───冒険の書53/命を燃やせ!巨人たちとの戦い!───
【ケース203:中井出博光/シャンディアの戦士たち】
全力で駆ける。
手には既に双剣ルドルグニスが輝いており、目の前には巨人の姿。
自分が三人居ても身長が届かない大きさに呆れるが、それでも挑戦するつもりで!
そう!その姿勢こそ一歩くんのような姿勢!
まずは小手調べとしてマグニファイは使わん!!
ドエル「おぉらぁああああああっ!!!」
疾駆するドエルさんが振り下ろすのは巨人の斧!
つーかデカい!!こんなもん巨人の全体重乗せられた上で振り下ろされたんじゃ潰れるわ!
中井出「スピードポイント!!」
すぐさまにステータスを振り分けて避ける!
そうした時には既に藍田二等が攻撃に移っていて、
武舞台の岩盤を砕いた斧と腕を駆けて巨人の目の前までに至っていた!
藍田 「“頬シュートォッ”!!」
ベチィンッ!!
ドエル「ぶえっ!……へっへっへ、利かねぇなぁ〜!!」
頬への一撃はクリーンヒット。
だがその威力の真価は木村夏子が居てこそ───ぬう、これじゃあ決定打にはならない。
藍田 「あぁそうかい。だったら───!
ストレングスマックス“頬()シュートォッ”!!」
バァッガァアアアアアンッ!!!
ドエル「ぐえぇっ!!?」
いや否だ。
どうやらさっきまでのはAGIにステータスを注いでいただけらしい。
全ステータス分を力に注げば、確かにダメージを与えられない筈がないのだ。
今度こそ仰け反るドエルに、俺と藍田は頷き合った。
そうだ、今の今まで散々と敵を打倒してレベルを上げたんだ。
だってのに、ここで言う雑魚に負けるようじゃ男としての上なぞ目指せん!!
中井出「よぉっしゃあああっ!!いくぜ藍田ぁっ!!」
藍田 「オーケイ中井出!!思いっきり暴れてやる!!」
さあ今こそ全力を出す時!!
我が力全てを以って、いけるところまで辿り着く!!
ドエル「チッ……いいモン決めたからって図に乗るんじゃあ───」
藍田 「“目”()!“鼻”()!“頬”()!“口”()!“歯”()!“顎”()!“整形()ショット”!!」
バァンパァンパァンパァンパァンパァンドゴゴゴゴゴゴゴォンッ!!!!
ドエル「ぐぶべべべべべべぇえええっ!!!」
余裕をこいてニヤリと笑おうとしたドエルの顔面を、藍田の蹴りの弾幕が襲う。
それを剥がそうと巨人の手が伸びるが、そうはさせやしない。
中井出「させっかよぉっ!!エクスプロードブレェーードッ!!」
ゾゴォッフィドォッパァアアンッ!!!
ドエル「ギィッ!?ぐぅあぁああああああっ!!!!」
放った炎爆の剣閃がドエルの左腕を爆裂させる。
その痛みに怯んだ瞬間を、もちろん俺達は逃さない。
中井出「デカイ図体しやがって───!
そんなに下を見下ろして踏ん反り返っていたいなら、
お前もいっぺん倒れてみやがれ!!“なぎ払い”!!」
AGIをMAXにしたのちに加速をつけ、巨人の傍に辿り着くと同時にSTRをMAXに。
そこから放たれるなぎ払いに一切の容赦無し!!
足の一本を貰っていく勢いで腕を振り切り、巨人の身体を吹き飛ばした。
ドエル「げぇっ───!?そんなばかなっ!!」
藍田 「バカはてめぇだ!!“串焼き()ォーーーーーッ”!!!」
やがて倒れゆくドエルの顔面目掛けて落とされるのは藍田の得意技の串焼き。
顔面を石の武舞台に突き刺すが如く、
ドォッゴォオオオオオンッ!!!!
ドエル「ゲッ……ア───」
全体重を乗せた蹴りがドエルの顔面を潰した。
その反動で浮いた手足が床に倒れる頃、既にドエルは動かなくなっていた。
恐らく顔面に放たれた蹴りの衝撃と、
岩盤から来る後頭部からの衝撃で脳がシェイクされたんだろう。
こうなっては巨人も人間も変わらない。
ぺぺらぺっぺぺー♪
しかもレベルアップした。
オオ……こりゃ結構いい経験値がもらえるぞ?
審判 「……え?」
藍田 「オラどうしたしんぱァーーーーん!!気絶じゃないのかー!?」
審判 「アッ……こ、これは大変なことが起きましたァーーーーーッ!!
なんと打倒!!人間のチームがッッ!!W・Pとはいえ巨人を下したのです!!
勝者ァッ!!チーム“原中”ーーーーーーッ!!!」
観客 『ドワァアーーーーーッ!!!』
藍田 「だぁあーーーーっ!!うっせぇえーーーーーーーっ!!!!」
中井出「耳がぁっ!!耳があぁあーーーーーーーーっ!!!」
審判 「おめでとう!我が闘技場では原則として、
挑戦者は次のランクに挑戦するかどうかを訊くものとするが、
キミたちはどうする!?次のランクブラックポーンに挑戦するか!?」
中井出「いけるところまで行く!」
藍田 「よくいった中井出!つーわけで挑戦する!!」
審判 「よしきた!では早速傷などを癒しましょう!救護はぁーーん!!」
審判がパチィンと指を鳴らすと同時に、俺達を妙な輝きが包み込む。
しかもそれが終わると傷が消えてTPも回復してるではないか……おお恐ろしい。
審判 「それでは処理班のトムさん(巨人)がドエルニクスをどかしたところで!
ランクB・Pを開始します!B・P、エドグラハム!!」
エド 「ウォオオオオーーーーーッ!!!」
二人 『やっぱデッケェーーーーッ!!!』
巨人族ってその体格だけで既に反則の域だろオイ!!
少しは人間側の身にもなってお願い!!
審判 「ランクB・P!!始めェエーーーーーーイッ!!!」
ドワァッシャァアアアアアンッ!!!!
中井出「うわーんちくしょーーーっ!!
自分は戦わないからってさっさと開始しやがってぇーーーーっ!!!」
藍田 「少しは心の準備くらいさせろー!このグラサン審判!!」
審判 「審判はグラサンしてるものなんだ!」
どっからどう見ても天下一武道会の審判みたいな審判が胸を張った瞬間がそこにあった。
どうでもいいけど。
エド 「へっへっへ、俺ゃあドエルのようにゃあいかねぇぜ。
見ろぉ!この鎧を!身体を完全に覆った俺に、生半可な攻撃なんざ利きやしねぇ!
まして巨人でもねぇお前らがこの俺に傷のひとつでもつけられるかな?
ガァーーーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」
中井出「ナメんなぁーーーーっ!!そぉりゃあ!!」
ギャリィンッ!!
中井出「おわっ!?」
すぐさま近づいて足に攻撃をしてみるも、傷はつくが斬れはしない。
こりゃ硬いな……驚きだ。
だがところどころに隙間があるのも事実。
そりゃそうだ、巨人にしてみりゃ小さな隙間でも、人間にしてみりゃ大きな隙間。
これなら───
中井出「ヘイ藍田!!」
藍田 「オーライ中井出!!」
エド 「あぁん?無駄無駄!この鎧を破壊するなんてことは」
藍田 「“三陰光圧痛シュート”!!」
ドゴォンッ!!───ピッキィイーーーーーン!!!!
エド 「おぎゃぁあああああっ!!?」
藍田を促し、足首のスネの内側、足首から訳10センチにあるとされる急所を蹴らせる。
すると烈海王でも転倒へと屈してしまう激痛に襲われ、倒れゆくエド。
そして倒しちまえばこっちのもん!!
中井出「よっしゃいくぞ藍田!」
藍田 「オーケー!!」
俺と藍田は巨人の片足をガシィと掴み、ステータスの全てをSTRに注ぐ!!
もちろんのちに実行するのは───
中井出&藍田『ストレングスマックス!ジャイアントスウィーーーング!!!』
───これである。
かなり重いが───出来ないほどでもない!!
ブォンブォンブォンブォン───ゴォオオオオオオオオオッ!!!
藍田 「よし!後任せた!」
中井出「オーケー!!」
やがてエドの体が随分と浮いてくると藍田が離脱し、俺だけが振り回すこととなる。
もちろんトドメのための下準備である!
中井出「いくぞ藍田!」
藍田 「いつでもこい!!」
中井出「そぉおおおりゃぁあああーーーーーーーっ!!!!」
ブォオンッ!!
エド 「どわぁああーーーーーーーっ!!!?」
エドが空中に放り投げられる。
だがそれでも場外まではまだまだ距離がある。
そこへ───
藍田 「“反行儀()キックコォーーーーーース”!!」
バギョォオオオオオンッ!!!
エド 「ぶへぇえぁああああああっ!!!」
落下してきたエドの胸を鋭く蹴り上げる藍田の姿。
さらに浮いたエドを跳躍で追いかけ、場外目掛けて蹴りをブチ込む!!
藍田 「“胸肉”()!!」
バガァッシャァアアアアンッ!!!!
エド 「ッ〜〜〜……───!!」
それで終わりだ。
エドは場外までスッ飛び、その身体を守っていた筈の鎧は、胸の部分が無残に砕けていた。
……信じらんねぇよな、これで全力じゃないだなんて。
木村夏子が観戦でもしてたら、相当違ったんだろうが……
審判 「じょっ……場〜〜〜〜外ッッ!!なんとチーム原中!!
W・Pに続き、B・Pまで打倒してしまいました!!」
中井出「ウォーーーーーッ!!」
藍田 「ハワァーーーーーーッ!!」
観客 『ドワァアーーーーッ!!!』
中井出「ウギャア鼓膜が破れるゥウウーーーーーーッ!!!」
藍田 「自分で大声上げても掻き消せるもんじゃねぇーーーーーーっ!!!!」
審判 「さぁーーあここまでこれれば上等だ!!キミたちは現在ブラックポーン!!
そして次への挑戦権を手に入れた猛者だ!!次への挑戦はどうするね!?」
中井出「続行だぁーーーーーーっ!!」
藍田 「Yah()ーーーーーーッ!!!」
審判 「そうこなくちゃ!というわけで傷の回復を!
そしてトムさんがエドを回収したところで次を開始するよ!!
ではランクルーク、カトランテス選手の入場!心の準備は出来たかい!?」
二人 『でっ……でけぇえーーーーーーっ!!!!』
出てきたカトラさんは今までの巨人よりさらにデカかった!!
言うなれば巨人版のアンドレアノフ・ガーランド!?つーかアレクサンダー・ガーレン!?
デカすぎだろオイ!!
審判 「それではランクルークを開始しよう!!始めェーーーイ!!」
ドワァッシャァアアアアアアンッ!!!
戦いのドラが打ち鳴らされる!
だが大丈夫!ボクラならきっといけるところまでバゴシャア!!
中井出「ウギャーーーーリ!!」
藍田 「な、中井出ぇーーーーっ!!!」
ドゴッ!ゴシャッ!バキベキゴロゴロズシャーーーアーーーーッ!!!
中井出「グビグビ……」
いきなり……そう、ドラが鳴らされた途端だった。
我が体に巨人のトーキックが炸裂し、
俺は場外ギリギリの場所まで跳ね転がって滑ったのだ。
しかもなんつーダメージ……HPの半分をあっさりと持っていかれた……。
一戦目、二戦目とデヴいヤツが相手だったが、今度はスリムでマッスルな巨人だ。
喩えるならばロマンシングサガシリーズに出てきそうな巨人だ。
武器はどうやら無いらしく、体術相手らしい。
こりゃこまった、体捌きが相当にすごい。
だがここで負けるわけにはいかんのだ!!
中井出「憤怒ゥーーーーッ!!」
口の中にアップルグミを放り込んで咀嚼!
HPが回復するのを確認すると立ち上がり、巨人へと疾駆する!!
藍田 「ヘアイーーーッ!!ウハァーーーイ!!!」
その袂では既に藍田が奇声を上げつつ攻撃を開始していた。
当然俺もその奇妙な勢いに乗り、攻撃を開始する!!
が───ドゴゴシャベキゴキビタァンビタァンビタァン!!
中井出&藍田『ギャアーーーーーーーーッ!!!!』
踏み潰されるわ蹴られるわ、殴り潰されるわ殴られるわ、
捕まって岩盤に叩きつけられるわでもう大変だ。
くそっ、こちとらまだ10分経ってないからマグニファイが使えねぇってのに!
中井出「っと、そんな時こそストック!鬼人化を解除!!」
STRをマックスにして、我が体を握り締めている手を強引に外してゆく!!
カトラ「……!?力で……負けるだと!?」
中井出「すかさずスラァーーッシュッ!!」
ゾシュゥンッ!!
カトラ「チィッ!」
強引に手を外してから即座に相手の親指に双剣を通す。
そうすることで逃れた俺は、
地面に着地すると同時に駆け出してその足に一閃をドゴォンベキャアン!!
中井出&藍田『メギャーーーーリ!!』
───一閃を通そうと思った途端、蹴り上げられた上に藍田の頭で打ち落とされた。
そうだった、まだ藍田が捕まったままだった。
中井出「メガガガガガガ……!!」
藍田 「うげっぴうげっぴ……」
しかしそんな悠長なことも言える状況ではなかった。
巨人のトーキック+藍田クラッシュは予想以上のダメージを俺に齎した。
アップルグミなんぞで回復させといたのがそもそもの原因だ。
しかしそのダメージが背水スキルを発動させ、俺に力を齎した───が、
このままのHPじゃすぐに瞬コロがしされるだけだ。
こうなったら、と。口の中にアップルグミを詰め込み、
HPがマックスになるのを確認してから走り出した!
カトラ「フンッ!!」
藍田 「いやぁああーーーーーーーっ!!!!!!」
途端、振り下ろされる無惨弾!!
もちろん弾は藍田である。
中井出「させるかぁーーーーーっ!!エクスプロードブレード!!」
シャキィンッ!ズバァッ───ボガガガガォオオオンッ!!!!
カトラ「ぐあっ!?」
藍田 「ほわぁーーーーっ!!?」
ドゴォッ!ゴシャシャズザァーーーーッ!!!
藍田 「うげごがほぼべべっ!!」
振り下ろされる瞬間、カトラの腕に剣閃を放つことで藍田を解放!
だが勢いはなくならなかったらしく、藍田は岩盤を滑走して俺の袂まで戻ってきた。
しかしすぐにアップルグミを食い荒らすと立ち上がり、
藍田 「なにをするだァーーーッ!!ゆるさんっ!」
と激昂した。
藍田 「貴様は紳士である僕を怒らせた!よって」
カトラ「ウォオオオオーーーーーーッ!!!!」
藍田 「キャーーーーッ!!?」
原中名物“会話無視”が相手にやられた。
巨人さんは勢いよく拳を下ろし、我らを潰そうとしてきている!
いかん!これはいかん!!
藍田 「フッ……ばぁ〜かめ!
そうやって勢いよく体重を込めてくれるのを待ってたんだ!」
中井出「そうなのか!?」
藍田 「そこでお前が驚くなよ!!仲間として!」
言いつつも藍田は地面をジャリッ……と踏みにじると、
ソレを強く蹴ることで物凄い速度で跳躍した!!
藍田 「秘奥義!疾風のごとく!!!」
ご存知、超自爆技の“疾風の如く”である。
ドゴォン、という音とともに岩盤が壊れる様は、跳躍の力強さを示していた。
カトラ「構うか!このまま潰れろ!!」
一瞬怯んだカトラだったが、振るった腕はあくまで止めない!
やがて藍田とカトラの拳が衝突バゴチャォンッ!!
カトラ「ギッ───!?ぐあぁあああああっ!!!!」
───衝突の瞬間。
カトラの腕は砕け、肘の先までが一気に潰れた。
当然だ、普通の攻撃に対して藍田は秘奥義なのだ。
しかも己のHPの8割を削る高威力のもの。
責める力では圧倒的に優位だ。
が───肝心の藍田は?
と、藍田の姿を探した時だった。
カトラの後ろのほうに“ヒョ〜〜〜……ごしゃっ”と落下する姿が。
目を凝らしてみれば、頭が少し陥没した藍田が泡を吹いて倒れていた。
ああ……まあその、なんだ。
生きてるだけでめっけもんだろ、今のは。
中井出(さて───)
相手は右腕粉砕骨折だ。
だが戦士としての誇りが、人間相手に引くことを許さない。
痛みのあまり汗をだらだら流してるってのに、
戦意を全く失っていない目で俺を見下ろしているのだ。
カトラ「っ……どうした……こいっ!!貴様らにとってはチャンスだろう……!!
戦士に情けをかけるなど、愚行の極みだ!!」
中井出「………」
実際に相手をしてみて解る。
巨人族の戦士ってのはいろんな意味で大きい存在だ。
そこいらの人間の戦士などとは比ぶるべくもなし。
だからこそ俺は無言で双剣を構え、剣閃を放った。
そして───それで勝負はついた。
審判 「打倒打倒打倒ォオーーーーーッ!!!やりましたチーム原中!!
ランクルークを見事下しました!!さぁここまで来たらヤボは無しだよ!
次はホワイトナイトへの挑戦!もちろん!?」
中井出「続行だぁーーーーーっ!!!」
藍田 「や……やぶぼっ……Yah……」
審判 「一方さんが虫の息だが大丈夫!さあ救護班!!」
ぺぺらぺっぺぺー♪ピピンッ♪《HP、TPが完全回復しました》
レベルアップの音とともにHP、TPが回復する。
それとともに───今の今まで倒れていた藍田が復活する。
藍田 「フオオ!かつてない力が俺の体にみなぎる!
これはそう……まるで18号無しでも完全体になったアイツのように!!」
藍田の体が輝く!煌く!
でもべつに強くなったわけではないらしい。
回復しただけだし、当然といえば当然だ。
審判 「それではランクホワイトナイト!!始めェーーーーイ!!」
ゴォッ───ドォッゴォオオオオンッ!!!
巨人 「オォオオオオオオゥウウ!!!」
中井出「きょ、巨人が降ってきたぁーーーーーっ!!!」
どうやら観戦していたらしいホワイトナイトが、客席からスッ飛んできた。
無茶をする。
こいつの落下の所為で武舞台の岩盤が大いにブッ壊れたんだが。
修理費はこいつの財布の紐が外れることで回復するのだろうか。
などと考えてる時、藍田が全力での水面蹴りで
現れたばかりで名前も知らないホワイトナイトをスッ転ばせた。
律儀に倒れてくれた戦士さまは後頭部をしこたま打ちつけ、
息をゲホリと吐いたところに顔面に藍田得意のブロシェット。
さらに颯爽とオリバ化すると、
地震すら止めてしまいそうである下段突きで名も知らぬ巨人の顔面を打ち抜いた。
それでホワイトナイトは名前も知らないままに気絶してしまい───
俺と審判は肩を並べつつ途方に暮れていた。
解る、解るぞ審判よ。
この闘技場に変身は反則だというルールがあるなら是非ツッコんでやってほしい。
俺ではヤツを止められん。
オリバ「オイオイ審判?コレ、気絶ジャナイノカイ?」
審判 「へあっ!?は、はははいっ!!しょしょしょーーーーぶありぃいーーーっ!!!」
観客 『ドワァーーーーーッ!!!!』
中井出「《ズキーーーーン!!》ぐわぁ耳痛ぇえーーーーーーっ!!!」
オリバ「失敗シタゼ……鼓膜ニモウェイトトレーニングヲサセテオクンダッタゼ……」
鼓膜にウェイトトレーニングをさせるなんて不可能だと思うんだが……。
超規格外の知識はどうしたんだオリバよ。
いや、もしや彼の鼓膜には筋肉が存在するのかもしれない。
それとも俺が知らないだけで鼓膜には筋肉が……!?
審判 「傷っ……は、ないね……。では次の戦いに挑戦するかしないか!」
中井出「ぞ、続行だぁ〜……?」
オリバ「シリアスプロブレムダゼ」
大問題らしい。
俺からしてみれば貴方様のその格好こそが大問題だと言いたいのだが……
言ったところで流されるだけだと予想がつくのでツッコまないことにする。
そもそもこっちのオリバはどうしていつもパンツ一丁なんだろう。
せめてマンガ内のオリバのようにアロハシャツを着てくれまいか。
審判 「ではランクブラックナイト!!開始ィーーーーーッ!!!」
ドワァッシャァアアアアアアンッ!!!!
……それで審判よ。
相手は何処に居るんだ?
審判 「……おや?ブラックナイト!?ブラックナイトー!?」
しーん……。
呼べども出ないブラックナイト。
これは……
審判 「……現れませんね。では誰か挑戦者は!?
このままでは自動的にチーム原中がブラックナイトになりますがー!?」
巨人 「おぉ!俺がやるぜ!俺ゃホワイトナイトだからなー!!
相手がこんなヤツなら望むところだぜ!」
審判 「───それでは開始!!」
巨人 「よっしゃあタナからボタ餅ってのはこのことだぜ!いやいや漁夫の利かぁ!?
うっひゃっひゃっひゃひゃ!!つぶれろぉおおっ!!」
いかにも私は頭が悪いですってヤツが現れた。
そいつは観客席から飛び出すと、真っ直ぐにオリバ目掛けて駆け、自前の剣を振るった。
ああ解ってる。
心配の必要などないのだ。
どうせベキャーーーン!!
巨人 「へ?あ───あぁ?」
そうなのだ。
生半可な武器などオリバがリアルに締めた腹筋に勝てるわけもない。
巨人の大剣はあっさりと砕け───そこには驚愕する巨人だけが残された。
巨人 「ど、どどどどうなってやがる……?」
オリバ「粗塩を肌にスリ込んである。
昔のベアナックルボクサーはこうして切れにくい肌を作ったものさ」
巨人 「塩!?お、俺の自慢の剣が塩如きに砕かれたってのか!!
そんなの認めね───」
オリバ「攻守交替───」
ベゴシャアン!!
巨人 「うげぇっ!?お、おぉおお俺の足がぁあああああっ!!!」
……俺、帰ってもいいのだろうか。
あれほど手強かった巨人がたった一発で骨折ですよ神様よぅ。
しかも倒れてきた巨人の、砕けてないほうの足首を掴んで片手で振り回してるし。
巨人 (片手で振り回されている……ッ!!500キロを越える俺がっ……!!)
オリバ「ヌォオォォオォォォオオオォッ!!!!」
ゴォッ───ドゴォンッ!!
巨人 「───ッ……」
ああ……終わった。
地面に叩きつけられた時点で意識がブッ飛んだぞありゃ。
中井出「……気絶したぞ、審判」
審判 「あのー……あの人、ほんとに人間か?」
中井出「気持ちは解るが、ツッコんだら負けだと思う」
審判 「それで……やっぱりランクビショップ、やるのか?」
中井出「やるさー!」
オリバ「続キヲヤロウカ」
審判 「ではランクビショップ!バネスガエル選手!!」
バネス「オォッ!!」
どしぃーーーんっ!!
中井出「どわっと……!!」
オリバ「ン〜〜〜……」
またもや巨人の来襲。
どうやらマジでランカーは巨人しか居ないらしい。
審判 「始めェーーーイ!!」
ドワァッシャァアアアアアアンッ!!!!
開始のドラが高鳴る!
俺は駆け出そうとして───ンーと言いつつ動こうとしないオリバを見た。
ここまで来ると敵の威圧感も尋常じゃない。
いくらオリバの世界一の筋肉があるからって、そう防げるものではない筈だ。
バネス「厚い筋肉が自慢か!だがこの私の剣技までを防げるかな───!?」
巨人の剣は迷うことなくオリバの心臓を狙って振るわれる!!
───だめだ!今から避けても間に合わゾギィンッ!!
バネス「───!なっ……!?」
オリバ「心臓をプレートでカバーしてあるのさ」
中井出「ゲェーーーーーーッ!!!!」
そう、確かに皮膚は貫通した。
だが───心臓のプレートがどうとか言う以前に、
厚い筋肉によって剣が止められてしまったのだ……!!
しかも剣を力任せに奪われて、足目掛けて投げられたのだ。
バネス「ま、待───《ザコォンッ!!》ぐあぁあああああっ!!!」
突き刺さった大剣に足を取られ、前のめりに倒れるバネス───
だがやはりそれだけでは終わらない。
待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑い───
オリバ「キミはつまらん」
バネス「───!!」
バゴォッチャァアアアアアンッッ!!!!
ゴォゥンッ───ドッガァアアアアッ!!!!
観客 「うわぁああっ!!!?」
観客 「な、なんだぁああっ!!?」
観客 「こっ……ここまで拳一発で飛ばしたってのかぁっ!!?」
観客の皆さん、驚愕はもっともだ。
もっと驚いてもバチは当たらないぞー。
審判 「えっと……ラ、ランクビショップ撃破ぁ……。あの……ほんとに人間?」
人間というかオリバである。
人間として数える必要はないと思う。
オリバとして数えよう。
あれは既に次元が違う生物だ。
そしてとうとう来てしまった、ランククィーン。
どうなっちまうんだ俺達は……。
【Side───丘野くん】
シュタタタタタタ───!!
麻衣香「ちょっ───丘野くーーん!!足速すぎだよ!!」
夏子 「何処向かってるのー!?」
丘野 「闘技場でござる!!
提督殿や藍田殿ならば確実にここに行くという確信があるでござる!!
そしてなにより拙者自身が見てみたいでござるよ!!」
殊戸瀬「……踏み潰されないように気をつけて」
丘野 「大丈夫でござる!!」
教会にてありがたい説法を受け取った拙者は、
彼女らと合流して話を聞くなり駆けていた。
あとで万屋の前で合流などという悠長なことは知らんでござる。
拙者は行きたい場所にまず行く!!
そしてそこには絶対に提督殿と藍田殿が居る!!
これは絶対に絶対でござるよ!!
男 「ようこそ、男の浪漫をお届けする闘技場へ。観戦───」
丘野 「観戦でござる!しからば!!」
ダタッ!!
麻衣香「少しはお話聞いてあげようよーーーっ!!あぁ、行っちゃった……。
そ、それじゃわたしたちも急ぎますから!!」
男 「どうぞどうぞ。観戦は無料ですので」
拙者たちは走った!長い長い通路を駆けた!!
そしてやがて光が視界を遮り、広い場所に辿りつく頃───!!
審判 「やりましたぁーーーーっ!!
チーム原中!!ランククィーンを撃破しましたぁーーーっ!!!」
観客 『ウォオーーーム!!!!』
丘野 「ギャアアうるさいでござるぅーーーーーっ!!!」
撃破とか原中とか叫ばれたのちに、耳を劈く絶叫が轟いた。
何事かと思案するも、やはり聞いたとおりということになる。
どういったランクづけかは知らぬでござるが、
どうやら───あの巨大な武舞台に立っているのが提督殿らしい。
隣に褐色のムキムキマッチョメンが居るでござるが……よし俺はなにも見なかった。
しかし闘技場に居るとは思っていたでござるが、まさか戦っているとは。
これは流石に予想外でござるな。
どれ、もっと近くに行ってみるでござる。
審判 「いやぁーーお強い!!まさか初めての参戦でキングにまで辿りつくとは!!
しかも人間が!これは奇跡かはたまた実力か!!
それではもう訊くまでもねぇーーーっ!!
ランクキング!行ってみるかぁーーーっ!!」
中井出「───!ちょっと待ったァーーーッ!!」
審判 「え!?なに!!まさかここまで来て
“やっぱやめるゥ”なんてシラケること言うんじゃないでしょうね!
私は審判として観客の盛り上げと自身を盛り上げる義務がある!!
ここまで来ておいてやめるなんて言わせねー!!」
中井出「丁寧なのかガラ悪いのかどっちだよお前!
と、それは今はいいとして!確か人間なら三人までOKだったよな!?」
審判 「ええまあ。途中参加も認められておりますが?」
中井出「だったら───丘野二等ォーーーッ!!そこに居るのは解ってる!!
汝も男ならば今すぐ参戦しろォーーーーーッ!!!」
───!?……!!
遠くで丘野二等が驚き、さらに騒いでいた。
しかしすぐ隣に居た巨人に“へっへっへ”と胴体を掴まれ、
こちらに投げ飛ばされると観念して着地した。
丘野 「なにをするでござるか……。せっかく観戦モードに入っていたでござるのに」
藍田 「すまん、いいから参加してくれ。さっきの戦いで変身能力が切れちまった」
中井出「このバトルで最後なんだ。そうすりゃ俺達はこの闘技場を制覇出来る」
丘野 「いきなりラストバトルでござるか!?滅茶苦茶でござるよ!!」
中井出「ええい黙れヒヨッ子が!!やると言ったらやるのだ!!」
藍田 「大体お前が町の前で踏み潰されて昇天なんかしてなけりゃ、
最初から三人でだな……!!」
審判 「なにやら喧嘩してるようですが、大丈夫ですかー?
それでは泣いても笑ってもラストバトル!!HPもTPも回復済み!!
張り切ってまいりましょう!!ランクキング!!
お相手はバトルコロシアムのキングにしてこの王国の王!!」
ゴォオオオオオッ───ドォッゴォオオオオオオオオンッ!!!!
審判 「ゼプシオン=イルザーグ様だぁっ!!」
ゼプシオン「オォオオオオオオオッ!!!」
総員 『ひっ……ヒキャーーーーーーッ!!!!?』
空から降ってきたオウサマに、僕らはあらん限りの絶叫を贈りました。
神様ああ神様神様神様ァアーーーーーッ!!!聞いてない!こんなの聞いてないです僕!!
なんという筋肉っ……!!なんという無駄のない体っ……!!
鎧も剣も、風格も威厳もなにもかもがクィーンとは天と地ッ……!!
全身全霊を賭けて断言できましょう……!!絶!対!無理!!勝てねぇ!!
審判 「おおっ……間近でお会い出来て光栄です、王!!」
ゼプシオン「……ドラを鳴らせ。戦士の戦いを侮辱する気か」
審判 「ハッ!ただいま!!それでは!激動のラストバトルを開始いたします!!
始めェエーーーーーーーイ!!!!」
ドワァッシャァアアアアアアンッ!!!!
中井出 「あわわ鳴っちまったぁーーーーーーーーーっ!!!」
丘野 「提督殿!?これは策略でござるか!?
相手があの英雄王だなんて聞いてないでござるよ!?」
藍田 「言ってる場合か!来るぞ!!」
ゼプシオン「我が名はゼプシオン=イルザーグ。いざ───誇りある戦いを」
バガァンッ!!───岩盤が砕ける。
それに気づいた時には戦いは既に始まっていて、
たった今まで目の前に居た筈の巨体は既に横に───うそだろ!?
中井出「───だぁああああっ!!」
ストックを解除して鬼人化を解放。
全ステータスをストレングスに回し、
振るわれた盾での攻撃を剣で受け止めパガァンッ!!
中井出「づっ───!?う、わっ───!!」
いや。
受け止めることも出来ずに空を飛んでいた。
ああ───今なら解る。
こりゃ確かに自分が弾丸にでもなったような錯覚を覚えるわっ……!!
藍田 「中井出っ!?」
中井出「自分のことだけ心配しろ!!死ぬぞ!!」
とはいえ俺も───ぉおおおおっ!!!
ザゴォンッ!!ザギギギギギッ!!!
中井出「いぢっ……!!くっ……!!」
岩盤に双剣を突き刺してなんとか止まった。
しかしその双剣こそがえぐった地面の距離が、相手の力の強さを物語っていた。
藍田 「───よっしゃ!身体に力が漲る!夏子が来てくれた証拠だ!!
これでちっとは《ブォンッ!》うわっ!?《バガドゴォンッ!!》げはぁっ!!」
振るわれる剣。
それを跳躍で避けた藍田だったが、
少しの隙をも許さぬと振り落とされた左拳が藍田を地面に叩きつけた。
さらに起き上がろうとする藍田を容赦なく踏み潰し、黙らせた。
丘野 「っ……次元が違うにも程があるだろ!!我流秘奥義!“双月翔閃”!!」
その動作を狙い、今度は丘野が攻撃に移る。
いつかやった、分身と双剣六閃化に無月散水を加えたコンボである。
いつかのように相当数に分裂し、
一気にゼプシオンへと襲い掛かるその姿はそれだけでも勇気ある者と言えただろう。
或いは───分身できることが安心を齎していた故かもしれない。
だがその安心こそが油断を生んだ。
ゼプシオンは目を閉じると気配と殺気のみを辿り、
なんと本体である丘野目掛けて狂いもなく剣を振るっていたのだ!!
丘野 「《ザフィィンッ!!!》なっ……こんなっ……!!」
中井出「───!くっそぉおおおおおっ!!!」
斬られ、大地に叩きつけられる丘野と───それと同時に消滅する分身たち。
藍田も既に気絶中で、立っているのは俺だけだった。
だが、だからといって棄権は出来ない。
いや、男としてこの局面でそんなことを言うこと自体が間違っていると、肌で解った。
せめて───そう、願わくば、俺の意識が続く限り、
小さくてもいい───男としての誇りを可能な限り───!!
中井出 「ッ───おぉおおおおおああああああああっ!!!!」
ゼプシオン「……逃げずによく進んだ。勇気ある者よ」
ストックをさらに解除する。
疾駆する足は恐怖で震えるが、それでも前へと走った。
解放される背水の陣が身体と双剣を赤い残像で包む時、双剣に懐かしい輝きが点った。
俺はそれを好機だと───全力をぶつける時なのだと理解し、
躊躇することなくSTRのみにステータスを振るっていた。
───さらにストック解除。
丘野の六閃化を解放し、武器を六閃に至らせる。
これに全てを賭け、これが至らなければ俺達の負け。
───それじゃあ行こう、小さな可能性の先へ───!!
中井出「荒廃の世の自我、斬り裂けり───!!」
竜巻のような鞘に包まれた双剣が光り輝く。
疾駆したまま構える武器はこの一時のみ揺れもせず乱れもせず、
ただ対象を斬滅することのみを望んでいた───!!
中井出「二刀流居合い!!羅生門!!」
やがて放たれる爆裂する剣圧。
出し惜しみをするでもなく、
同時にエクスプロードブレードを上乗せした今の俺に出せる最強の技を繰り出した。
当たれば、少なくともダメージは与えられる筈。
そう信じた。
そしてそれはきっと正しかった。
いや───正しい筈だった。
バガァッ───ゴォゥンッ!!
中井出「え───?」
放った鎌鼬は、普通ならば避けることなんて出来ない筈だった。
だが───じゃあこの横に居る存在はなんだ?
……っ……避けるかよ!あれを!!
中井出 「〜〜〜っ……くっそぉおおおおっ!!!」
ゼプシオン「遅い!!」
振り向きざまに剣を振るった───が、それは確かに遅かった。
気づいた時には俺の脇腹は巨大な足によって蹴られていて、
蹴られた先から骨が砕けていくのが理解できた。
そして───きっと一度。
たった一度瞬きするくらいの時間に、
俺は武舞台の端から反対側の場外の壁までの距離を吹き飛んだ。
バギャァォンッ!!
中井出「───っ……えはっ……!!」
やがて、客席の奥の壁に激突して初めて、
俺は自分が空を飛ばされていたことに気づいた。
そして……自分の体の骨がバラバラになっていることに気づいた時、
俺は自分が塵になっていっているのを知った。
つまり……俺達の敗北は、ここに決定したのだ。
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