルケルケルキキルケル!!」
そして再び一心不乱。
どうかこの先が聖地カリンでないことを祈って───
───……。
……。
ザッ……ザムゥ〜〜……
中井出「………」
藍田 「………」
丘野 「………」
ややあって、頂上。
もう宇宙空間なんじゃなかろうかと言えるほどの高さと寒さが俺達を突き刺す。
高い……いくらなんでも高すぎだろ。
今日の天候が雷雨とかじゃなくてよかった。
というわけで───
中井出「やいてめぇ〜〜〜っ!!命が惜しかったら光の宝玉を寄越せ〜〜〜っ!!」
悪行超人っぽくいきなり勝気に出てみた。
視線の先には六枚の光の翼を持つ女性───やっぱレムか。
レム 『壁面を登ってきたのか……ご苦労なことだ。
だが、だからといってポイポイ渡せるほど気安いものではない。
宝玉が欲しいのなら実力を行使してもらおう。解るな?』
中井出「そ、そうか〜〜〜っ!!」
藍田 「わ、わかった〜〜〜っ!!」
丘野 「お、俺もだ〜〜〜っ!!」
レム 『………』
ヒクリ、とレムの眉間にシワが出来た気がした。
レム 『……まず名を聞いておこう。なんという』
中井出「バカヤロコノヤロォ!人に名を訊ねる時はまず自分からだろうが!」
レム 『……わたしはレム。光の塔の守護者にして、光の精霊である』
中井出「そうか。ちなみに俺は教えん!何故なら個人のプライバシーだからだ!!」
レム 『なに!?』
中井出「ふはははは!甘いな!既に戦いは始まっているのだよ!」
レム 『ぐくっ……!屈辱だ……!このわたしがまんまと謀られたわけか……!』
丘野 「爽快なまでのユキジ節だな……」
藍田 「相手の精霊、あっさりと提督のペースに嵌まってるし……」
レム 『……もういい。最初から加減などするつもりはなかったが、
全力を出すとは決めていなかった……。今その考えを破壊───』
中井出「死ねぇええええええっ!!!!」
レム 『なっ───!?待て!まだ話の───』
ゴコォッキュヒィイイイインッ!!!ゾバシャアッ!!
レム 『くあっ……!?おのれ───!!』
放った剣閃がレムにヒット!
OK!僕らはまだまだ諦めない!!
レム 『き、貴様は順序というものを』
総員 『知らん!!』
レム 『即答!?おのれ……!ここに訪れた今までの冒険者の中でも貴様らは最悪だ!!』
藍田 「黙れクズが!!」
総員 『死ね!!』
レム 『き、貴様らぁああ……!!ここまで無礼だとは、親の顔が見て───』
中井出「黙れクズが!」
丘野 「黙れクズが!」
藍田 「黙れクズが!」
レム 『うがぁあーーーーーーっ!!!話を聞け貴様らぁっ!!』
───ニヤリ。
我らは互いを見やって親指を立てた。
まずは相手を逆上させて隙を作る作戦、成功!
もちろん楽しんでやってるのは確かだが。
レム 『来い!!貴様らの性根、このレムが叩き直して』
総員 『死ねえぇえええーーーーーーーっ!!!』
レム 『キャーーーーッ!!?だ、だから話は最後まで───!!』
そんな言葉は聞こえちゃいなかった。
むしろ完全に無視した。
中井出「この提督、女だからと容赦せん!!」
丘野 「ストレイツォ、容赦せん!!」
藍田 「インヴァイト・ヘル!!」
あくまでも名前は出さない方向で、一気に襲い掛かる。
相手が女でも手加減しないのは、もちろん冒険者故。
相手も強者なれば、手加減は侮辱と知れってやつだ。
中井出「ヤクゥザキィーーーック!!」
レム 『甘い!そんな攻撃を喰うか!』
中井出「さらに甘し!」
レム 『なっ───《ガシドシャア!!》くあっ!?』
我が蹴りを翼の飛翔で逃れたレムの足を掴み、ビトゥーーンと石版に叩きつける。
レム 『き、貴様ぁっ!!武器があるのに何故それを使わない!!』
中井出「それが我らの戦闘スタイル!!」
丘野 「剣士だからご丁寧に剣しか使わないなんて既定をぶっつぶす!!」
藍田 「それが原中クオリティ!!」
中井出「というわけで秘技!STRMAXジャイアントスウィーーーング!!!」
ブンブンブンブンブルシュシャシャシャシャシャシャ!!!!!
レム 『う、わ───うわぁあああああっ!!!』
中井出「ヘイテリー!!」
丘野 「おう!」
藍田 「待っていたぜそいつを〜〜〜っ!!」
散々回したレムを、地面ではなく上空に放る!
もちろんDSC短縮バージョンのためである!!
藍田&丘野『飛びつきスイング式DDTィーーーッ!!』
ガシィッ!!───ドッゴォオオオオオンッッ!!!
レム 『げはっ……!!』
落下する体重+体重+体重。
レムは藍田と丘野に首根っこを押さえられたまま石の床に落下し、ドシャリと倒れた。
だが───私はまだ!ギブアップを聞いていない!!
中井出「セネルくん!俺に力をーーーっ!!」
倒れたレムに駆け寄り、足を掴んで振り回し、
ビタァーーンビトゥーーーンと地面に叩きつける!!
レム 『がっ!ごっ!こ、このっ!!人が黙っていれば───』
丘野 「貴様は人ではないでござる!だからOK!!」
レム 『へ、屁理屈を言うなぁっ!!』
中井出「《ビヂィッ!!》うわっち!?」
突如光が瞬いたと思ったら手の平に痛覚。
つい力が緩んだ瞬間、レムは6枚の飛翼をはためかせて空へ逃げた。
レム 『フフッ……上空ならば攻撃のしようが───』
中井出「てめぇこら降りて来いモービー!!」
丘野 「卑怯だぞてめぇこらモービー!!」
藍田 「降りて来いコラモービー!!」
レム 『誰がモービーだ!!貴様らこれ以上わたしを侮辱すると───』
中井出「黙れクズが!」
丘野 「黙れクズが!」
藍田 「黙れクズが!」
レム 『ギ、ギィイイイーーーーーッ!!!』
キレた。
だがすまん、貴様がからかい甲斐があるから悪いと諦めてくれ。
レム 『そうか……解ったもういい……貴様ら許さん』
中井出「許してほしいと誰が言ったネ!?」
丘野 「お前は!私を!馬鹿にしているのかネ!エ!?お前は!!」
藍田 「図に乗るなヨ小僧!!」
レム 『〜〜〜……ッ!!』《ピグッ……!ピググッ……!!》
わー、コメカミがピクピク痙攣してる。
ありゃあ怒ってる。怒ってるよ。
まるで広瀬康一に甞められた吉良吉影みたいだ。
レム 『もう……許さん!貴様ら───』
藍田 「“空軍・()パワーシュートォッ”!!」
中井出「チェストォーーーーーッ!!」
ガッシィッ!!───藍田二等の足に乗り、
弾かれるように飛ばされた俺は空中のレム助さんを見事に捕獲!!
レム 『なっ───こ、こら離せ!!重いだろう!重───うわっ!?』
そして予想外の事態にしどろもどろになるレム助さんを羽交い絞めにし、
重力に従って落下するその瞬間!
俺は体を捻ってレム助さんをさらに固めた!!
中井出「“不死鳥落とし()”!!」
レム 『ままま待て待て待ァアーーーーーーッ!!!』
ゴコォンッ!!
レム 『うぴっ!?』
中井出「ギャアーーーーッ!!!」
頭を地面に向けた状態で固定し、落下させるヤマトタケル奥義!!
……もちろんコーナーポストなんぞなかったので俺も大打撃を受けた。
その場で声にならない声を叫びつつバタバタともんどりを打つ。
藍田 「うーわー……ザ・モモタロウネタとはこりゃまた懐かしい……」
丘野 「しかもヤマトタケルの技でござる……通でござるな。
クサナギソードが懐かしいでござる」
中井出「ぐぉおおお……!脳が揺れる脳が揺れる……!!」
藍田 「おーい中井出ー、ダイジョブかー?」
中井出「な、なんとか……」
提督ではなく、中井出とフレンドリャーに語りかける藍田に手を小さく上げて応える。
そんなことをしてみたものの、正直頭イタイ。
それはレムも同じらしく、
喉の奥で『きゅぅううう〜〜〜』という奇妙な高い声を出しつつ頭を押さえてる。
その背中ではハタハタと六枚の光の羽が揺れ動いていて───
中井出(……アノン)
丘野 (……佐野)
丘野くんにアイコンタクトを送ると、早速稀黄剣を走らせて光の翼を根こそぎカット!!
レム 『───!?き、貴様!!』
丘野 「羽根は採ったで……!!いったれぇ!植木ぃっ!!」
ザシャア───!!
軽い足音が聞こえた。
スッ───と見た先には……木村夏子が。
夏子 「ッ───“魔王ォーーーッ”!!!!」
その手から放たれるは魔王!
ソレは光となって一直線にレムに向かって飛び───
レム 『甞めるなっ……!!』
しかしレムはそれを躱し───
藍田 「タックルは腰から下ァーーーッ!!」
がばしぃーーーっ!!
レム 『あぅわっ!?は、離《ドゴォオオンッ!!》はぐぁあーーっ!!!』
レムがバキベキゴロゴロズシャーと転がり滑ってゆく。
容赦の無いシードの一撃を受けたレムは、
藍田に押さえられてたためにヘンな体勢でスッ飛んだ。
……鞭打ちにでもなってなけりゃいいけど。
レム 『貴様らいい加減にしろぉーーーーっ!!!』
───ゴォッッキィンッ!!!
総員 『はうあ!?』
ボロ雑巾のように吹き飛んだレムがガバァーと起き上がると同時に世界を暗転させた!
いきなり秘奥義!?ちょっとアータ!!
ギィンッ!ドゴチュンチュンチュンチュゥウウウウンッ!!!!
総員 『ほぎゃぁああーーーーーーーーっ!!!!』
空から舞い落ちるは幾つもの光の柱!!
恐らく喰らえばただでは済まん!!
麻衣香「あぁーーーわわわわわぁあーーーーっ!!
ななななんで昇ってきた途端にこんな目にぃいいーーーーっ!!!」
殊戸瀬「試練だ。耐えられよ」
麻衣香「あなた何処の万難地天!?」
光の柱を無表情でバシュバシュバシュバシュと避けている殊戸瀬への麻衣香のツッコミ。
正論だが、横じゃなく上を見ていたほうがいいぞ麻衣香。
ドゴォオオオオオンッ!!!!
藍田 「ギャアーーーーーーッ!!!」
中井出「藍田!?藍田ァーーーーッ!!!」
そしてとうとう最初の犠牲者が!
突然の悲鳴に振り向けば、
藍田がセレスティアルスターの光柱に、両手を挙げつつ飲まれていた。
丘野 「す、すげぇ!こんな時でもお約束を守るとは!!
でもなんで昔のアニメとかって攻撃喰らったりすると両手挙げてたんだろね!?
むしろ天地無用!真夏のイヴで
あの女が電撃くらってる時に爆笑したのは俺だけじゃないよね!?
何故かこうやって両手挙げ《ドゴォオオンッ!!》ギャアーーーーーーッ!!!」
中井出「お、丘野ぉおーーーーーーっ!!!」
真夏のイヴの蒼髪女の真似をして両手を挙げた途端、
それが避雷針になったかのように光に飲まれる丘野くん。
中井出「おのれよくも!この借りは10倍にして《ドゴォオン!!》ギャアーーーッ!!」
立ち止まってズビシと指差したのが運の尽き。
俺は藍田と丘野くんのように光の柱に飲まれ、
プスプスと煙を出しながらゴシャアと倒れ伏した。
やべぇよこれ……威力だけなら一級品だよ……。
避けられるってのがまだ救いだけど、こらキツイわ……。
だがこれはこれで面白いかも。
俺はアップルグミを数個噛み締めつつ、ガバリと起き上がった。
───と、そんな俺より早く行動を起こしていた二人が居た。
藍田と丘野くんだ。
やつらはアップルグミを噛み締めながら光の雨の中を強引に駆け出し───
藍田&丘野『うおぉおおおーーーーっ!!
どんどんきやがれイワンめ!地獄への道連れだ!!』
まさに俺がやろうとしていたことを見事に実行。
光の光線が落ち、バコォオオン!ボッコォオオオン!!と高鳴る景色の中を、
妙な足音を立てながら竹槍を持って駆け抜けてゆく!!
まあそうなるともちろんバコォオオオオオンッ!!!
藍田&丘野『うぎゃああーーーーーーーっ!!!!』
……こうなるわけだ。
一際大きい、最後の一発をモロに受けた二人が煙を立てながらドシャアと倒れた。
レム 『天の裁きに平伏すがいい……』
レム助さんはレム助さんで、それがキメ台詞なのか閉じていた目を開くと───
中井出「やあ」
レム 『───っ!?』
既に目の前に立っていた俺を見て、本気の本気でビックリして後退った。
あー……傷つくよ?その態度。
レム 『ば、馬鹿な!セレスティアルスターの中を───!!』
中井出「サミング」
レム 『《ゾブシ!!》くわがぁあーーーーーっ!!!
中井出「ヘラクレス」
つぶらな瞳にサミングを。
中井出「というわけで光の宝玉をおくれでないかい?」
レム 『っ……断る!!』
中井出「……なんで精霊ってこうガンコなんだろ」
麻衣香「頼む前にやってることが卑劣で無礼で失礼すぎるからだと思うけど」
中井出「ぬう、返す言葉もない」
麻衣香「嘘でもいいから返そうよ……」
中井出「そんなわけでここは我らに任せて、女衆は下の塔を攻略してきてくれないか?
多分お宝が結構あると思うんだ。これを逃す手は無い」
麻衣香「はいりょーかい。アイテムは買ったからあるよね?」
中井出「おうさ。いっぱいだ」
麻衣香「ん。じゃ、いこっか、睦月、夏子」
夏子 「うん」
殊戸瀬「………」
女性陣が階段から塔内部へと降りてゆく。
が、レムは目を庇っている状態なのでそれが見えていないようだ。
よし、ではここからはやつらが戻ってくるまで無茶バトルの始まりさ。
中井出 「よぉっしゃあ!丘野!藍田!ハデに───遊ぼう!!」
藍田&丘野『ラーサー!!』
レム 『このわたし相手に遊ぶ───!?遊ぶだと!?』
中井出 「バカモーーーン!!
我らで言う遊ぶとは、この場合全力で状況を楽しむことを言うのだ!!」
丘野 「なにも貴様で遊ぶとは言ってないでござる!!」
藍田 「クズが!!」
レム 『きっ……きぃいいさぁあまぁああらぁあああ……!!!』
とまあ……明らかな怒りをボクらに向けてレム助さん。
そんな彼女に僕らは、篠瀬さんに近いなにかを感じたのだった。
───……。
……。
───数十分後。
麻衣香「お待たせー───ってまだやってたの?」
中井出「あー大丈夫大丈夫。宝玉ならちゃんと盗───貰ったから」
麻衣香「エ?ちょ、ちょっと今とても危険な言葉を聞いたような気がしたんだけど」
男衆 『THE・気の所為!!』
麻衣香「え、で、でも今盗んだとか───」
男衆 『THE・気の所為!!』
麻衣香「でも」
男衆 『THE・気の所為!!』
麻衣香「……それでいいや、うん」
でもね、実際レム助さんはしぶとい上に敗北を認めないから盗むしかなかったのだ。
もちろん気絶させた時に盗んだんだが、それを知るや否や大激怒。
本気の、さらに本気を出して襲い掛かってきたというわけだ。
藍田 「では提督!女性陣も来たことですし、そろそろ!!」
丘野 「そうでござるな!
木村夏子殿が戻ってきたことで藍田殿のパワーが戻った今こそ好機!!」
中井出「よっしゃ!では光の塔伝説飛び降り事件!開始ィイーーーーーッ!!!」
男衆 『サー!イェッサー!!』
ガガガシィッ!!
レム 『うわっ!?貴様ら、なにを!!』
中井出「え?なにって……心中ダイヴ」
レム 『なにぃっ!?』
藍田 「では張り切っていきましょう!!雲の遙か上からのダイヴ!!」
丘野 「ボンボンかコロコロでやっていたマリオブラザーズを思い出すでござるな!
確かルイージが敵とともにマグマの海にダイヴしたシーンでござる!」
藍田 「あのさよなら兄さんってやつだな?やぁ、当時はグッと来たシーンだったね!」
中井出「というわけで俺達飛び降りるけど、お前らどうするー?」
麻衣香「う、ぐ……い、いいよ!付き合ってやろうじゃないの!!」
夏子 「わ、わたしも!」
殊戸瀬「来たみたいにジリジリ降りてちゃ埒も無いし」
中井出「それでは───総員!心の準備は出来たか!!」
総員 『サーイェッサー!!』
レム 『ま、待て!わたしは───』
中井出「心の巴里への着火も済んだか!」
総員 『サーイェッサー!!』
レム 『だからっ───』
中井出「シャンドラの火は灯っているか!!」
総員 『サーイェッサー!!』
レム 『人の話を───!!』
中井出「うむよし!ではこれよりこの塔からの落下を開始する!!
総員歯を喰いしばれ!そして生き残れるものなら生き残ってみせよ!!
イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」
ザザァッ!!
総員 『Sir()!!YesSir()!!』
レム 『ま、待て!話せば解る!!わたしは貴様らに散々羽根を斬られた所為で、
しばらくは出せないんだぞ!そんな状態で落ちたら───』
中井出「大丈夫だ!ドリアードは羽根無しで飛んでいた!」
レム 『それはあいつが特別だからだ!!わたしは───』
総員 『THE・ダイヴ!!』
バァッ───!!
レム 『〜〜〜っ……いやぁああああああああああっ!!!!』
と……そんなわけで。
我らはレム助さんの女の子らしい悲鳴とともに、
遙か彼方の上空から地面へ向けての自由落下を開始したのだった。
藍田 「フライング・ボディー・シザース・ドロォーーーップ!!!」
丘野 「ククク……お前は自分のしてきた苦労が
俺の苦労と同等のものだと思っているのだろうが……
どう考えてもお前の方が恵まれたぬるま湯の生活をしている」
藍田 「なにぃ!?」
丘野 「まあ苦労している分だけお前よりも俺の方が、
危機からの脱出方法を遙かに知っているわけだ……!
たとえばこのフライング・ボディー・シザース・ドロップも……超人閻魔様!
剛力の神の力を!ビッグボディの怪力をぉーーーーっ!!
ビッグボディテクニック!スーパーパーィル・ドライバァーーーーッ!!」
で、丘野と藍田は何故かキン肉マンとスーパーフェニックスの空中での葛藤を開始した。
まあ……地面まで長いからな、ここでしか出来ない楽しみもある。
俺はレム助が逃げないようにとガッシリと掴み、やっぱり───
中井出「“不死鳥落とし()”!!」
レム 『は、離せぇええ!!離せ離せ離せぇええええっ!!!』
───フェニックスドライバーで固めていた。
丘野 「どうだ解ったか!これが苦労の差!ハングリーの差というわけよ!」
藍田 「こなくそーーーっ!!苦労やハングリーではわたしはお前に負けん!!
カメハメ52の関節技のひとつ!!アーチェリーストレッチ!!」
丘野 「なんの〜〜っ、これしきの技〜〜〜っ!!
ブルドッキングヘッドロォーーックゥ!!」
藍田 「フェニックスよ……悪いがこの技の切り替えし合戦……
このキン肉スグルが───もらったーーーーっ!!脇固めぇーーーっ!!」
麻衣香「偉そうに言ってて“脇固め”なんだ……」
藍田 「う、うるさい!文句はキン肉マンに言ってくれ!!」
丘野 「おっと余所見はいけねぇなぁ〜〜〜っ!!
父さん母さん!俺はこの一撃で貧乏生活からおさらばだ〜〜〜っ!!
ペンジュラム・バックブリーカー!!」
シュゴォオオオーーー……
藍田 「……空中に居たままバックブリーカーやってても虚しいだけだな……」
丘野 「そうでござるな……」
それでも昇るのと落ちるのとでは速度が明らかに違った。
雲を突き抜け、やがて見えて見えてきた地面に───
俺達はもちろん、レム助さんも大恐怖!!
中井出「ア、アアーーーッ!!
今ならプリンスオブペルシャの若者の気持ちが解る気がする!!」
丘野 「こ、こりゃ怖ぇえ〜〜〜っ!!!怖───怖ぇええええええっ!!!」
藍田 「だ、大丈夫さ!この世界はゲーム!
だから本当に死ぬなんてことは助けてぇえーーーっ!!!」
結論:怖いものは怖い。
女性陣たちは既に目を瞑っているため、本気でどうしようもないわけで───あ。
中井出「麻衣香!麻衣香ァーーーッ!!地面にフレアトーネードをGO!!
カズ様のように炎を出して上昇気流を作るンだッッ!!」
麻衣香「あ───そ、そっか!!
え、炎帝の怒りを受けよ。吹き荒べ業火───フレアトーネード!!」
マキィンッ!モシャァアアアアアンッ!!
総員 『うわっちゃぁあああああああっ!!!!』
───そうして。
魔法を放つ時のクセか、MNDをMAXにして放たれたフレアトーネードが俺達を焼き、
しかし上昇気流でなんとか助かったその日は───
ほんの少しだけ渦から外れた俺が、
燃えながらレム助さんに“真・フェニックスドライバー”をキメた記念日ともなった。
ちなみに双方ともに当たり所が悪くて死亡。
のちに“二度と来るな”という伝言のみが、
教会に飛ばされた俺へと藍田二等を伝って届けられたのであった。
……つーかなんで俺にだけ?
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