才能というものがある。 一人一人には何か秀でたものがあり、それを見つけられたものが見つけられない者より上に立てるという素晴らしいもの。 しかし一人一人が見つけたソレが人の上に立てるほどのものかといえば、必ずしもそうではなかった。 一人の男性が居た。 彼は見てくれもよく、スポーツ勉強は当然のこと、人付き合いもよく面倒見もよいと、様々な面で人よりも優れ、それでいてなおかつ、誰からも好かれていた。 彼を羨まない人などいないが、そんな彼を嫌いきれる者が居なかったのも事実だ。 そんな彼には好きな人が居た。 一目惚れというものであり、幼い頃から幼馴染と呼べる相手に好意を抱いていた。 なんでも出来る彼は、出来うる限りのアピールをしたが、彼女の目は自分には向かない。何故なら、彼女には自分ではない好きな相手が居たからだ。 それはもう一人の幼馴染。 どこまでいっても平凡で、容姿も普通だし筋力も普通、才能と呼べるものは何一つなく、ほんの少しだけ機械に強いという、ただそれだけの男だ。 別に好きでも嫌いでもなく、周囲がつまらなそうにしているのが嫌だという理由でいつも馬鹿をやっては、幼馴染の彼女に笑われている馬鹿な男。 正直に、うっとうしいと思った。 彼女と出会う前は、彼女の気持ちを知る前は、むしろ一番の友達だったというのに。 自分の中にドス黒いなにかが蠢いていた。 通学途中の電車の前。 目の前に幼馴染の背中。 気づいていないそいつ。 周りにごっちゃり居る人、人、人。 そんな周囲に紛れるように、電車が来た瞬間、気づけばこの手が彼を押していた。 え 聞こえたのはそんな馬鹿みたいな声。 ざまあみろ! 心の中で盛大に笑ってやった。 そんな時、落ちる瞬間にそいつが俺へと自分の肩越しに振り返った。 突き落とした犯人を見てやろうという、せめてもの抵抗だったのだろう。 だから極上の笑みを見せてやった。 お前さえ居なければ。だから、ざまあみろ。 ─── 轟音を立てて、そいつは潰れた。 俺は、呆然。 人ってのは頭の中で会話出来るなら、きっとほんの数秒で文字にすれば呆れるくらいの情報量を受け渡し出来る。 押されて、落下する。そんな短すぎるってくらいの瞬間に、そいつは俺に向けて苦笑を浮かべた。浮かべて、目で謝った。「ごめん」って。 そいつは、周囲がつまらないことがたまらなく嫌なやつだった。 つまらなそうにしていれば無理矢理にでも笑わそうとするやつだった。 そんなやつが初めて、俺に向けてごめんと言った。 そんなつまらなそうな笑顔をさせてしまって、ごめんと。 周囲が騒ぐ。 悲鳴を聞くと体がビクリと震え、心臓が気持ちが悪くなるくらい鼓動を早める。 騒ぎの中で、嫌に残酷な言葉だけが、そこに居た全員の耳に届いた。 頭がつぶれてる 即死だ この時俺は、初めて自分の頭や視界が真っ白になるって現象を知った。 小説とか漫画やアニメだけの表現だと思っていたのに。 しばらくあと、そいつの葬式は静かに行われた。 自分で殺しておいて参列するなんて、と笑いそうになるが、そこで幼馴染の姿を見る。 声をかけようと近づくと、彼女は俺をゴミを見るような目で睨みつけて言った。 殺人鬼。見てたんだから。よく来れたものね。正気なの? 一番に聞いた言葉がそれ。 殺人鬼。 言われて初めて自覚して、その場で吐いた。 なにも知らないあいつの親戚連中が走ってきて心配してくれる。 みんなが俺を心配そうに見る中で、彼女だけが俺を見なかった。 途端、頭の中にあいつとの思い出がよぎる。 いつもいつも俺に敵わないあいつ。 なんでもかんでも俺のほうが上で、あいつはいつも一歩も二歩も後ろを歩いていた。 でも、絶対に俺を羨んだりも嫉妬したりもしなかった。 “出来るやつである俺”も、“才能の塊の俺”も見ず、ただの俺だけを見てくれた滑稽なほどの馬鹿。 気づいたら泣き叫んでいた。 才能ってものがある。 あいつには才能なんてものはなかったかもしれないが、それでも俺が持っていないものを持っていたことは確かで。 俺が笑わせられない誰かでもあいつなら笑わせられた事実が悔しくて。 同時に、もうあいつは俺を笑わせてくれないんだって思ったら、苦しくて。 どれだけ謝っても取り返しがつかないことに嘆いて、せめて罪だけでもと全てを吐き出し、俺は至るべき場所にぶちこまれた。 のちに、好きだった彼女があいつと同じ場所で自殺したと聞いた。 ……もう、世界の誰もが許してくれない世界で、俺は謝り続けた。 S.A.O───ソードアートオンライン 神様転生というものを体験した彼が、電脳世界で生きるお話 一言で言うとナナシな人のお話 ふと目を開ける。 真っ白な世界。 白で埋め尽くされた視界。 そんな場所に、ぽつんと立つ爺さんが居た。 『おはよう、中井出博光くん』 「ヘロウ」 第一声はベンジャミンだった。 「ねーねーキミゴッドでしょ!? なになになになになにくれんの!? 黄金の仏像!? 黄金のベンツ!? それとも庭付き一戸建て住宅!?」 『いきなりなにを言い出しとるんじゃお主は』 「だってこれアレでしょ!? 噂の神様転生ってやつ!」 『そのつもりだったんじゃが、なんかお主生きとるし……確かに死んだのにどうなっとるんじゃ。頭潰れたんじゃぞ?』 「や、だって僕不老不死ですし。体が死んでも少しすると復活するのですよ」 『なにそのずるいしぶとさ! そういうの儂困るんじゃけど!?』 そうは言われても、と返す。 そんなわけでどうやら死んだと勘違いされたらしく、神に攫われたのだそうだ。 「で、なに? なんか妙にへりくだってなんでもお願い聞いてくれるんでしょ?」 『容赦ないことズバズバ言うのぅお主! だが、まあ、その通りじゃの。娯楽に乏しいのでの、適当に能力を与えて転生させた者の生活を見て楽しんでおる』 「で、なにくれるの?」 『死んでおらんのに図々しいの!! ……まあよいわ、娯楽になってくれるのじゃったら都合をつけんでもないがの』 そら、と神様は彼の目の前に様々な項目を出す。 才能から始まって、様々なゲームで見る能力など。 彼はホホーと頷きながらそれらを見ていった。 『もっとも多いのはこの無限の剣製とかいうものかのう。こんな世界を作って何が楽しいのか、儂には解らん。別に世界を作らんでも、トレースオンで武器の雨を降らせるというのにの。世界を作る意味がないわい』 「浪漫があるんじゃない? 固有結界! とかいうの」 『結界作って消耗するよりは、一本一本出現させて振るったほうがよいじゃろ』 「だからロマンだってば。平和な生き様だった人の心象世界展開してなにがあるっての。楽しかった青春で敵に立ち向かう人って、それはそれで面白いけど強そうではないよ?」 『むう。大体あれは自分の中の人生を相手に見せるようなもんじゃろ。じゃのに己の心象風景ではなく、他人の辛い過去の風景を公開してドヤ顔で武器を振るう存在を思い浮かべてみい』 「格好いいね! 俺の数倍は!」 『おぬしはどこまで自分を低く見とるんじゃ……』 他人の数倍はと応える彼に、神は目頭を熱くした。 そんな神をよそに彼は項目を眺めて…… 「ねぇGOD」 『神様と呼ばんかい。で、なんじゃな?』 「僕の関連項目の中に幼馴染が自主したのと幼馴染が自殺したのがあるんだけど。なに? ミカちゃん自殺しちゃったの?」 『うむ。おぬしのことを本気で好いておったようじゃの。だというのにそれを殺したのがおぬしの幼馴染とくる。そんな世界に嫌気が差したのじゃろうよ』 「うーわー……ミカちゃんアホだー……。自ら、まだ楽しめたかもしれない人生を放棄するとは……。俺の分までとは言わんが、もっと楽しんでくれりゃあよかったのに」 『ああちなみに。自分以外のことに願いを使うのはルール違反じゃぞ?』 「解ってるよ。なにせ、きみらが楽しむためのボーナスだ。転生させて楽しむと言ったからには、そっちの話には関係ないんでしょーし」 『その通りじゃ《どーーーん!》』 「うーーーっひゃーーーっ! 隠しもしねぇ!」 不老不死の彼が世界を巡り、とある世界でとある二人と幼馴染になったあの世界。 能力の一切を隠して生きた彼は、人を楽しませることに最上の喜びを相変わらず感じていて、それを実行しまくった。 愛犬が死んだことで落ち込んでいたミカはそんな彼の笑顔に救われ、幼い頃から彼の姿を目で追うようになり、もう一人の幼馴染はそんな恋する少女に目を奪われた。いやなスパイラル理論だ。 彼はもう一人の幼馴染とミカがくっついてくれればなーと思っていたが、それもどうやら叶わなかったらしい。 「でもなぁ、才能に恵まれたやつが牢獄で一人ってのもなぁ。なんとかしてそんなつまらん状況から出してやれない?」 『突き落とした相手に、随分とやさしいことじゃのう』 「俺の付き合い方が悪かったのかなって。いやー、こう見えて人に刺されるとかビルから落とされるなんて一度や二度ではないのです。だから幼馴染とかは大事にしてるし、友人関係は波風立たないくらいに爆笑の渦に巻き込んでいたはずなんだが……何故」 『嫉妬じゃよ。おぬしの幼馴染は、好いたおなごがお主に惚れていることを妬んだ』 「えぇ!? な、なんだと!? 俺にしてみりゃあいつの方が羨望の塊だよ!? 才能の悉くを詰めて産まれたような、それこそ神様転生かって思うくらいの! ……い、いやぁあ〜〜〜……世の中って解らんわぁああ……!」 彼の幼馴染、優斗はなんでも出来る男だった。 なんでも出来て、教師からも級友の親からも級友からもすごいすごいと言われる男。 人付き合いも非常に上手く、大抵の場合は嫉妬にかられる者たちも、こいつなら仕方ないと苦笑させて諦めさせるくらいに上手い付き合い方をしていた。 彼にしてみれば、そんな優斗が自分に嫉妬する意味が解らない。 「うはははは! 俺への嫉妬に駆られたためにィ!? スパーーーーッ! そりゃ根性あるっつーかアホだぜ! そィで逆にブタ箱行きかよスッパァーーーーッ!!」 『マルボロの真似はよいわい。で、どうするんじゃ』 「まあ、きっと僕に笑われりゃ彼も満足でしょう。完璧超人にはそいつ自身と向き合う誰かが必要なのさって思って接してきたのにこれだもの、きっと俺の選択が間違ってたのよ。ただミカちゃんがねぇ……彼女どうなるの?」 『とっくに転生しとるよ。儂の担当でもなければ自殺じゃから、能力を渡すなんてこともないがのぅ。まあ、どこへ転生したかは知らん。知ってても教えん』 「おお、秘匿というものを知っているGODに感謝を。全部話してたらセイントマッスルパンチがキミの鼻っ柱を砕いていた」 『怖いことを後になって言わんでくれる!? オチャメ心を出してなかったら鼻っ柱砕かれとったんじゃけど!?』 わざわざウィンクまでして口に人差し指を構えた神様の、まさかの絶叫。 しかし彼は「そんな人間っぽさに感謝を」といって、項目を読み終えた。 『で、決まったかの』 「能力封印って出来る? あと、下りる場所はファンタジーチックな世界がいい」 『能力封印? 不老不死を一時的に封印しろというのか? 正気の沙汰ではないのぅ』 「いいじゃん、その方が生きてるって感じがして。そこの世界で次の世界に辿り着けたら解除してくれたらそれでいいや」 『死ねば死ぬことになるぞい?』 「長い間生きてるとねー……時々自分の人間性が薄れることがあって。死なないからって理由で無茶する自分をたまに殺してやらないと、本気で自分が怖くなるのです」 『……そうか。解らんでもないわい。ふむ……能力封印はちと手間じゃのう。全部を封印するとなると、いくら儂が神でも苦労が……。なにかひとつの能力に凝縮させるということでどうじゃ? それならばすぐに出来るのじゃが』 「ぬ、それはいかん。GODまで退屈させるとあっちゃあ笑人の名折れだ」 『なんじゃい、そのしょうにん、というのは。なにかを売るのかの』 「笑いを提供する人と書いて笑人さ。というわけで……器詠の理力と順応の回路ってのに全部詰め込んでおくれ。創造とか黒は使えなくていいから、あくまで剣のスキルとか使える程度で」 『うむ、よいじゃろ。では、せいぜい儂らを楽しませてくれ、人の子よ』 「フン断る」 『断るでないわ!』 ケラケラ笑う彼を前に、神様は実に調子の狂う顔をしていた。 こんな馬鹿は初めてだとばかりに。 「ところでさ、なんでそんなへりくだった態度で転生をほのめかすの?」 『神より優位に立っていると相手に思わせる作戦じゃよ。これが思いの他上手くいってのぉ。自分の力で得たわけでもない力を自分の力だと思って振るい、英雄気取りになる存在……実に愉快じゃろう?』 「趣味悪いね。まあ僕も借り物の力で存分に楽しんでるからどうでもいいけど」 『借り物の力? ……おお、これらか。しかしそれはお主が生きて、それまでに得た能力を使って回収したものじゃろ』 「借り物は借り物でっせ? ようはこういうものをきっちりと自分の能力ではないと認識して、力を借りて人々を笑かすというのが重要なのです。それは、これは俺の力だー! って自慢しながら生きるよりもよっぽど楽しいものですよ?」 『ほっ! ほっほっほ! おぬし、相当歪んでおるのう! 人じゃと言ったが、ありゃあ訂正したほうがいいかもしれん! おぬしはあれじゃ! 家族のために無茶をするコヨーテじゃ!』 「コヨーテ? あー……そういえば昔、自分をそんな風に喩えたことがあったっけ。ところでさ、コヨーテって名前がついたアニメ、なかったっけ」 『シゲーミコワイデショウ?』 「コヨーテラグタイムショウだよ! なんで“茂美怖いでしょう”になんの! ショウしか合ってないよ!」 『ほっほ、まあほんの冗談じゃ。では、飛ばすぞい』 「いつでもこい!」 『……ところで、身体能力強化とかはええのかの? あっさり死んでしまったら儂、とてもつまらんのじゃが』 「凡人である自分が大好きだから結構! ファンタジーチックな世界で武具とともに生きるのだ! あ、でもこの筋肉も超筋肉痛によって苦労して発達したものだから、鍛えればちゃんと届くようにしておいて。おいら、珍しく努力してみようと思うんだ」 『まあ、よいがのぅ。ではいってこい』 神がそう言うと、彼の体が足からスゥウと消えてゆく。 その時彼が自然ととった行動は敬礼だった。 誰に向けたものでもない、しかし確かな敬礼。 誰ともとれぬ相手に向けたはずのそれには意思があり、奇妙な友情があった。 『いや、儂が目の前におるんじゃからせめて儂にやらない!?』 彼は返事もしないままに薄く笑うと、そのまま消えた。 01 目が覚めたら孤独だった。 知らない場所に独りで。 どうやら捨てられたらしい。 彼がそれを意識した時、救いの手は差し伸べられた。 人の良さそうな男性がそこには居て、手を伸ばしてみれば包んでくれた。 自分が誰かもわからない、気づいたらここに居たと言うと、男性はにっこりと笑って頭を撫でてくれた。 少年の頃。 彼はそうして人に拾われ、とある家の養子となった。 「どうしてこんな小汚いのを拾ってくるの!」 しかし、彼の妻である女性は、少年を毛嫌いした。当然だろう。 何処の誰かも解らない子を夫が拾ってきて、いい顔をする者など居るはずもない。 「しかしな、雨に打たれて倒れていたんだ。ほうっておくことなど出来ないだろう」 「病院にでも突き出せばいいでしょう!?」 女性には散々と罵声を浴びせられた。 それでも拾ってもらったお礼があるからと、彼は男性が望むよりもよっぽど努力をし、周囲に認められるほどの力をつけていった。 その家には既に長男と長女がおり、長男は浩一郎、長女は明日奈というそうだ。 彼は名前もないと嘘をつくと、男性に名前をつけてもらえることになり……しかし、女性に大反対され、「小汚い子供なんて名無しで十分よ!」と叫ばれる。 どれだけ言っても聞かないので、少年は「じゃあ、名無子でお願いします」と言った。 女性は見下した顔で声を出して笑い、少年は女性が笑ってくれたことに笑った。 「しかし、ななし、などという名前は」 「構いません。置いてくれるのなら、死ぬ以外のどんなことでもします」 「……。すまない。妻は……施設の子だのなんだのという、世間体というものを気にするのだ。私もそうではあったが、誰かのそれを見るのとでは……随分と思うところがあるものだな」 「構いません」 名前をもらった。名無子───名前が無い子供、と書いて名無子。ななこではない。 そんな日から、彼の日々は始まる。 急に出来た年上の義兄におそるおそる話しかけてきた明日奈に、彼はそれはもう“楽しい”を教えた。明日奈はあっさりと彼に心を許し、しかし母親はそれをよく思わない。 ある日、遊んでいる最中に明日奈が転んでしまい、怪我をした。 母親である女性はそれはもう激怒。「あんたが怪我をすればよかったんだ、この疫病神!」と叫び出すほどに彼を嫌い、ならばと彼は明日奈を守ることに徹した。 普段の彼を思えば信じられないほどの努力をして体を作り、明日奈がイジメに遭えば庇い、明日奈が転びそうになればスライディングで救い、明日奈が車に轢かれそうになれば突き飛ばして、代わりにキリモミ。 病院で目を覚ました彼は明日奈には泣かれたものの、母親にはざまぁみろみたいな顔で見られていた。世間体を気にして見舞いにきただけだったようだ。 「ごめんね、ごめんねお兄ちゃん」 「はっはっは、こらこらいけませんぞ明日奈くん。今のお兄ちゃんには“義理”の文字が感じられなかった。俺は本当の兄じゃないんだから、それはいかん」 「母さんが何を言ってもお兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」 「それでもダメです。俺は……どの道ボディーガードくらいにしかなれそうにないから。今日まで根気良く笑わせようって頑張ってきたけど、あのオカーサマ、てんで笑わないんだもの。こっちもいい加減疲れたよ」 「……お兄ちゃん、母さんに好きになってもらいたいの?」 「まがりなりにも家族として迎えてくれた旦那様に申し訳ないのです。でも、もういいや。やっぱり赤の他人は赤の他人だって良くわかった。だからね、あのオカーサマが欲する世間体ってものを完璧に手にしてみるよ。で、邪魔にならない程度に生きる」 「………」 「なに、人に嫌われるのは慣れてるから大丈夫だよ」 病院を退院してから、彼の努力は一層高まった。 学校で出来ることの全てをやり、成績優秀でスポーツ万能、人脈も凄まじく、テストで満点運動満点、人当たりもいいと評判で、拾った旦那様も鼻が高かった。 母親は……ふんと言うだけ。 彼はもうその女性を見ることはせず、ただただ努力を続けた。 いつしか義理の妹である明日奈からは自慢のお兄ちゃんと呼ばれる存在に。 それでも、結局は他の家族には心から認めてもらえず、彼は溜め息を吐いてから「まあいろいろありますよね」と呟いた。 それから数年後。 世界ではとあるゲームが話題になっていた。 仮想であるが現実とそう変わりない世界にダイヴできる機械、“ナーヴギア”を使ってプレイするロールプレイングゲーム、VRMMORPGと呼ばれる種類のゲームで名前は“ソードアートオンライン”。S.A.Oと略されるものだ。 ナーヴギアを被り、リンクスタートの言葉で入り込めるそこは、自分で動いて敵と戦えるというゲームの世界の夢を叶えたものといってもいい。 そんな素晴らしいゲームが茅場という存在の手で開発され、その美しさに世界は揺れた。 限定千人のベータテスターを抽選で決めた日もいつになるのか、正式に発売されたそれらを手に入れられたのも僅かに一万人。 そんな希少であるゲームを入手した人々は、自分達はツイているとばかりに起動。 仮想世界に入って好きな姿の仮想人物……アバターを作り、その容姿で冒険してゆく。好き好んで自分の姿で冒険する者などおらず、それどころか性別まで変えて遊ぶ人も大勢居た。 「……あーあ、やっぱり消されてら」 希少購入者の中には、肩身の狭い思いをしていた名無子も居た。 溜めた金で購入したヘルメット型の機械……ナーヴギアを装着。ベッドに寝転がってリンクスタートを告げた彼は、仮想空間へ完全ダイヴ。 ナーヴギアの特徴として、仮想空間で“走ろう”と思うと、体に信号が走る前にナーヴギアが受け取り、仮想空間のキャラを動かす、という仕組みになっている。 だからどれほど走る意識を飛ばそうが体が動くことはないし、部屋の壁に激突することもない。そういうものを被ってダイヴした彼は、キャラメイク前にβ版のキャラのコンバートを試みたが……どうやら消されてしまったらしい。それも仕方ないだろう。 さて、SAOのβ版にはとある馬鹿な伝説がある。 話があるだけで、それが真実なのかは謎ではあるが、SAOとは世界の一つ一つが層になっており、それが全100層にもなっている。冒険の目的は100層に到着すること。しかしその難しさは尋常ではなく、生半可なレベルでは1層のボスにさえ負ける始末。 そう、層ごとにボスが居るのだ。 なので二ヶ月あったβテストでなんとか上がれた階層などは8〜10程度。 しかし。 しかしだ。 そんなβテストで75層まで行った伝説の阿呆が居る。 それが消された彼のアバター……伝説と呼ばれるジークフリードというキャラだった。 当然βで手に入れたアイテムなどはパア……な筈なのだが、彼は手に入れたアイテムは癖でアイテム欄ではなくヒロラインのバックパックに入れていた。なので無事である。 せっかく上がっていたレベルも消されてしまったために戻ることはないが、仕方なく彼はキャラを作り直した。そもそも武具能力が封印されても武具自体が取り出せたことに問題があった。 「同じジークフリードじゃ芸がないな。名無子呼ばわりだからナナシでいいか」 決定。 アバターの姿も適当に設定して、出来た姿で歩き出した。 さあ、再び仮想空間を旅しよう。 前はヒロライン武具を使えるからって無茶をしすぎた。今度はのんびりやろう。そう決めて。 02 画面が切り替わると、β時代の懐かしき場所、はじまりの街に立っていた。 彼……ナナシはそこでコリコリと頭を掻きつつ、やっぱり存在するバックパックの存在に溜め息を吐いた。 ナナシ「GODの馬鹿……能力は封印って言ったのに」 いや、これは能力とは違うのか? 疑問は残ったが、とりあえず始めることにする。 移動を開始して僅か二秒、人にぶつかった。女性アバターだ。もっとも、中身が男である可能性は高いのだが。 こういったVRMMORPGプレイヤーには女性よりも男性が多く、逆に女性であるのは珍しいとされている。他の世界はどうだかは謎だが、少なくともこの世界では。 そして彼が積極的にこのナーヴギアを使ったゲームをプレイしたがった理由は、“これ”で出会うプレイヤーはたとえ現実で自分を忘れていても、この世界でならば思い出すからだ。なぜならここが“機械で作られた世界”だから。人々に忘れられ続けて生きてきた彼にとって、ここは楽園のような場所だったのだ。 おなご「いったた……あ、ご、ごめんなさい、初めてだったから周りばっかり見てて」 ナナシ「いやいや、こちらもすまんさ。もしかして初心者の方?」 おろおろした雰囲気が気になり訊ねてみると、やはりおろおろした状態のままに頷く。 おなご「あ、は、はい。ゲーム自体あんまりやらなくて……。 携帯電話の無料ゲームをたまにだけやるくらいで」 ナナシ「なるほど。ではどうでしょう。 あっしはこれでもβテスト版をやった者でゴンス。 戦い方だの動き方だのを説明しやすよ?」 おなご「べーたっていうのがなんなのか解らないけど……いいんですか?」 ナナシ「構いませんさ。β版ではちょっと頑張りすぎたから、 少しのんびり行こうかなって思ってたところだし」 おなご「そうなんですか。あ、じゃあよろしくお願いします」 ナナシ「はいな。あ、言っておくけど当然、自己紹介で本名は危険だよ?」 おなご「それくらいは知ってますー……」 ぷくーと頬を膨らませて怒っていた。 その姿がかつての義理の妹とダブリ、彼は笑った。 ナナシ「俺はナナシ。よろしく」 おなご「あ、わたしはアスナって……え?」 ナナシ「アスナ。へえ、いい名前ですな。じゃあ行きましょうか」 アスナ「え、あ、ちょっと待って! ナナシって───」 ナナシ「? べつによくある名前でしょ? こんなの某掲示板に行けば腐るほど見るよ」 アスナ「……そういうものなの?」 ナナシ「そりゃそうでしょ」 常識だとばかりに言った。あと口調はそれでいい、とも。 ともあれこれより準備と歩き方との説明だ。 彼はにっこり笑いながら、これからのことを話し始めた。 ……。 アスナはナナシに戦闘の方法やコツを教わっていた。 コツ、というのはソードスキルという、SAO世界における重要な能力についてだ。 このSAOには魔法というものはなく、武器以外のスキルのほぼはアイテム使用でするものとなっている。たとえば回復魔法で一般的に聞くヒールなども回復薬や回復結晶のようなものが主流であり、魔法はやはり存在しない。 ステータスもSTR、AGIとスキルスロットがあるのみで、レベルアップしても筋力と敏捷度とスキルスロットが上がるだけ。もちろんHPも上がるわけだが。それらの他に熟練度というものがあるが、これが最高値が1000というものであり、片手剣の熟練度を上げるなら、気が遠くなるほど散々っぱら片手剣を振るうしかない。 熟練度はレベルアップに左右されないので経験を積むのは悪いことではないが、熟練度の上がり方はとても遅い。1000までいって完全習得の称号を得るのは相当後だろう。 アスナ「敵目掛けてただ振るうだけじゃダメなの?」 ナナシ「敵の動きに合わせて、スキルのタイミングで動かす。 発動さえすれば、あとはシステムが当ててくれるよ。注意するのは射程距離。 だから、猪みたいに突っ込んでくるばっかのやつはやりやすい。ほら、構えて」 遠くで同じように練習をしているらしい黒髪と赤髪のアバターを眺めつつ、説明を続ける。アスナが武器……刺突剣を構えると、ソードスキルの体勢を取ることでレイピアが赤く輝く。 ナナシ「大事なのは動作。発動させる意識。 で、あとは敵が勝手に射程に入ってくるから、そこを狙ってはい発動!」 アスナ「!」 シュピィンッ!と鋭い突きが放たれる。 威力よりも速度を重視した刺突のソードスキルが、猪モンスターであるフレンジーボアに突き刺さる。はじまりの街周辺のスライム担当モンスターであるソレは、突かれると同時にポリゴンが散らばるように砕け、死亡した。 アスナの目の前にExp、Col、Itemsの文字が浮かび、それぞれ経験値を24、コル……お金を30、ドロップアイテムを2つ手に入れていた。 アスナ「ふ……わ……! 出来た……できたぁっ!!」 ナナシ「おうおめでとうっ」 アスナ「あははっ、うんっ!」 すっと上げられた手に、アスナがぱんっと手を叩き合わせる。 顔は嬉しくてたまらないといったものであり、「ハマるだろ?」と訊いてみれば何度も頷いた。魔法に憧れないわけでもないが、自分の身で敵を倒すということに快感を覚えれば、魔法なんて二の次だ。 アスナは目を輝かせて、離れた位置に出現したフレンジーボア目掛けて駆け出していった。 そして今度はソードスキルなしで倒すつもりなのか、突進を避けつつ連突と繰り返している。それがまた結構速い。 ナナシ「マタドールみたいで面白そうだなぁ」 ナナシもそう呟くと、近くに現れたフレンジーボアと戦い始めた。 武器は大剣。 重く、要求筋力が大きいために、必然的に使用者に高レベルを要求する分類のものだ。 武器を使うにも必要なステータスがあり、大剣や大斧、鈍器といったものは筋力重視でなければ振るうことも難しい。 そしてこのゲームには双剣という武器の種類はなく、やろうとしても出来ない。 出来ないこともないのだが、二刀流なんて熟練度はないし、双剣という熟練度もない。 だったら片手剣スキル上げていけばそれが熟練度扱いになるんじゃね? と思うだろうが、どういうわけか上手くいかないのだ。 ナナシ「チャァアアジッ……クラァーーーッシュ!!」 ボア 『《ゾボシャア!》グヒーーーーッ!!』 大剣の重みを利用したソードスキルで、突進してきた猪を斬るのではなく叩き潰した。ちなみに言うとチャージクラッシュという名前ではない。 そして、切れ味がよろしくないために、斬れなかったと言ったほうがいい。 そういったことをアスナとともに話しながら続け、巨大浮遊城であるアインクラッド───その見晴らしのいい景色が夕暮れの陽に包まれる頃、それは起こった。 離れた位置で一緒に居た黒髪と赤髪が、ログアウトがどうとかと話し合っているのだ。 おかしく思い、指を翳すと出現する空中に浮かぶ画面をいじくってみると、確かにあったはずの“ログアウト”の文字がないのだ。 その上体が急に光に包まれ───氣付けばはじまりの街の広場に立っていた。 周囲には同じく転移させられたのか、ぶつぶつ言っている人々が。アスナの姿も隣に見られ、ナナシは心なし安心した。その隣には先ほどの赤髪と黒髪も居た。 アスナ「え、え? どうなってるの?」 ナナシ「嫌な予感しかしない……」 今日までの日々がいちいち思い返される。 これはよくないことが……恐らく命にさえ係わることが起こる前兆だ。 そもそも自分が不老不死から外れた時点で、絶対にこういう危険なことに巻き込まれる予感はしていた。明日奈を車から守った程度では、神様の退屈凌ぎにはならないらしい。 そうこう思っているうちに景色が一気に赤く染まり、広場上空に巨大な人影が現れる。大きなフードを被った、巨人とも思える姿……おそらく映像であるだろうソレは、自らを“茅場晶彦”と名乗った。 それから、ログアウト出来ない事実。 今この時から、死ねば現実世界でも死ぬこと、外で誰かがナーヴギアを無理矢理外すとマイクロウェーブが発射され、脳を焼かれて死ぬこと、電源が切れれば10分後には同じくマイクロウェーブが発生、死ぬこと。……いろいろだ。 心ばかりの贈り物がアイテム欄に入っているといわれて覗いてみれば、アバターの姿が現実世界の自分……つまり名無子になり、他の連中も同じく元の顔に戻っているようだった。 アスナ「えっ!? なにこれ! わたし!?」 ナナシ「……へ? アスナ?」 アスナ「……? あ、あーーーーっ!? やっぱりお兄ちゃん!?」 元の姿に戻ったことでお互いがお互いだと気づいた……これだったらただの笑い話だっただろう。しかし今はデスゲームが始まった世界。 当然、急にデスゲームに参加させられたプレイヤーたちは恐怖に抱かれ、罵倒を続けるばかり。現実味がないことへの罵倒がほとんどだ。しかし今現在、既に何人かの死亡が確認されているらしく、それらのテレビ中継画面がそれの真実味を語っていた。 告げるだけ告げて巨大な幻影……茅場晶彦は消え、残されたのは恐怖に抱かれて叫び出すプレイヤーばかりだ。 そんな中、黒髪だった中学生あたりの男ともう一人の大学生か、それより上そうな男は広場を出ていった。行動が早い。 アスナ「あ……え、あ……ね、ねぇお兄ちゃん? うそ、だよね? これ……外に出られないなんて、死んだら死んじゃうなんて」 アスナが明日奈の姿で言う。言った途端、誰かの悲鳴がしんと静まった広場に響き、それを合図に全員が騒ぎ出す。 しかし今すべきことはそんなことじゃない。いち早く状況整理を終えた、今は努力家なナナシは息を吸い、まずは震えるアスナを胸に抱き締めてから叫んだ。 ナナシ「静粛に!!」 耳を劈く声……もはや轟音は全員を黙らせ、その隙に彼は自分のバックパックからメモを取り出す。β版で記録していたものだ。このゲームにはマッピングという機能があり、歩いた分だけ地図が自動で保管される。 それらとその他の情報を配ろうとしているのだ。 ナナシ「俺ゃβ版をやったモンでおせっかい焼きのナナシってもんだ! 今から危険を少なくするためにβ版の情報を教えるから、 すぐに並んで受け取るように!」 近くの男がハッとして、すぐに飛びついた。 男 「! く、くれ! 早く!」 男 「なに言ってんだ俺が先だよ! おい、さっさとよこせ!」 ナナシ「それから! 静かに受け取らないやつと自分を優先させるヤツと、 もらうくせにさっさとよこせとかぬかすやつにはやらないから! いいか! 黙って! 黙って受け取れ! 静かにだ! 解らないなら失せろ!」 全員がシンと静まった。 それに頷いた彼は情報を教えてゆき、マップもβ版の常識的な量……1〜10層までのマップを提供した。 ナナシ「それから、あくまでテスト版の情報だから過信は禁物だ。 特に地図の中にない場所を発見したら迂闊に入らないこと! トラップである可能性は高いし、転移結晶で逃げればいいなんて思ってたら、 そこが転移禁止区域ってオチも有り得る! まずはとにかく、地盤を固めるつもりでいってくれ! 時間的に長く感じようがこの一層目で20レベルは上げること! 見ての通りβ版でも普通にやってたら8層〜10層あたりまでがいいところだ! クリアするのに必要な時間も一年以上って考えていい!」 ざわりと全員が騒ぎ出す。 しかしもう一度絶叫、黙らせると、死への疑問もきっちり教え込む。 ナナシ「自殺は絶対にしないこと! あの茅場が言ってた“目的”がこの世界を作ることなら、 あいつがこの世界での死を現実世界での死って言ったなら、絶対に死ぬ! 完成ってのはつまりそういうことだ! 時間がかかってもいい、とにかくじわじわでも一歩ずつ進むこと! 装備も攻撃力よりも防御力重視でね! 回復アイテムは常に持つこと!」 男 「お、おお……そりゃ……死にたく……ねぇもんな」 ナナシ「いいかー!? 考えてもみなさい! 相手がどれだけ準備万端で俺達を招こうとも、 ボスである茅場は一人で、俺達は一万人だ! 相手がどれだけレベルを高くしても、 俺達がカンストしちまえば相手が100レベルでも1000レベルでも、 俺達は100レベルや1000レベルが一万人だ! そういう気分で一歩ずつだ! んじゃあ───全員で現実に帰るために! 頑張ろう仮想戦! エイッ! エイッ!」 総員 『オォオオーーーーーーッ!!!』 それもそうだと思える言葉を並べて、巧みに乗せる。 全員はもうやる気十分であり、怖がる者も当然居るが、そんな子には─── ナナシ「それから戦うのが嫌とか怖い人は、無理にこの街を出る必要は無い! ただこれだけは知っておきなさい! 出ないのであれば生産系スキルを上昇させておくこと! 素材とかは前に出る者が持ってくるから、 それで料理を作ってくれるなりしてくれれば良し! 武具を作ってくれるならなおよし! そんな感じで助け合っていこう!」 総員 『オォオオオーーーーッ!!』 ナナシ「それじゃあまずは、なにをするべきかも解らない初心者は僕のところへ! このナナシが一から教えて差し上げよう!《くいっ》オウ?」 早速服を引かれた。 見てみればアスナさん。 なるほど初心者だ……とか思っていたら、出てくる出てくる、12〜14あたりの歳の少年少女。 彼はこくりと頷いて、子供たちを引き連れて移動を開始した。 ……。 死なないためのレベル上げは、その日から地道に開始された。 幾人かのプレイヤーがはじまりの街からさっさと出て行ったらしいが、「βテスト中に、クエストをこなすと数量限定で貰える武器があった」と教えると、それを知った初心者らはそれらのβテスター……ベーターに舌打ちをした。他人より自分の心配かよ、と。 ナナシ「パーティーバトルの場合、ラストアタックボーナスってのが入るんだ。 ボス戦なんかでももちろん。 多くの場合はボスにトドメを刺したがって焦るヤツも居るけど、 そうして死んだ場合はそいつの責任だ。自業自得だね。……よしっ、その調子」 シリカ「やぁーーーっ!!」 肩まである茶色の髪を両脇で結わうショートツインテールの少女……シリカがダガーでフレンジーボアを斬り裂く。12歳あたりの子供組にしては珍しく、中々に積極的に飛び込んでゆく。 短剣が光るさまは、ソードスキル発動の証。 すれ違い様に斬ったボアはポリゴンが散るように霧散し、経験値とコルとアイテムに変化した。 シリカ「やりました!」 ナナシ「ん、その調子。あとは避け方とかだな。見ててちょっと危なっかしい」 シリカ「が、がんばりますっ! あの人みたいにっ!」 シリカがちらりと見た先。 そこではアスナがレイピアを連突で繰り出しており、ボアがズガガガガガと刺されまくっている。 レベルアップもそこそこ。 そこそこ……なのだが、AGIの上昇率が異常なのだ。なにあれ、主人公補正でも入ってるんですかってくらい。お陰で刺突の速さまで異常だ。 しかしやはり筋力はないため、ダメージはあまりノっていかない。ノっていないが……連続攻撃の恩恵か、敵が反撃する間もなくダメージの蓄積で死亡。ポリゴンが砕け散り、消滅した。 ……レベルアップ。AGIばかりの上昇に、アスナ自身も困っているようだ。経験を積むみんなで、暗い気持ちを無理矢理払うように笑いながら、そんな日々は続いた。 Next Top