202/歩む日々こそ我らが覇道 ざりざりざりざり……シャーーー……シュッシュッシュッ……。 バサッ! ……シュルシュル……ギッ、ギシッ……。 「…………明日からどうしよう……」 そんなわけで、中庭にある大きな樹に自作のブランコを引っ掛けて、座ってからたそがれてみました。 え? ええ、もちろん仕事はありますよ? 明日からどうしよう、も言ってみただけだし。 けどまあ、カンナを使ってブランコ的な椅子を作るのが中々楽しかった。 いいよね、あのシャーってやる瞬間。 「はっはっは、主もまた、おかしなものを作りますなぁ」 「星? って、いつからそこに居たのさ」 「ふむ。主がその吊るし椅子に座る瞬間に、ひょいと」 いつの間にか枝の上に座っていた星が、けらけらと……は、ちょっと違うけど似たような感じで笑う。 丁度見上げるかたちになるが、なにに対抗してか星が足だけで枝にぶらさがり、仰ぐようにして俺を見上げ……見下ろし……な、なんて言うんだ? この場合。 ともかくまあ、姿勢からすれば見上げるようにしてきた。 「疲れないか?」 「たまにはくだらんことだろうが幼稚なことだろうが、やってみることにこそ意味がありましょう。これで案外、面白いものです」 「まあ、それは解るよ」 「うむ。主の好きな童心というものですな。子供のように、これと決めたら行動する。なるほど、悪くないものだ。ああもちろん、どこぞの赤い隻眼大剣のようになるつもりは微塵もありませぬが」 「それはとっても結構だけど、頭に血が上るぞ、星」 「なんと。この趙子龍が些細なことで怒るとでも?」 「その血が上るじゃなくてね!?」 「ふふふ、甘く見ないでいただきたい。この趙子龍、些細なことで己の在り方を乱すようなぐおお顔がみしみしと鈍痛に襲われて……!」 「いいからその体勢やめなさい!」 とりあえず星の頭を支えてやって、そのまま上に押し戻して事なきを。 むしろなにがやりたかったんですかアータ。 「ところで主、これは?」 「ブランコ。仕事がなくなったからたそがれなくちゃなー、って、妙な使命感に襲われた……というのはこの場のノリだけどさ」 「ほう仕事が。では主」 「酒なら付き合わないからなー」 「いやいや、酒ではござらん。そもそも私はここに、主を呼びに来たのだ。主をよく見かける場所といえば、部屋か中庭だからな、はっはっは」 「……地味に否定出来ない認識だなぁ」 苦笑しつつも先を促してみると、なんでも軍師様が俺を探していたらしい。 もちろん真っ先に訊くのは“なんの用なんだ?”なんてことではない。 ……何処の軍師様? 具体的にはどの国の軍師様? 出来れば宅のお国の猫耳フードさんは勘弁だなぁとか……ねぇ? 「呉と蜀、公瑾殿と雛里だ。主に少々訊きたいことがあるらしい。で、私が中庭に用があったから、ついでということで呼びに来たのです」 「へえ……で、星の用っていうのは? 中庭になにかあったのか?」 「うむ。偶然主と出会って、偶然主と話をして、偶然穏やかに過ごす。そんな偶然をたまにはと」 「ウワーイ会うため探してる時点でもう偶然とかどうでもイイヤー」 「おおそうでしょうとも。主ならばそう仰ると予測しておりましたぞ」 「それもう偶然とかいろいろ超越した何かだよね!? 言葉まで予測してたの!?」 からから笑いつつ、俺が座っているブランコの両隅に足をかけ、反動を付け始める。 立ち漕ぎと座り漕ぎが合わさったような、まあ、青春っぽいアレである。喋ってることは実に青春とは程遠いが。 ……うん。程遠いんだけどな。 なんでかなぁ。ブランコっていうのは、子供の頃を思い出させる。 「ところで主。これはただ揺れるだけのものなのか? もっとこう……勢い良く振ると一回転するとかは───」 「あってたまりますか」 きみは天のものをなんだと思ってんですか。 ていうかこんなの、普通に蜀の学校にも…………ああ、うん、作った記憶、ないかも。 「ああでも、昔はブランコで勝負とかもやったなぁ」 「《ぴくり》ほう、勝負ですと?」 「……星。やっぱり結構、勝負とかに餓えてる?」 「う、むむ……はぁ。まあ、隠してもせん無き事ですが……どうにもこう、勝負と聞くと身構えてしまうのです。本能的なものでしょうな。こればっかりはなかなかどうして、自分でもどうにも出来んのです」 「そか。じゃあやってみるか? ブランコ対決」 「ぶ……ぶらこん対決……《ごくり……!》……何故だかとても危険な香りのする名ですな……!」 「はーいブランコねー!? 謎の迫力に息飲んでるとこ悪いけど名前は正しく覚えましょうねー!?」 あと人の頭上で無意味に迫力だして息を飲むのも今すぐやめて!? ていうかブランコ漕ぎながらなんでブラコン話なんてしてるんだよ俺達! 「はぁ……べつに難しいことじゃなくてさ。こう、ブランコを思いっきり漕いで、飛び降りるんだ。で、一番遠くに着地出来たほうの勝ち」 「むう、なんだ、そんな単純なもの……天の決闘というのだから、もっと凄まじいものを期待したというのに」 「ちょっと待とうね変形ナース。いつ誰が決闘なんて言いましたか」 「ふふふっ……いやいや、失礼した。随分と肩の荷が下りたようだと、ついからかってしまった。以前のような、なんでもかんでも自分がやらなくてはと気負っていた主とはまた違う。私は今の主のほうが傍に居やすいと思いますぞ」 「肩の荷って……俺はべつに」 「ほう? 違うと? ならば主は今まで、私のことを……意味は解りませんが“変形なーす”などと呼ぶことはございましたかな?」 「ないな《きっぱり》」 「まあ、そういうことでしょう? 主は今のほうが砕けているという、ただそれだけのことです。というか今までが生真面目で堅苦しすぎたというだけのことですな」 (歴史的人物に対してどこまで気安くしろと言うのか) 気安い以前に様々なことしちゃってますけどね、俺。 気安く声をかけるとか肩を叩いて挨拶する以上に子供作っちゃってますよね、はい。 「ただまあそのぉー……それを引き出したのがあの友人というのがどうにも悔しいのです。出来ることなら我らが、我らの傍で、我らの隣でこそ、砕けた主を許してやりたかったと、どうしても思ってしまうのですよ」 それだけ言うと、星がぽーんとブランコから飛び降りて、地面にとすんと着地する。 振り向いた彼女は……楽しそうだった。 「はっはっは、どうですかな主! この趙子龍の飛距離に敵いますかな!?」 「ちなみにこの遊び、立ち漕ぎ禁止だから」 「なんと!?《がーーーん!》」 地味に驚いている星に、これまた地味に遊びのルールを説明する。 必ず座った状態で、ブランコの勢いで飛ぶこと。 ブランコを踏み台にして跳んでは、身体能力である程度の距離が確保出来てしまうからだ。 なのでそれを踏まえての対決が、今、始まった……! 「ふ、ふふふ! ならば散々と立ち漕ぎをしてから座り直して飛べば文句はありますまいぃっ!」 「ああ! それならOKだ!」 先行、趙子龍さん。 散々と立ち漕ぎをしたのち、座り直して椅子から射出。 ……ほぼ上に飛んでしまい、着地してから物凄い悲しそうな顔で見つめられた。 「い、いや。今のは準備運動というかほらあれですよ主 何事もまず試してからやるべきというか主もよく言っていたでしょう服もまずは着てから買うかを決めるべきだと」 「うん落ち着こうね? とりあえずそんなガトリング言い訳をしなくても、もう一回やっていいから」 「おおそうでしょうとも!《どーーーん!》ふふふ、さすが私が認めた男だ、懐の大きさが違う」 「…………」 うん、褒められている筈なのにてんで嬉しくない。 ともあれ再びブランコに乗った彼女は、投擲の軌跡がどーたらこうたらとぶつぶつ言いつつ、勢いを付け始めた。 その顔からは真剣と書いてマジと読むほどの気迫が感じられ、邪魔をすれば何処から出したのかも解らない武器で刺されそうなほどの殺気さえ……って星さん!? 本末が! 本末が転倒する! 肩の荷を下ろさせたかったんじゃなかったの!? なんかもういろいろ背負ってるように見えるんですけど!? 武人としての誇りとか勝負する者の立場とかなんかいろいろ! と、どうツッコんで止めたもんかと考えていたところへ、さきほど話題に出た雛里と冥琳がやってきた。 「北郷、ここに居たか」 「ご主人様、あの、その……」 「ああうん、雛里、その調子その調子。あわわは出来るだけ言わないようになー」 「は、はいぃ……ががががんばり、が、がががががが……!!《ガタタタタタタ……!!》」 「あわわにどれだけ精神安定力振り分けておいでで!? 解ったごめんもう言わないから!」 ゴキブリ事件の際、朱里があんまりにもはわわだったからと、雛里にやってみないかと持ちかけたのが……愛紗と春蘭に滅法怒られた翌日。 素直に頷いてくれた雛里は本当に良い子…………もう子って歳でもないか? ともかく、そんなわけでやっていたんだが……早くも限界だったようで。 「ああ丁度いい、話というのもその口調についてなんだが」 「何気ない話題が広がりを見せる瞬間って、なんか居心地悪いかちょっぴり嬉しいかのどっちかだよね……」 俺はもちろん前者で。 「口調について、って。……ん? そういえばどうして雛里と冥琳は一緒だったんだ? なにか街についての相談ごととか?」 「いいや? まあ、当然なのかもしれないが、あまり常に難しいことを考えているという見方はしないでほしいな。時にはそういったことから外れたことも考えたくもなる」 「あ……っと、そうだよな。軍師だからってそういう難しいことばっかってことは───」 「ああ。実はこれからの三国の在り方についてなんだが」 「滅茶苦茶難しいんですが!!?」 え、あえ、えぇ!? 難しくないの!? 難しいよね!? じゃあなに!? きみたちいっつもこれよりも難しいこと考えておいでで!? 「なにをそんな素っ頓狂な声を出している。こんなもの、雪蓮がどうすれば真面目に仕事をするのかを考えるよりも簡単だろう」 「わーうんすっごい簡単だー」 即答である。 なんだ、全然難しいことなんてなかったじゃないか。 基準がおかしいけどなんか今ならいろいろと理解出来る気がするよ……。 「あ、それでその、あ、ご主人様……あ、こ、これからの、あ、くくく国の、あ……!」 「いやいいから! もうあわわって言っていいから! 逆に気になるよその“あ”って!」 「ふむ? いや、ここは少し条件をつけてみればいい。そもそも北郷、人の癖というのは人の精神安定に強く貢献しているものだ。解っていても手を出してしまうもの、というのは、それそのものに依存することで安心が得られるからこそ離れられないものだろう?」 「あー……雪蓮がいっつも酒飲んでるのとか絶対にそうだと思うよ。やめる気なんて最初から無いだろうけどね」 「まああいつのことは今は捨ておけ」 「いや、せめて置いてやろうよ」 「ともかくだ。他者の精神安定を捨てろというのなら、それに見合った対価が無いのはよくないことだ。そんなわけで北郷。なにか雛里が喜ぶものを差し出す、というのはどうだ?」 「……!」 「俺のなにかを? っていってもな、私物なんて私服と胴着と木刀と制服くらいしかないぞ?」 「なにかあるだろう? まさかこの世界に来てから、自分のものを一切買ってないなどとは言わないだろう?」 「? 服以外ないぞ?」 「………」 「………」 「……お前は……。この世界に降り立って何年だ……?」 「……うん……なんかごめん……」 でも私物って言われても本当に無いのだ。 だからあげられるものも…………あ。 「じゃあ雛里。俺のメモとシャーペンでどう《がしぃ!》……だ?」 「ま……待て。待て北郷。それは私でも欲しいぞ」 いろいろ考えてから、そういえばシャーペンの芯も残り少なくなっていたものがあったなぁと……思い出して言ってみれば、横からガシィと腕を掴まれた。ええもちろん冥琳さん。 「えぇえええっ!!? いやっ……これは雛里の癖への等価交換であって……っていうか冥琳には別に直さなきゃいけない癖なんてないだろ」 「なにっ!? ………………じ、じつはだな北郷。私は………………」 「いいから! 考えなくていいから!」 欠点らしい欠点がないのもこれはこれで面倒なのかもしれない。 いいことばっかりじゃないのかもなぁと、とっても不思議な思考を回転させた。 「しかし北郷、お前はそれでいいのか? めもは、お前が随分と大切に使っていたものだろう」 「ああ……芯を無くさないためにも薄字で丁寧に使っていた十年もののシャーペンさ……。でもまあ、シャーペンも芯も及川が無駄に持ってるし、それならって。あ、でもそれなら使い古しの十年ものよりも及川のやつのほうが───」 「ご、ごごごっごご主人様のでお願いしましゅ!」 「え? でも」 「うぅうう〜〜〜〜〜…………!!」 「《ぎうー……!》……ああ、うん、解った、解ったから服引っ張るのやめて……一応これも思い出の品だからね……? 凪が新調してくれた方のじゃないからね? お願い……」 「なに? 新調したのか? ……その服を作れるほどの技術があるとは思えんが……」 「いや、俺も驚いたクチなんだけどさ。えぇっとそのー……少し前、その……こっ……子作り、した次の日に……贈り物だって」 「………」 「………」 いや……そこで黙られると空気が重いんですけど。 「ふははははは! どうです主! この距離ならば文句はありますまいー!《どーーーん!》」 「………」 「………」 「………」 振り向けば、体操選手のようにピーンと伸ばした手を天に掲げる星が居た。 なんというか、太陽万歳とか言いたくなるポーズだった。 そしてごめん、忘れてた。あ、で、でも気づいてなかったみたいだし、いいかな? いい……よね? あ、遊びに夢中だったなら仕方ないヨネ……? 「ふっふっふ、自分で言うのもなんだとは思いますが、これはもはや塗り替えることなど到底無理な距離と言えましょう。いや、何度やり直そうと何も言わずに居てくれた主に深き感謝を。途中までは見栄を張って、いろいろと言い訳を呟いてしまった自分が恥ずかしい。どっしりと構え、黙っていた主はまさに支柱の鑑ですな。しかしその甲斐あって、納得の出来る記録が出来たとここに宣言しよう! ここ! こここそがこの趙子龍の最高!《ぞりぞり》」 「いやうん、すごいから待って? 足で芝生削らないで? 庭師の人が泣いちゃうから、ね?」 あとごめんなさい、全然関係ない話とかしてました。 全然関係ない賞品とかも考えてましたごめんなさい。 「さあ! 次は主が跳んでみせてくだされ!《どーーん!》」 「俺もやるの!?」 「はっはっは、なにをおっしゃる。もとはと言えば主が言い出した遊び。そして私は遊びが豊富な主の国の遊びで主に勝ち───」 「お、俺に勝ち……?」 「……めもとしゃーぺんとやらを私が頂戴する……!《ギリリ……!》」 「やっぱり聞いてたァアアーーーーッ!!」 涙を滲ませ、ぎりりと歯軋りをするように睨むその目は、なんだかとっても寂しそうだった。なんというか、主人に無視された犬とか猫みたいな……こう、ねぇ? 「あ、あの、星?」 「なんだっ! 童心を語り、遊びに誘っておいて、跳んで燥いでいた私をほうっておいて楽しげに燥いでいた主!」 「呼び方長いよ!? あと燥いでないからね!? 忘れてたのは謝るか───」 「わすれっ……!?」 「ラァーーーーーッ!!?」 アレェエーーーッ!!? 忘れられてたとまでは考えてなかったパターンだったぁああーーーっ!! ていうかショックのあまり本気でよろよろと後退る人初めて見た! すごいよこれ演技じゃない! マジだ! ってヘンなところに感動してる場合じゃなくて! 「いぃいいいいいやいやいやいや忘れてたっていうかいろいろあってわすっ……いや、つまりこれはわすっ……じゃなくて、わす………………忘れてましたごめんなさい」 「北郷、少し落ち着け」 「いやうん違うんだよ冥琳……慌てすぎてもう一周しちゃったんだ……冷静だよ……ひどく冷静だ……」 「ご主人様……あ、げ、元気を出してくださいぃ……」 それでもやっぱり“あ”は漏れるんですね、雛里さん。 「……いいでしょう。主……主がそんなにも人の癖を直すことに夢中になりたいというのであれば……」 「いやべつに夢中になってるわけじゃ」 「跳んでくだされ主。もし主が勝てたのなら忘れられたことは忘れましょう」 「結局跳ばなきゃだめなのな……」 「いや待て趙雲。忘れるよりも、それ自体は北郷に償わせればいい。癖を直す、という話だったのだから、北郷にもなにかしらの癖を直させればいいのだ」 「む。なるほど」 「ご主人様の癖……」 あ、あれ!? なんか了承もなしに話が進んでる!? あ、でも別に俺に癖なんて─── 「ふむ。ならば主、女癖の悪さを」 「俺元々“魏に操を”って言ってた筈ですがね!?」 「むっ……なるほど、それは確かに主の所為ではないな……」 「ふむ? 北郷の癖、といえば……」 「おお、そういえば各国の皆に夜のアレがどうかと訊いてみたのだが、子作りよりも口○が多いと」 「……なるほど、それは確かに聞いたことがある。口○だな」 「あ、あ、あっ……わ、わたしゅも……その、あっ、あ……っ……!」 「あわわ言っていいってば! なんか誤解されそうだからやめて!?」 「艶本にも描いてあったものだな……。ああ、天ではたしか、○○○○○と」 「言わなくてよろしい!! ていうかそれ別に癖とかじゃないって!」 ともかく三人に落ち着いてもらって、星にはきちんとお詫びをすることを話して─── 「では跳んでくだされ」 「結局やるの!?」 「主……勝負を途中でやめるなど、武人に恥を掻けと?」 「さっき童心がどうとか言ってたキミに今すぐ出会いたい」 ───跳ぶことになりました。 「うう……じゃあ跳ぶけどさ」 「ふふふ、どうぞ。まあっ、私の記録は塗り替えることは出来ますまいっ!《どーーーん!》」 「じゃあ星」 「むふんっ……なにかっ?」 「俺が勝ったらメンマ癖直そうな」 「!?」 「じゃあいっくぞー《キィがしぃ!!》うおっ!?」 「まままっままま待ってくだされ主! あなっ、あなたは私に死ねと!?」 「はっはっは、大丈夫だって星〜。ちょっと全力で行くだけだからさ。天では(子供の頃に剣道で)無敗とされたこの北郷が、正々堂々と同じ条件で跳ぶだけなんだから」 「いっ……いやっ……ひやっ……まま待ってほしい! そっ、それは負けるとは思ってもおりませぬが……おりませぬがっ……!」 慌てる星。 そんな彼女の前に立ち、その両肩にポムと手を乗せる。 「いいかい星……雛里も冥琳も、自分の精神安定を懸けて立ち上がったんだ……ここでお前だけがそれは無いと首を横に振ってどうするんだ……」 「し、しかしっ! 私のは癖ではなく好物という意味でありっ!」 「酒が好きな人で、酔って暴れたりすることをなんて言う?」 「? さ、酒癖が悪───ハッ!?」 「そう……酒好きは酒癖。メンマ好きもまたメンマ癖……好物のことで万が一にも迷惑をかけたなら、そういうことになるんだ」 「う、うぅ、ううぅううう〜〜〜……!!」 熱心に語った。 ……語ったら、なんだかぽろぽろと泣き始めてルヴォァアアーーーーッ!!? 「ちょっ……自信満々に踏ん反り返ってたのになんでそこまで絶望的な未来しか見えないの!? もっと自分の記録を信じようよ!」 「いや……いいのです下手な慰めは……。私は知ってしまった……先に高記録を取って踏ん反り返る者は、のちに記録を作る者の踏み台でしかないと……!」 「……聞きたくないけど情報提供者は?」 「……? あのおいかわとか言う男ですが」 うん知ってた。むしろ予想出来ないほうがおかしかった。 「ワー、こんなところに裸で歩く女の子ガー」 「ぬぁんやてどこどこ何処におるん!?《ズシャーーアアアぼぐしゃあ!!》ヘヴォルギョ!?」 棒読み感満載の声を何処で聞いていたのか、ホイホイ現れた友人を、滑り込んできたその勢いごとストレートにグーで殴った。 「で、話を戻すけど」 「……この男には容赦ないな、北郷」 倒れて痙攣している及川を見下ろしつつ、呆れ顔で言う冥琳に、「大丈夫。心の癒しになってくれるって宣言してくれたから」と親指を立ててみせた。 「いやあれそういう意味とちゃうんですけど!? って、あたたたた……! んもう急になにするんねやかずピー……」 「ん、ちょっとブランコ跳び対決をしててさ」 「あれ? 女の子ぉの裸スルー?」 「むしろ殴られたことをスルーするお前ってすごいよな……」 「ンやぁん、べつに大したことあらへんってぇ《くねくね》」 照れてくねくね蠢いている。 うん、頼む及川、その動きはモンゴルマッチョの抱擁を思い出すから勘弁してくれ。 「しっかしブランコねー、なっつかしいもんやっとんなー。あ、俺も混ざってええ?」 「いいけど、負けると癖を封印することになるけど、いいか?」 「癖? あっはは、俺に癖らしい癖なんて」 「そか。じゃあ関西弁、やめてみような」 「……!!」 あ。なんか顔を変色させた驚き顔のまま固まった。ていうかこっち見るな。その顔と顔色のまま固まられると怖い。 「かずピー!? 俺に死ねゆーんか!?」 「だからなんでみんな死ぬんだよ!! 癖を直すだけって言ったよね俺!!」 「じゃ、じゃあかずピーが負けたら鍛錬癖直せるっちゅーんか!?」 「お前俺に死ねってのか!?」 「ほれみぃやぁ〜! ほれみぃ〜! やっぱそうなるやないかー!!」 「じゃなくて俺の場合本当に死ぬんだってば!」 「ん……そうやね……自分だけ特別って思いたなる時……あるな……フフッ《ニコッ……》」 「ほぉおおおおこのエセ関西ィイイイイッ!! お前、全ッ然理解してないだろォオオ!!」 俺の場合本当に死にます。 なにせ鍛錬しなければ最果てにおいて左慈に負ける。 なのに人の肩に手をおいて物凄いやさしい笑顔で言うもんだからああもうこの馬鹿は! ていうか俺お前に話したよね!? 最果てで起こることのために鍛錬してるって話したよね!? 「へへっ……つまりこらあれやな……死闘っちゅーわけやな……?」 「メンマを封印か……どうしても引かぬと主が言うのであれば、それに殉ずるのもメンマ愛……」 「あ、あ……あああ……わ、私、も……きちんと直すためにも、一度なにかをきっかけにしたほうが……!」 「雛里さん!? それもう負けること前提になってません!?」 「癖……癖か。北郷、私に癖があれば、そのめもは貰えるのか?」 「勝てたらって話じゃございませんでしたっけ!? いつから癖があったら漏れなくプレゼント祭りになってたんだ!?」 つかもうツッコミすぎて疲れたからやめよう!? ね!? そもそも俺、ここにただたそがれに来ただけだったのに、なんでこんなことになってるのさ! 「ではまず私から行かせていただこう……己で己の記録を打ち破るというのも、武に生きる者の否定出来ぬ“|性《サガ》”……!」 そして人の話を無視してさっさとブランコに座る変形ナースがおった。 どこまでブランコ対決がしたいのですかあなたは。 「あ、ちなみにかずピー? 何回フライ勝負や?」 「一回だろ。真剣勝負に二度目はないってことで」 「ほー、なるほどなー。つまりあのナースな娘はいっちゃん最初に手の内さらすっちゅーわけやな」 「!!《がーーーん!》」 星さん!? なんでそこで“やられた”って顔で俺見るの!? いや、いいんだからね!? 全力で跳べばそれでいいんだからね!? 遠慮することないんだよ!? 解ってるよね!? あ、あぁああ……! なんか物凄い絶望を孕んだ顔でがたがた震え始めた……! しかもメンマメンマ呟き始めたし……ああああ涙滲んでるぅうーーーっ!! 「あ、あー……なぁ星? そもそもこれは遊びなんだから、純粋に楽しまないか? 俺も鍛錬を禁止されるととっても困るし……な、なぁ雛里? 雛里も普通にあわわって言ってたほうが落ち着くんだもんな?」 「い、いえ……ご主人様……あ、わ、わた……あっ、わたし……あぅ……」 「ねぇわざと!? わざと言ってるの!? 涙目で顔真っ赤にしてそれ続けられると誤解する人が、少なくとも二人は居るんですけど!?」 「《ごくり……!》す、すごい話術やなかずピー……! まさか言葉だけで女の娘ぉをあんあん言わせるやなんて……!」 「ベンハァーーーッ!!」 「《ボゴォ!!》ぶべぇっしぇ!!」 遠慮無用で右のグーが走った。 もうそれがオーバーマン騒動で殺されそうになった時の借りでいい。素直に殴らせてくれ。 「アホかお前はいやアホだなあぁアホだろこの阿呆!! 言葉だけで人がそんなことになるわけあるかぁっ!!」 「いやいやなにゆーとんねやかずピー。世の中に言葉責めって言葉がある時点で、そらもう確率されたジャンルでやな」 「……今はお前のタフさが心底恨めしいよこの野郎。あれか。もう氣を込めて全力で殴っていいのか。岩とか壊せるようになったけど、もう全力出していいのか。お前のタフさを信用していいのか」 「普通に死ぬからやめぇや!?《ポンッ……》へ? か、かずピー?」 「大丈夫。俺達……親友だろ? 俺……お前のこと信じてるぜ?」 「信頼の方向性全力で間違ぉとるゥウーーーーーッ!!」 なんかもう未来がいっぱいいっぱいだ。 そして友人の肩に手を置いて語る言葉の中ではとても素晴らしい台詞だったはずなのに、及川はとても嫌がっていた。そりゃ嫌がるか。 でも騒ぐことでいろいろと冷静になれたのか、深呼吸をした星が───……ブランコ漕ぎ始めました。 「だからやめようって言ってるのに!」 「いや……いや主! ここで逃げてはメンマから逃げたのと同じ! ならば私は必ず勝って、メンマというものを謳い続けなければならぬのです!」 「そこまで使命感を働かせなくていいから! 好きなものが重荷になる瞬間って相当辛いもんだぞ!? やめよう!?」 「いくら主の願いでも、こればかりは───!」 「そっか……残念だ。大麻竹のい〜ぃのが丁度食べごろになってたのにな。これで負けたら一生食べられないのか」 「すぐやめましょう《ビタァッ!》」 「ワーオ!? ビタァって止まったで!?」 うん止まった。大麻竹すげぇ。 でもどうせ止まるんだったらもうちょっといい理由で止まりましょうね、星さん。 「なんだやめるのか。それで? めものことはどうなるんだ?」 「いやどんだけメモ欲しいのさ」 「いつでも書けていつでも消せる優れものだろう? 欲しいに決まっているじゃないか」 「あー……まあ、解るけどさ」 黒板じゃ、いくらミニサイズでも邪魔だし、ページ増やすと無駄に重いもんなぁ。 「及川、お前メモとシャーペン、結構持ってたよな」 「んお? おー、そらもちろん、いつでも女の子ぉの情報メモっておけるように、バッグにたっぷり収納してあんで〜?」 「全部くれ」 「全部とな!?」 うっとり笑顔で語っていた顔が驚愕に染まった上で変色した。 だから、その顔怖いって。 「あー……うん、まあええけど。かずピーには貴重な画像データ、見せてもらったし。その他にも衣食住で世話なっとるしなぁ。あ、でももう使てるもんとかは堪忍したってや。ちゅうかジブンどんだけ俺からモノ奪うつもりや……もしやあれか? 取るもん取ったらもう要らんゆーてそこらにポイっと……ひどい! かずピーひどい! 所詮道具だけが目当てだったのね!」 「で、このシャーペンだけどな? 使い方はこう、ここを押して……」 「うわーめっちゃスルーしおるこの友人〜」 「あのな、道具目当てだったらビールとかつまみとかメモとか取って捨てるだけだろ。衣食住と仕事の面倒を見る必要がどこにあるんだよ」 「うん解ってる。かずピーなんだかんだでやさしいもんなー♪ やなくて、ボケに対するツッコミをやな……スルーっていっちゃん虚しいやん……」 「じゃあ及川、ブランコしよう」 「それ結局スルーやない!?」 「いいからいいから」 騒ぐ及川を押して、ブランコ対決を開始。 もちろん賭けるものはなしで、純粋に距離を競うものだ。 何かを賭けるのって確かに本気を出すにはいいかもだけど、それで何かを失ってちゃ寂しいと思うのだ。なので賭けは禁止。 「んっはははは! いっくでーーーっ!? とーーーう!」 ブランコをたっぷりと漕いで勢いをつけた及川が、すぽーんとブランコからすっぽ抜けるように跳ぶ。 高さも丁度いい具合であり、その距離は……星の印に一歩及ばず程度の位置に。 「!?」 これには星さん大慌て。 武を知らぬ者に勝負で負けるわけにはと再度の跳躍を申し出て、再び跳んで、上手く飛べなくて。 「ふむ、なるほど。原理は構築できた。次は私が出よう」 慌てる星を押し退けて、三番手には冥琳が立った。 その顔は……どこか楽しそうだ。 「雛里よ。いつかの武道会では負けたが、今回は勝たせてもらうぞ」 それどころか雛里を見て、そんなことまで言い出す……もしかして結構悔しかったりしたのだろうか。 いや、そりゃ悔しいか。 でも今はそれよりも、子供冥琳の方が前に出ている感じだ。 凛々しいといういつもの表情よりも、無邪気に近い表情だ。 そうしてブランコを漕ぎ始めた彼女はチラリチラチラと樹の位置や地面を見下ろしたりして何かを測って…… 「……! ここっ!」 シュパンッ……と綺麗に跳んだ。 そしてその距離が、星よりも先、という結果に……! 「……! ……!!」 その瞬間を見届けた俺が、ソッと趙子龍さんを見た時。 彼女はとても荒い呼吸で、何度も何度も安堵の溜め……た、溜めてないな。ともかく安堵の息を吐いていた。 賭けなくてよかったね……ほんと……。 「うん、いい距離だ。さあ雛里、あとはお前だけだぞ。ああ、ちなみに私が勝ったならば、北郷が使っていためもは私がもらう」 「!」 「え? いや、そんなの新品を使えば───」 「わぁ〜かっとらんなぁかずピー。ん〜なんやから鈍感〜とか言われんねやぞ?」 「え……お前は解るのか?」 「おー、あったり前やぁん! 伊達にいろんな子と付き合ぉてフラッ……フラレ…………うっ……ぐすっ……」 「自分から言い出して泣くなよもう!」 「うっさいわぃ! 鈍感のくせして成功しとるかずピーに、俺の気持ちなんか解るもんかい!」 「だからそれ以前にメモのことが解らないんだって!」 「かーーーっ! んなもんちぃと考えたら解ることやろがぁ!」 「あー……うん、鈍感なのは自覚してる。すまん。……ところでそれは、解るとフラレるものなのか?」 「《ザグシャアッ!》ゲブゥ!!」 何気なく放った言葉に、何故か血でも吐くような動作でビクゥと震える及川。 ……少しののちにがくりと項垂れて、「成功するやつに、一歩足りんやつの気持ちなんぞよー解られへん……」とか言い出した。 「…………今の跳び方、重心を置く位置、ぶらんこの揺れ幅……座る位置……あ、あっ……あ……」 「………」 もうツッコまない。 雛里さん、もう跳んじゃってください。 そして勝利して、存分にあわわを言ってください。 「……主」 「星? どうかした?」 「い、今、そのー……大麻竹メンマをくれたなら、もしや私の中の隠されたぶらんこ力が解放されて、より遠くに飛べるやも……!」 「まず深呼吸して落ち着こうね子龍さん」 俺も負けず嫌いだけど、やっぱり星には負けるよ。 でもどうしてだろう……彼女なら本当に、メンマを食べればパワーアップする気がするのは。 「ところで主」 「ああ」 「ぶらんこに乗る雛里……」 「ああ」 「………ありですな」 「ありだな」 「ありやね」 及川も合わせて三人、腕を組んでうんうんと頷いた。 そんな意味のない行動をしている内に、雛里も冥琳と同じく樹を見て地面を見て、遠くを見て、ここぞと思ったところあたりで被っていた帽子をひょいと俺に投げ渡し……ついに、シュパンと跳んでみせた。 座った状態、というよりは体を寝かせた状態に近い。 まるで背で風を受け止めるかのような姿勢で跳び、降下が始まると上半身を起こして着地の姿勢に。 やがて彼女は 「《ずべしゃあ!》ふきゅっ!?」 『キャーーーーーッ!!?』 ……地面に激突した。 俺と及川、思わず絶叫。 「ホワァアワワ大丈夫かほーちゃん! 今顔面からいっとったやろ!」 「雛里───ってストップ及川!」 「へっ!? なんっ───おおそうやな! 台無しにするところやった!」 派手にコケた雛里だったが、着地した位置にはきちんと自分でぞりぞりと印をつけていた。 そうしてから立ち上がると、……うん、まあ、てとてと歩いてきて俺にしがみついてお泣きあそばれた。 「己が身を省みない特攻か……そこまでしてこそ勝利できるというもの。この趙子龍、遊びという言葉で本気さを忘れていたか……」 「いや、随分と本気だった気がするけど」 でも、確かに綺麗な着地を望んではこの距離は出せなかった筈だ。 その距離……派手にコケただけはあって、冥琳よりも遠くに跳んだのだ。 「あ〜、こらぁあれやな、体の軽さも手伝って、ぽーんと」 「そか? 勢いがつけば、重いほうが飛ぶ気がしないか?」 「ほう、北郷。誰が重いって?」 「はっはっは、主よ。……少々話したいことが」 「エ? あ、いやっ! 重いっていうのは雛里に比べたらって意味であってだな!」 「なはは、アホやなぁかずピーは。そーゆーことは解ってても言うことやあら《ポム》……へん?」 「そーかそーか、お主も私が重いと思っていたか。ならばともに来るがよかろう。友の危機に傍に居るのもまた、友の務めというものだろう」 「えぇええええ!? いやいやいや俺遠慮しときますわ! ちゅうか俺別に思ってへんよ!? ほんまやって! 言葉のあやってやつやもん!」 「ほう。ならば私と趙雲と、どちらが重そうに見える」 「そら周さんやな。《キッパリがしぃ!》背もおっきいし胸もおっきいし───っていやぁあああーーーっ!!? なんで!? なんで襟掴んで引きずるん!?」 「大変正直な男だ。こうまで遠慮無用にものを言われたのは雪蓮と北郷以来だ」 「ああっ! これこそまさに正直者はバカをみるっちゅーやつやなっ! かずピー助けてぇえ!!」 「一緒に引きずられてる俺になにをどう助けろっていうんだお前は!」 冥琳に引きずられる及川と、星に引きずられる俺。 雛里に助けを求めても、泣いて俺にしがみつくばかりであり、むしろ一緒に引きずられるカタチになっている。そして星さん、平気な顔で人間二人を片手で引きずらないでいただきたい。 ああっ、腕力っていうより技術だって思ってた星も、やっぱりこの世界の女性だなぁ! 腕力すごいったらないよもう! 「あ、あのー、星? 話をするだけなら、別に引きずる必要はないんじゃないかなー、なんて」 「はっはっは、なにを仰る。聞けば主は現在仕事が無くて時間が空いているという。こんな時こそ普段は中々時間が合わない我らとともに在る時間を過ごすべきだろう」 「いやあの、むしろ何処に連れて行く気なのかを訊いてるんだけどー……」 「無論、蜀の屋敷だ」 「なに? それは許さんぞ趙雲。北郷は呉の屋敷へと連れてゆく。代わりにこれをやるから諦めろ」 「あれ? なんや俺、今コレ扱いされんかった?」 「いや、悪いがこれは譲れないな。なにせ距離では雛里が勝ったのだ。ここは蜀へ連れていくべきだろう」 「賭けは無しの方向で話はついていた筈だ。それを勝ったからと急に引き合いに出すのは少々女々しいんじゃないか?」 「ほほーう……? ならば今度は主との時間を賭けて、正々堂々と勝負といこうか」 「面白い。武でもなく知でもなく、単純な跳び合いで雌雄を決するというのか。断っておくが、私が知しか能のない者だと思ったら大間違いだぞ」 「ふふっ……そちらこそ。この趙子龍、武だけと高を括られては困る」 「ほう……?」 「ならば───」 『相手にとって不足無し!』 クワッと睨み合って、二人が今来た道を急に戻り始めた。 瞬間、掴まれたままの俺と及川は急に襟を捻られるハメになり、ゲホリゴホリと悶絶しながら元の場所へ。 それからムキになってブランコを漕ぐ二人が通りすがりの皆々様に目撃されるに到り、暇がある将の皆様も参加することになって…… 「鈴々のほうが跳んでたのだ!」 「いーやボクの方が跳んでたね!」 「むーーーっ! やるのか春巻きーーーっ!!」 「なんだよちびっこーーーっ!!」 「もうちびっこじゃないのだ!」 「ボクよりちっこければちびっこだ! このちびっこぉっ!」 「はいはい喧嘩はおよしなー? もう子供やないんやから。ほれほれここの印〜、一緒のとこやさかい、引き分けってことで、な?」 「よく見るのだ眼鏡! 鈴々のほうが少しだけ遠いのだ!」 「いーやボクだね! 兄ちゃんがちゃんと言ってたじゃんか! 爪先じゃなくて踵の方を記録にするって!」 「後ろ向きで着地したんだからこれでいいのだ!」 「なんだとーーーっ!?」 「なんなのだーーーっ!!」 「あぁんかずピー! この娘ら全然俺の話聞いてくれんーーーっ! 助けてぇええっ!!」 まあその、いつも通りといえばいつも通りの騒がしさが展開されたわけで。 「えっへへー! やったやったよご主人様ー! 華琳さんに勝っちゃったー!」 「え……ほんとか!?」 「あははははは! あっはははははは!! そう、そうなのよ一刀あっははははは!! ぶふっ! ぷはははははは!!」 「……雪蓮。お前がそこまで笑うってことは……」 「くひふっ……そ、そう……ぶふっ! 華琳ってば、着地に失敗してぶふっ!」 「……珍しいな、華琳」 「言いがかりもほどほどになさい。失敗はしていないわよ。ただ───」 「ただ?」 「勢い良く跳んだ私を、何を思ったのか春蘭が抱きとめたのよ。お陰で反則負け」 「うわー……って、それでなんで雪蓮は笑ってるんだ?」 「だってあんなに勝ち誇った顔で飛んでおいて、春蘭に抱きとめられた時の華琳の顔ときたらあっははははははは!!」 「……うん……気持ちはわかるけど、ちょっと落ち着こう、雪蓮」 燥ぐ王様笑う王様呆れる王様、そんなみんなとともに、ただ子供っぽい遊びを興じた。 夢中になりさえすれば、人間に年齢なんて関係ないのかもしれない。 漕いで跳ぶだけ、というシンプルな方法が思いのほかウケたのか、現在都に居る、時間の空いているものがこぞって競い合い、距離を跳んでは笑い合った。 「おぉっしゃこれ最高記録やろ! あ、俺優勝したらかずピーの子とゆったりとした時間を過ごした───《ズシャアッ!》……い?」 「……追い越したぞ。私が一番だ」 「あれぇ!? 興覇さん!? 参加せんゆぅとりませんでした!?」 「黙れ」 「だまっ!?」 遊ぶ者競う者、賞品を聞かされてからやる気を出す者様々だ。 見ているだけでも顔が綻び、一緒の時間を生きているって実感を得た。 平和だからこそ出来る遊びと、こんな平和に……ただ、感謝を。 「いよぉっとぉっ───っととっ、ほいっ!《ずしゃあっ!》……よしっ! 一番っ!」 「なんやて!? かずピーが勝ったらおもろないやん! それこそまさに出すぎやぞ! 自重せい! やないか!」 「う、うるさいなっ! こういうことでしか滅多に勝てないんだから、それくらいいいだろーが!」 「おおっ……では風と宝ャが跳んで、宝ャが風より先へ跳んだら宝ャの勝ちということでー……」 『それは反則だっ!!』 「おおっ……!? みなさん息ぴったりですねー……」 まあもちろん、本気でやるにしたって楽しむ方向での本気なわけで。 跳ぶ人跳ぶ人、みんながみんな笑顔だった。 まあもっとも、どこぞの大剣さんとか美髪公とかは超本気の真剣でございましたが。 うん、凪とかも。 「隊長! 跳んでいる最中に氣弾を放って距離を稼ぐのは───」 「反則です」 「うぅ……そうですか」 そして段々と皆様手段を選ばなくなってきた。 楽しい時間というのは、たまにそうやって人の感覚を麻痺させます。 けどまあ……みんなが笑っているのなら、そういうのもアリなのかもしれない。 「せいっ! ───はっ!《ずざぁっ!》……あっ……や、やりました旦那様っ! 旦那様より跳べました!」 「あっちゃ……やっぱりこういうのは明命が強いかぁ」 「なんのっ! よいっ───しょおっ!《ざしゃあっ!》……よしっ、ふふんっ、どうっ!? こういうのだったら、ちぃだって負けてないんだから!」 「……胸張るのはいいけど、僅差で負けてるぞ?」 「え? あれぇ!?」 そんなやり取りに笑って、馬鹿みたいな行動で燥いで、友人との軽いノリでぼかぼか殴り合ってまた笑う。 そんな笑顔がみんなに移って、みんなも笑って……そんな瞬間に、やっぱり感謝したくなる。 降りたばっかりの頃は不安ばかりが渦巻いていたこの蒼の下。 今はただ、笑顔ばかりが生まれることに感謝する。 「よおっしゃ二回戦ナンバーワーーーンッ!! 見て見てかずピー! これやったら俺でも伝説の武人達に勝てるでーーーっ!!」 「図に乗るなよ眼鏡が……!」 「だから怖いってば甘述ちゃん!! もぉちょい俺にやさしくしたって!?」 負けてなるものかと逸れば逸るほど失敗が増えて、我が身を省みないダイブを繰り返す及川が勝利する。 及川曰く、“かずピーがおるからみんな無茶な飛び方でけへんねや”、らしい。 格好悪い姿は見せたくないってことなのだろう。 そんな状況にも苦笑が漏れて、苦笑もやがて普通の笑み変わって、その笑みが広がってゆく。 ああ、平和だ。 穏やかな“楽しい”の中に自分が居ることを、深く深く自覚した。 「えー、ちゅーわけで! 見事総合優勝を果たした俺、及川祐! 及川祐をよろしくやー!」 「へえ、そう。あなたを覚えることが賞品でいいのね?」 「あぁ待ったって!? 実は勝てたら是非ともやってほしいことがあったんやって!」 そしていつの間にか誰よりも遠くへ跳べたらしい彼が、顔をボッコボコにしながら笑顔で立っていた。 どこまで我が身の安全を無視したダイブをしたのか。 「えっと、みなさんに歌、歌ってもらいたいです」 『歌?』 ほぼ全員の声が重なった。 なんのことはなく、この世界での思い出を映像で残しておきたいのだという。 音源は及川のケータイの中にあるから、それに合わせて歌ってくれたら、俺のケータイでそれを録画するから、と。 「俺の、もうそんなに長くないぞ? 音源俺の方に移して、録画をそっちでやったほうがよくないか?」 「あ、せやな。ちゅーか、歌ってくれるん?」 「構わないわ。勝者に欲しいものを与えるのも、王の務めというものよ」 「おお、さっすが器がおっきいなぁ。じゃ、えーと……たぶん覚えるの苦労すると思うから、しばらく練習期間を設けたいんやけど……ええです? せっかくならみんながきちんと歌えとるのんを撮りたいし」 「とる? 写真のことではないの?」 「……かずピー、まさかやけど、写真しか撮ったことなかったりする?」 「……そのまさかだ」 「っかー! もったいなっ! そらつまりあれか!? 子供の赤子の頃の動画も撮っとらんっちゅーことか!」 「心霊動画になったら怖いだろうが!」 「そないな理由!? せやのに写真は撮るとかどーゆー神経しとんねん!」 まったくだった。 「あーまーええわ。ともかくかずピー、歌詞書くの頼むわ。俺まだこっちの文字完璧に書けへんし」 「そりゃいいけど……なんて歌だ? 俺も知ってるか?」 「知ってるかは知らんなぁ。ま、えーからえーから。歌とカラオケと両方入っとるし、ピンとくれば書きやすいってだけのことやろ。あ、ところで孟徳さま? えーと……急にこないなこと訊いて失礼かもですけど、他国に行っとる他の将の皆さんらが戻ってくるの、いつになります?」 「あら。随分と気安く訊いてくれるわね」 「え? や、そらかずピーの正妻さんやし、ちょいと親しみ込めていこーかな思ったんですけど」 「せっ……《ボムッ!》…………そ、そう。まあ、いいわ」 華琳さん。顔、真っ赤です。 でも敢えてツッコミません。足踏まれそうだし。 「で、他の者が戻ってくる日、だったかしら」 「はい、そーです」 「順調ならば近い内に戻る筈よ。人の入れ替えもそう多いものでもないし、予定が狂うことなどそうそうないもの」 「あ、せやったら是非、全員で歌ってほしいんですけど……こう、思い出を残す意味で」 「二言はないわよ。皆で歌えというのなら歌わせるわ。ああもちろん、くだらない歌だったのなら次の敗北には心底気をつけることね」 「ヒィ!? き、肝に銘じておきますわ……!」 ギロリと睨まれ、ヒィと悲鳴を上げる及川に、奇妙な友情を感じた。 ……うん、この世界じゃさ、及川……。男の立場ってそんなものだよ……。 そんなしみじみな寂しさを心に秘めて、練習は始まった。 皆、暇を見つければ歌ってみながら歌詞を覚えて、違っていたら指摘し合って。 思えば一つのことをみんなで、なんてことは滅多になかった。 歌を歌うにしたってみんながみんな別々の歌を歌って燥ぐのが、俺達の宴だったのだ。 だから妙な楽しさもあって、誰もそれを拒んだりはしなかった。 心配だった桂花も、華琳が歌うのならって……むしろ張り切っていた。 別の意味で心配だった思春も参加してくれて、一つのことに向けて、三国が手を合わせ、声を合わせた。そんな些細が……自分でも驚くくらいに嬉しかった。 そうした忙しい日々の、ほんの小さな、隙間みたいな一瞬だったと思う。 及川がふと、言葉を漏らした。 「な、かずピー。俺、ちっとはかずピーに思い出みたいなの、作ってやれたんかな」 それだけ。 及川は返事も聞かないままにニカッと笑って、仕事の時間やーとか言って走っていった。 そんな後姿を見て、静かに思う。 (思い出……かぁ) 人はいつまでも若いままじゃいられない。 及川の言う通り、いつかは老いたみんなを、死にゆくみんなを見ることになるのだろう。 その時を迎える覚悟が、自分にはあるのか。 一緒に老いていきたかったと、どれだけ願っても叶うことはない。 それどころか子供たちまで見送らなければならなくなるかもしれない。 子が親よりも長く生きる保証なんて何処にもないのだ。 万能の医者が居たところで、寿命までは延ばせない。 万能の医術があったところで、その場にその人が居なければ意味がない。 そんなことが重なってしまえば、自分が思うよりも早く見送ることだってあるかもしれない。 ……自分は、一切老いることもなく。 それが、怖いといえば怖い。 怖いのに、目指さなければいけないのだ。 それまでの全てを肯定するために。 そんな道をずっと歩かなければいけない。 挫けそうになっても、そうしなければ天に戻ることも出来ないのだと思う。 じゃあ、挫けないためにも何が欲しいと思うのか。 「………」 考えてみて、笑った。 笑って、やっぱり感謝しか生まれなかったんだ。 「十分だよ……ばかやろ……」 形に残る思い出があるのなら。 それを見て、肯定したいと何度でも思えるのなら。 きっと、自分は挫けずにいける筈だから。 だから……一人の友人に、感謝を。 「……って! おいこら及川ぁあーーーーっ!! お前の仕事、外じゃないだろぉおーーーーっ!!」 「えっ!? あらー!? 警邏やなかったっけーーーっ!?」 「書類整理の手伝いついでに文字の勉強だったろーがーーーっ!!」 「あっちゃーーーっ! 明日のと勘違いしとったわーーーっ!!」 見送り途中の背中を呼び止めるなんて貴重体験を経てもまだ、やっぱり感謝を胸に笑った。 慌てて戻ってきて、たははと笑う悪友とどつき合いながら、さらに笑った。 こんな感じでいつか、心がやすらいだ時……彼は戻るのだろう。 未来を思えば寂しくないわけがない。 出来れば一緒に最果てまで、なんて思うのは当然で。 でも……それは、俺の都合にこいつを巻き込むだけだから、願うことはきっとない。 今はただ、この蒼の下で賑わう優しい覇道を、のんびりと歩いていこう。 その覇道こそを、肯定し続けるために。 ───……。 ……。 ……後日。 みんなが揃った日に、何度かのミスをしながらも……録画は終了した。 照れるような笑顔がそこにあった。 自分のケータイにも移されたそれを見れば、今でも、いつでだって笑うことが出来る。 そんな心の支えの形を得てしまったから、なのだろうか。 きっとその答えは、いつまで経ったって解らないし、予想くらいしか出来ないのだろう。 「………」 ……みんなで笑い合ったその日。 及川は、俺の背を笑いながら叩いて……天へと帰った。 最後の言葉は感動的でもなんでもない、乱暴な言葉だった。 ただ、胸には届いたから、胸を張って進もうって思えた。 “帰ってきたら一発殴らせぇや? そんで、おじいちゃんな歳まで生きてまってても、俺の知っとるかずピーに戻れ。……生きすぎて、壊れんやないで?” それだけ。 頑張れ、なんて一言もなかった。 ただ、親しい者の死を、家族の死を、人の何十倍も見届けなければいけない道の先を、案じてくれた。 感謝以外浮かばなかった。 ただ同時に、そうありたいとも思った。 寂しさに負けない自分でいようと……思えた。 「───」 ───見上げた空が蒼かったのを覚えている。 泥まみれになりながら遊んだ日は遠く、ふと思い返してみると、自分は今よりもよっぽど笑っていたなと苦笑する。 それでも……今立っている日々は、あの日滲んだ日々よりも輝いていると信じてる。 自分に勝手に見切りをつけた日々よりも、強く、強く。 子供の頃には高すぎて目が眩んだ空も、大人になれば、手を伸ばせばきっと掴めると思っていた雲も、今だったら……願えばきっと、何処までだって飛んでいけるし、掴めないものだって解っているから。 子供の自分に答えを届けよう。 「……うん」 新しいことはとても怖いよ。 でも、果てまで歩いてみたい道を見つけたんだ。 ずっとずっと歩いていって、そんな世界をいつまでだって肯定していきたいって思った。 たとえ一人になってしまっても、自分しか生きていられないほどの果てまで歩いても……その果てでどう思おうと、今ここに居る俺の笑みは、決して嘘ではないから。 目指すだけならタダで、果てで願えば叶うなら。 俺は、こんな覇道をいつまでだって歩きたい。 新しいことはさ、怖いけど楽しいんだ。 子供の頃のように、まだまだ勝てない人はいっぱい居るし、亡くせば戻らないものももっと知ったよ。 それでもさ。 全部投げ出して泣くよりも、笑える今を肯定したいから。 「………んじゃ、殴られに行きますか」 長い長い覇道の果てに待つものが、友人に殴られるオチっていうのも……まあ、悪くない。 精神年齢だけがじいさんな自分なんて想像できないけど、まあ、それはそれで。 そのためにもこの世界を肯定しよう。 生憎負けず嫌いだ、どれだけの苦難があろうが、絶対に肯定してやる。 「相手もそうなのかな…………あぁ、ははっ、子供の喧嘩だな、これじゃ」 相手がどれだけ俺を恨んでいようが、結局はどちらが勝つかの問題。 もう俺にも負けられない理由が揃っている。 どれだけの年月を左慈ってやつが歩いてきたのか。 それを思うよりも、この世界を守りたいって思ってしまっているんだから、結論なんてひとつだ。 負けるわけにはいかない。それだけ。 「………」 軽く持ち上げた右手を見て、自然と綻ぶ頬を引き締める。 そうして、強く強く拳を硬め、ドンと胸をノックした。 「……覚悟、完了」 いざ、この世界の最果てへ。 世界を肯定するために。 ……世界の連鎖を、終わらせるために。
ネタ曝しです。 *太陽万歳! 太陽賛歌。 ダークソウルより、太陽の戦士ソラールのステキな構え。某師範が取るうおおおおなポーズに似てなくもないが、彼のソレは肩幅に開いているのに対し、こちらは気をつけをするような感じである。 *口○ これってコーイン矢のごとしって感じ? 誰が悪いわけでもない。シナリオ担当の趣味だ。 *ほれみぃやぁ〜〜! ほれみぃ〜! 最強の双剣使いフェニックス氏の台詞。こちらは“ほらみーや”である。 彼が皆様に伝えたいことを纏めるとするなら、“基本は大事”でいいかと。 現在は動画の名前が変わっている。 *ベンハー 4年1組起立!より、神奈川健が人を殴る時に言い放った言葉。 恐らくは映画“ベン ハー”のことと思われる。 殴る際や殴られた時など、様々な言葉が飛び交う浜岡賢次漫画だが、 凍傷は浦安鉄筋家族の小鉄に「カァアーー!」と言って殴られ、頬を角ばってヘコませつつ「つぶつぶーーーっ!」と叫んでいるテキレツくんが大好きです。 *奇妙な友情 ジョジョの奇妙な冒険より、ジョナサンが最期の最期でディオに抱いた感情。 何度も言いますが凍傷はね……ディオが認める人間は、ジョナサンだけであってほしかったんですよ……。 はい、誤字チェックとネタ曝しがようやく終わりました。凍傷です。 いきなり関係ない話ですが、タイタンフォールというPCゲームを予約しました。 もしオンライン上で会うことがあったら、「小説書けコノヤロー!」とばかりにブチノメしてやってください。 さて、物語もようやく終盤。 及川を目立たないように〜……と最初は思っていたものの、長引かせるくらいなら畳んでしまおうという考えに。 次回、150話。時間が飛びます。 そして案の定150話以内では終わりませんでしたよまったくもう。 もっと上手くまとめられるようになりましょう、自分。 さて、ちょっといろいろ書きましたが満足したので消しました。 戦国恋姫のことなんですが、評価が随分と割れているようで。 結局買いませんでしたが、買ってもやる時間無いですハイ……。 え? タイタンフォールやる時間? ……ね、寝る間を惜しめば! そんなこんなでギャフターもそろそろ終わりです。 まだだ、まだ終わらんよとかそういうネタはござんせん。 ねねとか焔耶のラヴいのはどうしたーとか、そこのところはのちのお話。 そんなわけで。ハイ。ようやく“書きたかったこと”も段階を得て書けました。 ゲームでの公塾……学校の話やら、鉱山の話がどうとか……いろいろ考えました。 また会いましょう、から随分と広がったものです。 呉に行ったり蜀に行ったり、TINAMI時代に投稿できなくなっていろいろありました。 流れ着いたここで書くに到り、あれからどれだけ経ちましたか。 メールやメッセージで誰々のああいうのが見たい、というのは結構届いておりますが、もうそろそろ閉幕といきませう。 だらだらやっているとヘンテコな終わり方になりがちです。 そうでなくてもヘンテコに終わるんじゃないかと不安なのですから。 自信があってもどう受け取るかなんて人それぞれですけぇのう……。 では、もう少々お付き合いください。 満足いくデキになるかは書き終えてみなければ解りませぬ。 えーと、書き残しはない……よね? あー……“思春”期愛紗さん書いた、愛紗に嫌われる一刀も書けたし、別ルートでの一刀は他国の者からどういう反応をされるのか、なども書けた。 天下一品武道会も書けたし、恋姫ブログネタも書けた。 祭さんや紫苑や桔梗が若返りの薬で少女に戻って一刀と本気の恋をする、的なネタもあったにはあったけど、残念。僕では表現出来なかった。少し書いてみて、ダメだと悟りました。 その時に出来た子供に、というか初めて出来た妹に璃々が嫉妬する、的なこともございましたが大丈夫、僕には無理だ。なにが大丈夫なのかは訊かないでください。 地和の一番最初に愛してあげる宣言は、まあその後にたっぷりと絞られたという話を……組み込むのを盛大に忘れました。 気づけば時が経ちすぎておりました。 そして女性が男を好きになる話をじっくり書く、というのがとても大変だということを改めて思い知りました。 桃香はその分、じっくり書けた……のでしょうか。 蓮華はもっとじっくりやってもよかったですね。反省。 競い合うように国に貢献して、やがてお互いを認め合って、気づけば隣に居ないと、競っていないと物足りない、みたいな蓮華さんを書こうと思ってた筈なのに。 構想があるのなら書きなさいと言われそうですが、全部やるとそれこそ200話とかいきかねないので、もうほんと、そろそろゴールしましょう。 では最後に小さなまとめ話を。 このギャフターはTINAMIで生まれました。 真恋姫をプレイして、ああ華琳ッ! なんと悲しき運命ッ! と悲しくなったので書きました。 呉〜楽園遊園地で一刀と握手! なんてよく解らないタグを書いた日も懐かしいです。 “握手”の意味は最初から最期まで、人と人との絆を結ぶものとして意識していました。 そんなふうに書くことが出来たでしょうか。自分だからこそ微妙に不安です。 書くにあたって、どんなことを書いてみたいかを適当に書き出してみて、とりあえず一刀の帰還と、雪蓮や桃香とのやりとり、捕らえた美羽たちの処遇や、死んだ筈の祭さんのことをなんとかしたいなあとか、いろいろあったので、それを広げるところから始めました。 当初の予定では30話もいかない間に終わる筈だった。 それこそダイジェスト的な感じで5話くらいでパパーっと。 フタをあけてみればどうでしょう。 出来るだけ解りやすいように、状況とか事細かく書いたほうがいいよねと書いたために、5話どころではなくなってしまった。 丁度その頃にオリジナル小説も段落を得たので、ちょっと張り切ってしまったんでしょうねぇ……このたわけめは。 そんなこんなでまずは呉で、恋姫の世界観に慣れるための書き出し。 ……大いに滑る。 のちに蜀へ行き……少し慣れたために、纏め方が上手くなる───どころか余計に細かく書こうとして長引く。 魏に帰った頃にはとっくに30話など越していて、43話になっていた。 つくづくヘコんだ。もっと上手く書きたい。 こんな調子で書いているとキリがないのでこのへんで。 では、また次回で。 そんなに長くは続かんぞ。もうちょっとだけ続くんじゃ。 ……ほ、ほんとにちょっとじゃぞ!? 野菜星人の意思に巻き込まれた龍の球物語みたいに続きはせんのじゃーーーっ!! ……残り5話もないと思います。きっと。多分。 Next Top Back