【プロローグ8】
……そうして迎えた早朝。
中井出「う……むむ……む、むおお……OH」
基地のソファで目が覚めた。
いつの間に寝てしまったのかも思い出せないが、体は暖か。
毛布がかけられていて、これのお陰かーなんて思いながら、俺の体の上で眠る物体Kに目を向ける。
中井出「………」
幸せそうでなにより。
ならば逆に物体Mは……と視線を動かしてみれば、モモに抱き枕にされていた。
中井出「……ふむ」
今日と明日は土日ってこともあって休み。
だからこそみんなこうしてのんびりとしているわけで。
たまにはいいね、こんなのも。
とばかりにユキをきゅ〜っと抱き締めて、再び目を閉じた。
するとモモが寝ている方向から、暴れる気配と嫉妬の気配が飛んできた。
やっぱ起きてたか京。でも残念、モモは抱き締めた抱き枕は目覚めるまで絶対に離さん。
中井出「しかし茂吉にあんな秘密が隠されてたなんて……」
昨日の紙芝居は深かったな。
準とモロがツッコミし放題だったくらい、常時いろいろとマガってた。
だが、それがいい。
そんなことをにゃむにゃむと考えながら、まだ薄暗い外の天気を思いつつ眠った。
……。
そしてやってきた朝。
昨夜、午前9時に河原に集合って話をしていた通り、俺達は河原にやってきていた。
京 「ハァハァ……! おまたせ……! ま、待った……?」
中井出「大丈夫、僕も今来たところさっ……───小雪と一緒にな!」
京 「ひ、ひどい……私とは遊びだったのね!?
こうなったらあなたを殺してあなたが死ね!」
中井出「それだと俺しか死なないんだけど!?
しかもさっきのハァハァって、
疲れたとかじゃなくて欲情の吐息にしか聞こえなかったし!」
京 「いつでも欲情してる。あなたが好きです」
中井出「家族で」
どうせ待ち合わせならと軽いドラマを展開してみた。
まあ、一緒に起きて一緒に鍛錬して一緒にメシ食って一緒に出たんだけどさ。
モモとワン子が川神院での朝練があるってんで、時間がズレて10時になったりもしたが、別に気にするほどでもございません。
中井出「で、キャップー? 具体的にはなにすんのさ」
翔一 「かくれんぼ!」
岳人 「ああ、モロが鬼になったときは隠れずに帰んのな」
卓也 「やめてよ! 小学の頃のあれは鬼畜すぎだよ! トラウマ!」
大和 「子供って結構容赦無いよな……人を屋上から突き落したりとか」
中井出「相手が腐れ外道じゃなければ、あんなことするもんですか。
イジメも言語道断。許しません」
岳人 「イジメっていやぁ、モロも俺が保護するまではいろいろ大変でよぉ」
卓也 「ていうかガクトが一番いじってくれたよね……」
京 「いじる……肉体的な意味で?《ぽっ》」
小雪 「おー、モロモロ、すきものー」
卓也 「違うよ! なんでそういうものの見方すんの!」
京 「男子と男子が絡み合う……アリだから」
このお子はいったいどこでそういう知識を得るのやら。
女子は基本、標準装備だったりするのか?
一子 「アリなのかしら、そういうの…………むあ? なんで頭撫でるの?」
中井出「ワン子はかわいいなぁ……」
一子 「むー? まあいいわ。お姉様はどう思う? アリ?」
百代 「ふむ。周囲にろくな異性が居ないと、同性に走るというしな」
卓也 「それはモモ先輩のケースでしょーが!」
百代 「だがレズではないぞ。可愛いねーちゃんが好きなだけだ。
それに周囲に魅力的な男子が居ないと、
同性でも魅力のあるものに惹かれるのは当然だろう?」
準 「つまり俺が幼女に惹かれるのと同じくらい自然なわけだ」
百代 「…………頼む男子ども。私をときめかせてくれ」
準 「あれ? なんだか同類脱退を頼み込まれてる?」
百代 「失礼だな、私はハゲてない」
準 「俺の“類”はハゲじゃねぇ! ロリコンだ!
幼児を愛し幼児を慈しむ純粋な愛だ!」
とても堂々とした一言だったという。
どこまでロリコンに魂燃やしてんだこのハゲは。
卓也「ときめかせろと言われてもレベルが高すぎでしょ。
僕には無理すぎるからパス、ガクトどうぞ」
岳人「俺様フラレ続きだからパス。キャップ行けよ」
翔一「えー? 恋に生きるは切なすぎるぜ。大和いけよ」
大和「俺に来るのかよ」
百代「大和。さぁ飛び込んでこいっ! このっ! 胸にっ!」
んばっと腕を広げるモモさん! だがまたれい!
中井出「騙されるな鉄郎! ときめかせるのが目的であって、飛び込んだら死国だぞ!」
京 「死国。とある映画。サバオリで人を殺す場面があったから、
死国=サバオリと博光に認識されている。10点」
小雪 「あったっけ?」
京 「覚えてない」
一子 「ホラーだったわよね? ウチはホラーはあんまり見ないから解らないかなぁ……」
中井出「というわけでここは直接触れるのではなく言葉でGOだ! はいモロ!」
卓也 「ここでまた僕にくるわけ!?」
中井出「冬馬でもいいけど、やっぱり最初はモロで」
冬馬 「私でも断られそうな気がしますが」
中井出「やっても無駄だって思うよりもやってみるのが面白い。
モモも男勝りだからねー、たまにゃあ女の子を思い出させてやらんと」
百代 「ちょっとまてどーゆー意味だそれは」
知りません。
というわけで簡易告白タイム発動!
ちなみにパスしたら休みの間中ずっとチキン呼ばわりです。
卓也「なにその拷問!」
百代「ほっほーう、モロロは私に告白するのがそんなに嫌か。
お姉さんちょっとなにかを折りたくなっちゃったかなー」
卓也「この時点で拷問でしょ! 恥かくか、折られた上にチキンかなんて!」
一子「男を見せなさいよモロー!」
岳人「派手に散ってこーいっ!」
卓也「……僕の次、ガクトだってこと解ってる?」
岳人「望むところだぜぇ……!」
卓也「さっきフラレ続きがどーのとか言ってたのになんでそんなにやる気なの!
あ、あぁあもういいよ解ったよ! 一番師岡卓也、いきます!」
総員『イエーーーーーイッ!!』
ファミリーの皆様で叫んだ。
ちなみに喋ってはいないが、クリスもまゆっちも呼んであるのでここに居る。
卓也「え、えっと、その……っ……」
百代「モロロー、目を見て話せー」
卓也「普段から女子の目を見て話せない僕に、それはハードル高すぎでしょ!」
岳人「んなこと言ってたらマジ告のときにもっと恥かくだけだろが。
当たってくだけろぉ!」
翔一「その通りだ! いけモロ!」
大和「骨は多馬川に流してやるから!」
卓也「救いがなさすぎでしょそれ! ……う、ううぅ……モ、モモ先輩!
僕と……その……つ、付き合ってください!」
百代「すまん好みじゃない」
卓也「うわぁあああああっ!!《ダッ!》」
モロが走った! 砕け散ったけど走った!
そしてガクトに捕まって敗北者はさらし者にクラスチェンジした!
大和「…………レベル高いな」
岳人「いや……告白とか言ったけど、マジで告るとは思わなかった。
ときめかせるのが目的なのにな」
京 「意外……ガクトがそこに気づいてるなんて」
岳人「うるせーよ! よっしゃあ俺様が仇をとってやるぜ!」
卓也「それ以前に離してよ! これこそ拷問でしょ!」
逃げられない彼は茹蛸状態だった。
まあそれはさておき二番手! 島津岳人!
岳人「フフン……モモ先輩……。
思えば俺様はどこか浮ついた気持ちで告白を繰り返していたかもしれねぇ。
けど今回は真剣と書いてマジでいかせてもらうぜ」
百代「生理的にうけつけない。断る」
岳人「ぐぶぉあはあああっ!!? 言う前にフラレたぁあああっ!!」
ガドッ! ズシャアア……! と、膝から崩れ落ちるマッスルの図。
僕らはそんな彼に敬礼をしていた。
翔一「よっしゃ次は俺だな。
告白とか解んねーけど、よーするにときめかせりゃいいんだろ?」
大和「勝算は?」
翔一「そんなの気にしてても始まらねーって。押して押して押しまくる!
男はやっぱこれだろ! つーわけでモモ先輩! 俺と一緒に旅に出ようぜ!
世界のまだ見ぬ遺跡にもぐりこんだりして、
様々なトラップを掻い潜って、誰かの知らない世界を知る!
ときめきって言ったらやっぱこれだろ!!」
百代「冒険にときめかせてどーすんだ。男か女かの話だろ」
翔一「あれ? そうだっけ?」
京 「しょーもない……」
キャップ、まさかの敗北。
旅は俺もトキメケを感じたけど、確かにこれは男女のときめきの話だからね。
でもモモ、ちょっとまんざらでもないって顔だった。
大和 「……じゃ、次俺か」
中井出「うむ。ヌシの男を……見せてみぃ」
大和 「ああ、行ってくる」
男は一歩を踏み出した。
舎弟である自分が姐御をときめかせる。
それはどれほど難度が高いのか。
しかし彼は歩いた。
そして彼女の前に立ち───
大和「借金をチャラにしてあげる」
百代「理解のある弟が大好きだっ!!」
一瞬で落ちた。
翔一「ちょっと待て卑怯だろそれ! 男じゃなくて金で落ちてんじゃんかよー!
それが許されるなら俺もセーフだろ! なぁ!」
卓也「……いいよもう……なんでも……」
岳人「ほっといてくれ……俺様はもういっぱいいっぱいなんだよ……」
死屍累々とまではいかないが、モロもガクトもT-SUWARIで腐っていた。
アニメとか漫画ならキノコでも生えそうなくらいに。さすがに頭からムキ歯の冬虫夏草は生えないが。
準 「んじゃあ次は俺が。それとも若、いきます?」
冬馬「準に譲りますよ。どうぞ」
準 「む。では」
百代「ハゲはいらん」
準 「話し掛けてすらいねーのに終わったよ!!
ちくしょうやっぱり幼児が好きだ愛してるーーーっ!!」
冬馬「準まで瞬殺ですか……やれやれ、我が儘ですね」
百代「ああ、女は我が儘だからな。
ついでに言うとトーマ、その容姿は悪くないが、バイに興味はない」
冬馬「女性好きのあなたにそれを言われるとは思いませんでしたが」
百代「失礼だな。私はまだ男を知らんぞ。お前みたいに男も女も知ってるわけじゃない」
冬馬「ふふ、そうですか。ですが好みは似ていそうでなによりです。
私も大和くんは抱き締めたいくらいですからね……」
百代「それが解るならまだ許せるな」
大和「な、なぜか尻に異様な危機感が! は、離してくれ姉さん! 離してぇええ!!」
結局、ルールに沿うなら全員失格だった。
まあこんなもんでしょ、モモも楽しめたみたいだし。
中井出「ほっほっほ、これにて───一件落着!」《どーーーん!》
卓也 「ちょっと待ったそれは納得できない!」
岳人 「ヒロ! てめぇがまだじゃねーか!
一緒に恥かいてもらわねーと気がすまねぇ!」
中井出「ホホ、なにをほざくか。朕が恥をかくなど、いつものことであろう?」
卓也 「確かにそうだけど……って自覚があるならやめようよ!」
岳人 「つかそこまで覚悟座ってるならここでも掻けよ! ほれ! 前に出ろ!」
中井出「こ、これ! なにをするか! 貴様朕を愚弄するつもりか!」
岳人 「うるせーっての!」
ガクトに押されてモモの前へ。
するとモモは抱き締めていた大和を離し、ニヤリと笑ってみせた。
百代 「さーあヒロ、告白しろ。盛大にフってやろう」
中井出「これガクト、何気に告白限定になっているでおじゃるぞ。なんとかせい」
岳人 「うるせっ! いーからさっさとしろ!」
中井出「グ、グゥムッ……」
って言ってもね、断る気満々っぽいし。
でもなぁ、トキメケを進呈するっていっても…………アレ、やるか?
中井出「ところで賞品は?」
百代 「なんだ勝つつもりか? そうだな、私が一日デートしてやる」
中井出「要らん《マゴシャア!》ジョバンニ!」
顔面に拳が埋まりました。
百代 「おいおい〜……いくらなんでも即答はないだろぉ……。
お姉さん傷ついちゃったなぁ〜……」
中井出「ワガガガガ……!
い、今まさに物理的に俺が傷ついてますが……?《ドクドクドク……》」
おお、殴られた鼻から鼻血が。
だがこんなものはすぐ治療。ワムウ!《ビッ!》……はい復活。
中井出「じゃあ了解、それでいいや。んじゃーいくぞー?」
百代 「おおいいぞ? 全力できてみろ」
中井出「ククク、後悔するがいい……いや、後悔するのだよ貴様は。
この博光のステキさに驚きときめくのだぁ! ぶるぁああっはっはっはっは!!」
大和 「少なくともときめきを進呈する前の笑い方じゃないなぁ」
中井出「うるさいよもう! ……ほら、もっと大和から離れなさい、
なんかやりづらいじゃない」
百代 「おっと、まあいい。ほら、さっさとしろー?」
解放された大和が、男衆につかまってどつかれまくる。
一人だけ逃れやがってーって感じに。
どうやら俺が失敗するのは確定的に明らからしい。だって一人だけって言ってるし。
中井出「ふむ。では───」
レベル操作でレベルマックス!
さらにステータスを全てCHRに振り、おまけで愛……果てしなくを発動!
この状態ですかさず!!
中井出「モモ……おいで?」
百代 「!」
たった一言、腕を広げて言いました。
するとモモががばしっと抱き付いてきて───おや?
中井出「モ……モモさん? ちょっと苦しいよ?」
百代 「……ふっ……ふふっ……」
く、苦しいっつーか……あれ? いたっ……痛い? なにごと!?
中井出「ぐ、ぬおおっ!? お、おやめなさい……!
力が強っ……ご、ごおぉおお……!!」
あ、圧迫されるッッ! 背骨がっ! 息が詰まって、呼吸が段々とし辛くなって……!
だというのに力は強まるばかりで……!
中井出「や、やめろブロリー! それ以上気を高めるんじゃない! 落ち着けぇ!
やめろブロリー! やめるんだ、やめろぉおおっ!!」
百代 「ふふ、ふふふふふふ……!! あははははははははっ!!」
中井出「《メキメキメキメキ》グアッ……ゴゲッ……アベシャリッ……ゲリッ……!!」
卓也 「うわぁモモ先輩やりすぎやりすぎ! ヒロが泡吹いてるよ!」
一子 「あーーっ! どけどけどきなさいよーーっ!」
岳人 「おおう!? どうしたワン子!」
絞められる僕を見て、ワン子が駆け寄ってきた!
おおぉ、そうだ早く私を救うんだブロリー! いやウソブロリーうそ!
ってあの!? なんでむしろ俺をどかして自分が抱かれようとしてるの!?
京 「犬は、ご主人が他の者と仲良くしているとヤキモチを」
卓也「そんなレベルじゃないでしょこれ!!」
準 「おーおすっごいねぇ……さば折りってあそこまで曲がるのなー……!」
冬馬「おや。顔が青紫になってきましたね。準、止めてあげてください」
準 「や、今行ったら殺されそうなんでパスで」
翔一「……? つーか……モモ先輩、顔真っ赤じゃね?」
大和「? ……うわ、ほんとだ。耳まで真っ赤だ。ヒロの胸に隠れて見えづらいけど」
こ、コワサレルッ! このままではっ! 俺がっ!!
ににに逃げなくてはっ……!
強引にでも振りほどいてぇえええっ……ぬぅううんぉおおおおっ……!!
STRに振り分けで、根性で……つーかどんだけ強いんだこのお子は!
だがよし外れた! 逃げ《がしぃっ!》ギャアいきなり捕まった!
百代 「どこへ行くんだぁ……!?」
中井出「お、おぉおおっ……お前と一緒にぃ……っ……避難する、準備だぁあ……!」
百代 「一人で駆け出しておいてかぁ……!?」
一応ウソ言ってみてもダメでした。
顔は真っ赤で目を潤ませて、表情“だけ”は乙女チックなモモが、僕の手首を万力のような力で掴んで逃がしてくれない。しかも即座に引き寄せられて抱き締められ───ア、アゴアーーーーッ!!
中井出「おぉおおおぉぉっ……! 自分の息子に殺されるとは……!
これも……サイヤ人の、さだめかぁあ……!!」
よせばよかった! こんなタフガイを招くなんて!
かつてない力が僕を抱き締めてやまない! むしろCHRとSTRにしか振り分けてないから防御が防御が防御がアガガガガーーーーーーーーッ!!!
中井出「《ゴバキャア!》グラビッ……!」
総員 『折れたぁああーーーーーーっ!!!』
薄れゆく意識の中、なんとかステータスを戻した僕は……モモに解放され、ごしゃりと大地と熱いヴェーゼを交わしたのでした。
───……。
……。
中井出「ふ〜〜〜っ、死ぬかと思ったチェン」
卓也 「いや死んでたでしょ、背骨折れてたでしょ」
中井出「俺の背骨がキン肉マンなみにゴキベキ鳴らなかったらヤバかった」
百代 「……不覚にもときめいてしまった……」
京 「相手がヒロなら仕方ない。そして好きです」
中井出「家族で」
京 「それでもめげない愛がある《ぽっ》」
背骨をマジで折られるほどのトキメケ進呈に成功した僕は、出来るならもうモモにカリスママックスハートは見せないようにしようと思いました。
まさか力のタガが外れるほど抱き締められるとは思わんかった。
思いがけずにパラガスだったよ。
中井出「じゃあモモもときめいたところで遊ぶべー! キャップー、なにすんだー!?」
翔一 「フリーベースボール! 投げて打って取る! これだけを延々と続けよう!」
岳人 「四番ファースト島津くん!」《ジャーーーン!!》
京 「スポーツ勝負と聞いて大人気なく張り切る筋肉使いがいた。
汚いなさすが筋肉きたない」
岳人 「なんとでも言え。キャップー、バットとボールとグラブ」
翔一 「当然準備万端だ」
パワフルなのが多いから、それぞれがどの位置に居ても大体の役は取れる。
モロと大和と冬馬はちと不利かもだが。
京 「私がピッチャー……ガクトは空振り取り易い相手かな」
岳人「ウルァー! 来い京ぉ……ヒョロ球を太平洋まで飛ば───」
京 「えやー。ハンサムには打てないボール」
岳人「なにっ!? マジか!?《ズバムッ》───あ」
小雪「1ストラーイク♪」
岳人「卑怯だぞ京てめぇ! 真面目にやれ!」
京 「真面目じゃないのはガクトのほう。言葉で揺れないハンサムなら打てたはず」
岳人「ぐはっ……! よ、よーしなら次は打ってやろうじゃねぇか! 来い!」
京 「ん。最新のモテ雑誌で迷いあるハンサムは球を打てないと書かれてたボール」
岳人「んがぁっ!?《ズバムッ!》あ、ぁああっ!」
小雪「2ストラーイク♪」
岳人「京てめぇ……!」
京 「宣言する。次はこれを打ったら永遠にモテないボール」
岳人「どこまでも人を追い詰めんなよぉお!!」
男とはかくも大変な生き物である。
なんてことを思っている僕は、ホムーランボールが来るのを離れた位置で待っていた。
言った通り、モロや大和はともかく男子も女子もパワフルすぎるのだ、このファミリーは。当たれば大抵ホムーランボールになる。
岳人「永遠よりも今を生きる男! おぉおおらぁああっ!!」
そして、根性を振り絞ったガクトがついに京の球を打ち返す。
京 「……さよならガクト。いい人だった」
岳人 「不吉なこと言うんじゃねーよ! けど行ったァ!
これは球場だったら文句なくバックスクリーン直撃でホームランだろ!」
百代 「甘いなガクト。快速の外野を忘れてはいけない」
中井出「ワン子! スカイラブハリケーンゲットセット!!」
一子 「おーらぁーーーい!!」
僕の呼び声に駆けるワン子!
勢いよく地を駆け、蹴り弾いて跳躍してきたその足を足で受け止め、
中井出「“空軍・パワーシュートォッ”!!」
空へ向けて一気に蹴り弾く!
するとワン子が綺麗に宙に舞い、大空への旅を始めたボールをズバーンと捉えた。
岳人 「んがっ……!? んーなんアリかよぉおーーーーっ!!」
中井出「はいキャッチ!《ぽすんっ》」
一子 「わーはーい! 取れた取れたーっ!」
中井出「おうおうお見事! なでなでしちゃるー!」
一子 「《なでなで》わははー♪」
落ちてきたワン子を受け止め、一度回転してから頭を撫でる。
うむうむ、実にお見事。ほんにファミリーの女性陣はパワフルであるな。
中井出「よーっしゃ次の打者誰だーっ!! どんな球でも受け止めてくれるわーっ!!」
百代 「はっはー、聞き捨てならんなその言葉ー。私がその幻想をぶち壊してやろー」
中井出「軽いノリなのに言葉が重いんだよキミ! その邪悪な笑みをやめなさい!
だが良し! 京、全力で完封しておあげなさい!」
京 「ん、頑張る」
百代 「ばっちこーーーい!《ビッ》」
翔一 「おお! ホムーラン予告!」
大和 「普通にホームランって言おうってばさ」
京が投げる! しかしモモが打つ!
球はモモがバットで示した位置そのものの方向へと飛び、僕とワン子がすかさず飛んだが───
準 「あーっと博光くんにワン子くん、吹き飛ばされたーーーーっ!!」
キャプ翼のように吹き飛ばされた。
そして球は空の果てへと消え……………………
百代「あー……その、すまん」
遊びが続行出来なくなったとさ。
……。
その後、なんだかんだとキャップが話し、しっかりとクリスを仲間に誘った。
野球をする俺達を見て「楽しそうだ」と言ったクリスに、「だったらお前も仲間に入れよ」と、これだけ。友達がまだ居なかったクリスにとって、一気にこれだけの友達が増えるのは喜ばしいことだったのだろう。あっさりと加入。
中井出「サッカーボールがあったぜ〜〜〜っ!」
翔一 「ようしリフティングとパスで落としたヤツが罰ゲーム!」
卓也 「えぇえっ!? 明らかに僕が不利じゃない!」
中井出「ならばモロと大和はワンバウンド可! よっしゃいくぜーーーっ!!
まずはかるぅく───パスだァアアアッ!!!」
思い切り蹴る! 向ける相手は当然モモ!!
ゲハハハハこの博光の殺人シュートをトラップし損ねて、罰ゲームを受けるがよいわ!
百代 「はっはっはぁっ、余裕だなぁ〜!《ボムスッ!》」
中井出「なんと!?」
言葉通り、余裕でトラップされた。
そして軽くポムと大和へ飛ばされるボール。
大和はワンバウンドが許されているがそのままパスを回し、ガクトへ。
岳人 「っへへー! 超余裕だぜーっ!」
由紀江「っと、はいっ」
クリス「おっ、自分か。ほら犬!」
一子 「ほいっと! 京っ!」
京 「んっ、ユキ」
小雪 「はーい、モロモロ〜♪」
卓也 「わっととっ! 大和っ!」
大和 「よっ……冬馬っ」
冬馬 「おや、私ですか。愛を感じますね。では風間くんに回しましょう」
翔一 「おう俺かっ、じゃあ準っ!」
準 「よっしゃ待ってたぜくらえ博光ゥウウウウッ!!」
中井出「エターナルッ! ディザスタァアーーーーーーッ!!!」
準が渾身を込めて蹴ってきたソレを再びモモへ!!
倍返しの効果により、唸りをあげるサッカーボール!
百代 「おおっ!?《デシーン!》……っとぉお、危ない危ない」
中井出「ゲェエーーーーーッ!!」
うっ……受け止めたァアアーーーッ!!? 足で方向逸らして空に……っ!?
エッ、オアッ、エェエーーーーーッ!!?
百代 「掟破りのリバースルーレットぉっ!!」
中井出「ぬう!?」
しかも僕が驚いている隙を穿つように、宙に浮いたボールをオーバーヘッドキックで返してくる! なんかモノスゲー回転でスパイラルってます! 当たったらこれ腹でも突き破るんじゃなかと!? ここここれはどうしたらいや考えろそうだこれだこれっきゃねぇ!
リバースルーレット! つまりパスする相手を逆にする! ならば!
中井出「ディザスター《ドフゥォシャアッ!》」
準 「《キョヴァアァアアン!!》あるぼれぼばぁあああっ!!」
そして準が死んだ。
中井出「じゃあ準に罰ゲームね」
準 「鬼かてめぇ!!」
卓也 「ていうかよく無事だよね……顔面直撃だったのに」
中井出「ボールに闇属性が付加されてたから、きっと頭の光で中和されたんだ」
準 「ようし解った表出ろこの野郎」
クリス「既に外だが」
そして取っ組み合いの喧嘩が始まりました。といってもマジではないのでご安心を。
中井出「渋川流!」
準 「《ルオッ!》おぉわっ!?」
クリス「おお! YAWARA!! あいつは柔を使うのか!?」
京 「博光のは我流。型に嵌まらないのが彼の型」
クリス「む、む……? よく解らないが───おおっ!? あの体勢から着地した!」
準 「殺ったぜオォラァッ!!」
中井出「《ゴブァシャアッ!》グヘーーーイ!!」
クリス「うっ……直撃だな……無事には済むま───……い?」
殴られた。右の頬をだ。
だがクリスと準が瞬きをした瞬間には、僕は消えていた。
準 「おっ……あ……? な、殴って……」
中井出「残像だ。お前が今殴ったのは俺であって俺じゃない。
これぞ秘奥義幻影無光拳……!」
クリス「おぉおおお! NINJUTSUまで使えるのか! すごいなあいつは!」
百代 「いやよく見ろ。殴られた痕がしっかり残ってる。
殴られた瞬間に後ろに回っただけだ」
岳人 「心の底から意味ねぇなおい!」
中井出「うるさいよもう! ええいキャップ次だ次! 次の遊びの提案をいたせ!」
翔一 「おーし! そんじゃあ次は───」
京 「キャップ待って。罰ゲームがまだ」
ハッ!? そういやそうだった! 京がいいこと言った!
つーわけで……
中井出「その美しいハゲに全員からの寄せ書きを書かせてくれ」
準 「うわーい罰ゲームすぎー!」
中井出「遠く離れても、キミの眩しさが地の果てまで届くことを信じて……」
準 「……マジな話、せめて物理的に可能なこと書こう?」
中井出「ガクトがモテますように」
準 「人の話を聞きなさい!?」
岳人 「ちょっと待てそりゃどーゆー意味だ!」
翔一 「面白ぇ! 俺にも書かせろ!」
卓也 「どこからペンを出したのかとかそういう疑問は持たないの!?」
百代 「次は私に貸せっ! ……“おうおうねーちゃん乳出しな”、と」
準 「人の頭になに書いてんのこの人! シャレにならんでしょうモモ先輩!」
中井出「“幼児の未来はこの人が守ります”、と……」
準 「全てを許そう《ニコリ》」
クリス「こらっ! 言ってることと書いてることが違うじゃないか!」
中井出「あっ! これっ! バラすでない!」
準 「てめぇらいったい何書いてんだぁああーーーーーーっ!!!」
世界はとっても平和でした。
───……。
さて、そんなこともあって、なんやかんやと仲良くなった僕らは、そのままのノリで島津寮に行き、プチ宴をすることになったわけで。現在島津寮の大和くんの部屋に着席中。
この人数でもなんとか座れる広さは寮ならではだと思うね、うん。
あくまで座れるってだけで、狭いけど。
ちなみにモモとワン子はここには居ません。修行だとかで別れましてござい。
僕らはこうして島津寮へ来て、モモたちは川神院へ。そんな感じです。
中井出「メッ! ちゃんと相手のことを考えて発言をするアマス!」
クリス「むぅう……す、すまない」
でもその過程でちと困ったちゃんが発生。
僕らにとっちゃあもう些細なことだけど、言われて喜べることでもないし。
川神の中で、ワン子だけが浮いていると仰ったのよクリっ子が。
そりゃあ養女なんだから当然でしょうし、もう僕らも気にしてないけど、ほんに言われて嬉しいことでもない。だから注意はスルノデス。
クリス「う……あ、謝ってくる」
中井出「否! 反省する心があるならそれで良いアマス!
……蒸し返しても気分のいいもんじゃないアマス。
これからを注意する心があなたにあるならそれでOKアマス」
卓也 「そうそう、大丈夫。ワン子、クリスが入ることに反対してないし。
むしろ今はあんなに笑ってるんだからさ」
中井出「納得して家族やってるんだから、急に謝られても気分が悪くなるアマス」
クリス「……そ、そうか……悪かった、気をつける」
翔一 「いつまでもしょぼくれた顔すんなって。
それよりモモ先輩が川神院から肉を持ってきてくれるそうだから、
そしたらじゃんじゃん食おう!」
総員 『おーーーーっ!!』
肉は命です。でも野菜も食おう、ホトトギス。
でも、肉が届けられるのがモモとワン子の修行が終わってからなんだよねー……。
翔一 「大和、大和っ、腹減った、腹減ったよぅ!」
大和 「肉が届けられるって自分で言ったばっかりじゃないか」
翔一 「稽古が終わってからなんて待てねーよぅ!
土日自炊システムは島津寮最大の欠点だぜチクショウ……」
大和 「生憎と俺の部屋の食料は尽きてしまっている」
京 「ここに来ればご馳走が食べられるとキャップに聞いて」
小雪 「にくにくお肉ー」
準 「呼ばれてないのに来ました。
晩飯くれー。じゃないといたずらしちゃうぞーっと」
岳人 「てめぇ今何月だと思ってやがる」
冬馬 「遊びに混ざったのならむしろ自然な流れでしょう?
そう睨まないでください」
卓也 「せめて一度でも大和から目を放してから言おうよ」
クリス「お前達だらしないぞ。静かに待てない《きゅるるぅ〜……》……っ……!」
ソプラノチックな音とともに、真っ赤になる金髪が居た。
クリス「い、いや、いまのは違っ……」
中井出「おいィ? お前らは今なにか聞こえたか?」
大和 「聞こえてない」
卓也 「何か言ったの?」
岳人 「俺様のログには何もないな」
中井出「聞こえてないって」
クリス「そ、そうか……《ホッ》」
あ、納得した。いや……自分らで言っておいてなんだけど、いいのかそれで。
こちらで男性陣が、というかガクトが「可愛いやつだなぁああ……!」とか言って鼻の下伸ばしてるんだが。
翔一 「なぁなぁ〜、なんか無いのかよぅ。
俺が困ってたら“仕方ないなぁキャップは”って助けてくれよぅ。
さもないとアレだぞー? グレるぞ俺ー」
中井出「仕方ないなぁキャップは」
翔一 「えっ!? なにっ!? なにかある!?」
中井出「こんなところに袋の文字さえ掠れた古のせんべいが!」
翔一 「レンジでチンすりゃイケるだろっ! いーただきぃっ!!」
男衆 『マジで!?』
翔一 「冒険とは現地調達!
サバイバルでカエルさえ食う俺にとって、せんべいなんて敵じゃねぇ!」
卓也 「いやぁでも! 個別袋の文字さえかすれるせんべいだよ!?
何年ものだか解ったもんじゃないのに!」
翔一 「大丈夫だってー。ほら、開けてみても嫌な匂いとか───」
にょるり。
卓也 「うわぁああ! なんか妙なモノが何匹も生えてきたんだけど!?」
翔一 「きっとたんぱく質になる! だから食う!」
岳人 「どー考えてもやばいだろ!」
京 「絶対に寄生虫になる。断固阻止」
小雪 「でも美味しいかもしれないよ?
なんとかーって、うじむしと一緒に食べるチーズもあるし」
中井出「メッ! いけません!」
小雪 「キャップの所為で怒られたー!」
翔一 「え? 俺?」
逆恨みはやめなさい。
愛も必要、注意も必要。これ、人間の知恵。
大和 「はぁ……外に軽く食いに行くか?」
翔一 「そんな金あるか! バイトして溜めた金は全て未来のための貯金にした!
それでも行くっていうならおごれよ金色夜叉!」
中井出「島津寮って土日は大変なのね。冷蔵庫はドゥーなってるのよーーーぅ」
翔一 「おおっ! その手があった!
もしかしたら麗子さんがなにか補充していってくれてるかもしれない!
ただしあったとしても俺は応援しかしない!」
大和 「あ、俺もそれで」
言うだけ言って、キャップが部屋を出てダイニングへと走っていってしまった。
……ほんと自由人だ。
クリス「では自分は皿を用意しよう。応援よりは役立つぞ」
岳人 「なら俺様はポージングをとるぜ」
卓也 「調味料くらいは用意するよ……ってポージング意味ないよね!?」
小雪 「ヒロミツが作るなら手伝うよー?」
京 「博光が作るなら常に隣でサポートする。なんて良妻。
ただし一人では作らない。絶対に」
準 「随分狭い条件下での良妻だなァおい……」
京 「道端で警官に質問くらったハゲに言われたくない」
準 「てめぇらが好き勝手書くからだろーがァァ!!
しかもしっかり油性だから取れやしねー! どーしてくれんだー!
“ねーちゃん乳出しな”じゃあ幼児に誤解されんじゃあねーかァァ!!」
卓也 「怒るところそこなの!?」
冬馬 「まあまあ準、油性ペン落としの薬なら丁度持ってますから、頭をこちらへ」
準 「いえあの若ー? そんなん持ってんならもっと早く出しましょ?」
冬馬が準の頭に薬を塗り、ティッシュで軽く拭う……と、なんとスッキリキレイ!
……あ、でも何故か何文字かだけ綺麗に残してほっこり顔してる。
大和 「そこで“ねーちゃん”と“乳”の文字だけ匠に残すのはどうなんだ?」
岳人 「やべぇ勃った!」
卓也 「節操なさすぎでしょ!」
翔一 「お前ら朗報だ! キッチンの冷蔵庫に冷凍の安っぽい肉だけが残されてたぞ!」
クリス「で、調理は誰がするんだ?」
京 「さりげなく調理役から自分を除外した。汚いなさすがクリスきたない」
クリス「うっ……い、いや。自分は家事というものを一切したことがなくてな……。
だが汚いというのは聞き捨てならない! 自分は正直に言ったんだぞ!」
翔一 「よぅしキャップ命令だ! 誰かこの肉を使って美味いメシを作れ!」
大和 「キャップはバイトで調理経験くらいあるだろ」
翔一 「正味な話、バイトでもねーのに労力使いたくねー……」
……ふむ。
まあその気持ちも解らんでもないがー……実はさっきから会話に入れずおどおどしておるお子がおるのだが。
なにやら口を開こうとしてはためらっているため、勇気をお出しと見守っている。
由紀江(こ、ここはやはり私がやると声をかけて、自然の流れで混ざるべきでしょうか。
それともさらに機を待つべきなのでしょうか……)
松風 (慎重にいけまゆっち〜、クリスが一緒だからって緊張して何も喋れないんじゃ、
このままだとあっという間にクリスに親密度を越えられちまうぜ〜……!)
由紀江(それはべつに構わないと思いますが……。
し、しかしなにも出来ないままなのは歯がゆいですね。
皆さんがおなかを空かせているというのにこのままなのはよくありませんっ)
松風 (素直になろーぜまゆっち、追い抜かれるのが嫌なんだろー?)
由紀江(そんなことはありません、ありませんともっ。というわけで───)
キッとまゆっちが前を見る! おお行くか!? 行っちゃうのか!?
忠勝 「ギャーギャーうるせぇぞてめぇら」
翔一 「!? ゲンさん! みんなのゲンさんが帰ってきた!」
大和 「ゲンさん! 僕らのゲンさん!」
由紀江「はうっ……!?」
あ。挫かれた。
翔一 「何か作って! 食材なら冷蔵庫にあるから! ちなみに俺達は応援しかしない!」
忠勝 「なんでオレがテメェらのためにメシを……アホかボケ。
夜もバイトあるんだ、邪魔するな」
大和 「……あーあ、ゲンさん部屋に戻っちゃった」
由紀江「あ、あのー……」
おおまゆっち!? キミはなんと強い! この状態から突っ込むか!
由紀江「え、ええと……わ、私でよろしければ、その───
《ギンッ!》ここ、これから夕食を、その……」
大和 「い、いや、そんな睨まれましても……」
落ち着けまゆーーーっち! また睨んでる! 眉間がピグッピグッて痙攣してる!
一言で言うなら怖いよ!
つーかあれ? なんかゲンさん戻ってきたよ?
忠勝 「ちっ、メシの話されたら腹が減ってきやがった。
メシ作るついでにテメェらの分も軽いもん作ってやる」
由紀江「え゙ッ……」
大和 「さすがゲンさん! 俺抱かれてもいいや!
かといってほんとに抱こうとするのはやめてね!」
忠勝 「勘違いするんじゃねぇ。ただのついでだバカが」
由紀江「あ……あぅ」
ま、まゆーーーっち! 一歩、たった一歩が遅れたばっかりに!
大和 「で、まゆっちなに?」
由紀江「あ……い、いえなんでもないです……」
たぱーと涙を流し、とぼとぼ離れるまゆっち。
そんな彼女に手招きして呼んでやると、ぶわっと泣き出し駆けてきた。
中井出「おうおう、頑張ったなぁ。あと一歩が足りんかったなぁ」
京 「あれは“夕食”の時点でティンとこないキャップと大和がヘン」
小雪 「ハグハグ〜♪」
由紀江「あぁあああ……人のぬくもりが暖かいですぅう……」
結構頑張ってたのにね。だから勢いのままにしがみついてきたまゆっちをハグしました。
すると京とユキがその横からまゆっちを抱き締め、まゆっちが脱出不能になった。
………………せっかくなので、3人で全力で可愛がることにした。
主に頭を撫でたり褒めたりで。
……。
しばらくするとゲンさんが料理を作り終えて差し出してくれました。
中井出「ハーイ! なんだかんだでツンデレなタッちゃんがメシ作ってくれたよ!
さあこのシヴい男が作ってくれた料理とは!?
トキメケの瞬間です! はーいではどうぞー!」
忠勝 「うるせぇぞヒロ、てめぇは黙ってやがれ」
中井出「あらひどい!
でもそれがテレであることくらいお見通しルヴォアァアーーーーーッ!!?」
おらよ、と差し出されたそれを見て絶叫!
漫画とかなら目玉が飛び出て、僕が眼鏡っこだったらパリーンて割れてるくらいのショックが僕を襲った!
中井出「ギャッ……ギャーーーーーッ!!」
京 「!? 博光!?」
中井出「ギャーーーッ!! ギャーーーーーッ!!」
ドタッ。
小雪 「……死んだ!」
忠勝 「……肉じゃが嫌いはまーだ直ってねぇのかよ」
クリス「? 肉じゃがが嫌いなのか? 日本では母の味だと聞いていたが……」
忠勝 「トラウマがあるんだそーだ。
なんでも人肉で作られた肉じゃがを食わされそうになったとか」
岳人 「それ今言うことじゃねーだろ絶対!」
冬馬 「出されたものを食べるハードルが急激に上がりましたね……」
準 「ハードルどころか絶壁じゃないのかねこれ……」
一子 「美味しい匂いがしたのでアタシ推参!」
中井出「《シャキィンッ!》はいお風呂いきましょうねー」
一子 「え? あ、に、肉じゃがぁああああ……!!」
体操服で推参したワン子を、復活とともに温泉へ連行。
ちなみに島津寮は温泉完備の素敵な寮だったりします。
しかも一階二階一つずつにアルノデス! 日本好きなクリスが素直に感激していたね。
そんな感激の脱衣所までワン子を連れてくると、泣きが入ってるワン子をまず説得。
補足すると二階は女子の縄張りで、フツーは女子の許可無くして入れないのですが……まあ、まゆっちもこくこく頷いてくれてたし、そのままGOです。
一子 「なにすんだよぉお……肉じゃが食べたかったのにぃいい……」
中井出「はいはい泣かないの。食べたいなら俺が作ってあげるから。
それより汗がすごいぞ。えーっとまずは水分だな。ほれ、常備用竹水筒〜♪」
説明しよう! 常備用竹水筒とはかつてかずピーが常備していた竹で出来た水筒をヒントにパクった水筒である! 懐サイズだから携帯に便利!
中井出「たーんとおあがり」
一子 「んくっ、んくっ……んっ……ぷあーはーーい!」
中井出「んじゃあ次は下準備。ダッシュ何本やった?」
一子 「50本!」
中井出「よし、じゃあこことここと……」
癒しと時間蝕を混ぜたものを手に込め、軽く指圧。
壊れた筋肉細胞を刺激してやれば、さっき飲ませた水の中の栄養がすぐにフォローに向かう。
一子「おおっ、体がポカポカしてきたわっ」
効果はほんとにすぐに現れた。
ワン子が目を輝かせて自分の体の変化に驚いておる。
中井出「うし、これでいい。どこか痛いところはないか?」
一子 「んと、タイヤ引っ張ったから、お腹が少し」
中井出「そか。あんまり無茶するなよ?
代謝機能が高いからって、必ず痕が消えるとは限らないんだから」
一子 「はーい」
中井出「ちゃんと自分が女の子だってことも忘れないこと。
お腹にロープのあとがあるから嫌だーなんて、
好きになったヤツに言われたら嫌だろ?」
一子 「なら修行に理解のある人を惚れさせるわっ!」
中井出「ああ、お前なら大丈夫な気がする」
一子 「え? そう? やっぱり少しずつお姉様に近付いてるから、
魅力が出てきてるのかしら」
中井出「自覚無いのか。お前のこと好きな男子、結構多いぞ?
俺や大和に紹介してくれーって持ちかけるやつが随分居る」
一子 「おおー……そうだったんだ。
でもあれ? 告白されたことなんて一度もないわよ?」
中井出「自分で頑張らんヤツに助力する気はないので潰しております。
まあ、気になるヤツが居るようなら言いなさい。
お前が好きになったなら、喜んで紹介しよう」
一子 「べつにそんなに世話やかなくてもいーのに」
中井出「お前らには幸せになってほしいからね。これはもう性分だよ。
だから、うんと幸せになりなさい。俺はそれを、心から願ってる」
きょとんと僕を見上げる顔……両の頬にやさしく手を添えて、心からの笑顔を贈る。
ほんに……こんな気持ちになったのは随分と久しぶりなのだ。
かつての仲間以来だと断言出来る。
だから幸せになってほしい。否、してやるのだ。
だってさ、本当に……またこうやって、こんな風に滲み出るみたいに笑むことが出来るなんて思わなかったんだ。
こんなにも大切な仲間たちだから幸せになってほしい。
そう強く思えるやつらに巡り合えた。
一子 「うう、な、なんか照れる」
中井出「それでよろしい。っと、腹だったな。ここらへんか?」
一子 「あ、うん」
体操服越しに傷む場所とやらに触れて、軽いマッサージと称して癒しを送る。
一子 「あははっ、ヒロの手って魔法みたいよねー」
中井出「ヒロって言ったり博光って言ったり忙しいねぇお前は」
一子 「好きな時に好きに呼べって言ったの、ヒロでしょ」
中井出「そうだけどね。じゃ、風呂入ってきちゃいなさい。
服は適当なもん用意しとくから」
一子 「そういえばこういう時に用意するの、いっつもぴったりな服よね。
どうやって調べてるの?」
中井出「家族のことはよく見てますからね。大体の見当をつけてざますね」
一子 「ま、なんでもいいわ。さっぱりしてくるー」
中井出「おーういってらっしゃーい」
ぽぽぽいっと体操服を脱ぐワン子を見ずに脱衣所から出て、きちんと施錠を促してから歩く。到着地点はもちろんダイニングルーム。さて……肉じゃがはどうなっただろう。食べ終えてあればいいのだが。
翔一 「おおっほー! うめー!」
大和 「いい仕事してるな! さすが僕らのゲンさん!」
クリス「見事に味が染み込んでいるな……」
京 「これは新しい味。とてもあの短時間で作ったとは思えない。そして好きです」
中井出「戻って早々に告白されるとは思わなかった。意外性にときめいたのでハグします」
京 「《きゅむっ》はぅ…………伝わる体温に愛を感じる。これはもう落ちた?」
中井出「家族愛です落ちてません」
そこからはまた賑やかな“日常”。
ギャースカと騒いで笑って怒鳴ってなだめてツッコんで、中々上がってこないワン子の様子を見に行ってみれば案の定温泉で寝ていて、それをまゆっちに引き上げてもらってあれやこれややって。
一子 「やははぁ……ポカポカ気持ちよくて、つい寝ちゃったわ……」
中井出「危うく死ぬところですわいまったく。ほら、暴れない」
一子 「んやぅー……《わしゃわしゃ》」
で、救出してからはみんなが集うダイニングへ。
体はまゆっちに拭いてもらって、服を着せてもらってからは俺が髪を。
……ダイニングに連れてきてから拭いて着せたわけじゃないよ?
岳人 「相変わらず甘やかしてんなぁ」
中井出「手のかかるうちは手をかけていたい家族愛です。
差別はせんから、言ってくれれば喜んで」
岳人 「男に触らせる趣味はねーよ」
京 「でも博光はとても上手。髪の毛がすごく綺麗に纏まる」
小雪 「さらさらだもんねー」
岳人 「ユキが言うと説得力あるな……綺麗だもんなぁその髪」
京 「私の髪をスルーしたのはいい判断。博光以外に褒められても嬉しくない」
岳人 「だと思ったよ」
中井出「ワン子ー、かゆいところはないかー?」
一子 「えへへー、きもちいー」
中井出「無いそうです軍師殿」
大和 「わざわざ報告しないでいいから」
ポニーを外したワン子の髪を丁寧に拭いていく。
もちろん癒しとマナトリートメントは忘れない。
これをするのとしないのとじゃあ、髪の健康が段違いです。
中井出「よしっと。あとはドライヤーでファゴ〜〜〜っと」
一子 「はわうー……♪」
顎を撫でられた猫のような糸目で、口を緩ませるワン子。
うむうむ、今日も実にめんこい。やはり愛でるべきは守ってやりたくなるな。
準 (《ニコリ》)
視線を向ければ、アイコンタクトで全てを知った準が菩薩の笑みを浮かべていた。
……。
さて、そんなこんなでしばらくしてモモも合流。
待望の肉と、俺が家から持ってきた野菜やその他も合わせ、ちょっとしたパーティー状態なプチ宴がここに開幕。
中井出「俺はひたすらに焼くアマス……っ!
お前らは俺に構わず先に食うアマスーーーッ!!」
一子 「おおっ! ヒロが燃えているわ! 解った、アタシ頑張って沢山食べる!」
京 「どうせ焼くならヤキモチを焼いてみてほしい」
小雪 「じぇ〜らし〜どり〜む〜?」
京 「……すとーむ?」
小雪 「それだー!」
卓也 「そんなにヒロにべったりなのに、ヤキモチってどうやって」
京 「………」
小雪 「………」
京 「ユキ、愛してる」
小雪 「ミヤコ、大好きー♪」
京 「…………ちらっ」
小雪 「……ちらり」
中井出「うむうむ、仲良きことは素晴らしきかなアマス」
京 「……モロ、ひどいこと言った。0点」
小雪 「モロモロがオトメゴコロをもてあそんだ……ひどい……」
卓也 「なんでそこで僕が駄目だしされるのさ!!」
いろいろ話し合っての歓迎も、なんだかただの肉パーティーになってる気が。
でも気にしない。仲良くなるってのはこういう過程が必要さ。
準 「おぉおあテンメッ! 人が大事に焼いてた肉をっ!」
翔一「肉は取ったモン勝ちだろー!? おお〜、ウメー!」
小雪「準には僕のをあげるよ。うれしい?」
準 「……焼いたマシュマロ渡されて、俺はどう反応すりゃいいんだよ」
喜ぶか悲しむかじゃないだろうか。
百代 「うまいだろー。大事に保管されていたものを持ってきたんだ。
特上がどうとか書いてあったが気にするな、どうせジジイのだ。
ジジイのものは私のもの。世界の可愛いねーちゃんも私のものだ」
卓也 「どういう基準なのそれ……」
中井出「言うだけならタダって基準?」
準 「世界の幼児は俺のもんだ!」《バーーーン!》
中井出「待て、それはさすがに分配が必要だ。
俺が傷ついたお子を引き取るから、幸せなお子は準が」
準 「いや。幼きを愛で、慈しむ心を持つ俺はそれを承服出来ん。
俺こそ心を弱らせた子達を暖かく見守ってやりたいくらいだ」
大和 「変態が二人居るんですが」
準 「変態違う! ロリコンだ!」
中井出「差別ではない! 慈しみだ!」
大和 「……」
百代 「そっとしとけ。もう末期だ」
友達に遠い目で見られた瞬間がここにあった。
だがそれがなんだというのだろう。
俺達は顔を見合わせて頷いた後に肩を組んで笑い合ったさ。
まあそのあとは肉食ったけど。
クリス「これは……美味いなっ!」
由紀江「松風、松風……! 最近になってこんなにも人と接する機会が……!
これがもしかして幸せというものですか……!?
運を使い果たしてこのあと転落人生が待っていたりしないでしょうか……!」
松風 『もう独りに泣く日々はすぎたんだぜまゆっちー!
悲しみじゃなく喜びの涙を流すんだー!』
由紀江「そ、そうですねっ、美味しい、おいしいですねっ、みんなで食べる料理はっ!」
中井出「さあさどんどんおあがるアマス! 焼きはこの博光に任せたまえアマス!
はーいはいはいこっちもう焼けてるアマス。
あ、ワン子そっちは裏面がまだアマス。
モモー、ピーチジュースこれアマス。ほれ冬馬、もっと食わんといけないアマス。
大和大和、こっちの焼きキムチいけるから食ってみるアマス。
岳人はもっと野菜食うアマス。モロは逆に肉食え肉アマス。
京とユキはこっちアマス、美味しく作ったのを取っておいたアマス」
百代 「おいおいー、差別は嫌いじゃなかったのかー?」
中井出「だまりゃっ!
このお子めらは食がそんなに進んでないから食わせてるだけでおじゃ!」
岳人 「食事中に麻呂の真似なんかすんじゃねーよ!!」
中井出「おおこれは博光失敬! でもこのアマス語めっちゃ疲れてさ……」
麻呂。綾小路麻呂。川神学園で日本史を教える教師です。
一人称が麻呂で、顔も白くて麻呂マユゲで、平安時代のことしか教えてくれない。
貴族大好き野郎で、家柄を特に気にしているイヤ〜なヤツです。
俺のコロがすリスト上位にランクインしてます。
理由? 京と小雪のことを家を捨てて男のもとに転がり込んだ下賎な輩とか言ったから。
中井出「じゃあどんどんいこうなー。あ、キャップそれ食うなら今だ。
ついでに焼きそばがあったからそれも脇で焼くなー?」
京 「お好み焼きのモトを発掘した」
小雪 「おたふくソースがあったよ〜」
中井出「任せとけ! こう見えても俺は! お好み焼き作りの達人!!」
卓也 「初耳だよそれ!」
中井出「初めて言ったからな!」
そんなわけで、料理の鉄人モード!
ちゃっちゃかと混ぜて焼いて作って完成!
中井出「さあ! 食べてみてよ!」
岳人 「うおっ……すっげーいい匂い!」
翔一 「今おたふくソースになにか混ぜてたよな?」
中井出「特製博光ブレンド! レシピは秘密である! 食え!」
焼きそばとお好み焼き単品ずつと、焼きそばとお好み焼きを混ぜたものを用意!
おいっしーよっ!?
中井出「ほらまゆっち、恐縮してないでどんどんおあがり!
早く食べないと焦げるよ!」
由紀江「あ、はいっ!」
中井出「ほォオオらァァァ! クリスもぼんやりしないのォォォォ!!
しっかり食べてしっかり健康に生きるんだよッ!!」
クリス「あ、ああ。いただこう。……《ぱくり》……ふぅうううぉおおおおおっ!!?
な、なんだこれは! なんという美味しさ……これがOKONOMIYAKI!」
岳人 「おぉおあぁ……! う、うめぇえ……!
おいおい……これ絶対に粉にも工夫しただろ……!
かーちゃんが買ってくる粉がこんなに美味ぇわけがねぇ……!」
中井出「レシピは秘密だってば! 代わりにどんどん作るから食えー!」
一子 「ハムッ! ハフハフッ! ハフッ!」
中井出「ちゃあんと味わって食いな! 噛むことも忘れるじゃないよっ!
最低20回くらい噛んでから飲み込みな!」
百代 「食うペースくらい選ばせろよー」
中井出「口答えするんじゃないのォォォォ!!
アンタはもうホンット人の揚げ足ばっかり取ってェェェェ!!」
準 「モモ先輩にここまで言えるの、博光と学長くらいなもんだよなァ……。
おおしかし美味い! こりゃたまらんヨダレズビッ!」
冬馬 「これは……ソースからなにから、味付けの段階で匠と見るべきですね」
料理と食事は続きます。
皆様ウメーウメー言いながら食ってくれて、この博光も満足よ。
自分はつまみ食いする余裕もないけど、でも平気。
一子 「ちょっとクリ! それはアタシのよ!」
クリス「何を言う! これは自分が残しておいたものだ!
大体誰のものかなど決めていなかっただろう!」
中井出「半分にしようね? ていっ」
揉め事の原因であるお好み焼きを半分にする。……と、明らかにがっくりオーラが。
でも知らないホーーーイ。
中井出「食事は仲良く賑やかに。OK?」
一子 「あぁぁあぅう……あの大きさを一気に食べたかったのにぃい……」
クリス「う……それは同感だが……言われたことは正しい……」
中井出「じゃあ僕の分をどうぞ。丁度一個あるから半分にすればはいOK」
クリス「待て、それではお前が」
中井出「“愉快”の中で喧嘩を始めた者に発言権など無いんじゃい。
だから食って満たして笑いなさい。ワン子もいいね?」
一子 「うん、いい」
クリス「………………彼の言うことは素直に聞くんだな」
一子 「ふふーん、ヒロはからかう時以外、そうそう間違ったことなんて言わないからね」
クリス「…………《じー……》」
中井出「ホイ?」
なんか睨まれてる。
ひょっとして分けたお好み焼きが少し冷めてたのが気に入らなかった?
百代 「からかう時も体張って代償払ってるからなー。殴り甲斐がある」
中井出「笑みながら言う言葉じゃねーよねそれ」
岳人 「モモ先輩に殴られても平気なのってヒロくらいだろ」
中井出「平気? 違うな……ヤセ我慢だ」
準 「格好よく言ったつもりだろうが、相当情けないな……」
中井出「うっせハゲうっせ! このハゲ! うっせ! ハゲ!」
準 「ここぞとばかりに喚くんじゃあありません!」
なんのかんので賑やかです。
やあ、やはりみんなで食う食卓は明るくていいや。
川神の民は肉が好きだからね、肉の日は自然とやかましくなる。
しかしそんな騒ぎもそろそろ終局。
肉がとうとう一枚になり───
翔一 「よっしゃあ最後の肉もらいっ!」
一子 「させるかぁっ!」
岳人 「俺様がいただく!」
クリス「それは自分がッ!!」
食に餓えた四人が一斉に箸を伸ばし、一枚の肉をヒュパァンッ! ……取られた。
翔一 「……え?」
一子 「消え……あれ?」
岳人 「肉……俺様の肉が……!?」
クリス「馬鹿な! たしかにそこに───!」
どうやら目で追えたのは俺とモモと京だけらしい。
で、そちらへ視線を向けてみれば、当然最後の肉を食べている……まゆっち。
由紀江「ああ……美味しいですね。これは牛でしょうか。
ごめんなさい松風、あなたの仲間を私は……」
松風 『気にするんじゃねぇぜーまゆっち、これも弱肉強食さぁ』
待つんだまゆっち、松風は馬だろ。
クリス「くっ……じゃ、弱肉強食……これがか……! 負けたのなら下がろう……!」
翔一 「うっははー! 速ぇえーなまゆっちー! すっげぇ驚いたよ!」
一子 「うぅう……アタシのおにくぅう……」
岳人 「あー……今ので微妙に足りない感じが……」
由紀江「……はっ!? あ、あれ? なんだか視線が集中している気が……!?
あ、ぁああああのっ!? 私なにかやってしまいましたかっ!?」
百代 「ふふふはは〜……? まゆまゆ〜、お前やっぱり強いだろ〜……」
由紀江「いっ!? いぃいいえいえいえいえいえ私なんてまだまだですっ!」
賑やかなる食卓を前に、シメとして軽くさっぱりしたものを。
つーてもデセルだけどね。
トニオプリンなのでいろいろと回復しますよ。
みなさま、ンまァ〜〜〜いっ!と喜んでくれました。
翔一 「ぷはぁーーーっ、食った食ったぁ〜!」
岳人 「うおーぷ、満腹〜……」
卓也 「最近食べ過ぎてばっかりな気が……うう。
でも無理してでも食べたい味だった……」
準 「んん? けどな〜〜んか忘れてるような……」
大和 「あー、それなんだけど」
冬馬 「私たちばかり食べるのに夢中で、博光が一切食べてません」
総員 『あ』
中井出「ホイ?《ニコリ》」
え? なんか言った?
今片づけで忙しいんだが。
クリス「まっ、待て待てっ、なにを片付けているんだお前は!」
中井出「え? なにをって。キミは今料理人を馬鹿にしたっ!!
料理をする者として、後片付けをするのは当然であろう!!」
クリス「それはたしかにそうだがそうではなく!
お前がまだ食べていないだろう! なのに片付けてどうする!」
中井出「? そりゃ片付けるでしょ。食材もないのに器具だけ出しておいて、どうすると?
それとも……食材、何が残っていると?」
クリス「え? …………あ」
言われてからちらりとテーブルやキッチンを見るクリス。
当然、な〜んも残っとらん。もちろん冷蔵庫にも冷凍庫にもです。
中井出「……えと。片付けに戻っていい? ……ふんふふんふふーん♪
いやぁ、今日も善き笑顔でござった。やはり家族の笑顔はよいものですなぁ」
笑顔の中は落ち着きます。
騒ぎの中は楽しいです。
怒りの中では震えるぞハート!
それはそれとして後片付けですハイ。散らかしっぱなしじゃあ麗子さんに失礼だ。
クリス「…………な、なぁ。こいつはいつもこうなのか?」
百代 「ああ、大体こんなだ。自分のためにしか行動しないからな。
ファミリーが笑顔ならどうでもいいんだよ、ヒロは。
“自分が”ファミリーの笑顔を見たいからやってる。ファミリーのためじゃない」
クリス「……まるで自己犠牲ではないか。そんなことを許していていいのか?」
一子 「やりたいって言ってるんだもん、いいに決まってるじゃない。
ヒロは嫌なことは容赦無く、迷いなく嫌って言うわよ?」
京 「そういうこと。自分の物差しを過信するのはよくないよ」
クリス「むぅ……」
……あら? なにやら不穏な空気?
男衆がまったりしているのに対し、おなごたちは少し硬い雰囲気を纏っておりますな。
まあそれはそれとして片付けも終わったし、僕も食おう! もう出来てる頃だし!
中井出「というわけで僕も食事にします。天帝カイザーアルティメットラーメンと、
デザートの津軽レインボー(仮名)です」
クリス「っ!? そんなものを食事にするのか!?」
中井出「そんなものとは何事っ!? 言っとっけどなー!
この天帝カイザーアリュッ……ア、アルティメットラーメン一つで、
さっきまでの食材全部より高けーんだぞ!?」
クリス「な、なんと……!?」
京 「噛んでも諦めないあなたが好き」
中井出「ほっといてよもう! ちなみに即席ラーメンと馬鹿にするなかれ。
栄養バランスパーフェクトゥだし、お手軽でアルティメットうめぇ。
デザートひとつとっても最強じゃぜ? というわけでお披露目だ〜い」
フワリと蓋を開けると、濃厚な、しかしそれでいてしつこさのない良い香りが広がる。
一番近くに居たガクトがその香りを嗅いだ途端に襲いかかってきたのだが、愛の渋川流で愚かを起こすより早く投げ飛ばした。
中井出「フフフ、たらふく食ったというのに……食いたいか? え? 食いたいのか?
ほっほっほ、卑しいやつめ」
岳人 「いっぢぢ……! 体が勝手に反応したんだよ! なんなんだよそのカップメン!」
中井出「カップメンですが」
岳人 「見りゃ解るっての! 中身だ中身!」
なにって……ふむ。
それはもちろん、ヒロラインで熟成された食材で作ったラーメンを即席製に創造したものだが。全ての材料が、かつての仲間のお陰で56億7千万もの間、鍛えられてきたもの。
美味ければ次はより美味いという効果を生かし、それを56億年!!
これ以上に美味しものなど現時点ではとてもとても……。
僕にとっては……あれだね。唯一って言っていいくらいの、仲間との繋がりが残った品。
様々な意思と別れることになろうとも、これはみんなが美味しと言って鍛えた具材で出来たもの。大切でないわけがござんせん。え? 武具? 武具は“当然”のカテゴリに既に入っております。
中井出「食う? 内容に関してを問わないなら食べていいよ?」
岳人 「いただきます!」
百代 「いいやこれは私がいただく!」
翔一 「あぁずっこいぞぉモモ先輩! あんた散々肉食ってたろうが!」
百代 「私が持ってきた肉を私が食ってなにが悪いっ」
一子 「言ってる間に取ったわ!
ほ、ほわあああ……体が震えるほどいい匂い……!《ひょいっ》ああっ!?」
クリス「ほほう……これがカップラーメン……ああは言ったが、見るのは初め、て……!?
い、いい香りだな! これはいい香りだ!
毒見が必要なくらいに!《ひょい》あぁっ!?」
準 「おっと嬢ちゃん横取りはいかんよ。ラーメンくらいで大人げな───よし食おう」
冬馬 「香りを嗅いだだけで準までですか。どれ、それでは私も」
岳人 「ちょっと待て最初は俺様だろ!」
百代 「いいや私だ! これは譲れないな!」
小雪 「だめー! 僕が食べるのー!」
京 「博光自慢の一品……是非ともお腹に納めたい……!」
中井出「あの。ラーメンのことだよね? なんで僕の下腹部見ながら言うの?」
京 「騒ぎに乗じて大胆に攻めてみた《ぽっ》」
中井出「騒ぎに乗じて家族でお願いします」
顔を赤らめたあとは、ラーメンバトルに参戦。
無言ではあったが、モロもまゆっちも参加していたりするからちゃっかりしてます。
中井出「賑やかでいーねぇ……はっはっは」
結局モモが一番に食べるに至り、絶叫。味覚が究極に刺激されたのか、両の頬を押さえて床を転がり回った。うん解る、ウメーもん食うとじぃいいんとくるよね。それが究極レベルで訪れるんだ、あまりに未知なら悶絶もしたくなる。
そんな光景が次々と展開されてゆく中で、僕は家から持ってきたメロンパンを食っておりました。うん美味い。安売りのメロンパンだが、悪くない。これはけっして悪くないぞ! 特にこのわざとらしいメロン味!
やがてスープまでもが大切に飲み干されたあとには、上気した表情で放心状態の皆様が残された。
中井出「いい食いっぷりだったがどこもおかしくはない。
ということで津軽レインボーをどうぞ。見ての通り虹色のゼリーです」
百代 「ま、待て〜…………もうちょっと……もう少し……余韻に浸らせてくれ〜……♪」
中井出「え? お、押忍」
予想以上に幸せ状態らしい。
これは声をかけるのはヤヴォってもんですね。
うん、俺はメロンパンでも十分満たされてるからいいんですがね。美味いものばっか食ってると、時々食う昔の味とか平坦な味が嬉しいことってあるよね。
……。
さて、いざと食べて再び幸せの絶叫を聞いた僕は満足です。じゃなくて、えーと。
中井出「ほらほら、もう遅いぞー。帰るやつは帰れー。俺も帰る」
岳人 「メシ食って勃ったの初めてだ……」
中井出「そんな解説いらんから!」
卓也 「ほっぺたが落ちるって表現……今なら認めてもいいって思えるよ……」
中井出「べつに許可が欲しくて食べさせたわけじゃないから、ほら立った立った」
岳人 「勃ってるぜ?」
中井出「死んでまえ。おら準、冬馬、S組が遅刻とかシャレにならんだろ。
いーからさっさと帰って寝とけ」
準 「うおーぷ……さすがに食いすぎて動くのが辛い……」
中井出「お前がそんなんで、誰が明日の迷える幼児を救うんだ」
準 「今すぐ帰る。世話になったな《ニコリ》」
彼だけは元気だった。……あ、そうでもなかった。脇腹押さえながら歩いてる。
少し動いただけで脇腹痛めるなんて、どれだけ食ったんさ。
冬馬 「ふふふ、準は元気ですね……うぷっ。っと、失礼」
中井出「人間ですものゲップはするさ。気ぃつけて帰れよー」
準 「おー」
冬馬 「ええ。それでは失礼します」
中井出「おう」
準と冬馬が帰ってった。
さて、あとはいつものメンバーなわけだが。
まゆっちとクリスは部屋に送るとして、大和もキャップもだし、あとはモロとガクト……ガクトは家が隣だからほっといてもいいか。あとはこっちの……
百代 「はふぅう……腹の中と味覚が幸せだぞ〜、ヒロ〜……」
一子 「アタシの中で“美味しいもの”という言葉が一度死んで転生したわ……!
今まで食べてきたものは“いい味のもの”であって、
“美味しいもの”ではなかったのよ!」
百代 「お〜〜、いいこと言ったなワン子ぉ、10点をやろう」
一子 「えへへ〜……」
中井出「……まあ、こっちは平気か。余裕あったら風呂入っときんさいよ。
熱いモン食って汗いっぱい出たろ」
百代 「ここまで世話してくれたついでに、風呂も入れてくれるのか?」
中井出「やってもいいけど断る。お前はもっと女の子しろって言ってんだろーがたわけ」
百代 「《わしゃわしゃ》んむむ…………んー……なーヒロぉ?」
中井出「んん? どしたい」
軽く悪態をつくみたいに言って、頭を撫でる。
前までは嫌がっていた行為もいい加減諦めたのか、撫でられるままになっていた。
……つーか動くのが億劫なだけだなこりゃ。
百代 「最近思うんだ。
いや、気にし出してみればもっと前……子供の頃からかもしれない。
お前は私たちに飽きることなく笑いや騒ぎ。まあ、纏めると幸せみたいなもんか?
それを提供されているわけだが……」
中井出「そうなの? 俺、自分勝手に動いとるだけだけど」
百代 「そーなんだよ。実際笑えてる私が言うんだ、素直に受け取れ」
中井出「ぃやだぁ」
百代 「……口が減らない可愛げがないやつだな……」
中井出「口減らしたら笑ってくれないやつが居るんでね。
なんか気にしてるようだったらやめとけ。俺にとってはお前らの幸せが幸せだ。
……正直、ここまで笑って過ごせる日がまた来てくれるとは、思ってなかった」
ちらりと周りを見てみる。
死屍累々、腹と幸福度を満たしたみんなはすぅすぅと眠ってしまっていた。
それは、モモの隣に居るワン子も一緒だった。
中井出「俺はもうお前らから、呆れるくらいの幸せをもらってるんだ。
想像もつかないだろうけど、それは泣いて感謝したいくらいの喜びだ」
百代 「……でもな。私たち自身が何も返せていないんじゃないかって思うなら、
それはお前の意思とは関係なく不満に変わるんだよ。
とゆーわけでお前に何かをしてやりたいんだが…………明日デートでもするか。
結局ときめかせた賞品も渡してないし」
中井出「要らん」
キッパリです。今度はナックル飛ばなかったけど。
百代「……きっぱり言うなよぉ……お前が女の子してみろって言ったんだろ……?
いくらお姉さんでもさすがに傷つくぞ……?」
すると顔を赤くして涙を少しためたモモさんが、こちらを睨んで言いました。
あらやだ、かわゆいところもあるじゃない。
中井出「…………ずっとずっと楽しめるんなら、俺だって喜んでって返すんだろうな。
でもダーメ。女の子するなら別の誰かを対象になさい。
お前が認めたなら俺も祝福しますから」
百代 「お前みたいに強くて料理も出来て面白いやつが他に居るかよぅ……」
中井出「ホエ? そんなの、仕込んでいきゃあ大和かキャップあたりでいけるんでは?
お前、キャップならまだまんざらでもないだろ」
百代 「ノリは嫌いじゃないんだけどな。それでも足りないんだ。
全力でぶつかっても折れない相手がいい」
中井出「じゃあ僕違うね。背骨折られたし」
百代 「いや、そういう物理的な話じゃなくてな」
中井出「………」
百代 「………」
間を置いて、小さく吹き出した。
俺は変わらず、椅子に座るモモの頭を後ろから撫でて、モモはそんな俺を空を仰ぐようにして見上げていた。
百代「……頭を撫でられるだけでこんなに安心するなんて、私は知らなかったんだ」
目を細め、やがて閉じる。
深い息を吐いて力を抜いたモモは、そのまま寝る姿勢を整えやがったのだ。
中井出「風邪引くぞ、ばかもん」
百代 「……なぁ。なにを隠してる? お前にはどんな秘密がある?
それは私たちにも言えないことか?」
中井出「………」
額をピシャリと叩こうとした手が止まった。
モモは変わらず寝る姿勢だ。
対する俺は……
中井出「……話したらたまげるぞ」
百代 「お前の話でたまげなかったことのほうが少ない」
中井出「軽いノリで聞くには重過ぎるぞ」
百代 「重要なのはお前が軽いか重いかを認識してるかだろ。あとは私が決める」
中井出「グラットンすごいですね」
百代 「それほどでもない」
叩こうとした手で、さらさらと頭を撫でる。
話すか否か? そんなもん、今さらだ。
中井出「今さら話すにはウソを重ねすぎたよ。
なにもかも偽って生きてるようなもんだからな」
百代 「なんだ、ずっと騙してたのか?」
中井出「ああ、そうだぞー? 俺は世界一の大嘘吐きだからな。
年齢も身分も強さも、なんもかんも偽って生きている。
名前も顔も正解だけどね。こんなフツーな人間、どこを探してもこの博光のみぞ」
百代 「……それを私が聞いたら、私は怒りそうか?」
中井出「怒るっつーより驚くと思うけど。もしくはフーンで終わりかも。
全部知ったら殴るかもしれない。本気で怒るかもしれない。
逆に俺はそれを全て受け入れる覚悟が、お前らの仲間になった頃から出来てた」
百代 「つまりウソってのは最初からってことか」
中井出「そゆこと」
手を放す。
ゆっくりと開かれた目が俺を見たが、その表情は笑んですらいた。
百代 「そのくらいのほうがモノにし甲斐がある。話せ」
中井出「……あのね、モモちゃん? キミのその感情もウソだって言ったらどうする?」
百代 「私がお前を好きになる可能性にお前の意見なんてかんけーないね。
強くて面白くて時々イジメ甲斐がある。そーゆーお前だから気に入ったんだ」
中井出「……お前は絶対に大和かキャップだって思ってたのにね」
百代 「京と小雪をまずなんとかする必要があるな」
中井出「落とす気満々だよこのお子ってば」
百代 「正直、こんなふうになったのは初めてだ。
顎で男を使うことはあっても甘えたい、なんてな。
どうかしてる。負けた拍子に壊れたのかと思ったぞ」
中井出「家族でお願いします」
百代 「話の途中でフるなよぉ〜〜〜っ……!
お前、私からなんて普通は有り得ないんだぞ〜〜〜っ……?」
あら、また顔赤くして涙目に。
まあまあかわゆいことかわゆいこと。なでなでしちゃる。
百代 「うぅ……」
中井出「ん、女の子ですねぇ。キミのそんな顔初めて見たわ。
この顔見れば、キャップもコロリと目覚めそうではある」
百代 「………」
中井出「京とユキの場合、こういう時だと他の男とくっつけようとするなって言うけど」
百代 「よぅし歯ぁ食いしばれ。解ってて言ったなら死刑だ」
中井出「はっはっは、うむうむ、モモは可愛いなぁ」
百代 「《なでなで》うぁ……───ふぉお……」
再び撫でて、可愛いと告げると真っ赤になって大人しくなりもうした。
あらやだほんと可愛いわよこの生物ったら。なにこれ。
ふおおとか言って、可愛い言われたことを噛み締めているようです。
中井出「人生経験豊富なお兄さんから言わせてもらうなら、
間違っても俺みたいなヤツとは付き合っちゃあいかん。
いってもせいぜい仲間まで。そのほうが幸せを噛み締められる」
百代 「だからそれを決めるのは私だって言ってるんだ。
いーだろ別に、惚れ始めの女を蹴落とすようなことするなよぅ。
というか、やっぱり年上だったか。何歳だ? その外見で20以上とか言うなよ」
中井出「ヒ・ミ・ツ♪ 知りたければ毎日僕に会いに来てイベントをこなすがいい。
そしたらいつか僕の正体を知る時が来てフラグが立つかも……!?」
百代 「ねーちゃんしか落としたことないから面倒だ」
中井出「いきなりやる気ねーよこのお子! や、そのほうがいいけどね」
百代 「私を受け入れない理由は、京たちと同じものか?」
中井出「ああ。誰に告白されてもOKできない理由があるんだ」
百代 「お前を忘れた女ってやつか?」
中井出「いや、そっちは関係ない。ここまで来ると無関係って断言も出来る。
……まだ好きではあるけど、無理だって解ってるのが辛いね。
ただ、ほんと……久しぶりなんだ。
お前らと出会って馬鹿やるまで、こんな気持ちは忘れてた。
ここでならまた誰かを好きになれるかもって思えたくらいに楽しい」
百代 「だったらいいじゃないか。お姉さんが女の良さを思い出させてやろう」
中井出「……その女がさ。どうして俺のことを忘れちゃったか、想像つく?」
百代 「お前に意外な性癖でもあったから、忘れますって言われたか?」
中井出「………」
百代 「《わしゃわしゃ》わぷぷっ! ……こらー、やさしくなでろよー……」
即答でとんでもにゃーことを言いよるモモの頭を掻き回した。
ほんとね、嫌われるくらいだったらどれほどよかったか。
中井出「結果が出ました。10年早い。出直せい」
百代 「む……私をフるのか? ほんとにか? ほんとのほんとになのか?」
中井出「すぐに出る答えが性癖がどうとか言うお前だから、こっちには来ちゃだめ。
俺は自分のためにお前の告白を受け取れない。家族としてなら受け入れるけど」
百代 「……なるほど、それは私が嫌だから私は私のためにその受け取らないを却下する」
中井出「まあまあ長い目で見てみなさい? こんな平凡フェイスな博光よりも、
ステキで無敵で面白いヤツがきっと現れるよ? そっちのほうがいいじゃん」
百代 「いつかの話は嫌いだ。さっぱりしたのがいい。だから私のものに」
中井出「家族でお願いします」
百代 「なんでだよ〜、い〜じゃんかよ〜」
中井出「駄々をこねるんじゃあありません! 甘やかしたくなるでしょーが!」
百代 「そんな返答初めてだ」
中井出「かく言う俺も初めてよ」《バーーーン!》
というわけで軽く手を振り歩き出す。
えーとまずは大和とキャップとモロとガクトだな。はーいよっこいしょー。
百代 「四人同時に持ち上げるのか」
中井出「最大積載量がいくつなのか自分でも解らん」
まずは男衆を部屋や家まで送って、次にクリスをプリンセス抱っこ。
きっちり部屋に送ってから戻ってくると、京と小雪をよっこらしょ。
百代 「……ところでだ。話してよかったのか? 私が誰かに話したら───」
中井出「力隠し続けりゃキミがウソつきになるだけだよ? やめときなさい」
百代 「むう……」
中井出「それにね。……大切な奴らにウソついて生きるの、これでかなり辛いんだ。
嘘吐きは俺だけでいいよ。だから、キミはキミのままでいなさい」
百代 「他のやつらには───」
中井出「ここで話したので全部なら、余裕で話せるんだよ、俺は。
じゃなきゃ頼まれたって話すわけがない。そーゆーもん、背負ってるんだ」
百代 「……私じゃ力にはなれないのか。それはつまり……力じゃどうしようもないのか」
中井出「腕力でなんとかなるならとっくにやってるって。
ありがと、やっぱやさしいなぁお前」
百代 「う…………」
赤くなって俯くモモちゃんの図。
なんだか今日はいろんな表情のモモが見れて嬉しいわい。
中井出「じゃ、また明日な」
でも……返事はなかった。
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