───冒険の書43/真・女神転生 畏怖...───
【ケース186:晦悠介(再)/サモナーズリネージ】
そんなこんなで時の大地。
俺とルナは氷河からの船から飛び降りると、その孤島で辺りを見渡した。
悠介 「へえ……」
見事に無人島って感じだ。
せいぜいこの港のようなものがあるって程度なんじゃなかろうか。
ルナ 「ここってなにがあるのかな」
悠介 「そればっかりは探検してみないことには解らんが」
ルナ 「そっか、うん。そうだよね」
こくこくと頷くルナを促し、先を歩く。
何処になにがあるのかは解らんが、
時の大地とくればゼクンドゥス関連のものがあってもおかしくない。
……ていうかな、この景色───どっかで見た覚えが……
悠介 「───……」
ああ、思い出した。
悠介 「ルナ、こっちだ」
ルナ 「え?なになにゆーすけ」
少し目を離したうちに既に森の中に入っていたルナに呼びかける。
全力で迷う気満々だったらしい。
悠介 「ここをまっすぐだ。そっちにゃなにもない」
ルナ 「あれ?解るの?」
悠介 「ああ。この景色───狭界の海底と同じなんだ。
それも、ゼクンドゥスの時の神殿があった場所と同じだ」
ルナ 「え───じゃあ」
悠介 「ああ。間違いじゃなければこっちに───」
歩きながら説明し、生い茂る草をどかしながら道を進む。
やがて───
悠介 「……あった、時の神殿だ」
ルナ 「ふわー……」
進んだ先には、しっかりと時の神殿が存在していた。
ルナは神殿の外観を見て感心したようにホワーと言って、
口を開けっ放しで立ち尽くしている。
そりゃな、最初にこういうの見ると驚く気持ちは解る。
ルナ 「は、はいろ悠介!ゆーすけ!」
悠介 「ん」
で、俺の側まで来ると服を引っ張って先を促す。
俺はそんなルナの子供っぽさに苦笑しつつ、
それでも俺みたいなヤツにはルナみたいな妻が丁度いいんだろうなと、
そんなことを考えていた。
───……。
……。
───さて、神殿の奥に入ると、そこには一つの石像があった。
こんなところまでゼクンドゥスと同じか───などと思いつつ、石像に近づいてみる。
石像 『───よく来た、冒険者よ。
力の足る者よ、ここは時の回廊とこの世界を繋ぐ狭間の空間である。
この先、称号をサマナーに変えることで進める世界。
汝はこの先へ進むことを望む者か?』
ルナ 「さまなー?サモナーじゃないんだ」
悠介 「普通は召喚人……サモナーって言うんだろうけどな」
この言い方からすると、この先は女神転生っぽい世界になってるって考えた方がいいのか?
悠介 「称号をサマナーに変えても、能力は使えるのか?」
石像 『使える。ここでのサマナーの称号は形だけのものと理解せよ』
悠介 「そっか。じゃあ───先へ進ませてくれ」
石像 『いいだろう。なおこの先で死した場合、この場まで戻される。
では幸運を祈ろう。せいぜい死することなく進むがよい』
ギヂヂ───ヴヴンッ!!
───……。
……。
悠介 「っと───!?」
気づけば既に……何処だここ。
まだ訊きたいことがあったんだが……うーむ。
ルナ 「ほへはほへー……天井が狭い」
悠介 「女神転生の仕様だ、気にするな」
こんな要らんところまで事細かに鮮明にすることないと思うんだが。
むしろ天井は開放的にしてほしかった。
ルナ 「えーと、ここってなにをすればいいのかな」
老人 「それについてはわしが離そう」
ルナ 「……誰?」
悠介 「いきなりだなオイ」
老人が現れた!しかも説明する気満々だ!
老人 「ここは“時の回廊”と呼ばれている異空間じゃ。
人の思念が渦巻き、それらが実体を持ち意思を持つ空間。
いわばモンスターが世界に生れ落ちる前の母胎のような場所じゃよ」
悠介 「思念に包まれた狭界みたいなもんか」
老人 「この時の回廊には“魔物”として実体を持つ前の思念体の魔物がおる。
そやつらは種族内の理に左右される前の状態であるため、
わしら人間の言葉を理解する。そのため、会話も出来るし仲魔にも出来る。
そして“思念体”ゆえに“魔物同士の合体”も可能じゃ」
ルナ 「んー……月癒力で融合させちゃダメなのかな」
悠介 「ダメなんだと思うぞ」
老人 「まずはこれを受け取れぃ。
これを付けていれば、仲魔にした魔物をいつでも召喚できる」
ピピンッ♪《ナビネックレスに“COMPシステム”が追加されました》
悠介 「COMPって……コンピューターナビシステムか……ますますアレだな」
ルナ 「むー、アレじゃ解んないよぅゆーすけ」
悠介 「大体解ってきた。この回廊に居る魔物を仲魔にして召喚したら、
なにかを消費するんだろ?ここに居るのは実体を持たない“思念体”だ。
それを実体として召喚するならなにか消費するものが必要な筈だ」
老人 「そこまで解っているなら話が早いわい。
ここでいう代償とは、即ち己の生命力───HPじゃ」
悠介 「待てジジイ。そりゃ創造者である俺に死ねって言ってんのかコラ」
老人 「そんなもんは知ったこっちゃないわい。ただこの世界はそうできておる。
魔物を仲魔にしたい場合は話し掛ける以外に方法は無い。
もちろん会話が上手くいかなければ襲われる。せいぜい頑張るのじゃな」
悠介 「それ以前にこの回廊での目的ってなんだ?」
老人 「……?なんじゃ、時の精霊を探しに来たのではないのか?」
悠介 「……そうきたか」
つまりこの回廊のどこかに時の精霊は居て、進まない限り時の加護は貰えないってことだ。
こりゃ面倒だ。───が、それ以上に楽しそうである。
悠介 「よっしゃ!そうと決まれば行くぞルナ!」
ルナ 「はいなー!」
童心を刺激された俺は、あちらこちらを物珍しそうに見ていたルナを促して駆け出した。
いざ、見果てぬ世界へ!!
───……。
……。
さて……町と分類された場所から出ると、
大方の予想通りそこは天井の低いダンジョンだった。
なんで女神転生シリーズの天井は低いんだろうか。謎だ。
悠介 「しかも見渡す限りの……一本道」
ルナ 「わー、広い道が極端に少ないんだねー」
さすが女神転生。
そう言わざるをえなかった。
悠介 「そういやどうして女神転生シリーズのマップは一本道が多い───」
マジュウウンッ!!
ルナ 「ひゃわっ!?な、なになに!?」
突如天井からなにかが降ってきた!
───馬鹿な!こんな低い天井からいったいなにが!?(何気に失礼)
《地霊ブラウニーが現れた!コマンドどうする?》
悠介 「どうする、ったって……」
ルナ 「えと、やっぱりまずは話し合うべきかな」
悠介 「話し掛ける、ね……どう話したもんか」
ブラウニー『お前らまとめて地獄行き!!ひゃーはははは!!』
《ブラウニーは脅してきた!》
ルナ 「……殺す?」
悠介 「意義無し。───“創造せよ汝”!!」
右手から剣を創造して投げる。
無造作に、だが一動作のままに。
ブラウニー『《ゾゴシィンッ!》ウヒャッ!?』
シャァアアアン……───《ブラウニーをコロがした》
悠介 「………」
ルナ 「………」
感想一言。
駆け引きでノームを思い出した。
ルナ 「ヒロラインだと創造したものってすぐ消えちゃうの?」
悠介 「ああ。手から離れて10秒程度かな。
10秒経つまでなら手から離そうがどうしようが消えないんだが。
その代わり、戦いが終わると自動的にHPに変換されて消える」
ルナ 「へー」
悠介 「だから、どうせなら戦闘終了までに武器は持っといた方がお得ってわけだ」
などと話つつ歩いていると───マジュウウンッ!!
ノッカー『ヒーホー!!』
……現れるどこぞの地霊野郎。
悠介 「あー……なんだ、その。一応話す場を設けたいと思うんだが───」
ノッカー『なんだー人間。オイラになんか用かー』
悠介 「金をよこせ」
ルナ 「わー、悠介がストレートに外道だー」
ノッカー『実はさー、最近体壊しててさー。
治療したいから…………お前の命を差し出せー!!』
《ノッカーが突然襲いかかってきボグシャア!!》
ノッカー『うぴっ!?』
悠介 「さて、ターン終了したことだしもう一回話すぞ」
ノッカー『わががががが……!!』
《ノッカーは殴られた頬を押さえて震えている!だめだ話にならない!!》
悠介 「さすがヒロライン……やっぱり妙なところで現実的なのな」
埒も無し。
俺は短剣を創造するとノッカーの頭にザクリと刺し、コロがした。
ルナ 「ねーゆーすけー……わたしこの空間に居るの疲れた……」
悠介 「言うな……俺もだ」
少し歩いただけでこの脱力感……そもそもあの魔物どもは仲魔になる気があるのか?
しょうもないことばっかりで本当に呆れるぞ、まったく。
チュゴォオンッ!!
悠介 「ちょっと待てぇえっ!!一歩しか進んでないぞ!?出るの早すぎだろ!!」
ルナ 「ヒロラインと違って、
うろついてるヤツと戦うってわけじゃないんだね……めんどいなぁ」
悠介 「ったく───!で、誰なん───だ……よ……」
《地霊アトラスが現れた!》
ルナ 「わ……ゴーレム?」
悠介 「───え、や……ちょっと待てぇええーーーーーーーっ!!!
どうして!なんでブラウニー、ノッカーと続いていきなりアトラスなんだよ!
つーかここ地霊しか居ないのか!?ああもう何処からツッコんでいいのやら!」
アトラス『ゴォオオオオオゥム!!!』
アトラスはやる気だ!───って早ぇえ!!
ルナ 「わぁ、ゆーすけ、ね、ね、ゆーすけ。ナビの中にある月が満月だよ」
悠介 「ああもうそういうことかよ!!
わざわざ月システムまで入れてくれてありがとうなゼクンドゥス!!」
嬉しくなくて泣きそうだよちくしょう!!
アトラス『微塵ト化セ!!』
しかも物凄く好戦的だぞこのアトラス!!
思念体だからか!?
ああもうともかく!!
悠介 「創造せよ、汝───!」
うだうだ考えるのは後にする!
今は創造する者として、出来ることを───!!
ガギィンッ!!
悠介 「づっ───!!」
狭苦しい空間で振り下ろされる豪腕を、
両手に創造したフレアブランドとアイスブランドで受け止める。
ルナ 「戦うの?」
悠介 「あ、あのな……!頼むからこの状況を見てすぐに納得してくれよ……!!」
ルナ 「ん、解ったー。───卍解」
悠介 「へ!?」
ズン───と、辺りに存在していた空気が重くなった気配。
まさか、と振り向けば───
ルナ 『“闇薙斬影双月()”』
既にそこには、卍解を終了したルナが立っていた。
その右手には……刃を二つ持った闇薙にして異端の三日月鎌。
ルナ 『あ、ゆーすけー、危ないから離れててー』
悠介 「なっ!無茶言うな!こちとら物凄い力で押し潰されそうに───
って聞けぇええーーーーーっ!!!」
ルナ 『えいやー』
ゾゴォッフィズガガガガォオオオンッ!!!!
悠介 「だわぁああああああっ!!!」
アトラス『グォオオオオオオオッ!!!』
気の抜けるような声とともに振るわれた一撃は、その刀身から凄まじい衝撃波を放ち───
慌てて逃げ出した俺の横で、アトラスは微塵になって消えていた。
ルナ 『……なんだ、もう終わっちゃった。つまんないの』
悠介 「おっ……お、おーおぉお……お前なぁああっ!!」
ルナ 「……はふ。え?なになに……?なんで怒ってるの……?」
悠介 「あんな攻撃出来るなら最初っから───じゃない!
いつの間にこの世界で卍解出来るようになってたんだ!」
ルナ 「え?“死神”のエキストラスキルが五ツ星になってからだけど───
あれ?言ってなかったっけ、わたし」
悠介 「言ってない!言われてない!!」
ルナ 「あれ……?ま、いいやー」
悠介 「いいわけあるかぁっ!!一歩間違えれば俺が真っ二つだよ!!」
戦闘終了したらさっさと卍解を解いたルナは、にこー、と俺を見て笑う。
ああもう……なんでこいつはこう、周りのことを考えないんだ……。
ルナ 「心配しなくても大丈夫よぅー。
わたしがゆーすけを傷つけるようなことするわけないじゃない」
悠介 「今正に死ぬとこだったんだが……」
ルナ 「わたしのゆーすけはあれくらいじゃ死なないよ、うん」
悠介 「死ぬわぁっ!!現実世界で、
しかもノートから力を返してもらってる状態ならなんとかなるかもしれんが、
さすがにこの状態でアレを食らえば絶対に死ぬ!!
しかもお前今、秘奥義の剣閃まで合わせただろ!衝撃波が四つ飛んできてたぞ!」
ルナ 「わー、さすがゆーすけ。よく解ったね」
悠介 「解らいでか!!」
二つの刃から放たれたのは、それぞれの鎌から放たれるべき二つの衝撃波。
そして、同時に発動された剣閃だった。
武器が一本にして二枚刃であるが故の芸当……本気で死ぬかと思った。
悠介 「はぁ……あー、鎌って死神化しなきゃ出てこないんだっけか?」
ルナ 「うん」
悠介 「死神化さえすれば武器は出てくるわけか」
ルナ 「うん」
悠介 「……こっちは創造しない限りは出てこないってのに」
どうやら死神化の維持にはTPが必要らしい。
コスト云々はよう解らんが、ともかくそういうものら───チュゴォオオンッ!!
《外道ゴーストが現れた!!》
悠介 「………」
ルナ 「存在自体が外道なんだね」
そうらしい。
歩いてもいないのに現れるのはどうか。
ルナ 「じゃーゆーすけ、今度はゆーすけの秘奥義見せて?」
悠介 「……あー」
ゴーストごときに秘奥義はどうか、と思ったが───たまにはそういうのもいいよな。
悠介 「そういやルナ、剣閃の制約ってなんなんだ?」
ルナ 「TPの最大値半分を使用すること、かな。TPさえあれば何度でも使えるよ」
悠介 「そうなのか?」
こちとら一回の戦闘につき一回しか使えないうえに、TPが0になるってのに。
まあ───どうあれ、今は敵をコロがすことだけを考えよう。
悠介 「創造せよ汝。“黄昏”()」
ゴースト『フケケ!?』
自分を中心に、黄昏の景色が広がる。
やがてあっという間に無機質だった景色は黄昏に染まり、ゴーストは突然怯え出す。
……というかなんで黄昏でノスタルジアなんだ?トゥワライトじゃないのかノートよ。
悠介 「ルナ、これでいいか?」
ルナ 「ダメだよ悠介。まだやること残ってる」
悠介 「解ってるって。今コロがすから」
言いつつ右手に短剣を創造。
あとはコイツでゴーストを薙ぎ払えば───
ルナ 「じゃなくて。超越」
悠介 「───へ?」
……マテ。
あれ?そういや……黄昏も創造物だよな。
だったら……ぐあぁあ……こんなことまで思いつかんとは……!!
悠介 「超越せよ汝……」
言われるままに超越開始。
集中し、対象に黄昏を選ぶと───その景色が一変する。
どこかおぼろげだった黄昏がより鮮明になり、存在していなかった約束の木が出現。
さらに俺の衣服を精霊の法衣が包み込み───俺の手にはラグが。
これって……“万象担う創世の法鍵()”!?
ルナ 「ん、やっぱり思った通り。ゆーすけ?
試せることはちゃんと試しておかなきゃだめだよ。
実装されてないのは光の武具だけで、
ラインゲートが実装されなかったなんて何処にも書いてないんだから」
悠介 『………』
じゃあなにか。
彰利やゼットの力に制限が入ってなかったのって、
俺もこうやってラインゲートを創造することが出来たから?
けどそれに加えて光の武具まであると反則だってんで、光の武具だけを未実装にしたと?
……いや、違うか。
そんなポンポンと強力な武器を創造されても困るもんな。
だから制限されてるんだろう。
───でもな、ノート。
悠介 『無限と型成せ、“皇竜剣()”。覚醒しろ、“万象担う創世の法鍵()”』
ゴースト『オ……オォオオ……!?』
俺としては、ラグとラインゲートがあるだけで光の武具無しでも反則的だと思うんだが?
悠介 『“剣葬雨()”』
ラグにイメージを乗せ、無限襲雨の鉄製剣を───……あれ?
変換されない……何故?
悠介 『……ゲイボルグ。ベオウルフ。……ロンギヌス!?お、おいー!?』
ラグが変換されない!何故!?
……と思ったが、もしや───
悠介 『レ……“伎装弓術()”?』
ガシャッ───キィンッ!!
悠介 『……やっぱりか』
レンジ/アローは大丈夫でも、やっぱり光の武具はダメってことかい……。
変換、相当好きだっただけに悲しいぞ……。
ルナ 「ねぇゆーすけ?そろそろゴーストが泣きそうだから相手してあげなよ」
悠介 『うん?……うおっ!?』
言われてみて初めて気づいた。
ゴーストのヤツが必死になって俺の体をポコポコ攻撃してた。
悠介 『………』
ゴースト『………』
……とりあえず。
ゾグシュ。
ゴースト『ぎゃああああ〜〜〜〜っ!!!』
マジュンッ!
……剣に戻したラグで刺したら一撃で昇天。
それと同時に黄昏は消え───チュゴォオンッ!!
ノッカー『ヒーホー!』
悠介 「………」
ルナ 「………」
俺とルナは、この空間にほとほと嫌気を覚えていたりした。
───……。
……。
悠介 「だぁああああくっそぉおっ!!全然仲魔になりゃしねぇじゃねぇか!!」
ルナ 『しかもしーつーこーいーーー!!』
さて……時の回廊に入って、いったいどれくらい経ったのか。
この場所での行動の仕方が大体解って来た俺とルナは勇んで奥に進んでみたんだが、
途端に敵の強さが上昇していた。
まるで祝福のダンジョン2から祝福のダンジョン3に移った時のように。
よし、万人に解らんネタはやめような。
悠介 「凍結創造解凍───!ストック解除!蓄積創造解放!“襲雨鉄製剣()”!!」
キィンッ───ゾガガガガガガガガ!!!!
モムノフ『ギャアーーーーーーーッ!!!!』
エキストラスキル“ストック”にて蓄積していたイメージを解放。
虚空に創り出したロングソードを弾丸のように射出し、モムノフを撃破する!
さらにイメージ済みだった思考を解凍させ、
手に創造したフレアブランドとアイスブランドを奔らせ、
後ろから迫るピシャーチャの首を絶つ!
ルナ 『ああもうしつこいったら!クレセントゼファー!!』
ビジュンッ───ズガガガガォオオンッ!!!
ルナの方はもはや敵が可哀相になるくらいである。
卍解の能力はかなり強い。
強いが───パキィンッ!
ルナ 「はわわっ!?」
TP消費が激しく、TPが0になったところで強制的に死神化が解けてしまう。
こうなるとTP0からのスタートなので……正直困りものである。
ルナ 「ゆゆゆーすけゆーすけ!オレンジグミちょうだい!」
悠介 「さっき節約しろって言ったばっかなんだけどなぁ!俺!!」
けどグミを投げ渡してしまう甘い俺。
ああ……なにやってんだ俺は。
こっちだってラインゲート使ってTPが0だというのに。
ああ、創造がHPを削る力でよかチュゴォオオオンッ!!
《悪霊ピシャーチャが10体現れた!》
悠介 「ちったぁ休ませろてめぇらぁあーーーーーーっ!!!!!」
正直、さっきからピシャーチャばっかりで気持ち悪くなっていたところである。
しかも現れた分を倒すと勝手に創造物がHPに変換されて消えるもんだから、
連続戦闘が出来やしねぇ!!
悠介 「くっそ!この───!創造せよ、汝───!サイクロン!」
形式なんぞ無視!やりたいようにやって屠る!
俺はまず敵を竜巻で飲み込み、一箇所に集めたのちにガラスの剣を創造。
それを竜巻の中に放り込んでやると、ガラスの剣はあっさり崩壊。
やがて切れ味のいいガラス片となり、竜巻に乗ってピシャーチャを切り刻む───!
ピシャーチャ×10『ウギャアーーーーーッ!!!』
トドメは創造した魔法剣に、これまた創造したエクスプロードをエンチャント!
それを竜巻の中心部の床に思い切り投げつけてドッゴォオオンッ!!!
ピシャーチャ×10『…………!!!』
……竜巻とともに消滅させた。
はふぅ、これでひと段落チュゴォオオンッ!!
《邪鬼ウェンディゴが2体現れた!!》
悠介 「………」
ルナ 「………」
なぁ、ゼクンドゥスよ。
これはどういった試練なんだ……?
それとも格闘ゲームのスコアアタックモードとかサバイバルモードなのか?
こっちのアイテムもHPもTPも有限なんだが……?
いや……もうなにも言うまい。
俺は静かに息を吸って吐くと、心の巴里にシャンドラの火を灯して武器を創造した。
悠介 「こうなったらやれるところまでやってやる!かかってこいオラァッ!!」
ルナ 「わっふー!わたしもやったるー!」
こうして俺とルナは、精魂尽きるまで同じ場所での戦いを延々と続けることとなった。
思うんだが……これって逃げながらじゃなきゃ攻略出来ないんじゃなかろうか。
───……。
……。
悠介&ルナ『やってられっかぁーーーーーーっ!!!』
マゴシャァーーーン!!!
カワンチャ『ギョエェエーーーーーーッ!!!!』
ややあって───アイテムが尽きた頃、
俺とルナはとうとうキレてカワンチャにヤクザキックをぶちかましていた。
それから脇目も振らずに回廊前の集落に戻ってアイテムを購入……。
ああ……疲れるなぁここ……。
ルナ 「ゆーすけゆーすけ!銃があるよ銃が!なんで普通に売られてるのかな!」
悠介 「世の不思議には迫っちゃいけない不思議もあるんだよ」
ルナ 「買って買って、ねーねーゆーすけー!」
悠介 「だーめーでーす。わがまま言うんじゃありません」
ルナ 「ぶーぶー」
悠介 「だいたい銃なんぞ使わんでも強いだろうがお前は」
ルナ 「鍛えたんだから、強くなくちゃ詐欺だわよぅー。
JAROにも訴えられそうな意見箱を発注することをきぼー」
悠介 「慣れない言葉を無理に使わんでよろしい」
大体なんでこいつは俺と一緒の時は子供っぽい言葉を使うんだ?
ルナ 「えへー、気を許してるからに決まってるじゃない」
悠介 「……心を読まんように」
溜め息ひとつ、ルナの頭をポムスと叩くと歩き出す。
ルナ 「ゆーすけ?」
悠介 「いけるところまで行こう。
敵のレベルは滅茶苦茶だけど、逃げようと思えば逃げられるのがいいとこだ。
経験値も貰えるし、なにより攻略しないまま逃げ帰るのはムカツク」
ルナ 「…………へー」
悠介 「……って、なんだよ。人の顔見て驚きと感心を混ぜ合わせたような顔して」
ルナ 「ん……だってさ。悠介がそうやって愚痴をこぼしたりして、
むかつくとか言ってくれたのって初めてな気がするから」
悠介 「そうか?そんなことは無いと思うが───」
ルナ 「んーん、初めてだよ。そうやって、きちんと感情込めて言ってくれたのは」
悠介 「……そうか?よく解らん───あ」
ルナ 「悠介?」
……ふと出た言葉。
それが父親がよく使っていた言葉だということを思い出して、思考が少し止まった。
でもそれを拭い去ると、俺はゆっくり歩き出した。
……さて、そうしてワクワクハラハラ、愉快な冒険が再開され───
回廊に出た途端にナーガ・ラジャに襲われ、全力を以ってこれを撃破。
敵が落とした“クチナワの剣”に興奮するルナを沈静させたり、
ボーグルが落としたチェーンソーを持って、
“神殺しの旅に出る”と叫ぶルナを沈静させたり……常時振り回されっぱなしだった俺は、
今になって自分の人生についてちと考えてみるのであった……。
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