───冒険の書52/戦いのゴング───
【ケース201:弦月彰利/凡庸人型決戦兵器闇黒殺戮武闘伝彰利】
───どがしゃあああああんっ!!!
彰利 「ハーーーーラーーーーショーーーー!!!」
店主 「く、食い逃げだぁーーーーーーっ!!!!」
やあどうも!皆様に愛されて30余念、彰利です!!
いきなりですが僕は食い逃げをしました!
何故かって!?もちろんやりたかったからである!!
ただ普通の人の姿でやったのはマズかったかなぁ。
だが俺を追うのはそれこそ無駄ってもんだ。
俺はニヤリと笑うと民家の角を曲り、その先で影へと沈んだ。
のちに───町外れの民家の影からゾゾゾゾと出現。
これで脱出完了。
フッ……さらばだ店主よ。
彰利 「ハッフー、気楽なもんだね」
言いつつ町を出てフィールドへ。
ちなみに僕は一人です。
椛と聖はあんまりにも喧嘩ばっかでやかましいので、癒しの大樹へとスッ飛ばしました。
反省してくれりゃあいいけどね、ほんと。
……無理だろうな、うん。
彰利 「さってとー、どうしよっか」
中井出たちを尾行して邪魔するのもいいかなー、とか思ったけど、
今や何処に居るのかすら解らん。
彰利 「……悠介、なにやってっかな」
で、思い出すのは結局アイツのこと。
人の周りを賑やかにして、一人でどっか行っちまったアイツの魂胆は今なら解る。
金も賑やかさも全部俺に渡して、なにやってんだアイツは。
……いや、そうじゃないよな。
親切を逆恨みしてどうすんだ。
彰利 「いかんなぁ、一人になると暗い方向にばっか思考が働くわい。
こんなことならマジで中井出たちを追っときゃよかった」
今何処に居るんだか。
などと考えていると、上空を飛翔する飛竜を確認。
紫色の……ありゃ?ディル殿?って……違うな、そんなわけないか。
男 「そこの者!すまない!!」
彰利 「む!?なにかね!!話があるなら降りてきたまえ!失礼ではないかね!?」
男 「今降りる!《ゴォッ───シュタッ!》重ねてすまない、挨拶が遅れた。
私はセントール王国騎士団長、レオン=アルバレート。
少し質問をしたいのだが……ここらで獣人を見なかったか?」
彰利 「あ〜〜〜ん?獣人?」
レオン「そう、獣人だ」
降りた途端になんば言いようとや、この騎士め。
でも見覚えあるね、誰だっけ?
あー………………おお!そういや俺、こいつを閏璃凍弥襲撃の時に見たYO!
彰利 「漠然と獣人と言われてもね。なんなのさ」
レオン「実は……な。
セントールとエトノワールを繋ぐための書状を持った獣人を探しているのだ」
彰利 「書状?書状って……」
俺が持ってるアレ?
……野郎まさか帝国軍の回し者!?
彰利 「フフフ……その書状とやらなら俺が持ってるぜ〜〜〜っ!!」
レオン「なにっ!?本当か!」
彰利 「ホレ、これでしょ?」
バックパックより取り出だしましたるは同盟の書状!!
それをまるでリモコンを見せびらかすロシア猫のように“どうだー!”と見せる。
するとやはり書状へと伸ばされるレオンの手!
それをピシャアン!と叩く!
彰利 「これ!ミャーズで手を洗わなきゃだめでしょ!!」
レオン「ミャ、ミャーズ!?」
というのは冗談で。
俺は書状を懐にゴゾォと入れると、ニヤリと笑った。
彰利 「おいおい勘違いしてもらっちゃ困るぜ〜〜〜っ!!
以前がどうかは知らねぇが、これはもう俺のものなんだぜ〜〜〜っ!?」
レオン「なにっ……?それはどういうことだ!それは王の───」
彰利 「王の事情など自由人の俺には関係ねぇなぁ〜〜〜っ!!
だからこれは俺のだ!返せ!?違うな!これは元々俺のだ!!」
レオン「なにを無茶苦茶なことを!それは国のために必要なものなのだ!
今すぐ返してもらいたい!!」
彰利 「断固断る!どうしてもというなら俺の屍を越えてゆけ!!」
レオン「───二言は無いか?私を相手にするということは」
彰利 「死ねぇええーーーーーーっ!!!!」
レオン「なっ───貴様もかぁっ!!」
彰利 「せぇい!!」
まずは軽く───否!全力で右ストレート!!
熱き思いをその身に受けろ騎士団長!!
レオン「フッ───!」
タンッ───
彰利 「りゃっ!?」
だがなんと!あっさりと躱しおったわ!
しかも振り切った俺の動作を見逃さずに即座に槍を閃かせる騎士団長!
その槍は寸分の狂いもなく俺の左腕を貫き
彰利 「“渾身諸刃カウンター”!!」
レオン「《ベゴッシャァア!!》ぐぶるぁああああっ!!!!」
……───ドシャア〜〜〜ン……
きしだんちょうをやっつけた!!
レオン「ぐ、ぅう……!!まだだ……!!」
なんと!きしだんちょうが起き上がり、恨めしそうにこちらを見ている!!
どうしますか?
彰利 「殴る!アンサー!!」
レオン「甞めるな!!はぁあっ!!」
紫色の槍が閃く!!
即座に立ち上がった人の攻撃とは思えんほどの連撃!
だが!
彰利 「ライトサークル《バシィッ!》、レフトサークル《バシィッ!》
ハイ、アップダウンねダニエルさん《バシバシバシィッ!!》」
レオン「なっ……私の連撃を全て防いだだと!?」
実に甘し……。
悠介の槍の連撃を見慣れてる俺にとって、貴様の槍の連撃など児戯に等しいわ。
彰利 「さあ、死にたいのなら前に出てきなさい」
レオン「……いいだろう。小手調べは終わりだ。全力でいかせてもらう。
その書状は国の未来のために必要なものだ。取り返さないわけにはいかないのだ」
彰利 「そうかいそうかい。じゃあオイラもちょっとだけ本気出していい?」
レオン「全力を出さないというのか?それはお前の勝手だが───」
彰利 「そうかい。それじゃあちょっとだけ……
じいやめの実力を見せてやるかのぅ───卍解」
力の解放とともに言葉を唱える。
するとゾフィィンッ!!という音とともに、俺の背中から漆黒の翼が四枚現れる。
彰利 『“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序”。
死にたくなけりゃあ全力でかかって来るのだよ……?
レヴァルグリードの力も5割は吸収出来た。
行使は出来ないが、その力は我が精神の中にこそある。……その意味を知れ』
レオン「黒い翼……!?貴様はいったい……!」
彰利 『ホントはもう一枚出せるが、バランスが悪いんでね。
まあそんなわけだ……せいぜい死なないでくれ』
レオン「ほざくなっ!はぁあああっ!!!」
騎士団長が疾駆する。
恐らく俺からの威圧感を受け、
それこそ本気でかからなければ危険だということが解ったのでしょう。
しかし安心おしよ、獣人装備でないかぎり、人をコロがすなんてとてもとても。
レオン「吹き荒べ剣風!“ソニックブレスト”!!」
彰利 『お?』
こりゃ確か悠介を屠った風の剣閃だったねぇ。
槍でも出せるとは……そこんところはNPCの利点ってやつか。
彰利 『だが甘し!今さらそんな攻撃が《ゾブシャア!》ギャアアアアアアアアス!!!』
左腕があっさり飛びました。
彰利 『ゲェエエ……!!こんな馬鹿な……!!』
レオン「フッ!」
彰利 『って悔しがる暇も無し《ザゴォンッ!!》カッ───』
気づいた時には俺の胸に槍が突き刺さっていた。
彰利 『が───いや惜しい惜しい。
ヤハハハハ……あともう数瞬早ければ、私の心臓を貫けていたものを……。
残念だが私の身体は既に黒。意識する時間さえあれば、
物理攻撃の無効化くらいこの通り造作も無いこと……』
レオン「ならば吹き飛べ!“ゴッドブレス”!!」
彰利 『えぇっ!?』
キィンッ───ドッゴォオオオオオオッ!!!
彰利 『いぎっ……!ぬ、ぬおおっ……!?』
唱えられた魔法名が示す通り、いつか悠介が使っていたゴッドブレスそのものが俺を襲う。
けど待てコラ……!こいつって騎士の筈だろが……!なんだって魔法を……!?
彰利 『騎士は騎士でも聖騎士()ってか……!?』
レオン「いざという時、魔法くらい使えなくては兵を守れないからな───!」
彰利 『フ、フフフ……そうかい……!だが───!』
意識しろ!俺はまだまだこんなものではないと!
スッピーの言う通りだ───枷なんて邪魔なものでしかない!
彰利 『イメージするのは常に最強の自分ってね……!!
ああまったく……いい言葉だよ……!!』
レオン「───魔法を喰らっている間は攻撃無効化は出来ないと見える。違うか?」
彰利 『んーん違うよ?そんなことないさアハハハハ《ザゴォン!》ギャーーーッ!!』
左肩に奔る大激痛!!
おのれやってくれるわこんの騎士団長めが!!
彰利 『まっ……たく……!!こんな風吹き飛ばしてくれるわチェストォーーーッ!!!』
口早に叫んで翼を一気に解放する!!
その力の放出で風の圧力を相殺、風自体を滅殺した!!
レオン「───魔法を破壊!?馬鹿な!」
彰利 『バカとはなんだこの野郎!!』
レオン「あ、いや……お前をバカと言ったわけではなくてだな……」
彰利 (おお……何気に律儀な人なのかもしれん)
だがストレイツォ、容赦せん!
彰利 『終わりにしようぜ騎士団長……これであの世に送ってやる』
闇の翼から黒の波動が集ってゆく。
突き出した両手の掌に集まる黒は、やがて巨大な塊となり───
彰利 『ビッグバンッ───かめはめ波ァーーーーーーーーッ!!!!』
キュィイイィィィ───ガオォオオオオンッ!!!!
レオン「───!!」
漆黒の波動となって景色を削いでゆく。
悪夢のような威力を誇るそれは大地をえぐり木々を破壊し、
やがて雲を貫いて消えていった。
レオン「〜〜〜っ……こ……れは……っ……!?」
彰利 『……力の差が解らぬキミではないだろう……退きなさい。
今のはわざと外した。だがまだ抗うと言うのなら───』
レオン「───引けない理由がある。どうあろうと私は書状を持ち帰る!!」
彰利 『……不届き。滅却師風情がふざけてくれる……。
ならばこちらも相応の力で相手をしてやろうじゃないかネ……卍解』
レオン「なに……?卍……?」
影から鎌を一本引きずり出し、それを極限まで解放してやる。
そうすることで鎌は凶々しくカタチを変え───やがて金色疋殺地蔵に至る。
彰利 『さあ───ゆけぇい!!』
金色疋殺地蔵『もろもろもろもろもろもろ!!』
我が掛け声とともに金色疋殺地蔵がモゾモゾと進撃を開始する!
ウヒャア気持ち悪い!地蔵の顔とイモムシの身体を持つこいつはやっぱ気持ち悪いぜよ!
レオン「……あまり甞めるな」
───ゴォッキィイインッ!!!
彰利 『……なんだネ!?景色が暗転……!?そんなもの知らんヨ!そんなもの……!!』
レオン「紫色の稀槍よ、天すら捻り穿て!“閃速螺旋槍()”!!」
騎士団長の持つ槍から、帯状の紫色の光が溢れる。
距離は相当。
だが騎士団長はその場で構え、槍を───投擲してきやがった!!
しかもそれは金色疋殺地蔵を容易く破壊し、
顔面から胴体にかけて一直線に破壊しながら俺のもとへ向かってくる───!!
なんだネこれは!まるでマユリ様と雨竜くんの戦いの焼き増しじゃないかネ!!
彰利 『喰らうかよ!物理攻撃が利かないことくらい解ってるだろうが!』
そう、俺に物理攻撃は通用しない。
それは、いくら投擲されたものだろうが例外ではない。
───そう思ったのが命取りだった。
ゾボォオッッフィイイィィィンッ!!!
彰利 『っ……───!?げはぁあああっ!!!』
黒の霧と化した俺の腹を、その槍は穿っていったのだ。
……なんて馬鹿。
どうして槍に魔法効果が付加されているかもしれないって考えられなかった。
彰利 『が……はっ……!……っ……まいったな、くそ……!』
飛翔した槍が騎士団長の手に戻る頃、俺はダメージの多さに膝をついていた。
穿たれた腹はすぐに塞いだが……まいったな、秘奥義か……。
しかも速すぎて対処出来やしねぇ……。
レオン「……終わりだ。私の目的は果たした」
彰利 『なにぃ……?』
レオン「腹を貫いたのはそれ自体が狙いだったわけじゃない。書状を塵にするためだ。
持っていられると困るのであり、消える分には一向に構わん」
彰利 『……ちっ……まんまとしてやられたわけか……』
レオン「お前は確かに強いようだが、だからといって余裕を見せすぎるのはどうか」
彰利 『フッ……フフフ……説教か』
そんなことは解ってる。
だから既に書状が無くなった今、
加減をする必要は無くなった……ということにしておこう。
負けっぱなしは好きじゃない。
彰利 『すまんね、今度は俺が貴様に用がある。殺しはしなから気絶しろ』
レオン「出来るつもりか?」
彰利 『出来るさ』
ゆっくりと呼吸をした。
のちに意識を集中させ───5枚目の漆黒の翼を具現させる。
さあ始めよう。
自分の力を計るいい機会だ───
【ケース202:中井出博光/B-YOND】
───ゴコンココンコォオオン……!!
ずしーん、どしーん……!!
中井出「いっやぁあああ……!!すげぇなぁ……!!」
藍田 「いや待て……待て待て待て……デカすぎだろオイ……!」
麻衣香「眩暈がする……」
夏子 「あっちから見ればこっちは……」
殊戸瀬「文字通り“人がゴミのようだ”」
まるで夢を見てるみたいだ。
しかも悪夢の類だ。
町の人々が歩く度に地響きが鳴るなんてどうかしてるだろ。
そりゃな、踏まれりゃ死ぬわけだ。
普通に見て、大人と子供くらいの大きさの違いがあるわい。
我らの身長など、巨人の腰の少し下に頭があるって程度だ。
しかも大きいヤツだともっとデカい。
丘野二等を踏んだのも相当デカい部類に入る巨人だろう。
たとえば我らで言うアンドレ・ザ・ジャイアントくらいの。
中井出「一応普通サイズの人も住んでることが幸いだな。
一通りのものは揃ってるみたいだ」
藍田 「武器防具道具食材、大体のものはこの“万屋マホーミック”にあるみたいだしな」
殊戸瀬「教会は西側……わたし、行ってくる」
夏子 「えぇっ!?ちょっと睦月!?一人で行ったら危険だよ〜〜〜っ!!ああ……もう」
麻衣香「博ちゃん、わたしたち───」
中井出「おお頼む。俺と藍田は町の探検してるから。
夕方前にはマホーミックで落ち合おう」
麻衣香「うん、それじゃ」
我らはここで一旦別れることにした。
俺と藍田とナギーとシード、
殊戸瀬と木村夏子と麻衣香と丘野くんとで。
中井出「とまあそんなわけで───」
藍田 「探検でありますな!」
中井出「その通りである!さあなにはともあれ歩こう!
この恐ろしく広い迷宮のような町を、
俺達の手で───あ、いや、足か?───足で攻略するのだ!」
藍田 「ラーサー!」
さあ出かけよう!ある意味命懸けの町探検に!!
───……。
……。
……などと意気込んで出たが、なんのことはない。
普通サイズの人にはそれ専用の道があったのだ。
巨人の目から見れば少々大きい小屋くらいの家と、
そこを繋ぐ路地……見上げてみれば、陽の光を遮らんほどの巨大な建物。
全部繋げりゃどこぞの王城なんぞよりよっぽど大きいんじゃなかろうか。
中井出「こりゃ回るの苦労しそうだな……」
藍田 「普通の人間じゃあマホーミックにしか用が無いってのにこの広さはどうだろうな」
ナギー『わしは別に大事ないぞ?』
中井出「実は俺もだ」
藍田 「俺もだぜ〜〜〜っ!!」
なにせそれ自体が楽しみであるのだから、歩くことに面倒を感じることはなかった。
冒険とは歩くこと。
冒険とは走ること。
でもサマルトリア()と足の遅いゲームはイヤなの。
シード『───あ』
中井出「んむ?どうしたシード」
シード『失礼します父上。召喚者が一定以上離れたので戻ります』
中井出「エ?あ、おい、待ちたまえ!!」
ビジュンッ……!
藍田 「うおう……物凄い速さで消えたな……」
中井出「なるほど、覚えておこう。召喚された者は一定以上離れると主のところへ戻ると」
ナギー『それにしても驚きなのじゃ。
あやつがヒロミツの傍ではなく、夏子の傍を選ぶとは』
藍田 「あ、言われてみれば」
中井出「きっと“より父上のお役に立つために”と聞き分けのいい子を演出してるのよ」
藍田 「有り得そうだな……」
ナギー『ふむ……ヒロミツにとっての“役に立つ子”とはどんなものなのじゃ?』
中井出「強制するつもりはないからどうでもいいんじゃないか?」
藍田 「おおその通りだ提督。子供は元気に育つのが一番さ」
ナギー『そんなものかの』
二人 『そんなもんだ』
子供のうちはうだうだ考える必要がないように、親がしっかりするべきだと思うのだ。
それが出来ないのなら子供など作るなってんだ。
中井出「おお!藍田二等!目当ての場所が見えてきたぞ!」
藍田 「本当でありますか!?」
ナギー『行き先を決めてあったのか?』
二人 『もちろんだ!!』
我らは既に原中名物アイコンタクトで行き先を決めていたのだ。
当然ナギーには解るまい。
だが“男”としても“冒険者”としても、ここだけは外すわけにはいかなかった。
やがて我らは駆け出し、巨大な扉をSTRをマックスにして開け放った───!!
ドドンッ!!
すると開ける景色!
響く轟音!!
まだ見えぬというのに、この歓声はいかなるものか!
耳を劈く声の波が俺達を支配してやまない!!
ナギー『うるさいのじゃー!なんなのじゃここはー!』
中井出「あー!?なんだってー!?」
藍田 「全然聞こえねー!」
ナギーがなにかを喋っていた。
が、あまりの轟音になんにも聞こえん。
轟音というよりは歓声なんだが、それでも聞こえねーもんは聞こえねー。
それはともかくとして、ここでこうしていても仕方が無いと歩き出した俺達に、
スボリと耳当てをつけてくれる人が居た。
男 「イルザーグ王が誇る我が国の闘技場へようこそ。
観戦者ですか?それとも闘技参加者ですか?」
どうやら受付のようだった。
───そう、ここは戦う男ならば誰しもが憧れる闘技場。
しかも超無差別級の大きさ関係無しの闘技場。
望む望まぬに関わらず、巨人とも戦うことが許される戦いの聖地である。
ちなみに耳当てをつけてもらった途端、
轟音は小さくなって普通の声が聞こえるようになった。
はて。これはいったい……?
男 「この耳当ては近くの音を拾うように出来ています。
離れれば離れるほど音は閉じられ、逆に近ければ近いほど音が大きくなります。
距離を基準に仕切られますので、どれだけ大きな音が遠くで鳴っても、
小さな音としてしか感知出来ません」
俺の表情を見て悟ったのか、説明してくれる受付くん。
おお、やはりこの道のプロなのだろうか。
藍田 「どうするでありますか提督。参加するのですか?観戦するのですか?」
中井出「ウググムゥウ〜〜〜……」
男 「この闘技場ではランク付けがされていて、
最初からキングに挑戦することは出来ません。ランクは8つまであり、
ホワイトポーン、ブラッックポーン、ルーク、ホワイトナイト、
ブラックナイト、ビショップ、クイーン、キングとなっております。
……お客様はまだエントリーカードをお持ちでないですね。
発行には500$必要となりますが」
中井出「うむぅ」
藍田 「あ、質問。そのカードって仲間同士で併用できたりするのか?」
男 「それは構いませんが、弱い人に使わせて下のランクの者の挑戦を受け、
その上で負けた場合はランクが下がります。
そのため、カードは出来るだけご自分のみで使うことをお奨めします」
藍田 「なるほど……下のランクからも挑戦されることがあるのか」
中井出「じゃ、試しに作るだけ作ってみるか」
男 「発行ですね?ではお客様の名前か、団体名をお聞かせください。
個人の名前の場合でも他人が使用することが出来ますが、
団体名の方がより使いやすいと思われます」
中井出「なるほど、そりゃ確かに。じゃあ“原中”で」
男 「……、───カードの発行が終了しました。
ネームは“原中”。ランク外からの開始になりますが、よろしいですか?」
中井出「オッケイ!」
男 「それではランクカードです。無くさないように大事に管理してください」
でけーて・てーてーててーん♪《闘技場エントリーカードを手に入れた!!》
男 「それでは改めまして。ようこそイルザーグ闘技場へ。
闘技場参加者ですか?それとも観戦者ですか?」
藍田 「ど、どういたしますかサー!やはりここはノリのみで参加してみるべきでは!?」
中井出「うむ!ではこの藍田二等がエントリーする!」
藍田 「なんで俺!?ちょ、ちょっと待った受付さん!!
えーと……この闘技場って団体戦OK?」
男 「通常サイズの人間である限りは3人まで可能です」
藍田 「じゃあそれで!参加者は俺、提督、ナギーで!」
ナギー『なに!?わしもか!?冗談ではないのじゃ藍田!わしは元々平和を好むのじゃ!
こんな賭け事での戦いなぞは御免じゃ!!わしは参加しないのじゃ!』
藍田 「ありゃあ……じゃあ俺と提督でエントリーだ!」
中井出「大丈夫か……?木村夏子が傍に居ないのに」
藍田 「いけるとこまでいきましょう!サー!!」
とっても前途多難だった。
男 「それではホワイトポーンへの挑戦、1000$頂きます。……確かに。
ではこちらのゲートから進んでください。
参加しない方はこのまま正面ゲートへどうぞ。そこが観戦席となっております。
なお、一度エントリーしますと続けて戦うかどうかを問われます。
その際“続ける”と唱えると、挑戦費を必要としません。
傷なども癒してくれるので、いけそうだったら続けてください」
藍田 「おお!よーっしゃ!!やってやりましょう提督!!」
中井出「おおっ!我らの力を試す時だァーーーッ!!」
ナギー『その意気なのじゃヒロミツ!
ではわしは見ておるからの。無様をさらしたら承知しないぞ?』
二人 『任せてオッケー!!』
さあ!いざ!
前途なんて関係無いってこと今こそ見せ付けてやるわぁーーーーっ!!
───……。
……。
で───
審判 「お待たせしましたぁ!本日17戦目の戦い、ランクW・P対ランク外の対決!!
W・Pはご存知!巨人族、ドエルニクスだぁーーーっ!!」
ドエル「ウォオオーーーーーーッ!!!」
審判 「そしてこれが初の挑戦となるのはやはり初めて見る挑戦者ァ!!
団体参加のチーム“原中”ゥーーーーッ!!!」
中井出「ア、ワワ……アワワワワ……!!」
藍田 「デ、デカ……デカカカカ……!!」
早くも俺達は巨人族とぶつかっていた。
つーか初戦ランクで既に巨人って、そんなのアリか?
審判 「今回、久しぶりの参戦となります通常サイズの人間です!!
恐らくは冒険者!既にこの闘技場には
巨人くらいしか参加していないことを知らない世間知らずでしょう!!」
二人 『そういうことは先に言えてめぇーーーーっ!!』
審判 「はっはっは!聞こえません!歓声が大きすぎて私にゃなーんも聞こえません!!
では初心者のためにルールを説明しましょう!
とにかく相手を倒すこと!気絶、あるいは場外もありです!!
この巨大な武舞台の外に出すか、気絶させた方の勝ちとします!
もちろん死んでも事故と見做されますので当方は一切責任を取りません!」
二人 『ちょっと待てコラ!!!』
審判 「それではランクW・P、開始します!!始めぇーーーい!!」
ドワァッシャァアアアアアン!!!!
戦いのドラが鳴らされる!!
それとともに猛然と疾駆してくるのは巨人族のドエルニクスさん!!
中井出「ええい!恐怖していても仕方なし!!
やるぞぉーーーっ!!藍田二等ォオーーーーッ!!!!」
藍田 「ち、ちくしょう!やってやるぅううーーーーーーっ!!!」
こうして我らの戦いのゴングがなった!!
ああ願わくば……どうかこの闘技場を出る時、自分の足で出ていけますように……!
教会に飛ばされるなんてこと、俺は嫌だ!
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