───Future-if『絶望の未来』─── 友人のために明日を捨てた男と、 過去からの想い人の未来を願いながらも未来を掴めぬ男が居た。 ふたりは周りから馬鹿と罵られようが笑われようが、ただ他人のために生きてきた。 自分の幸せを考えず、ただ相手の幸せを願って。 ……ふたりは似ていた。 誰かのために自分を犠牲にするところも、 自らの幸せを後回しにしてしまうところも。 そして……なにより、友達を大事にするところも。 だからずっと、自分のことには気づけなかった。 自分よりも他人を思い、身を削るような生き方をして、 やがて───誰に何を言われるでもなく消えてゆく。 心はとっくの昔に壊れていて。 だからこそ、自分のことなんて後回しのままに、誰かのために頑張れた。 その人を守るっていうことは、日常を守ることだったから。 欲しかったのはきっと、自分がそこに居るっていう事実。 だから日常を守りたかった。 その日常である友達や恋人を守っていたかった。 自分の日常が終わる時は、きっとその大事な人が死ぬ時だと。 そう、信じて疑わなかった。 ───周りはそんな生き方をする男を『馬鹿』と言った。 もちろん、男はそんなことは知っていた。 知った上で、自分ではない他人の未来のために走り続けた。 誰の理解も欲しがらず、 ただ……その人が笑っていられる未来を築きたかった。 そのために走り続けた。 傷だらけになっても、他人に利用されても。 ───やがて動けなくなった男を見て、周りは『馬鹿だ』と罵った。 男は誰にも理解されない。 理解されないまま、馬鹿だと言われながら……いつしか消えるのだろう。 それはどれだけ残酷な未来だろう。 『理解されない』ということは、どれほどの孤独だろう。 だけど男にとって、そんなものはどうでもよかった。 孤独になっても、傷ついても、 守りたかった『日常』がそこにあることに、男は安堵していた。 けれど微笑む男を、周りは『キモチワルイ』と言った。 そして石を投げた。 男には抗う力もないというのに、石の雨は降り続いた。 男が一体彼らになにをしたというのだろうか。 男がしたことはただひとつだったというのに。 男は、ひとり自分を覚えたままになる可能性のある少女をわざと傷つけ、 自分から遠ざけただけだった。 それで、彼を覚えている人は誰ひとりとして居なくなった。 けど、石の雨は続く。 道の端で動けなくなった男に向けて、石の雨は降り続いた。 でも男は泣かなかった。 石の痛さでなんて泣くものかと心に決めていたから。 ───だけど。 その石を投げる人だかりの中に、かつての友人が居るのを見た時。 ……男は、初めて大粒の涙を流した。 ───それは、どこか別の歴史の、語られることのない未来。 ただその場には絶望だけが残って。 男は、いつか『友達』と呼んでいた男にすら罵られながら。 ……やがて、その世界から消えていった。 Menu